千年後のグルメ時代   作:鳩夜(HATOYA)

102 / 102
間話 アマジンの検査報告

 第二宇宙研究所。

 秘匿調査資料。

 

 対象者、アマジン。

 

 および出生時に同地域・同時期のグルメ細胞安定処置を受けた者について、再調査を実施。

 調査対象は、出生時検査記録、ワクチン反応値、妊婦向け安定処置の原材料ロット、幼少期検診記録、学園入学以降の成長推移、グルメ細胞適応率、および戦闘・捕獲実技記録。

 

 結果。

 

 アマジンおよびその周辺地域の数値を調べ上げた結果、その地域特有の因子が存在することが判明した。

 因子は、通常のグルメ細胞ワクチン反応とは異なる。

 

 ただし、出生当時の数値としては、対象者間ですべて横並び。

 アマジンのみが突出していたわけではない。

 アマジンも、同地域の他対象者と同等の反応値であった。

 

 当時の検査担当医は、機器の揺らぎ、もしくは地域ロット由来の微弱な変動として処理している。

 

 異常値ではある。

 だが、危険値ではない。

 その判断自体に、大きな誤りは認められなかった。

 

・・・

 

 続いて、該当地域の対象者たちの現在を追跡調査。

 大半は、平均程度の成長を示している。

 

 身体能力、グルメ細胞適応率、食材耐性、捕獲実技、いずれも同年代の範囲内。

 特筆すべき異常成長は確認されない。

 

 数名に軽度のグルメ細胞適応優位が見られたが、いずれも進路、食生活、訓練環境の範囲で説明可能。

 つまり、同じ因子を持っていたとしても、それだけで対象者アマジンと同様の成長へ至るわけではない。

 

 この点は重要である。

 

・・・

 

 対象者アマジンの学園記録を確認。

 

 総合テスト、一位。

 食材基礎学、上位。

 グルメ細胞理論、上位。

 

 調理実習、並、もしくは時期によってはそれ以下。

 食材史、並、もしくは時期によってはそれ以下。

 

 特に調理分野では、本人の興味に反して技量の伸びは限定的。

 一方で、戦闘、捕獲、環境適応、危険食材への反応、瞬間判断、身体運用、食欲エネルギー操作に関しては、ほぼすべての学園最高記録を塗り替えていた。

 

 記録更新は一度ではない。

 

 複数回。

 継続的。

 かつ、短期間で著しい伸びを示している。

 

 教師陣の所見には、以下の記述がある。

 

『努力量が異常』

 

『食材への執着が強いが、単なる食欲ではなく、敬意に近い』

 

『戦闘訓練後も自主訓練をやめない』

 

『食没訓練中の集中力が高すぎる』

 

『捕獲対象をただ倒すのではなく、どう食べるかまで考えて動いている』

 

 以上の記録より、対象者アマジンの成長は、生まれ持った因子のみで説明することはできない。

 同地域同条件の対象者たちと比較して、発現差が大きすぎる。

 差異として確認できるものは、環境、本人の意思、訓練量、食への執着、そして地球のフルコースを巡る中で得た食材経験である。

 

・・・

 

 仮説。

 

 対象地域特有の因子は、単独では眠ったまま消える、または通常成長に吸収される程度のものであった可能性が高い。

 しかし対象者アマジンは、たゆまぬ努力と鍛錬、食義・食没の習得、地球のフルコース実食、そして極めて強い食への感謝により、その因子を継続的に刺激した。

 

 結果として、因子が反応した可能性がある。

 

 現時点で、対象者を単なる異常値、あるいは外部因子の器と断定することはできない。

 むしろ、報告者は以下の所見を残す。

 

 対象者アマジンは、異常な因子によって強くなっただけではない。

 強くなろうとしたから、因子が目覚めた可能性がある。

 

・・・

 

 追記。

 

 対象者は現在、センター実地確認のため、エリア1へ向かっている。

 第二宇宙研究所は、当該行動を黙認。

 メリスタ所長判断。

 

 理由は以下。

 

『止めるべきかどうか、判断材料が足りない』

 

『だが、あの少年はこれまで、自分で食材と向き合うことで答えを得てきた』

 

『センターについても、同じである可能性がある』

 

 以上。

 

 なお、対象者アマジンの現在値は、通常の成長曲線から完全に逸脱している。

 だが、その逸脱が破滅へ向かうものなのか、あるいは新たな美食屋の形なのか。

 結論は、まだ出ていない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

その美食屋、転生者につき(作者:苦笑いの妖精)(原作:トリコ)

トリコの世界を便利な3つのチートと共に生きていく。▼息抜きに書いた習作です。


総合評価:7033/評価:6.7/短編:14話/更新日時:2026年06月04日(木) 22:26 小説情報

グルメ界で、鹿でしかない(作者:トリコ世界の料理食べたい)(原作:トリコ)

起きたら背中に森が生えているシカだった。▼夢かと思ったが、しかしシカだった


総合評価:8676/評価:8.81/連載:5話/更新日時:2026年06月25日(木) 20:15 小説情報

夜食に薔薇の毒はいかが?(作者:キャンディマン)(原作:HUNTER×HUNTER)

別に彼奴みたいに、何かを欲しいと思ったわけじゃない。ゴミ溜めの中で笑って希望を持てるほど強くないから。▼何時か出ていく、それだけの場所でも、それなりに愛着がある奴等がいた。▼皆さんが死ぬのはそれが理由です!


総合評価:4956/評価:8.01/連載:7話/更新日時:2026年07月05日(日) 16:11 小説情報

【七色弓箭】で征くポックルに転生した男のハンター道(作者:レインボウ)(原作:HUNTER×HUNTER)

唐突に前世の記憶を思い出したポックル。溢れ出した原作知識は無垢な少年を絶望に落とす。迫り来る不運の絶頂、キメラ=アント、ザザンとパイクに作中最強格のネフェルピトーの脳くちゅ、前世の記憶と原作知識を駆使して走り出す少年は今、ハンターの道を選ぶ!▼アンチヘイトは念の為です。


総合評価:5982/評価:8.24/短編:2話/更新日時:2026年03月22日(日) 02:56 小説情報

落ちてきた地球外高度知的生命体とヒーローやることになった件について(作者:緑茶山)(原作:MARVEL)

多重転生し多数の前世の記憶を持つ高村優李の元に、ある日空から地球外高度知的生命体が落ちてきた。見るからに小さなシロクマの形だが、姿が似ているだけで別物らしい。▼そのシロクマによってマジカルパワーを得た優李は、魔法少女になる……ことは無かったが、なんやかんやでアベンジャーズの仲間入りを果たすことになる。▼真面目だったり不真面目だったり、わりかしシリアスにお送り…


総合評価:9836/評価:8.95/完結:101話/更新日時:2026年05月22日(金) 20:42 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>