滅びの未来から生まれた怪物が、紅魔館の心臓部で咆哮した。
黒い霧が渦を巻き、未来の断末魔が空間を震わせる。
その存在は、紅魔館が燃え落ちる未来そのもの――
“滅びの意思”の具現化だった。
美鈴は拳を握りしめ、レミリアと並んで立つ。
「お嬢様……行きましょう」
レミリアは美鈴の手を強く握り返した。
「ええ。
あなたを一人にするつもりなんて、最初からないわ」
美鈴の胸が熱くなる。
――この人を守りたい。
――この館を守りたい。
その願いが、美鈴の覚醒した力をさらに強くした。
◆
怪物が動いた。
黒い腕が空間を裂き、未来の炎が吹き荒れる。
レミリアは翼を広げ、美鈴の前に立った。
「美鈴、下がって!」
「いえ……私も戦います!」
美鈴は未来の流れを掴み、拳に光を集めた。
レミリアが叫ぶ。
「なら――合わせるわよ!」
二人の力が重なった瞬間、
紅い魔力と青い光が混ざり合い、
巨大な衝撃波となって怪物へ放たれた。
怪物が吹き飛ぶ。
だが、すぐに形を取り戻す。
影が静かに言った。
「滅びの未来は強い。
“未来の収束”は、そう簡単には消えない」
レミリアが影を睨む。
「あなた……何者なの?
紅魔館の守護者なんて言っていたけれど……
本当の目的は何?」
影は沈黙した。
美鈴が一歩前に出る。
「影さん……あなたは、私たちを助けているんですか?
それとも……試しているんですか?」
影はゆっくりと美鈴を見た。
「私は“運命の監視者”。
だが――それは半分だけ正しい」
レミリアが息を呑む。
影は続けた。
「私は、紅魔館が建てられたときに生まれた“もう一つの意思”。
紅魔館が運命を歪めすぎないよう、
未来の均衡を保つための存在だ」
美鈴は拳を握った。
「じゃあ……紅魔館が滅びる未来を止めたいのは、
私たちと同じなんですか?」
影は首を振った。
「違う。
私は“未来が正しく流れること”を望む。
滅びる未来が正しいなら、それを守る」
レミリアが叫ぶ。
「ふざけないで!
紅魔館が滅びる未来なんて、正しいわけない!」
影は静かに言った。
「未来に“正しい”も“間違い”もない。
あるのは“収束”だけだ」
美鈴は影を見つめた。
「じゃあ……私は……?」
影は美鈴を指差した。
「お前は“収束を乱す者”。
未来を揺らし、選び、変える存在。
だからこそ――
お前が未来を選ばねばならない」
美鈴は深く息を吸った。
「私は……救われる未来を選びます。
紅魔館も、お嬢様も、みんなも……守りたい」
影は静かにうなずいた。
「ならば――
その未来を“証明”してみせろ」
怪物が再び咆哮し、二人へ迫る。
◆
レミリアが叫ぶ。
「美鈴、行くわよ!」
美鈴は拳を構えた。
「はい……お嬢様!」
二人は同時に飛び出した。
レミリアの紅い魔力が空間を裂き、美鈴の青い光が未来を押し返す。
怪物が腕を振り下ろす。
レミリアが魔力で受け止め、美鈴が未来の流れを掴んで軌道をずらす。
「今よ、美鈴!」
「はいっ!」
美鈴の拳が怪物の胸を貫いた。
光が爆ぜる。
怪物が悲鳴を上げ、形を崩す。
だが――
影が呟いた。
「まだだ。
滅びの未来は……まだ消えていない」
怪物の残骸が黒い霧となり、再び形を取り戻そうとしている。
レミリアが叫ぶ。
「美鈴! とどめを!」
美鈴は拳を握りしめた。
「はい……!」
その瞬間――
美鈴の体から、紅と青の光が同時に溢れた。
影が驚愕する。
「……これは……
“未来と現在の融合”……!」
美鈴は叫んだ。
「紅魔館は……滅びません!!」
拳が怪物を打ち砕いた。
黒い霧が光に飲まれ、滅びの未来が悲鳴を上げながら消えていく。
未来が――揺れた。