転生してから早10年、悪徳領主だったので堅実に生きます   作:NowHunt

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普通に嫌過ぎるこの人選

 前世の俺はただの大学生だった。あ、いきなりごめんね。

 

 大学生になって3年目を迎えカフェのアルバイトをしながら、そろそろ就活に備えて動かないとなぁなんて思っているどこにでもいる大学生のうちの1人。

 

 趣味は漫画やラノベ、アニメを楽しむこと。あとはバイト代をためてクロスバイクを買ったので休日適当に走ることが好きだった。他にバイト代はそれこそ漫画やラノベに費やしていた気がする。

 特に年代は気にせず、昔の名作、今流行っているもの問わず色々な種類を楽しんでいた。浅く広くってやつだ。

 とはいえ、大学生ではあるから金には限界があったため、さすがに全シリーズ買うのは大変だからたまに休日にネカフェでダラダラと読むこともあったな。

 

 まぁね、そんな読んでいる作品もけっこうあったからいわゆる異世界転移や転生といった作品にも触れることはあった。チートでー、とか追放系がー、とかそういうの。

 作品ごとに合う合わないはあったし、全部が好きとは言えない。ただ、ふと自分も妄想することはあった。実際に転生とかしたらどうなるのだろうと。

 

 結論――――もしもチートがあったり身分が良かったりしてでも行きたくないな、と切に思う。

 

 つっても中世風ファンタジーとかに限るんだけどね。衛生面も周りの便利さも充実している日本に住んでいるからこそ強く思う。ここから離れられねぇなぁ……って。

 これが日本×異能力みたいな世界観なら少しは体験してみたいとは思うけど、治安悪かったりするしなぁ……なんて考える。

 やっぱサブカルは見る分が一番楽しいのだ。今日は何を見ようかなってルンルンになりながら帰宅。そんな毎日。

 

 

 

 

 

 

 ところがある日、目が覚めたら、意識がハッキリしたら、赤ん坊になっていました。はれぇ……???

 

 

 

 

 

 

 最初は夢だと思った。自分が赤ん坊になっているのも全然分からなかった。ていうか赤ん坊の視界めちゃんこボヤボヤしていてなんも見えねぇな! これは赤ん坊泣くわ!

 みたいな日々が1週間も続けばさすがに諦めもついたよ。

 

 つっても、しばらくは受け入れることができなかったけど……。 

 

 そもそも死んだ記憶ないし、家族の心配や謝罪の気持ちであったり、身辺整理であったり、楽しみにしていた作品多かったのになぁって後悔であったり。

 なんで俺は死んだんだ……? 分からんなぁ。ていうか死んだのか? 転移みたいな形だったらギリギリ納得……できるかな? いやそれでもムリっすね。

 

 そんでまぁ、赤ん坊だと泣くことしかできないのがキツい。自分で動けないってこんな不便なんだな。改めて今の両親にも、前の世界で育ててくれた両親にも感謝。

 

 ていうかあれだね、転生作品に触れて思ったけど、実年齢と中身の精神年齢が一致してないってなんかこう、感覚が気持ち悪いな! 違和感バリバリだ。赤ん坊の姿しながら中身成人の男だって両親かわいそうたな……申し訳ない。せめて真面目に生きよう。

 

 

 

 

 ――――そんなこんなで生きること早10年くらい。

 

 

 

 どうやらここは中世風ファンタジーの世界観のようだ。地球なのかな……そんな情報がないから分からないのが現実だ。天体ではあるはずなんだけど。

 

 と思いながら生きていると、ふと違和感が生まれる。あれ、なんか色々と見覚え、聞き覚えがあるぞ……?

