「ヤンデレられたい」とか軽率に言っちゃうタイプのよわよわ男子生徒くんVS秘めていた感情を解放したヤンデレ生徒たち   作:異常ヤンデレ愛者

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ミレニアム、トリニティときたので次はゲヘナ、という縛りを自分の中で勝手に設けたせいで何気に苦戦しました
ゲヘナのヤンデレって誰だ?とか思いつつ推しのヒナを主役にしてみました

後ルーキーランキング一位ありがとうございます


空崎ヒナは縋りたい

 

「ねえソウ。ヤンデレ、とは何かしら」

 

 ゲヘナ学園風紀委員室にて、俺は直属の上司である風紀委員長・空崎ヒナさんにおよそ彼女が知り得ないような概念について尋ねられていた。

 

「えっと……なんといいますか、好きな人への愛情が行き過ぎてちょっと問題視されるような行動を引き起こす人たちの総称とでもいいますか……」

 

 なして俺は上司に性癖について説明せにゃならんのです?いつも通りの無表情で聞かれてるせいで余計に気まずいんですけど。

 

「……そう。あなたはそういう女の子が好きなのね」

「アッ」

 

 やべっ、これさっき同じ事務仕事専門部署の友人と仕事中に話してた内容が聞かれてたやつだわ。俺たち以外誰もいなかったから「やっぱ俺のことが好きすぎて依存してくるような女の子に好かれてえよな!」「お前ほんとそういうところだぞ」とか言って性癖談義で盛り上がってたのに!というかあいつの言ってたメンヘラ系彼女については言及なしかよ。

 

「あのー……俺が何か気に障るようなことでも言いましたか?」

「いいえ。それよりこれは例えばの話なのだけれど、現実にあなたを好きで好きでたまらない……それこそヤンデレな女の子がいたら、あなたは受け入れるのかしら」

 

 それはどういう意図の問いで?とは言えないので、ここは正直に答える。

 

「そりゃまあ本当にそういう子がいたら受け入れちゃうと思いますけど……」

 

 だってその子は俺のことが好きなんでしょ?そんなの対応も激甘になるに決まってるじゃん。

 

「……そう。わかったわ」

 

 何がわかったんです?俺の性癖がですか?

 

「……じゃあ今日の放課後、もう一度ここに来て」

「……? はい」

 

 これは後でお説教コースか?終わったな俺。

 

 

 

「失礼します」

「来たのね。じゃあ……私に、なでなでして?」

「……はい?」

 

 なんて?

 

 

 

 あれから数日、ヒナ委員長改めヒナさんがなんか常時引っ付いてくるようになった。職場も委員長の机のすぐそばに移されたし、なんなら役職も「風紀委員長専属事務員」とかいう豪華なものに変わった。まあそれはいい。問題は……

 

「ねえソウ、ほめて?」

 

 定期的にヒナさんがこうやって幼い子供のように俺に褒めて欲しがることだ。別にそれ自体は構わないんだが、段々とその頻度が短くなっているのは問題だと思う。だってそれは俺に依存しかけてるってことだし。あの空崎ヒナが俺如きに縋っている。笑えない冗談だ。ヒナ委員長はね、俺に依存なんてしないし、問題児たちを一方的にボコせるし、やること全部がゲヘナのためじゃなきゃいけないの……とまではいかないけどさ。それでも俺に依存しちゃうのは色々とまずいと思うんだよね。だからここは心を鬼にして突き放すこともまた必要……

 

「ヒナさんはいつもがんばってますよ。だから今くらいはリラックスしてください。仕事はオレも手伝いますから」

 

 とはわかってるけどそんなこと言えねえ……!だってこの人オーバーワークのプロだぞ!?いつ休んでるん?ってくらい仕事してるとこしか見てないんだぞ!?そんな人にはせめて少しだけでも休んでほしいと思っちゃうじゃん!

 

「でも依存しすぎるのはまずいよねって思うわけなんですけど、そこんとこどう思います?アコ行政官」

 

 てなわけでヒナさんが外回りに行ってる間にアコ行政官に相談をしてみる。この人が一番ヒナさんに近いだろうしな。

 

「まずそもそもあなた如きにヒナ委員長が依存しかけているという愚かな認識を正しなさい……と言いたいところですが、最近のヒナ委員長の様子がいつもと違うのは事実です」

 

 曰く、普段の様子は変わりないが、俺の帰宅時間に合わせて仕事を終わらせようと躍起になっているところが見られる。俺と接触していない時間が一定以上に達すると、精神的に不安定になる。俺と仲が良かった元同部署の連中に対して独占欲のようなものを発露している時がある……等々。なんか思ったよりもまずくね?

 

「単刀直入に聞きますが、ヒナ委員長をここまでおかしくさせるなんて、あなたは何を仕出かしたんですか?」

「知りませんよそんなこと。そもそも最近まで直接の関わりすら薄かったんですよ?精々が書類を運ぶ時にたまに会うくらいで」

「少なくとも思い当たる節はない、ということですか……」

 

 ため息を吐くアコ行政官を見ながら、俺も考える。俺は何をした?あそこまで人を変えられるような事をした覚えは本当にないんだが。

 

「……ソウ。アコと何をしているの?」

「ひ、ヒナさん!?」

「ヒナ委員長!?」

 

 ふと後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには目に光のないヒナさんが立っていた。

 

「アコ」

「は、はいっ!」

「ソウと何をしていたの?」

「い、いえ、それはその……」

 

 言葉を濁してどうにか誤魔化そうとするアコ行政官。まあ本人に言える話題じゃないしな。だが、その対応は悪手だったらしい。

 

「……まあいいわ。ソウ、ちょっと来なさい」

「は、はい?ちょっ、引っ張らなくても行きますって!」

 

 俺にとって、だが。その小さな身体のどこにそれだけの力があるんだという勢いで、俺はどこかへと引きづられていった。

 

 

 

 連れて行かれた先は風紀委員用の仮眠室の一室。そこにあるベッドに押し倒された俺は、普段とは違い見上げるような形でヒナさんを眺めていた。

 

「あ、あの……俺がなにか?」

「……ソウはアコみたいなスタイルの人の方が好きなの?」

「……え?」

 

 なんでこの状況で俺の好みのタイプの話を?

