ダンジョンに強さを求めるのは間違っているだろうか |迷宮神聖譚《ソード・オラトリオ》   作:ベル虐サイコ〜!!!

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 ベル君は本当に可哀想に……、これも私の星の下へと来てしまった君が悪いんだよ?こんな虐めやすい性格になってしまったベルキュンに非がある!!!駄目じゃないかロキィィィイイ、こぉ〜んなァに可愛い子供を独り占めにするなぁんてさァァァァア(アポロン憑依)。
 ちなアポロンはベル君にシバかれました、ベルがオラリオに来て二年目に一人でアポロンファミリアのホームに乗り込みシバいて、アポロンはオラリオ追放になりました。

 ベル君が「ここで天に送還されるか、大人しくオラリオを追放されるか選べ」と言われ、しかなくアポロンはオラリオ外からベル君の活躍を見て舌を舐め回してます、これがアルフィアに見つかるとアポロンは死にます(おいたわしや)。
 ちな、ベル君に神の神威は効きません、【神創英雄(アルケイデス)】の効果です、やっぱりこの名前は良いですね(自画自賛)!!!アルゴノゥトととも似てるし、何よりゼウスの子であるヘラクレスの真名でもありますしね!!!!


quest(クエスト)5 女は怖いよ何処までも(アイズ・ヴァレンシュタイン)

 何故だ?何故僕はここで正座させられているんだ?僕は酒場で皆と気持ちよくご飯を食べ、そして黄昏の館(ここ)へと帰ってきたはずだ!!!何故?!僕は今審判を待つ小兎へとなっているんだ?!

 

 目の前の少女、アイズ・ヴァレンシュタインはベルを断罪しようとしていた、それは何故か?それはベルが他派閥のそれもエルフの女性に稽古をつけようとしているのだ!!!

 それを許すことのできないアイズは今!!レフィーヤとリヴェリア、団長のフィンと主神ロキの後ろ盾を借りてベルを断罪しようとしている。

 そんな中、何を思ったのか小兎は発言を許されてもいないのに話し始めたのである。

 

「何で俺はここでこんな扱いを受けてるんだ?皆目見当もつかないんだが?」

 

「は?本気で言ってるの…ベル、それは流石に駄目…だよ」

 

 アイズの心の中でも、今も尚『兎断罪(ギルティ)』のプラカードを掲げたチビアイズが動き回っている。

 そしてそんな事を知る由もないベルは、レベル7に至るまでに培った思考速度を遺憾無く発揮し、原因を探る。

 そして一つの答えに至った。

 

(うん…、分かんネ)¯⁠\⁠_⁠ʘ⁠‿⁠ʘ⁠_⁠/⁠¯

 

「ベル…、ちゃんと反省してる?」

 

「はい…反省してます(なんの事?!)」

 

 ベルは嘘をつくのが下手だった、いつも嘘をつく時は決まって相手から目を逸らす、それを長年の付き合いですぐに見抜いたアイズはその頬を膨らませながら言う。

 

「ベル…やっぱりギルティ、兎は断罪すべし!!」

 

「へぇ?」

 

 その後、黄昏の館には兎の断末魔が響いた。

 そして就寝時、ベルは金髪の悪魔に襲われる夢を見続けた為不眠、アイズは白い兎と戯れる楽しい夢を見ていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ベルは朝早く黄昏の館を出た、その理由はたった一つ、アイズに捕まってしまうからである。

 その為ベルは早朝から、というか日が昇る少し前から市壁の上で都市を眺めていた。

 

「これが…、お義母さんや叔父さんが守りたかった物…、今の僕なら少しぐらいは分かるかな」

 

 いつも賑わっていて、神様も皆も仲良く暮らしている、そんなオラリオの平穏を保つ為に、そしてあの黒き終焉に対抗する為に二人は洗礼を与えるべくこのオラリオにて討たれた。

 

「僕は…、貴方たちに近づいていますか?」

 

 遥か遠くの谷で今も終焉の鐘を鳴らそうとする世界の敵、僕は黒龍(こくりゅう)を討たなきゃならない、それが使命だから…。

 そしたら、その後はどうしよう?

 

「そん時に考えるとするか」

 

 ベルは二つの木刀を握り、左手首には純白の腕輪が輝いていた。

 

「お祖父ちゃん、どうかヘラ叔母さんから逃げ果せてね」

 

 ベルは静かに願った、祖父の無事を。

 そしてベルはゆっくりと、静かに街外れの教会へと赴いた、周囲は酷く荒れており、だからこそ、目の前の綺麗な教会が目に入る。

 外も、そして中の細部まで綺麗に造り込まれている。

 

 ここはベルがわざわざ立て直してもらった物だった、アルフィアや母親の事を忘れない為に、そしてその二人のことを感じられるように。

 

「やっぱり、女々しいかな?それでも僕はもう一度貴方たちに会いたいです、だから…もうすぐそっちへ行くからね」

 

 遅かれ早かれ黒龍の封印は解かれる、そうして僕らは黒龍と戦うだろう、そしたら負けたらそこで僕は死ぬ、勝っても次代の英雄に全てを託して僕もお母さんやアルフィアお義母さん、ザルド叔父さんの居る所に行く。

 

「これは…少しズルい…かな?」

 

 『平和に生きろ』それがアルフィアお義母さんが最後に僕に言った言葉だった、それを片時も忘れた事はない、それでも僕は剣を執るしかなかった、そうしなきゃもっと大勢の人が泣くことになるのだから。

 

「うん、やっぱりもう少しだけ生きて…、土産話を沢山持っていくからね」

 

 そうしてベルは眠りにつく。

 この静寂の中で一人、誰にも気づかれることなく、ベルは静かな時を過ごした。

 