 

 

 というわけで俺の出自を振り返ってみる。 

 

 

 俺の暮らしている場所はオアシス都市『チーシャン』という。

 オアシス、つまりは周りは砂漠だ。そして、このチーシャンは多くの商人が行き交う都市と知られており、実際毎日かなり大人数が行き来している。規模としてはかなりデカい。

 なぜ砂漠にある、一介のオアシス都市がここまで大きく? 距離は離れているもののオアシス都市というのは他にある。だが、群を抜いてチーシャンはデカいのだ。

 だからある日そんな疑問が生まれた。その理由がこれだ。

 

「でっっっっけぇ……」

 

 俺の目の前に移るのは神殿のような建造物。それこそなんだ、直接見たことないもののパルテノン神殿といった厳かな雰囲気がある。

 

「これが迷宮……」

 

 

 ――――第7迷宮アモン。

 

 これがこの建物の名称だ。

 

 

 この名前を訊いてピンと来た人もいるだろう。そして、幼少期から俺はある物語を聞かされ育ってきた。それはある男の冒険譚。

 昔……まぁ時期はたしか俺が生まれたころ、第1の迷宮が生まれたのである。それは未知の文明、建築様式。決して壊れない不思議な素材。入り口らしきものは1つだけ。

 そんな摩訶不思議な存在を調査するため、様々な人材を調査に送った。結果として約12000人が帰ってくることはなかった死の塔となる。

 

 誰もその迷宮へと立ち向かう者はいなくなったころ――――ある少年が現れた。輝く財宝と蒼い巨人を従えた1人の少年が。

 

 その名こそ!

 

「シンドバッドかぁ……」

 

 

 ここまでくればもう疑うことなかった。ここは『マギ』の世界なのだと。

 

 

 

 マギ――――それは37巻もの巻数をも記録してある不朽の名作だ。

 

 創生の魔法使いマギの少年アラジンとそのときは日々理不尽な目に遭いながらも日銭を稼いでいたアリババが出会い、多くのキャラクターと様々な経験をする冒険譚。

 

 いやぁ〜〜〜〜……好きな作品ですねぇ。

 

 魔法を使えるっていう世界観も好きだし、ジンの金属器にも厨二心擽られる。魔装とかもう大好きだよね。思わずオリジナルの魔装とか妄想していたくらいだよ。呪文の名前も独特さがあり語感も良く、ちょいちょい口ずさみそうにもなった。

 元いた家にも全巻揃えていたし、完結している今でも数ヶ月に読み返すくらいには好きな作品だ。アニメも良かったしなぁ……頼むから全部放送してくれ。良いところで終わってんじゃねぇか。あ、俺はもう見ること叶わないけどね! 悲しいなおい。

 

 白龍のドロドロとした感情の話も良いし、アリババの折れながらもアラジンやモルジアナと一緒に立ち上がって、困難に立ち向かう構図も良い。

 何よりアラジンが友だちを見付けるという過程が丁寧に描かれていたのが読んでいて楽しかったぜ。

 

 一番好きなキャラは誰だろ……練白瑛さんかな? お姉さんキャラっていいよね。あとおっぱい。おっぱいならヤムさんか。

 

 

 とまぁ、マギという作品語りにはこの程度にしよう。

 ここでは俺が置かれている現状について話すとしよう。

 

 

 改めましてここでの私の名前は『ジャミル』です。よろしくどうぞ。

 

 

 ……え? 誰か分からない? 

 

 まぁ、1巻と2巻でしか出番ないですからね。

 あれですよあれ、モルジアナを奴隷としていて使っていたあの領主です……はい。思い出しましたか? えぇ、よりによってコイツですよ?

 

 普通にヘイト役っつーか、序盤のヤラレ役っつーか、みんなこのキャラ好きな奴いねぇだろっていうThe・自業自得で死んだキャラです。

 

 原作では学問の知識も剣術も中途半端。王族ではないが、一応は支配階級で育ったからかな。

 周りに対しても、そして特に奴隷に対しては容赦なく接し、原作では「最も優れた才能は、剣術でも学問でもなく奴隷使い」と言われてた悲しき存在。それが俺です。なにこれ罰ゲーム?

