護廷十三隊が第4次聖杯戦争への介入を決定したことは、すぐに聖堂教会、魔術協会の知るところとなった。
なぜなら、現地の情報収集と、敵性組織の情報網の寸断、破壊、民間人の安全確保を任務として言い渡された護廷十三隊における諜報戦、隠密戦闘における特殊部隊、二番隊隠密機動及び、中央四十六室直轄部隊である鬼道衆により両組織の工作部隊、要員が補足され拘束または殺害される事案が多発したのである。
この事態に両陣営もすぐに対応しようとした、しかし、新たに入国しようとした要員も、隠密機動に所属し、日本に入国する魔術師などの監視、警戒、日本国内の魔術師に関する諜報活動を任務とする隠密機動第二分隊“警邏隊”によって水際で補足、殲滅されてしまっていたのである。
無論その要員の中には代行者や執行者なる精鋭も混じっていたが、それらも一般隊士の犠牲と上位席官らの投入により撃退に成功していた。
そんな状況下にあって、冬木市にて既に聖杯戦争の準備を始めていた者たちも異変に気が付き始めていた。
冬木市にある教会にて、その地下室に集まった者たちがその異変について話し合いをしていた。
「綺礼よ、して聖堂教会の手の者と、お前のアサシン数体を屠った者たちについて情報は入手出来ているのか」
父であり、そしてこの教会の主でもある神父の質問に、綺礼は少し考えてから言葉を口にする。
「父よ、今現在集められる情報は限られており、その中での推測となりますが、日本における古くから皇族に使えし魔術組織、護廷隊……この組織が動いている可能性が高いとみるしかありません」
息子からの報告に老神父の表情が険しくなる。
そして、それまで黙って聞いていたこの町のセカンドオーナーである遠坂時臣が老神父へと質問を投げかける。
「璃正神父、私はその護廷隊という組織について直接的な知識をあまり持ち合わせていません、それほどまでの脅威と成りうるのか、神父の見解を教えていただきたい」
老神父は、かつての友人の息子からの質問に、ゆっくりと、重い口を開いた。
「あれは、私が監督役として派遣された第三次聖杯戦争の時……」
1930年 冬木市
大日本帝国陸軍、ナチスらが介入したこの年の聖杯戦争では、大日本帝国陸軍が動いたことで不審に思った当時のやんごとなきお方からの調査の指示を受け、当時の護廷隊が介入した。
ナチス側にはこの時、魔術を用いた独自の戦闘部隊であるクインシーなる戦闘集団が投入される。
この部隊により介入を図った帝国陸軍の部隊が大損害を受け撤退、さらに、魔術師同士の戦いやサーヴァントらによる戦闘にて市民に多数の死傷者が発生するに至り、護廷隊の部隊が本格介入する。
護廷隊から派遣された部隊はまず、その聖杯戦争の元凶である大聖杯の破壊を試みたが、御三家の内の二つ、アインツベルンとマキリに察知され、破壊を試みた部隊は壊滅し撤退、次に御三家や参加している魔術師、サーヴァントの排除に動く。
護廷隊はエーデルフェルトを名乗る姉妹やその他の魔術師と激戦を繰り広げ、ナチス側のクインシーらも混じったまさに泥沼の戦闘が繰り広げらる。
当時の護廷十三隊から介入部隊として派遣されていた五番隊、九番隊の上位席官や副隊長クラスが有力な魔術師やサーヴァントと戦いほぼ壊滅、さらに両隊隊長がクインシー指揮官のユーハバッハと交戦し相打ちとなり戦死するなど、護廷隊にとっては介入部隊のおよそ7割が戦死、または戦闘不能に追い込まれるという屈辱的な結果となる。
当時の監督役であった老神父は、街中で吹き飛ぶ家屋、人、軍用車、大量の目撃者、大量に持ち込まれる隠蔽工作に関する書類、対応、工作員への指示、指示した工作員が消えてしまいそれの対応、抜ける髪の毛、etc
要するに、護廷隊の介入でどれほど第三次聖杯戦争が泥沼化したか、そして聖堂教会、魔術協会がどれほどの被害を受けたかを、自分たちの責任となりうる部分をすべて省いて説明した。
その説明を聞いていた遠坂時臣は、聞いているうちにだんだんと嫌な予感が湧いてくるような感覚に陥っていたが気のせいだと自らに言い聞かせる。
3人の魔術師による対策会議は深夜を過ぎても終わらない……
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場所は変わり、冬木氏の閑静な住宅街、時間は既に日も沈み、夜間といったところだろうか。