「やっぱりアポロン様は天界に送還するべきだった、あの神は本当に気色悪いし、何よりこの教会を一回ぶっ壊したし」

 

 密かにベルはアポロンへの復讐を誓う。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 ここは【正義の眷属(アストレア・ファミリア)】の門の前、外は既に日が昇り、ベルはあの教会を出てアストレア・ファミリアのホームへと訪れていた。

 『星屑の庭』はよく手入れされており、本拠の前にある団旗には正義の翼と剣の紋様が刻まれていた。

 

 そんな中、一人の妖精がベルに気付き入り口まで赴く。

 

「クラネルさん、おはようございます、朝早くにすみません」

 

「良いです!!それに申し出たのはこっちですからね!!」

 

 リューに連れられてベルはアストレア・ファミリアの本拠の中へと入る。

 そうしていると目の前から一人の快活な緋色の髪の女性が話しかけてくる。

 

「あら?ベル君じゃない!!何々、リューと密会?あらやだごめんなさいね!!私ったら空気が読めなくてね!!」

 

 二人の目の前で盛大に勘違いをかますのは、アストレア・ファミリア団長 アリーゼ・ローヴェル、レベル6の第一級冒険者、そもそもアストレア・ファミリアの今の構成員は合計4人、それでもランクはBである。

 その理由は単純、アリーゼ、輝夜、リューの三人は第一級冒険者であり、アリーゼはその中でもレベル6、そして第二級冒険者であり指揮官のライラ、レベル4でありフィンとはいつも揉めている(ティオネの方が揉めてる)。

 

「クラネルさん、少し待っていて下さい、少し支度をするので!!」

 

「はい、それでアリーゼさん達も参加しますか?」

 

「うーん、そうね!!リュー一人がボッコボッコにされるのは可哀想だしね!あぁ私ってなんて優しいのかしら――」

 

 そんな中、一柱の女神がベルの前に顔を出す、胡桃色の長髪に蒼色の瞳を持つ正義の神、アストレアだった。

 

「あら?ベル、どうしたの?まさかリューと密会?!あらやだごめんなさい、コラ!!アリーゼ、すぐにどきますよ!!」

 

「は…はい!!」

 

 まさにこの親にしてこの子ありっと言った所だった。

 

「では!中庭で待っててもいいですか?」

 

「えぇ、そうね、私も見させて貰いましょうか」

 

「アストレア様が見えるの?!なら頑張らないとね、それじゃあよろしくねベル君!!」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 そうしてベルは一足先に中庭へと赴いた、その後輝夜とリューの痴話喧嘩の声を外から聞いていたベルは苦笑。

 その後疲れ切った顔のリューと輝夜、その後ろにライラで最後にアリーゼが木剣を持って中庭へと出る。

 紅茶を飲みながら優雅にアストレアは中庭を眺めていた。

 

「それでは、いつでも。俺は攻撃しないので、皆さんが俺に攻撃を一撃でも当てられたら今日は終わりにしましょう!」

 

「あら?そんな事で良いの?それならすぐに終わりそうね!!」

 

「阿呆かアリーゼ、相手は都市最強の一角だぞ!!この程度のハンデがないと勝負にもなんねぇよ」

 

「あらあら、パルゥムの御方は随分と弱気なのですね」

 

「輝夜、そんな事をしている場合ではありません!!早く構えなさい、それではアストレア様、合図を」

 

 四人が武器を構え戦闘態勢に入る、それを見てベルは少し口角を上げる。

 呑気に紅茶を飲みながら、四人の緊張が頂点に達したところでアストレアは合図を出す。

 

「それでは――――――始め!!」

 

 最初に動いたのはアリーゼだった、アリーゼの刺突をベルは既で右下にいなす、その隙を逃すまいと輝夜の斬撃がベルの胴体を捉える。

 だがそれすらも予測していたベルは輝夜の剣を左上へと弾く、そしてアリーゼと輝夜の間に僅かな隙間が出来た。

 その合間を縫うようにリューの刺突がベルの胸を捉える。

 そしてリューが刺突を放つ瞬間、両脇に居るアリーゼと輝夜もベルに斬撃を放つ、そうして横一文字に並んだ剣がベルを斬る――

 

「――少し、遅いかな?」

 

 筈だった。

 だがその瞬間、ベルは身体を数かに後ろに倒し、アリーゼ、リュー、輝夜の剣を一撃で弾き飛ばす。

 

「「「―――――――――んな?!」」」

 

 驚愕の声が揃う、そしてベルは分かっていたかのように背後のパルゥムにも意識をやる。

 

「オラァァァア!!」

 

 だがライラの攻撃をそれ以上の速度で受け止める。

 愕然とした、まさに開いた口が塞がらなかった、これが都市最強の技量の持ち主。

 『才禍の権化』とすら謳われる程の化物。

 

「チッ――【禍つ彼岸の花】―――【五光(ゴコウ)】」

 

 輝夜の魔法、刀と魔の混合技、それを持ってベルの胴体を捉える。

 高速の五連撃、その一撃は確かにベルを捉えた…が。

 

「こうして…こうかな?―――【五光(ゴコウ)】」

 

 高速を神速を持って迎撃、技に対して互角以上の技で返す。

 

「化物がッ!!!」

 

「んな?!それは言い過ぎでは?!」

 

 そんな阿呆丸出しの返答をしながらもベルは一切隙を見せずにアリーゼ、リュー、輝夜、ライラを圧倒的防御力で捌ききる。

 それでも決してめげずにベルに攻撃を加え続ける、それをベルは涼しい顔で受け切る。

 高速には神速を持って、二人ががりで来るのであればその倍の4連撃を持って迎撃。

 そんな稽古(洗礼)が二時間弱続き、彼女たちは等々その白い肌を地面に着け、滝のような汗を流し、地に突っ伏してしまった。

 