 いやね、一応はね?  インフラ設備や経営などの能力は高いらしいけどね? 原作読んでいる身としてはまぁヘイトしか溜まらないそんなキャラですよ。

 因果応報がたたり、原作では迷宮にて道連れにされ死んだキャラっすねぇ……。スカッとしましたねはい。

 

 

 そんなジャミルに転生したと知った俺はさらに絶望しました。咽び泣きました。

 

 

 あのさぁ、どないせーっちゅーねん。思わず関西弁もどきになる。

 そう気付いたのは10歳くらいになったころだった。いやジャミルって言われてもすぐパッと出てこないっすわ。

 

 それまでは先ほど語った通り、支配階級ではあったからきちんとした教育を受けさせてくれた。さすがにこの世界の知識がなさすぎるので真面目に受けました。帝王学とやらもきちんと学びました。剣術も今後のために真剣になり身に付けました。

 多分原作のジャミルよりかはちゃんとしたと思う。

 おそらく現領主である父親が引退するときにチーシャンの領主を任されるだろう。国王から任されている都市のため、それが何年先になるかは分かんねぇがな。

 

 さてと……このジャミルというキャラはいわゆる死亡フラグが立っているキャラだ。原作の所業を考えるとある意味死んだ方が世のためだろう。だけどさぁ、死にたくないじゃん? 一応俺ではあるんだからさぁ!?

 死ぬのは怖い。こんなの誰だって同じことを思う。キャラクターとしての罪はあれど、今は俺ぞ? まだ罪は犯してないぞ? いやまだってなんだ。今後ともやるつもりないっての!

 

 つまり、死亡フラグを避ける。これは重要だ。

 

 しかしながら、これを避けるのはわりと簡単。迷宮に挑まなければいいのだ。アラジンたちが来ても知らぬ存ぜぬを貫き通す。欲は見せない語らない黙っている。それだけだ。そうすれば、アラジンたちが攻略をしてくれるだろう。

 

「しかし……」

 

 それだけでは足りない。いくらアラジンとアリババが迷宮を攻略してくれるとはいえ、アリババの……いや、マギのヒロインであるモルジアナを奴隷として扱うことなんて俺にはできない! 当たり前だろ!

 

「そもそもさぁ……」

 

 ていうか奴隷ってのがムリだよね。現代の倫理観持っていると特に。

 これだけはガチで忌避感がする。街中で見かけるたびに嫌悪感が勝る。奴隷を買っている側もなんで当たり前だと思っているのか。ていうか奴隷前提で成り立っている箇所もあるし。うーん、これが時代ってやつか……。ギャップが半端ないぜ。

 

 というわけで――――改めまして、いずれ俺が領主になったらやること。

 

 

 1! まず迷宮には挑まない。

 

 これは絶対。死にたくないので。

 

 2! 奴隷制度の廃止。

 

 なお、迷宮攻略にはモルジアナの協力はアラジンたちには必要だ。ていうか原作展開からしてモルジアナには同行してもらわないと困る。

 とはいえ、当然ながらマギのヒロインである奴隷のモルジアナは見たくない。だが、いきなり解放するとモルジアナはおそらく同じ民族であるファナリスを探すためいなくなる可能性が高い。

 

 どうあっても原作展開がズレてしまう。という矛盾。

 

 だからこれに関してはどうするべきやら。

 

 

 目下やるべきことはこの2つだ。

 

 ていうか原作のジャミルはよくモルジアナを奴隷にしたな。ある意味感心するわ。

 戦闘民族であるファナリスなんてもし反逆されたら抵抗なんてできないわけだし。どこぞの海賊世界の奴隷のような抑止力もないからな。

 

 ……まぁいい。他にも考えることは多い。

 

 仮に俺が原作展開を無視して生き残れたとして、そこからの身の振り方をどうすべきかという問題もある。ほぼほぼ出番のない都市であって、一応原作でその後を触れられたこともあるが、所詮はその程度。

 理不尽な展開に巻き込まれたとして、まぁ……うん。抵抗できる力なんてあるわけない。迷宮には挑まない予定だからな。てか、アモン曰くジンの金属器を扱うための魔力も俺はかなり低いらしいので、そもそも論というやつだ。悲しい。せっかく転生したのだから内心興味はあったのに……。

 

 とまぁ、俺に都市を運営できる能力があるか分からない。ただ来たるべき時のためにできることを頑張るとしよう。

 あとはモルジアナの扱いよなぁ……どうなるんだろ。てか、俺の元にやって来るのだろうか。それすら分かんねぇ。

 

 

 

 前途多難だぁ……!

 

 

 

 

 




続くといいな
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