静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

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第14話 紅い翼と青空の拳

 滅びの未来から生まれた怪物が、紅魔館の心臓部で咆哮した。

 

 黒い霧が渦を巻き、未来の断末魔が空間を震わせる。

その存在は、紅魔館が燃え落ちる未来そのもの――

“滅びの意思”の具現化だった。

 

 美鈴は拳を握りしめ、レミリアと並んで立つ。

 

「お嬢様……行きましょう」

 

 レミリアは美鈴の手を強く握り返した。

 

「ええ。

 あなたを一人にするつもりなんて、最初からないわ」

 

 美鈴の胸が熱くなる。

 

――この人を守りたい。

――この館を守りたい。

 

 その願いが、美鈴の覚醒した力をさらに強くした。

 

 

 

◆

 

 怪物が動いた。

 

 黒い腕が空間を裂き、未来の炎が吹き荒れる。

レミリアは翼を広げ、美鈴の前に立った。

 

「美鈴、下がって!」

 

「いえ……私も戦います!」

 

 美鈴は未来の流れを掴み、拳に光を集めた。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「なら――合わせるわよ!」

 

 二人の力が重なった瞬間、

紅い魔力と青い光が混ざり合い、

巨大な衝撃波となって怪物へ放たれた。

 

 怪物が吹き飛ぶ。

 

 だが、すぐに形を取り戻す。

 

 影が静かに言った。

 

「滅びの未来は強い。

 “未来の収束”は、そう簡単には消えない」

 

 レミリアが影を睨む。

 

「あなた……何者なの?

 紅魔館の守護者なんて言っていたけれど……

 本当の目的は何?」

 

 影は沈黙した。

 

 美鈴が一歩前に出る。

 

「影さん……あなたは、私たちを助けているんですか?

 それとも……試しているんですか?」

 

 影はゆっくりと美鈴を見た。

 

「私は“運命の監視者”。

 だが――それは半分だけ正しい」

 

 レミリアが息を呑む。

 

 影は続けた。

 

「私は、紅魔館が建てられたときに生まれた“もう一つの意思”。

 紅魔館が運命を歪めすぎないよう、

 未来の均衡を保つための存在だ」

 

 美鈴は拳を握った。

 

「じゃあ……紅魔館が滅びる未来を止めたいのは、

 私たちと同じなんですか?」

 

 影は首を振った。

 

「違う。

 私は“未来が正しく流れること”を望む。

 滅びる未来が正しいなら、それを守る」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「ふざけないで!

 紅魔館が滅びる未来なんて、正しいわけない!」

 

 影は静かに言った。

 

「未来に“正しい”も“間違い”もない。

 あるのは“収束”だけだ」

 

 美鈴は影を見つめた。

 

「じゃあ……私は……?」

 

 影は美鈴を指差した。

 

「お前は“収束を乱す者”。

 未来を揺らし、選び、変える存在。

 だからこそ――

 お前が未来を選ばねばならない」

 

 美鈴は深く息を吸った。

 

「私は……救われる未来を選びます。

 紅魔館も、お嬢様も、みんなも……守りたい」

 

 影は静かにうなずいた。

 

「ならば――

 その未来を“証明”してみせろ」

 

 怪物が再び咆哮し、二人へ迫る。

 

 

 

◆

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「美鈴、行くわよ!」

 

 美鈴は拳を構えた。

 

「はい……お嬢様!」

 

 二人は同時に飛び出した。

 

 レミリアの紅い魔力が空間を裂き、美鈴の青い光が未来を押し返す。

 

 怪物が腕を振り下ろす。

 

 レミリアが魔力で受け止め、美鈴が未来の流れを掴んで軌道をずらす。

 

「今よ、美鈴!」

 

「はいっ!」

 

 美鈴の拳が怪物の胸を貫いた。

 

 光が爆ぜる。

 

 怪物が悲鳴を上げ、形を崩す。

 

 だが――

影が呟いた。

 

「まだだ。

 滅びの未来は……まだ消えていない」

 

 怪物の残骸が黒い霧となり、再び形を取り戻そうとしている。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「美鈴! とどめを!」

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「はい……!」

 

 その瞬間――

美鈴の体から、紅と青の光が同時に溢れた。

 

 影が驚愕する。

 

「……これは……

 “未来と現在の融合”……!」

 

 美鈴は叫んだ。

 

「紅魔館は……滅びません!!」

 

 拳が怪物を打ち砕いた。

 

 黒い霧が光に飲まれ、滅びの未来が悲鳴を上げながら消えていく。

 

 未来が――揺れた。

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