「今日は、この辺にしましょう!!フィリア祭までは後二日あります。短い期間ですが、それまでに出来うる限りの事をしましょう!!!」

 

「……あり…がとうね…ベル君…だけど私達は少し…休ま…「ガクッ!!」ってあ!!リューが倒れた?!」

 

 先程までは死にそうなくらい肩で息をしていたアリーゼだったがリューがその前に倒れてしまい、それを見てアリーゼは一瞬で元気を取り戻した。

 

「もう!仕方ないわね、ベル君、リューをアストレア様のところまで運んでくれる?私達はもう動けそうにないから…」

 

 アリーゼがそう言いながら輝夜とライラに目を配る、そこには今にも倒れたリューを罵倒しそうで、それでもできないことを悔しがる輝夜と、「ふざけんな!!」とベルの方を見て吐き捨てるライラの姿があった。

 

「分かりました、それじゃあリューさん、ごめんなさい」

 

 ベルはヒョイッとリューの華奢な身体を持ち上げる、レベル7のステイタスも相まってリューの身体は羽根のように軽いとベルは内心思っていた。

 そうしてベルはアストレアの居るベランダにリューを寝かせ、精霊の力を使い僅かに体力を回復させる。

 

「あら、それは何?」

 

「おまじないみたいな感じです、少しぐらいなら体力も回復すると思います」

 

「あら!それは随分便利ね!!それじゃあ私も稽古に参加しましょうかね。ベル、相手をお願い出来る?」

 

「へぇ?俺ですか?!」

 

 アリーゼと輝夜は目を見開き、すぐさまベルに憐憫の目を向ける。

 それに対してベルは「え?何事?!」と事態を把握しきれていなかった。

 そんなベルを横目にアストレアはリューの使っていた木剣を手に取りベルへと向ける。

 

「私は確かに神の力(アルカナム)は使えない、だけど私はそれでも超越者(デウスデア)なのよ、そんな私が相手で()()は不満かしら?」

 

 その時にベルは息を呑んだ、確かにアストレアは強い、神の恩恵(ファルナ)もなしに下級冒険者を相手にすることなど容易だろう。

 だが今回は違う、相手は都市最強の一人でありレベル7の剣士。

 土俵は同じ、だけどベルは目の前の神を相手に勝てる未来が見えなかった。

 だからこそ―――

 

「―――はい、お願いします」

 

 先程よりも明らかにベルの様子が変わる、ギアが一段上がり、だがステイタスの力は使わず、木剣を構えるアストレアと正対し、ベル自身も木刀を構える。

 両者隙のない完璧な構え、それを崩したのは…いや、あえて崩したのはアストレアだった。

 

「え…―――はァ!!」

 

「えぇ、それが正解よ」

 

 その隙がわざとである事は明白、それでもベルは攻めた、自身が守りに入れば弱いのをベルは知っているから。

 その一切の雑念のない攻撃をアストレアはいなすように木剣を横に振る、たったそれだけでベルの攻撃はその勢いを()()()()

 

 それでも攻撃の手を一切緩めることなくベルはアストレアに剣戟を叩き込み続ける。

 その剣戟にアストレアは笑みを浮かべながらも、その実内心では少し冷や汗をかいていた。

 

(あれ?輝夜達との稽古みたいな感じで挑んだから、この子普通に私を倒せるぐらい強い?!)

 

「―――!!!」

 

 アストレアの僅かな心境の変化をベルは見逃さなかった、僅かだったがアストレアの剣撃が強まる、その勢いは徐々に増していく、それに対してベルは冷静に、そして無慈悲な一撃を叩き込む。

 

「―――ハァア!!!」

 

「――フフッ!!」

 

 だが、ベルの剣がアストレアの首筋を捕らえる直前に、ベルの木刀はその手から弾き飛ばされる。

 

 それはアストレアがただ弾いた、それだけだったのに、ベルにはそれが何か理解できた。

 

(まさか…?いやでもこれを使うのは…僕は一人しか知らない!!)

 

 それはまさに絶対防御だった、思い返せば全ての攻撃が紙一重でいなし続けられた、それはアストレアに反撃する余裕がないと思っていたからだった。

 だが違った、これは洗礼。

 強者を更なる高みへと至らせるための儀式。

 ベルは酷い思い違いをしていた、アストレアは自分より強い、それは分かっていた、だがそのレベルを理解していなかった。

 

「貴方と私では、一つ世界が違う、この意味が分かるかしら?」

 

「―――?!」

 

 ベルはその一言に声がでなかった、『世界』が違う、これ以上ない程の屈辱、ただベルにとってそれは絶望ではなかった。

 

「はい――なら、貴方に勝たせてもらいます」

 

「フフ――そう、なら私の『技』をモノにするのね」

 

 

 僕にはあの人やアストレア様の使う『絶対防御』は出来ない、正確には真似は出来る、だけどどうやっても自分の長所を潰す。

 だからこれは僕だけの『技』、数多の『技』を見てきた僕が生み出す『技』だ。

 

 

「――ハァァァア!!!!」

 

 ベルの攻撃が先程よりも数段速くなる、だがその一撃を必ずギリギリで防御するアストレア。

 両者の間には既に幾多の剣戟が繰り広げられていた。

 

「凄い…、あのアストレア様相手に剣術で渡り合うなんて?!」

 

「凄いですアストレア様、クラネルさんも凄いのですが…やはりアストレア様の方が上…?」

 

「お前はつくづく阿呆だなリオン、お前はあの男の何をみていた?」

 

「輝夜?!何を…現にクラネルさんは推されています!!」

 

 輝夜の言葉にリューは食い気味に言う、それを見た輝夜とライラは頭に手を当てながら言う。

 