 

「イオリみたいにいつも元気で健康的な子の方が好きなの?それとも、チナツみたいに一歩引いてあなたを支えられるような優しい人の方が好きなの?……私じゃ、駄目なの?」

 

 喉の奥から溢れたようなその一言と共に、彼女の秘めていた思いが決壊した。

 

「私を捨てないで……!お願い。何でもするから。あなたに好きになってもらえるように努力するから。だから私を見捨てないで。もう私は……あなたがいなきゃ耐えられないの」

 

 それは慟哭だった。それは懇願だった。それは告白だった。それは……一人の少女の思いそのものだった。

 

「ねえソウ、お願い。私から離れないで……!」

 

 なんでここまで彼女が俺に縋るのかはわからない。それでも今やるべきことはわかる。

 

「……ソウ?」

「離れませんよ。ヒナさんが望むなら、ずっと一緒にいてあげますよ」

 

 彼女を抱きしめそう答える。その思いに応える。

 

「いい、の?」

「いいですよ。ほら、前に言ったじゃないですか。俺はそういう子が好きなんですよ」

 

 まあこれをヤンデレと呼ぶかは審議を見極める必要があるかもしれないが、ヒナさんが重い感情を抱いている女の子であることは事実。ならそれでも……

 

「そうだったわね……じゃあ、もういいわよね」

「え?何が……ちょっ!?なんで服を……!?」

「……これで私はあなたのものになれる。だからお願い。私をもらって?ソウ」

 

 いやこの人ガッツリヤンデレだわ。自分の身を何の躊躇いもなく相手に差し出せる時点でその素質があるよ。

 

「……まあ、断ったところで無理矢理にでもあげるけど」

「ちょっ、まっ!」

 

 

 

 

 

 

 彼と関わり始めたのは、毎回のように一般事務員たちの書類をまとめて私のところに持ってくるようになった時かしら。前までは毎回人が違っていたのに、ある時からあなたしか来なくなったから覚えているわ。理由を聞くと「面倒な仕事を押し付けられてるだけ」とあなたは言っていたけど、本当はそんな面倒な仕事をわざわざ引き受けてくれていたのよね。優しいあなたらしいわ。

 そう、あなたは優しかった。寝不足で濃い隈を目元に作っていた私を見て、

 

「大丈夫ですか?すごい隈できてますけど。せめて仮眠だけでもした方がいいんじゃないですか?」

 

 なんて言ってくれるくらいには。

 風紀委員長という肩書きを持つ私の仕事は多い。誰かがそれを手伝ってくれることはあれど、優しい言葉をかけてくれることはなかった。それは何もみんなが薄情なわけじゃない。私が「頼れる風紀委員長」だからだ。私なら何でもできる。どんな仕事もこなせる。そんなある種の色眼鏡があるからこそ、誰も本当の意味で私に寄り添ってはくれない。それでいいと思っていた。私は強いから、それでも問題ないと思っていた。でも違った。

 

「みんなヒナ委員長に頼り過ぎなんですよ。ちょっとくらい文句を言ってもいいんですよ?」

「ヒナ委員長が強いことくらいわかってますよ。でもだからってワンマンで全部を解決するのは違うでしょう」

「少しくらい誰かを頼ればいいじゃないですか。俺?俺は大したことはできませんけど……まあ事務仕事くらいなら」

 

 私は弱かった。あなたの言葉に、甘い誘惑に、私の心はジワジワと侵されていった。甘い甘い、毒の密に。私はあなたがほしくなった。ずっとあなたのそばにいて、あなたの温もりを感じていたかった。でもそれと同時に、それは駄目だという思考も確かにあった。彼に迷惑をかけてしまうから、それは許されることではないと。

 

『やっぱ俺のことが好きすぎて依存してくるような女の子に好かれてえよな!』

 

 でもその何気ない会話の中の言葉を聞いた時、私の中にあったストッパーにヒビが入った。そういう子が好きだというなら、私のことも愛してくれるのではないか。そう思ってしまったが最後、私は彼のことを囲う準備を始めた。

 彼が私のことを見てくれる機会が増えた。私のそばに彼がいない時間に、彼が私以外を見ている事実に耐えられなくなってきた。だからアコと話している彼を見た時、思いを抑えきれなくなった。

 

「ねえソウ、お願い。私から離れないで……!」

 

 そう叫んだ後で、ふと冷静になった。こんなことを言って、嫌われてしまったらどうしよう。彼が離れていってしまったらどうしよう。そんな不安でいっぱいになった。

 

「離れませんよ」

 

 なのにこんな私を受け入れてくれると、そう言われて嬉しかった。ああ、これでやっと()()()()()()()()()()()()って。

 

 あなたには私の全てをあげる。だからもう逃さない。優しいあなたは逃げられない。これでずっと、()()のものだ。

 

「大好きよ、ソウ」

 

 一通りコトが終わった後に、私は優しく彼の耳元で囁いた。

 




ヒナ

依存型のヤンデレ
彼のものになりたい、と同時に彼を私のものにしたいという矛盾した感情が入り混じっている


ソウ

ごく普通の優しい人
その優しさは誰かにとって甘い毒となる






とりあえず書けました
次は誰にしようかな

あ、今回も感想をくださると作者が喜びます
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