サポート科、分倍河原灰斗   作:うめけ

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複製

サポート科実習棟は朝から工具音が響いていた。

 

ギュイイイン……カンカン……

 

普通科やヒーロー科とは違う。サポート科の朝はうるさい。

 

「おはようございます!!」

 

勢いよく扉が開く。発目は今日も元気だった。両手いっぱいに部品を抱えている。

 

「重そう」

「重いです!!」

「じゃあ何でそんな持ったの」

「ロマンです!!」

 

その時、近くで作業していた男子生徒がおそるおそる話しかけてくる。

 

「なぁ……人も複製できるって本当?」

 

周囲が少し静かになる。昨日誰かが噂していた。

 

《分倍河原の個性、人間も増やせるらしい》

 

という話を。灰斗は少し考えて

 

「できる」

 

空気が止まる。

 

「えっ」

「マジ?」

 

ざわつく周囲。発目だけは目を輝かせた。

 

「すごいですねぇ!!」

 

反応が軽い。男子生徒が引き気味に聞く。

 

「いやでも……危なくない?」

「危ない」

 

周囲がさらに静かになる。灰斗は普通に説明した。

 

「人格も複製される」

「人格!?」

「記憶もある」

「怖っ」

「でも一時間で泥になる」

「……」

「不安定だから、あんまりやらない」

 

発目が腕を組む。

 

「なるほどですねぇ」

 

何か考えている顔。完全に研究者の目。

 

「朝から何の話してんだ」

 

現れたのはパワーローダー 。周囲が少し姿勢を正し、男子生徒が慌てて言う。

 

「いやその……分倍河原の個性の話で……」

 

パワーローダーは灰斗を見る。数秒沈黙し……

 

「……扱いは慎重にな」

「分かってます」

 

本当に分かっているのか、少し怪しかった。

 

「複製個性は便利だ。だが……境界を間違えると危険だ。特に人間複製はな」

 

重い言葉だった。

 

「だからあんまり使わないです」

 

パワーローダーはそれ以上言わなかった。

 

 

 

 

 

 

授業が始まった。今日の課題は《サポート装備基礎設計》。各自実用性重視の装備を制作する。発目は当然のように巨大装備を書き始めた。

 

「実用性どこ」

「ロマンは実用性です!!」

 

違う気がする。灰斗は静かに設計を書く。

 

《使い捨て拘束ワイヤー》

 

軽量で簡易な量産前提。発目が覗き込む。

 

「また消耗前提ですねぇ」

「壊れるし」

「でも割り切りすごいです」

「複製した物も、どうせ消えるからそういう考えになってる」

 

当たり前みたいに言う。近くにいた数人が少しだけ複雑そうな顔をした。

 

“消えるから使い捨て”

 

合理的でいいと思う。

 

 

 

 

 

 

「――という訳で本日の課題は実地運用まで行う」

 

教壇前でパワーローダーが腕を組む。

 

「ケケ……作って終わりじゃねぇ。実際に使って問題点を洗い出せ」

 

サポート科らしい授業だった。周囲の生徒達が工具を持って移動を始める。

 

実習フィールド。障害物、瓦礫、簡易戦闘区画。

 

「燃えてきましたねぇ!!」

 

発目が大量のパーツを抱えている。嫌な予感しかしない。

 

「何作ったの」

「超高速移動補助脚です!!」

「転びそう」

「転びません!!」

 

数秒後、ドゴンッ!!壁に刺さっている。

 

「……転びましたねぇ」

「うん」

 

その横で灰斗は静かにワイヤーユニットを並べていた。細く、軽く、最低限。周囲のサポート科生徒が少し興味深そうに見る。

 

「シンプルだな」

「でも持ち運び楽そう」

「複製前提だから」

 

ボコッ。

 

追加複製でワイヤーユニット増加。さらに増える。

 

「うわ便利……」

 

生徒の一人が呟く。生徒達が順番にフィールドへ入り、発目は爆速で転倒した。

 

「速すぎますね!!」

「制御しろ!!」

 

パワーローダーの怒鳴り声。一方灰斗は

 

ボコッ。

 

ワイヤーユニット複製、投擲。

 

シュッ!!

 

ワイヤー展開、障害物固定。さらに別方向で拘束、補助。動きが無駄なく速い。

 

「おお……」

 

周囲から感心の声が漏れる。派手さはないが実用的だった。

 

「合理的すぎるな……」

 

生徒の一人が呟く。

 

「使える方がいい」

「まぁそうだけど」

 

そこへ発目が壁から復帰してくる。

 

「でもロマンが足りません!!」

「壁壊してたじゃん」

「挑戦の結果です!!」

「雄英の壁かわいそう」

 

その時灰斗が投げたワイヤーユニットの一つが、泥になって崩れる。

 

ボトッ。

 

複製品の限界が来た。近くにいた女子生徒が少し驚く。

 

「……やっぱ不思議」

 

灰斗は普通に拾う

 

「複製品だから」

「便利だけど毎回消えるんだよね」

「うん」

 

女子生徒は少し考える。

 

「なんか寂しくない?」

「……?」

 

理解していない顔だった。パワーローダーが近付いてくる。

 

「分倍河原」

「はい」

「お前“消える前提”に慣れすぎてるな」

 

静かな声

 

「そういう個性ですから」

「まぁな」

 

パワーローダーはワイヤーを拾う。

 

「だが、消えるから雑に扱っていい訳じゃねぇ」

 

灰斗は黙る。周囲も静かだった。

 

「サポート科はな、使い捨て装備も普通に作る」

 

ワイヤーを軽く振る。

 

「だがそれでも“どう使うか”は考える」

 

その視線が灰斗へ向く。

 

「お前は合理的だ。だが合理だけだと時々見落とす」

 

少し考え込む。正直まだよく分からなかった。

 

 

 

 

授業終了後。

 

夕方の実習棟で灰斗は一人、壊れたワイヤーユニットを見ていた。

 

“消えるから”。

 

それは事実だ。でも“だからどう扱ってもいい”。そこは少し違うのかもしれない。ぼんやり考えていると。

 

「悩んでます?」

 

発目がいつの間にか隣にいた。

 

「少し」

「いいことです!!」

 

発目は笑う

 

「発明家は悩んでる時が一番伸びます!!」

「………発目さん、いつも悩んでる?」

「毎秒悩んでます!!」

「大変そう」

「楽しいですよ!!」

 

即答で灰斗は少しだけ笑った。

 

 

 

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