「あのな、あの兎は本来は()()()だろ?それをまだ使ってねぇんだよあいつは、それにあいつの底はまだ見えてねぇ」

 

「ライラの言う通りだ、それにあの男にはアルフィア(あの化物)と同じ技がある、それを使わないということは、奴にはまだその余裕があるというわけだ」

 

 輝夜は言う、それは未だ【静寂(せいじゃく)】のアルフィアと【剣聖の英雄(アルゴノゥト)】ベル・クラネルしか成し得ない技術。

 見た技をオリジナルと同じ威力かそれ以上の威力で扱う類稀な天稟を持つ二人にしか赦されない人知超え(才能)

 ベルはまだアストレアの剣戟を真似ていない、今のベルは誰の剣技も真似ずに自身の力と経験を持って新たな剣技を生み出そうとしていた。

 

 確かに僕には余裕がある、ただそれは精神的な意味であり、肉体的には余裕がなかった。

 アストレア様の剣撃を見切り、そしてその全てにカウンターを返す、これをやってようやくアストレア様の絶対防御を乗り越えられるという確信が僕にはあった。

 苦節五度、僕がオッタルさんと戦った回数、そして四回目にしてようやく勝負が着かなかった。

 その剣戟は何度も見た、何度も手を焼かされた、一度も突破出来たことなどない、それでも僕がオッタルさんに迫れたのはひとえに速度だった。

 他の追随を赦さない圧倒的速度、六度の限界を超え、ステイタスの上限を破り捨てて、そうしてようやく僕はオッタルさんに並び立った。

 だから分かる、この(ひと)は違う、僕のような『速度』でのゴリ押しではなく、オッタルさんのような『力』による蹂躙でもない、あらゆる技を最小の動きで捌くオッタルさんとは違う『静』の絶対防御。

 理解はした、なら後は超えるだけだ!!

 

「――そう、答えは見えた?」

 

「はい、超えさせて貰います!!」

 

「フフ、私はそう簡単には超えられないわよ」

 

 

 そこからのベルは凄まじかった。

 アストレアの剣撃の一撃一撃を捌き、そして対処する度にベルの剣撃は威力と精確さを増していった。

 アストレアもそれに劣らない速度と技量を持って対応、両者の間に千以上の剣戟が繰り広げられた頃。

 既に外は昼を過ぎる頃だった、何度かのレストを取りつつも、ベルの集中は途切れるどころか更に深い集中へと入る。

 

 

 思考はなかった、その時間すら惜しい、頭で考えるくらいならその時間を削って本能で剣を出したほうがいい。

 

 アストレアの剣がベルの剣を捌き続ける、だがベルの剣はその度にその鋭さと精確さを増し続ける、そして…。

 

「―――届いたわね、私に」

 

「――はい…始めて?ですよね」

 

 「ええそうよ〜」なんてどこか抜けた声を出すアストレア、それを見てベルも気が抜けたのか顔が優しくなる、先程までの険しい顔はどこへやら。

 

「でも…今回は引き分けですかね」

 

「いいえ、そんな事ないわ、貴方の剣は私の喉を貫いたでしょう、でも私の剣じゃ貴方の脇腹を突き刺すのが精々でしょうね」

 

 ベルの木刀はアストレアに至ろうとしていた、それに引き換えアストレアの木剣はベルの脇腹を捉えるに至っていたが、本当にその先へ行ったとき、どちらが致命傷かは語る必要とないだろう。

 

 

 その後、ベルは引き続きアリーゼ達に稽古(洗礼)を浴びせ続け、ベルは先刻の戦いで身に着けた技を使い四人を圧倒する。

 そして外もようやく夕暮れ、そうしてベルは帰る…筈だった。

 

「何で俺ここにいるの?」

 

 ベルは既に思考を放棄しかけていた、稽古が終わり、ホームに帰ろうといざ足を運ぶその時、アストレアに呼び止められ「ご飯食べてけば〜」という一言に吊られ、何故か自然な流れでベルがご飯を要していた。

 

 何で?ご飯を用意するのはいい、そこは全然いいのだ。だが何故僕はこの女の園みたいな空間に居るのか?

 

「俺…、何でここに?」

 

「だって〜、ベル君のご飯美味しいんだもーん、良いじゃない!!どうせロキからは許可は下りてるんでしょ?」

 

「はい、それはそうですけど」

 

 ここに来る前、昨日の時点でロキは「アストレアん所やろ?そこならええよ、地域貢献や地域貢献」などと言って快諾、アイズはロキを今にも喰い殺そうという勢いで睨見つけているのを横目にベルはその場を逃げ…損ねた。

 

「それに、お話もあるしね」

 

「はい?お話とは?」

 

「昨日くらいかしら、【美神の眷属(フレイヤ・ファミリア)】が総出で遠征の準備をしているらしいのよ、それも都市外にねぇ」

 

「それって…、よくあの『豚』が了承しましたね」

 

 オッタルとベルは都市唯一レベル7、それが持つ意味は言わずもがな、故にその二人は都市外への外出が基本的に禁じられていた。

 オッタルの場合はフレイヤの我儘により何度も都市外に出ることがあるが、ベルはその逆で都市外に出ることは片手で数えるほどだった。

 そのレベル7(オッタル)を都市外に派遣する意味、ベルは思考を重ね、そして答えを出す。

 

「何か…厄介事ですね、それもオッタルさんが出張るってことは、フレイヤ様も…何か企んでる?」

 

「そうね、あの女神の考える事はよくわかんないけど、まぁ私達はとりあえずフィリア祭の事を考えないとねぇ」

 

 ベルの言葉にアリーゼが答える、元々フレイヤは良くも悪くも不干渉を貫いてきた(一人を除いて)、そんなフレイアがわざわざギルドの強制依頼(きょうせいクエスト)をこなす理由、それが分かるのは少し先のお話。

