美鈴の手が“未来の核”に触れた瞬間――
紅魔館全体が、まるで巨大な鐘のように震えた。
紅い光と青い光が渦を巻き、未来の断片が一斉に弾け飛ぶ。
燃える未来。
消える未来。
救われる未来。
そのすべてが、美鈴の体へ流れ込んでいく。
美鈴は歯を食いしばった。
「っ……く……!」
未来の流れが、体の奥を削るように通り抜ける。
視界が揺れ、意識が遠のきそうになる。
レミリアが叫んだ。
「美鈴!!」
美鈴の体がふらつき、膝をつく。
その瞬間――
美鈴の髪の先が、わずかに“色を失った”。
レミリアは息を呑んだ。
「……美鈴……今……髪が……!」
美鈴は震える手で髪を触った。
そこだけ、未来が削られたように“白く”なっている。
影が静かに言った。
「始まったな。
未来の削減だ」
レミリアは影に掴みかかった。
「やめさせなさい!!
美鈴の未来を奪うなんて……許さない!!」
影は揺らぎながら言った。
「これは美鈴自身が選んだことだ。
未来を変える代償は、未来で払うしかない」
レミリアは叫ぶ。
「そんな理屈、知らない!!
美鈴の未来を奪うくらいなら……紅魔館なんて滅びてもいい!!」
美鈴は顔を上げた。
「お嬢様……それは……ダメです……」
レミリアは涙をこぼした。
「どうして……どうしてそんなに自分を犠牲にするの……!」
美鈴は微笑んだ。
「犠牲じゃありません。
私は……守りたいだけです。
お嬢様の未来も……紅魔館の未来も……」
レミリアは首を振った。
「私は……あなたの未来を守りたいの……!
あなたがいない未来なんて……生きている意味がない……!」
美鈴の胸が痛んだ。
――そんなふうに思ってくれていたなんて。
だが、未来の核は容赦なく光を放ち、美鈴の体からさらに“未来”を奪っていく。
今度は、美鈴の影が揺らぎ、足元が薄く透けた。
レミリアが悲鳴を上げる。
「美鈴!! もうやめて!!
これ以上は……本当に……!」
美鈴は震える体で立ち上がった。
「大丈夫です……
私は……まだ……ここにいます……」
影が静かに言った。
「紅美鈴。
お前が選んだ未来は、確かに“救い”だ。
だが――その未来は“お前の犠牲”の上に成り立つ」
レミリアが叫ぶ。
「そんな未来、私は望んでない!!
美鈴がいない未来なんて……救いじゃない!!」
影はレミリアを見つめた。
「レミリア・スカーレット。
お前の本当の願いは――
“紅魔館の未来”ではなく、“美鈴の未来”だ」
レミリアは息を呑んだ。
影は続ける。
「だからこそ、お前は未来を歪めた。
美鈴を守るために、真実を隠し、運命をねじ曲げた。
その歪みが――滅びの未来を呼び寄せた」
レミリアは震えた。
「私が……紅魔館を……滅びに……?」
美鈴は首を振った。
「違います……
お嬢様は……私を守ろうとして……
それだけです……」
影は静かに言った。
「だが、未来は“願い”だけでは動かない。
動かすには――“選択”が必要だ」
美鈴は未来の核に手を置いたまま、レミリアを見つめた。
「お嬢様……
私は……未来を選びます。
紅魔館が救われる未来を」
レミリアは涙を流しながら叫んだ。
「美鈴!!
お願い……戻ってきて……
あなたの未来を……奪わせたくない……!」
美鈴は微笑んだ。
「大丈夫です。
私は……必ず戻ってきます。
お嬢様のところへ」
未来が――最終局面へ動き出した。