魔法少女のマスコットになったと思ったら、魔法少年(女装)だった話 作:らくべえ09
「あのラルヴァは、複数いるとなかなか厄介なんですが」
と、日野さんは言うた。
「らるば? スライムとちがうんですか?」
「ええ。大気中の
「マナっちゅうと、アレですか? つまり
「そうですね」
「――
軽くうなずく日野さんを見ながら、溝出がよそ見をしながら言ったで。
「……さあ、それは。魔法少女というか、魔法やマナがハッキリ確認されたのはせいぜい20年以内、おそらくは10数年前ですから。ですがまあ、そこはまた後で聞いていただくとして」
日野さんはそこでゴホンと咳払い。
「余裕があるのなら、他にも処理していただき案件があります」
「ふん」
溝出は冷たく笑って、
「まだるっこしい言い方をせず、他にも仕事があるから行けというんだろう」
「否定はしません」
「わかった。と、言いたいが……豆田、お前はどうする?」
「いやあ、わいは特に何にもしとらんから、別にええで」
「そうか、まあこなした数だけ報酬が増えるのなら、文句はない」
「では、お願いします」
ちゅうわけで。
わいらはさらに仕事を回されたわけや。
それで結局――
「……実に、見事なものですね」
日野さんはクールな顔に驚きを浮かべて言った。
『魔協』の建物……そこの待合所ン中や。
溝出が捕獲したモンスターの箱が10個以上積み上がっとる。
「殺すのはいいが……捕獲は面倒だったな」
変身を解いた溝出は座ったままでだるそうに言ったで。
わいもマスコットから人間に戻っとる。
特になんもしてへんけど、気疲れはけっこうしたなあ。
「しかし、見た目はアレやけどなんか動物とかとあんまり変わらん気がするで」
捕まっとるモンスターを見て、つい言ってしもうた。
「そうですねえ。このレベルだと確かに……。ですが、これでも新人はかなりてこずるんですよ、マスコットの補佐がなければ危険なほどに」
「そんなもんですか」
「ええ、そんなもんです。実戦で魔法を使うのも初めてだし、猫や犬サイズの生き物を殺すのは抵抗がある。いくらモンスターといってもね」
と、日野さんが言うたら、
「ハエやゴキブリは平気で殺すくせにな」
溝出は冷笑した。
しかし、こういう表情が
「いやあ、そら命には変わりないかもしれんけど……」
「――わかってる。誰しもそんなもんだ。余計なことだったな、忘れてくれ」
わいの言葉に、溝出は案外素直にうなずいた。
ふーん。
冷たい感じがするけど、そんなに悪いヤツでもないんかもしれんで。
しかし……。
それにしてもや……。
「こうして見ると、壮観ちゅうか……」
わいは捕獲されたモンスターを見ながら首をひねった。
最初のスライム……。
ラルヴァとかいうのをはじめ、色んなのがおるで。
鳥とか犬みたいなの。
口だけの蛇なんか芋虫かわからんようなの。
それはもうバラエティーに富んでるわ。
ヘビイモムシを見ながら日野さんは、
「最後に捕獲したコレですが、正直新人には荷が重いレベルなんです。しかし上層部は、あなたがたなら十分対処可能だろうと判断しました」
「ほー。そうなんですねえ……」
そういや、他のが複数やったのにこいつは一匹だけやったな。
サイズもけっこうでかいし。
しゃーけど、溝出があっさり捕まえたんで、ようわからんのやけども。
「しかし、これなんですか? 虫?」
「生物学的には……よくわからない、そうです。とりあえず、ノヅチと呼称されていますが」
「ほえー」
どっかで聞いたような名前や。
妖怪とかのアレやったかな?
「しかし、危険度の低いものでもこれだけこなせば、報酬もかなりの額になります。現在そっちの計算もしていますので、もう少しお待ちください」
「そうか。時に……。こいつらを1回始末してどの程度のものになる?」
「――そうですね」
溝出の質問に日野さんは少し考えて、
「一番難易度の低いモンスターで言うと、1体捕獲するごとに大体5千円ですか」
「う~~ん?」
なんか、高いような低いような。
えらく微妙な値段やのう?
「といっても、これは低ランクの中でも本当に代表的な新人向けのモンスターの場合です。新人の場合、下手な駆除より捕獲のほうが簡単なので」
「まあ、わかる気もしますねえ」
わいはうなずく。
「ただ、あなたがたが相手をしたのは、ランクの低い中でも攻撃性があり比較的危険度の高いモンスターばかりです。なので……あまり確かなことは言えませんが、安く見積もっても、合計50万くらいでしょうか」
「ごじゅうまん……なんか、一気に
「数も多いですし」
「とすれば、二人でわければ25万か。まずまずだな」
溝出は微かに笑って、髪の毛を撫でた。
ううーん。
こうすると美少年はホンマに絵になるなあ。
悔しがるとか、嫉妬する気にもなれんわ。
「――ちょっと」
わいが感心してると、知らん声が聞こえた。
振り向くと、
「そいつら、誰です?」
あんまり友好的とは言えん雰囲気の女子が一人。
型に、リスみたいな動物がのっとるけど……。
んん? あ、あのリス。
マスコット……やな? なんか気配でわかったわ。
これもマスコットの能力ちゅうやつ?
で、女の子や。
茶髪ちゅうか、ブラウンの髪をポニーテール。
よう見たら瞳は緑色
漢字にするなら、緑よりも翠のほうが似合いそうや。
「ああ、こちらは先日新しく入った……魔法少女になる溝出さん、とそのマスコットをつとめる豆田さんです」
日野さんはわいらを紹介してくれた。
そしたら、
「マスコット? 人間に見えますが……」
わいをジロッと見ながら、ポニーテールさんは言うたで。
やっぱり友好的な感じやないなあ。
「それで、そちらは……」
今度は不思議そうに溝出を見たけど、わいの時に比べると態度が柔らかいな。
まあ、こういうのは慣れてるけど。
「……」
溝出のほうは、ただちょっとだけ視線を送っただけ。
かと思ったら。
「断っておくが、俺は男だ。肉体的にも、性自認的にもな」
「――え?」
ポニーテールさんはギョッとした顔に。
いや、服装でわかるやろ? と思ったけど。
そういえば、女子がスカートやなくてスラックスの制服を着る場合もあるんやな。
うん。
確かに、そうすると溝出の見た目で間違えるのも無理ないわ。