 

「クラネルさん、そう言えばあの後【剣姫】はどうでしたか?」

 

 そんな中、神妙な赴きでリューはベルに昨日のことを聞く。

 ベルにとっては何でもないがリューにとってはとっても大事な事だった、あの剣姫を怒らせた、リューはそのことをとても気にしていた。

 

「別に、アイズはこれと言ってリューさんに何かしようとは言ってなかったですね。まぁその代わりに俺がアイズの玩具になりましたけど」

 

 ベルは少し振り返りながら笑う、昨日の血涙を流すが如くベルを抱き締めるアイズ、締めすぎて危うくベルは天に滅されるところだった。

 

 

 

 

 

 そんな雑談を繰り広げながらベルとアストレア・ファミリアの特別稽古も最後の日が来る。

 今日までの3日間、その間で最も成長したのはリューだった、感情的にならず、冷静に戦況を見極める目を鍛える事が出来たからである。

 

「うん――いい感じです」

 

 ベルの褒め言葉と共にリューと輝夜の連撃が交わる。それを難なく受け切り、全ての攻撃に対して反撃を繰り出す。

 

(やはり!!)

 

(この絶対防御は突破出来ない?!)

 

 ベルの絶対防御、それはあらゆる攻撃を先んじて迎撃することで敵の攻撃の芽をつむ技。

 アストレアとの稽古で身に着けた反撃、そこにベル自身の類稀な才能に、今まで培った技量、それらを注ぎ込む事で生まれた新たなスタイル。

 

(この戦い方なら、いけるね。教えるのにも最適だし!!それに僕自身の鍛錬にもなる)

 

 まさに一石二鳥。ベルの攻撃を紙一重で躱すリューと輝夜、唯一手加減したベルと正面から斬り合えるアリーゼ、それらを効率良く後ろからサポートするライラ。

 ライラの取るに足らない一撃にも満たないそれが、確実にベルの次の手を絞っていった。

 

(ライラさんの技、あれでかなり僕の技が絞られる、かなりやり辛い)

 

「―――ハァァ!!!」

 

 アリーゼの咆哮と共に剣がベルの心臓を捉える、輝夜とリューが生んだ隙、ライラの計算されたサポートによる連携、そして最後までベルと正面から斬りあったアリーゼ。

 彼女達の技と度量が、確かにベルを追い詰めた。

 

(うん、物凄く成長してる、だから―――もう一段階上げよう)

 

 だが、それすらも防御し反撃される。絶対防御ならぬ『絶対迎撃』が彼女等の連携を正面から斬り伏せる。

 この連携を見るのは初めてじゃない、既に一度見た、それで十分、対策を講じるのには十分だった。

 

(この連携を…?!)

(まだ一度しか見せてないのに?!)

(この男…何処まで?!)

(こいつ…これでも崩れねぇのかよ!!)

 

 四者四様、それぞれの思考が彼への畏怖の念へと変わる、そしてその隙を都市最強(ベル)が逃すはずも無く、四人に対して痛烈な一撃を加える。

 

「「「「―――――ガッ!!!!」」」」

 

 ノックアウト、ベルの一撃に意識を刈り取られ、その場に突っ伏してしまう。

 それを見たアストレアはガーデンベンチから腰を上げ、打ち上げられたクジラの様にうつ伏せで倒れるアリーゼ達に木剣で喝を入れる。

 

(あぁ…アストレア様じゃ運べないよね?ここは僕―――――――――――え?!)

 

 盛大な一撃、その一撃を喰らって最初に起き上がったのはアリーゼ、そして少し遅れて輝夜とライラが起き上がる、そして先刻の一撃で更に深い深淵へと意識を落としてしまった一人の哀れなエルフは輝夜に罵倒されながら室内へと運ばれる。

 

「さぁベル、剣を構えなさい。今日で最後ね、貴方のおかげであの子達も成長した、なら後は貴方が成長する番よ。今日までの3日間で貴方は何を掴んだのかを――見せてもらうわ」

 

「――――はい!!」

 

 ベルは静止状態から一気に加速する、ステイタスの力を使ってないのにも関わらず、その速度は下級冒険者にも引けを取らなかった。

 その高速の一撃を、紙一重で躱しベルに反撃を加えるアストレア。

 ベルも負けじと剣を振るう…だが、アストレアの絶対防御を今ひとつ超えきれなかった。

 ベルの大振りには木剣を傾けて勢いを殺し、ベルがその反動を使い剣を振り上げると、それを読んでいたかのようにアストレアは眉一つ動かさずに身体を後ろに傾けて躱す。

 

 その攻防は開始数分で既に百合(ひゃくごう)を越えていた、何度も攻撃の手を緩めずに挑み続けるベル、それに対して痛烈な洗礼を浴びせ続けるアストレア。

 その攻防に、一つの歪が生まれる、それは『慣れ』だった。

 

 ベルは手加減して稽古を付けるのには慣れていた、だがステイタスの力を使わずに戦うのには今ひとつ慣れていなかった。

 それはこの数日で慣れるものではなかったが、そこは第一級冒険者、数日もあれば慣れが来る、そして『器』と『感覚』が一致した時、ベルの剣がアストレアに届き始める。

 

(来た?!――これならいける!!)

 

(動きが変わった―――そう、慣れたのね)

 

 ベルの一撃が更に鋭さを増す、先ほどは受け流されだ大振りも今回は受け流しきれなかったアストレア、そこには大きな隙が生まれる。

 その隙をベルは逃すまいと一撃を加えようとする、それにアストレアは反射的に反撃を加える――直前。

 

(―――んな?!ここでフェイント!?)

