勝利をこの手に掴むまで   作:槇緇櫓把

1 / 1
見切り発車です

※注
本作はシルヴァリオサーガ(新西暦サーガ)に登場する光の奴隷成分を多分に含んでいるつもりですので、呪術廻戦における一部キャラのテンションがおかしくなる予定です。



名も無き英雄

 

 「では、いずれまた会おう。我が宿敵よ」

 

 平安時代、呪術全盛の時代において一人の男が契約に基づき呪物と化す。

 

 それは羂索と呼ばれた男にとっての生涯をかけた宿敵であり、平安時代出身の術師の中では()()()であった。

 

 何せ男は術師であるにもかかわらず、術式を持たぬ。

 腕っ節は立つものの、いつも命からがらの重症で何故生きているのかよく分からぬまま、また鬼の首を獲ろうと山へ向かう。

 

 権謀術数渦巻く魔境、平安において物珍しい気性の持ち主で、堅物であるものの、驕らず真摯であった。

 天涯孤独の下人でありながら、勤勉であり、肉壁代わりに連れて行かれた戦場で幾度命を落としかけてもなお、決して逆らう事はなく従順であった。

 

 そんな男はその生涯の全てを闘争に費やし、数多の呪いを祓ってきた。

 それがたまたま羂索という男の目についた。

 

 羂索にとって男の存在は正しく光のようであった。

 樹木が如く、干涸びるように活力を失うかつての友柄とは相反するように、その男は苛烈で太陽すら霞むような雄々しさを有する。

 決して立ち止まる事なく、無才であるにも関わらず愚直に歩み進める男に羂索は恋をしたかのように錯覚を覚えるほど、その存在に焦がれた。

 

 術式も扱えず、呪力の操作すらままならなず、鍛錬の光景ですら常に命懸け。

 羂索にとってすればその所業は、常に頭部に刃を押し付けながら反転術式を流し込むような荒業に大差はなかった。

 

 故に呪術の師として彼の前に姿を現したのは当然であった。

 

 だが男はこの上なく凡才であった。

 いやそれ凡才にすら値しない、正しく凡愚だ。

 

 その事実は彼を認める羂索でさえ、激しく肯定するほどだろう。

 

 何せ一年あれば十分習得に事足りる、基礎的な呪力操作ですら彼はその習得に二十余年を費し、その生涯を終えたのだから。

 

 羂索の生涯において最も生産性のない二十余年。

 だがその生涯において最も輝かしく、愚かで、尊い日々であった。

 

 「世話になった。だがまた相見えた時、貴様を打ち斃すの俺である事を忘れるな」

 

 無謀極まる呪力行使により、既に全身が消し炭に等しい状態でなお闘志を滾らせながら、齢四十に満た主身でこの世を去ろうとした男は、その契約を果たすべく、その血肉を変じさせる。

 

 その様を見つめながら、一時の夢を見送った女は日々を懐かしむように微笑みながら、胸に抱いた野望の火をより一層強め、己の勝利を胸に刻んだ。

 

 

 

 これより運命の歯車は動き始め、千年が経過した。

 時代は平安から平成へ。

 

 無名の英雄は時を渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふむ、あれから千年か」

 

 呪物は産声を上げる。

 

 突如として脳内に流れ込む無数の情報。

 歴史、倫理観、世界情勢、インターネット、人間関係、思い出。

 

 その全てを瞬時に反芻し、己の受肉により命を失った一人の若者の未来を悔やみ、黙祷。

 受肉の影響か、20代半ばも行かぬ筈のその表情は、壮年の男性を思わせる風貌を有しており、男の表情はひどく重々しい。

 己のような人間が、前途有望な若者の命を奪い、現世に再誕したことを本気の悔いている。

 

 そして

 

 「すまない。だがその命、決して無駄にはせん」

 

 故にこそ、報いなければならない。

 彼の犠牲を無駄にしてはならない。

 慚愧の念に駆られ、心を痛める事は許されない。

 それこそ彼の尊く短い生涯の、命の輝きに対する冒涜に他ならないのだから。

 

 若者の名はクリストファー・ヴァルゼライド。

 今この時より、死滅回遊の泳者(プレイヤー)として登録された名も無き英雄である。

 

 「"勝つ"のは、俺だ」

 

 さあ、今こそ勝利をその手に掴み取ろう。

 

 平成の世に、時代外れの英雄譚の幕が切って落とされた。

 




結末だけは決めてるので、狂い哭きます。
僕の末路は完結です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

剣豪の英雄譚(作者:二天一流)(原作:落第騎士の英雄譚)

▼──褒められたい、認められたい、憧れられたい…!▼──敵も味方も誰も彼もが放っておいてくれない存在になりたい…!▼──逃げも隠れもできない存在になりたいッ!▼承認欲求の鬼のようなそんな男がいずれ最強へと至る物語。


総合評価:2509/評価:8.29/連載:3話/更新日時:2026年08月05日(水) 16:49 小説情報

錬鉄と鍛造の贋作者(作者:英雄に憧れた一般魔導師)(原作:杖と剣のウィストリア)

あるはずの無い記憶、何処か遠い記憶。求めて失えど、それらだけは焼き付いて離れる事なんて無い、鮮烈に残る記憶。▼理想に裏切られた赤い外套纏いし錬鉄の英雄▼業を絶つ無念無想の刃を目指した鍛冶師▼そんな二人の力と技術を得て、ドワーフに鍛えられた鍛造技法を以て、彼は▼魔法の世界で剣を打つ。▼これは、杖と剣が交わる物語に贋作者が交差する。


総合評価:2653/評価:8.64/連載:22話/更新日時:2026年08月18日(火) 23:00 小説情報

HASAN×HUNTER(作者:ガチャの破産)(原作:HUNTER×HUNTER)

グランドシスベシフォーウ‼︎のせいで"山の翁”の一生を垣間見ちゃって脳を焼いた少女が、狩人の世界に舞い降りるお話。▼脳みそはウェルダンでこんがりされたので、しっかり狂信者の模様。▼11周年でアズライール実装されたから供養も兼ねて初投稿。


総合評価:926/評価:9.13/連載:1話/更新日時:2026年08月14日(金) 20:00 小説情報

超古代に『剣』の概念を生み出した男の話(作者:柴犬ダックス)(原作:Fate/)

タイトルそのまま。▼メソポタミア文明よりも以前の神代の黎明期。▼神獣達が大地を闊歩し、まだ人類が石器を用いてた時代に転生した主人公が、ガイアに『剣』の概念をブチ込む物語。▼


総合評価:1583/評価:8.76/連載:2話/更新日時:2026年08月15日(土) 00:11 小説情報

Fate/Strange Order : 冠位影法録(シャドウ・レコード)(作者:りー037)(原作:Fate/)

▼ 2015年、人類の未来が焼却された。▼ 人理継続保障機関カルデアに集められた48人のマスター候補生。その最後の一人としてスカウトされたヴァルナ・クロスは、魔術師ではなかった。▼ 彼の正体は、東洋の異端の術式『十種影法術』を操り、かつて聖堂教会に属し死徒を狩り続けた規格外の異邦人。▼ 突如起きたカルデア爆破テロにより、ヴァルナと盾の少女マシュは、人理焼却へ…


総合評価:1711/評価:8.29/連載:42話/更新日時:2026年09月05日(土) 20:53 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>