人々が寝静まった住宅地の道を歩く巨漢、黒装束を身にまとい、片手には老舗和菓子店の煎餅の袋を抱え歩くその後ろには同じような恰好の男たちが数名付き従っている。
巨漢の男が立ち止まると、付き従っていた者たちとは別の、同じく黒装束を身に着けた人物がその巨漢の背後に現れ、片膝をつく。
「大前田三席、現在刑軍と警邏隊による情報収集状況はおおむね順調、遭遇したサーヴァントはアサシンクラスと思われ、遭遇した当該個体は排除に成功しております。砕蜂副隊長は現在調査中の屋敷での活動を切り上げ、こちらへ向かっているとのことです。三席には引き続き住宅街での情報収集と警戒任務を継続するようにとのことです」
報告を受けた大前田と呼ばれた巨漢は、報告に来た部下に返事をしようとして止まる。
その視線はある民家に向けられていた。
「……三席?」
不審に思った部下が声をかけながら大前田の顔を覗き込むと、その顔は険しい表情で固まっていた。
「……血の匂い、それに……魔術行使の…………!」
部下がさらに何事か聞こうとする間もなく大前田の姿が掻き消える。
一瞬のうちに大前田が視線を向けていた民家のドアの目の前に移動し、そのドアを蹴破り家の中へ駆け入っていくのを目の当たりにした部下は慌てて現場へ向かってきている副隊長に状況の報告をするよう伝令に伝え大前田の後を追った。
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とある民家、一人の青年が鼻歌を歌っている。
そして何事かをし終わると、今度は、何か呪文のようなものを口にしながら床に何かを書いている。
使われているのは赤い塗料
その光景を、口をふさがれ、手足を縛られた少年が見ている。
赤い塗料は彼の家族の血液であり、鼻歌交じりで青年が行っていたのは、少年の家族の
少年は目の前で家族が解体される様子を見せつけられ、ついで青年が口にした悪魔への生贄という言葉に深く絶望した。
少年がいつも日曜日の朝に見ている特撮ヒーロー、正義の味方、彼らが本当にいたのなら、少年の家族も、少年自身もこのような目にあっていたならすぐに助けに来てくれるだろう。
最初、少年はこんな悪いやつはヒーローがやっつけてくれる、ヒーローが、正義の味方が助けに来てくれる……そう思っていた。
両親が姉が無残に惨殺され、解体される様を見せられるまでは……。
そうして召喚された悪魔は、自分に優しく微笑みかけ、縄を解いて口をふさいでいたテープもはがして逃がしてくれると言う。
少年の中で、僅かに、この悪魔は、悪魔じゃなくてヒーローだったのかと、若干ながら希望が生まれる。
そして言われるがまま逃げようと玄関に駆ける…そして玄関に並べられた靴を見てしまう……ついさっきまで、殺人者が現れるまではなんの変哲もない、両親がいて姉がいて、その両親と姉と幸せに暮らしていた記憶が頭の中に過る……少年は足を止めてしまい、目には涙が溜まる。
もう、幸せな日常には戻れない、そう理解してしまった。
それでも生きたいと、そうして足を踏み出そうとしたその時、背後から突然現れた触手に全身をからめとられ、万力のごとき力で締め上げられる。
口も触手でふさがれ、叫び声を上げようにもくぐもった声しか出せない。
ああ、やっぱりこの世にヒーローなんていなかったんだ……
そう、少年が完全に絶望し、恐怖に完全に心を折られるその時である。
破壊音とともに少年を締め上げていた触手の力が急に抜けたのを感じた。
そして声が聞こえる。
「坊主、もう大丈夫だ」
恐る恐る、目を開けると、そこにはお相撲さんのような体格の男の人が自分を抱え微笑みかけていた。
「三席!いったいこれは……」
「おう、お前ら、ちょっとこの坊主頼むわ」
そう言って、その男の人は後から入ってきた別の男の人に自分を預けると、室内の方へ向き直る。
「な、何者だキサマは!?」
あの悪魔が目玉が飛び出しそうになるような形相で叫ぶが、その人は微動だにしなかった。
「……た……」
「……は?」
「テメーラこの家で何してやがったっつってんだよ!!この外道どもがぁ!!!!!」
そう叫ぶと、その人はあの悪魔に向かって突進していく。
その姿は、僕があこがれたヒーローそのものだった。
次回は未定です。
ジルにヤられる少年助けたくてこの作品書き始めたんで、あとやりたいのは3つくらい?
5から10話以内に完結予定、メインの方優先したいので更新は超亀になります。