 

「ベル、貴方には足りないものがある」

 

 そしてベルの吊り出された一撃は、アストレアの無慈悲な一撃によって終らされる。

 一瞬の攻防、一撃にすら満たない攻撃、その手札を最初から放棄していたベルと、常に懐にしまっていて重要な場面にのみ使ったアストレア。

 この戦いの敗因は―――。

 

「貴方には決定的に足りない物がある、それは()()()()よ」

 

 駆け引き、ベルはいつもしていた。都市最強の冒険者オッタルとの戦いでも、今回のアストレアとの戦いでも行なってきた…つもりだった。

 

「貴方は自身の『速度』に頼りすぎている、大方【猛者(おうじゃ)】への敗因もそれでしょう?速度で潰そうとして、それを猛者(おうじゃ)の絶対防御で防ぎ切られて…、それで負ける」

 

 正解だった、僕はいつも速度に頼っていた、無意識のうちにジュピターの『雷霆』を使うことが当たり前になっていた。

 だが違う、それは僕の力であって()の力じゃない、それに頼りすぎだ、だからこそ、それを封じられたこの状況に於いて決定打を持たない僕じゃ…アストレア様には勝てない。

 

「貴方が身に着けなければならないのは、『一撃に満たない攻撃』よ…、私にここまで言わせたんだもの、これくらいはものにしてね?」

 

 

「――はい!!!」

 

 

 そして僕は星屑の庭を出た、何でもアリーゼさん達は「このポンコツエルフには今一度『洗礼』を浴びせる必要がある、精神的にも肉体的にもな」との事。

 リューさん、強く生きてね。

 そして僕は今、冒険者通り、北西のメインストリートを歩いていた。

 そんな所に、目の前から金髪金眼の少女が現れる。

 

「――――――ベル?」

 

「んあ?アイズ…久しぶりだ―――なぁぁ?!?!」

 

 ベルはアイズに手を振ると、アイズはその金眼を潤ませながらベルに抱き着く。

 久しぶりの再会、と言ってもベルとアイズが別れていたのはたったの3日間、それでもまだ少女のアイズにとってはとても長かったのである。

 

「ベル……、もう帰ってこないかと思った」

 

「はい?俺はいつ改宗(コンバージョン)したんだよ…、俺はアイズの前から居なくならないよ(こんな子供を置いてどっか行ったら育児放棄で訴えられるわ!!!!)」

 

「ほんとに…?居なくならない…?」

 

「あぁ、当たり前だ!!俺がアイズとの約束を破ったことあるか?」

 

「………、私と一緒にお出かけする約束も、一緒に深層に遠征する約束も…、それに一緒に稽古をつけてくれる約束も、破った」

 

「…………、(ジュピター…、対抗策は?)」

 

『今回はない!!お主が悪いので、大人しく神罰を受け入れろ』

 

 剣聖は沈黙した、目の前の少女(剣姫)に抱き着かれ、そして今まで犯した業を前に、ベルは身動きを取れなくなっていた。

 

(アカン、今回は僕が悪い)

 

 

 そしてベルとアイズは都市のメインストリートを歩いた、その度に奇妙な視線を向けられたり、強さこそ正義(アマゾネス)の人達に熱い視線を送られ、それに対してアイズが凄まじい剣幕で脅し、それを見た神々は口元をニヤつかせていた。

 そんな中、いつも通りの賑やかさを放つ屋台がアイズの両目を射止める。

 

「あれは…じゃが丸君、それにあそこにいるのはヘスティア様?」

 

「ほんとだな、行ってみるか?」

 

「うん…、行く」

 

 アイズは慣れた様子でヘスティアに挨拶を交わし、ベルもその後ろから挨拶を交わす。

 ヘスティアとアイズは最早顔馴染みである、じゃが丸君狂信者のアイズにとって、美味しいじゃが丸君を作れるヘスティアは神にも等しい(神だけどね)。

 そんなアイズに連れ回されていたベルも、ヘスティアとはお互い顔馴染みになっていた。

 

「しかし君達は仲が本当に良いね、にしても今回は来るのが遅かったね、いつもなら遠征終わりはいつも二人で来ていたのにね」

 

「はい…私とベルは仲良し…です」

 

「そうですね、こうして二人で出掛けるのも久しぶりではありますしね、俺はその…入り用でして」

 

「ベルは…不良」

 

「んな?!少年君、まさかアイズ君以外に手を出したのか?!」

 

「出してないしアイズにも手を出してないし!!!!変な勘違いをしないで下さいよ…」

 

 アイズの爆弾発言に3大処女神の一柱(異性交遊取締委員会)は凄まじい剣幕でベルを責め立てる。

 そんな二人のやり取りを、少し遠巻きにじゃが丸君を食しながら見ていたアイズは思う。

 

 なんだろう、ベルがあんなに必死になってるのは、初めて見た。

 

 ベルにとってこれは由々しき事態、このままでは本当に生き遅れ確定(リヴェリアの再来)となる恐れが大いにあるからだ。そんな状態を未然に防ぐべくベルは今も必死に弁明を続げる。

 そんな事をしながらも、アイズはいつの間にかじゃが丸君をヘスティアから受け取っており、既にアイズの興味は目の前のじゃが丸君の美味しさのみにいっていた。

 

「それにしても…君は本当にじゃが丸君が好きだなぁ〜」

 

「モグ…モグモグ…」

 

「って、これはアイズ聞いてないですね、すみませんヘスティア様」

 

「んあ!?気にしてないよ、そんな事よりも聞いてくれ!!等々僕にも眷属が出来たんだ!!」

 

「そうなんですか?!それはおめでとう御座います」

 

 歓喜の声が響いた、ヘスティアは今のところ誰一人眷属がいない神としてそこそこ有名だった。

 善神ではある、それは疑いようのない事実、だがそれ以上に知名度が決定的になかった。

 それ故に眷属が一人もできなかったヘスティアに、遂に初めての眷属(ファミリア)が出来たのだ。

 

「ありがとう少年君!!まあと言っても()()とという形の方が正しいのかな?」

 

改宗(コンバージョン)はしたんですよね?」

 

「うん、と言ってもそれもほぼ無理矢理だよ、ソーマの所でね、彼等がその子にかなり酷い仕打ちをしていたらしくね、たまたまそれを路地裏で見て、んで保護したって理由さ」

 

 ベルとアイズの間で僅かに空気が強張った。

 【酒造の眷属(ソーマ・ファミリア)】とは、主神を崇める眷属達で構成されている訳では無い。その実、主神の造り出す『神酒』を崇めており、それを飲む為にのみ日夜都市を駆けずり周り金品を掻き集めている。

 

「それは…、少し厄介ですね」

 

「ヘスティア様…、その子は…大丈夫なんですか?」

 

 アイズは躊躇いながら聞く、それもその筈、ソーマ・ファミリアの構成員、何か裏があると思うのが自然な道理だ。

 

「大丈夫!!あの子は末端の構成員らしいからね、ソーマもすぐに…とはいかずとも了承してくれたよ!!」

 

「そうですか、それは良かったですね…、ベル?」

 

「……あぁ、少し嫌な予感がしてな…悪い、それでヘスティア様!!その子はどんな子ですか?」

 

「それがね!!小人族(パルゥム)の子なんだけどね、胡桃色の髪と瞳で、歳は幾つだったかな…?」

 

「ハハ!!それを忘れたんですか?でも分かりました、その子が何か酷い目にあっている所を見たら保護しますよ」

 

「うん…、私も出来るだけヘスティア様に協力する…」

 

「ありがとうね、少年君!!アイズ君!!その子の名前は『リリルカ・アーデ』と言ってね、もし僕の目の届かない所で酷い目にあっていたらお願いするよ」

 

「「はい!!」」

 

 炉の女神ヘスティア、僕のお祖父ちゃんとヘラ叔母さんが唯一と言っていいほど尊敬している神、「あの神は私が唯一手放しで尊敬している女神だ、もし彼女が下界に降臨したら、その時は気に掛けてあげてくれ」「あやつは儂が多分最も尊敬に値すると思っている女神じゃ」あの二人がそこまで言うほどの神物、そう思ってしまう僕は最初に会った時からヘスティア様とはよく話していた。

 そんな彼女に初めての眷属が出来たのだ、それは喜ばしいこと、だけど…。

 

(やっぱりきな臭い、あのソーマ様が…?酒造り以外の全てをどうでもいいと切り捨てるあの神…?)

 

『まあ、今は気にせん方が良いだろうな』

 

 そうしてベルとアイズはホームである黄昏の館へと帰宅する。

 そうして外が暗くなり、夜の帷が完全に降りた頃、アイズ達はベル等が作った夕食を食べていた。

 そんな中、レフィーヤが思い切ってアイズに話しかける。

 

「アイズさん!!明日私とフィリア祭を一緒に周りませんか?」

 

「…ん?別に明日は何もないからな、良いよ」

 

「――やったー!!」

 

 アイズの了解にレフィーヤは子供のようにはしゃぐ、それを見たティオナやティオネ等も一緒に周る約束を取り付け、四人は楽しく明日のことについて語り合っていた。

 

 そんな楽しい空気とは裏腹に、ロキ・ファミリアの執務室では重苦しい空気が漂っていた。

 そんな中、フィンがその重い口を開き言葉を発する。

 

「ベル、端的に問おう、あれは危険か?」

 

 

「少なくとも…、良好的な関係は結べない、あれらは全て()()()いる、それらを取り除く(すべ)は今の俺にはない」

 

 それは数日前、遠征最終日の事。突然の襲撃だった、あの穢れた精霊はやはり何らかの作為によって誘き出された、そう結論づけたのはロキ・ファミリアの主神ロキ、団長のフィン、副団長のリヴェリア、そして当事者であり恐らく最も精霊について詳しいであろうベル、都市最高峰の頭脳や知識を有する彼等が口を揃えて言う。

 それがあの穢れた精霊の恐ろしさを物語っている。

 

「穢れた精霊…仮にあれを穢れた精霊(デミ・スピリット)と呼称しよう、ベル…君はあれを何体までなら足止めできる?」

 

「三…四体が限界だ、それもそれは俺単体の時、誰かを守るのであればやはり二体か三体が限界だ…、悔しいがあれらは精霊の中でもそこそこの階位を有する、そしてもしあれが底ではないのであれば…恐らく俺一人では足止めは不可能だろうな」

 

 ベル単体だけなら問題ない、幾ら穢れた精霊(デミ・スピリット)がいようが足止めからの撤退ができる程度の力量差はある、だが仲間がいるのであれば話は変わる。

 

 

「あの広範囲攻撃は厄介だ…、そしてあれば尖兵、いわば囮だろうな、あの場にはもう一人の…俺の探知範囲内でも隠密を成立させる程の化け物が一人居る筈だ」

 

 ベルの探知能力、それは五感が最も優れている獣人ともためを張る程であり、そのなかでも聴覚に置いては獣人顔負けの感度をしている。そのベルを持ってして捉えきれない隠密を成立させる程の化け物。

 

「断言しよう、あれはレベル7(俺と同格)レベル8(それ以上)だ、でなければ説明がつかんだろう?」

 

「さあなぁ〜、スキルの可能性はぁ?」

 

「それもあり得るだろうが、それでもベルの探知を掻い潜るのだ、十分に警戒する必要があるだろうな」

 

「そうだね、それじゃああの精霊の『魔法』についての対抗策も考える必要があるね」

 

「それは俺の魔法でどうにかなるだろう、最悪は()()()を使う、それしかあるまい?」

 

 その一言にリヴェリアはその端麗な眉を細める、それを聞いていたロキとフィンも同じく眉間にシワを寄せる。

 

「君のあれは相当に強力だけど、その分精神力(マインド)の消費も半端じゃない、それを見誤って君を失うのは、派閥…ひいては下界の損失に他ならない」

 

「だが…、分かったよフィン。無論無理はしない、というかあれを出せば一定時間はそう簡単には死なないだろ」

 

「まあな、ベルたんのあれはマジでチートやからな、だけど…本当に最後の魔法だけは使ったらアカンで」

 

 そのロキの一言にベルは静かに頷く、そしてこの話は終わり、それを悟ったベルはフィンに向かって新たな疑問を挺する。

 

「そう言えばフレイヤ・ファミリアが総出で遠征の準備をしてるって、それも都市外に…、何か聞いてるか?」

 

「あぁ、とりあえず僕らは都市外への移動を禁止されたぐらいかな」

 

「なんだ、いつも通りですね」

 

「ベルたんも難儀やなぁ、ギルドのロイマルから『都市外への移動を特例を除いて禁止する』なんていう無茶を言われるなんてなぁ」

 

 これはベルがレベル7に成った時にすぐに言い渡された物だった。無論ベルはすぐにロイマンの所に行って恐喝…、やんごとなき御方であるリヴェリアと団長のフィンを連れて抗議に行く、そしたらロイマンが半泣きになりながら「頼む〜、そうでもしなければ夜も眠れんのだぁ〜」などと情けないことを抜かし、情に流されたベルは渋々それを受け入れる。

 

「全く…、あいつはどれだけエルフ(我々)の誇りに泥を塗れば気が済むのだ」

 

 リヴェリアが苦言を挺する、それにベルは苦笑しながら「別に俺は都市外への用事は基本ないですからねぇ」と返す。

 そうしてあらかた話が終わり、ベルは自室でゆっくりと眠ろうとした所、自分の枕がないことに気づく。

 

(ん…?僕って枕使わずに寝てたっけ?)

 

『うむ、分からんが…これはあやつしか居らんじゃろうな』

 

(アイズの奴…、まさか僕の枕を抱いて寝てた?)

 

 いつまで子どもみたいなことをしてるのか…、そんな事を考えながら僕はアイズを問い詰める為に食堂へと足を運ぶ。

 

「おい!!アイズ、お前俺のま―――」

 

「―――ベル?!ベルは明日のフィリア祭…予定あるの?」

 

「――んあ?!いやないが…それはそれと――」

 

「じゃあさ!!アルゴノゥト君も一緒に行こうよ!!」

 

 ベルの言葉にティオナが元気よく提案する、それを見てベルは「いつでも元気だなぁ〜」と思いながらも明日のフィリア祭に思いを馳せる。レフィーヤやアイズもベルが来るかもしれないという事実に目を煌めかせる。

 

「ああ、まぁそれは良いが―――」

「―――駄目やでベルたん!!明日は悪いけどウチに付き合って貰うわ!!悪いなぁアイズたん」

 

「んな?!ロキ…、何で…?」

 

「悪いけど入り用でな、ええか?ベルたん」

 

「それは良いが…、悪いな皆」

 

 ベルの言葉にティオナは「えぇ〜」と心底残念そうにする、それをティオネが叱咤しながら二人で自室に帰る。

 そうしてアイズとレフィーヤは二人でロキに抗議の目を向ける。

 

「何でですか!!!ロキ、別にベルさんじゃなくても…」

 

「そうだよ…ベルは久しぶりに帰ってきた…一緒にお祭りも回りたい」

 

 いや…お前はじゃが丸君を食べたいだけだろ、とは口に出さない、内心そんな事を考えながらベルはロキの真意を考える。

 そうしていると今にも泣きそうな顔でベルを見つめる一人の少女の顔が目にチラつく。

 

「ベル…嘘つき」

 

「えぁ俺?!お…俺が悪いんか?!(ぼ…僕ですか?!)」

 

「うん…ベルはいつも…約束を破る」

 

「んな?!俺がいつアイズとの約束を破ったと!!」

 

「沢山…あるよ、一緒に遊びに行くのも、じゃが丸君を一緒に食べ歩くのも、去年の聖夜祭を一緒に過ごすのも、それに深層に一緒に遠征するのも…、もっと前には―――」

 

「―――やめるんやアイズたん!!!もうベルたん息しとらんから!!!」

 

 あまりのやらかしにベルは意識を強制停止(リストレイト)していた。そして目を閉じて、その口からは鮮血を流している…様な幻想まで見えるぐらには反省していた。

 

「ゴフッ!!一瞬三途の川でお母さんが手を振ってるのが見えた!!!」

 

「そ…そうかベルたん…んじゃまあ、明日は付き合ってな〜」

 

「え?……ロキが連れてくの…?」

 

 え?今までの流れ的に私達が一緒に行くんじゃ…、みたいな顔をしてロキに抗議に目を向けるアイズ、それを見て苦笑しながらも「今回は堪忍してぇな」と言ってその場を立ち去る一柱の超越者(デウスデア)。アイズは終始不服な顔をしていた。

 

 

 夜も暗くなり、明日のフィリア祭に向けて都市全体が活気付いていた、そんな中一柱の神は、その貧相な胸を晒しながらなんとも珍奇な建造物の前に立っていた。




今回はここまでじゃ!!!なんか遅くね?と思った人おるだろ、それは何故か?データが吹っ飛んで萎えた、それで一から作ってるとなんか駆け足になっちゃった

 ごめん〜ねm(_ _;)m

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