センタービオトープ。
俺はガウンさんとメリスタ所長の三人で待機していた。
ブラウス。
はむまる。
ミルカ。
三人は第二宇宙研究所の安全な場所で待機している。
本当はブラウスも来たがっていた。
だが、今回は相手がグリーントロルだ。
しかも狙いがセンターである可能性が高い。
何が起きるか分からない。
メリスタ所長の判断で、三人には研究所に残ってもらうことになった。
「センターは俺たち三人だけなのか……?」
俺は周囲を見る。
広い。
本当に広い。
なのに、人の姿は俺たち以外に見えない。
「ああ」
メリスタ所長が頷いた。
「地球にいる最上位ライセンスの者は、それぞれのビオトープで待機している」
「それぞれ?」
「エア。ペア。アトム。アナザ。ニュース。アース。ゴッド」
地球のフルコース。
その各地。
「どこへ来ても対応できるように戦力を分けている」
「なるほど……」
「だが」
メリスタ所長が上を見る。
「ここへ来る可能性が一番高い」
「そうなのか?」
「センターだからだ」
「……?」
「星のフルコースであり、宇宙のフルコースの前菜でもある」
宇宙のフルコース。
俺は空を見上げながら聞いた。
「宇宙のフルコースって、この宇宙にある星々の一つ一つがそうなるのか……?」
「お」
ガウンさんがこちらを見る。
「鋭いやん」
「概ねそんな感じや」
「概ね?」
「星ごとに、それを代表する食材がある。全部の星に必ずあるわけやないけどな」
ガウンさんが腕を組む。
「宇宙のフルコース候補になるような食材を持つ星。その中から前菜、スープ、魚料理……そうやって選ばれていくんや」
「……」
俺は少し考える。
宇宙。
星。
その星を代表する食材。
それを集めて。
一つのフルコースにする。
「楽しみになってきた……!」
「お前なぁ……」
メリスタ所長が呆れた顔をする。
「今から敵が来るかもしれないのだぞ」
「分かってる。でも宇宙のフルコースだぞ?」
「アマジンらしいやん」
ガウンさんが笑う。
その時。
ガウンさんの表情が変わった。
「さて」
空を見る。
「話してる場合ちゃうで」
「……?」
「お出ましや」
遥か上空。
黒い塊。
最初は小さな点にしか見えなかった。
だが。
ゆっくりと。
確実に。
大きくなっている。
「母艦……」
メリスタ所長が目を細める。
「一機しかいないようだな……」
「一気には来んやろ」
ガウンさんが言う。
「どこかにおる八王に、一瞬でやられる可能性もあるやろうしな」
「八王……」
そうか。
地球にはまだいる。
あの化け物たちが。
「どちらにしても、母艦そのものは降りてこないだろう」
メリスタ所長が構える。
「来るなら小型機だ」
「……」
俺も空を見る。
黒い母艦。
そこから小型機が降りてくる。
俺もそう思っていた。
だが。
予想は外れた。
「……ん?」
母艦の一部。
何かがきらりと光った。
「なんだ?」
落ちてくる。
何かが。
一直線に。
地上へ。
「……でかい」
徐々に形が見える。
長い。
太い。
先端が尖っている。
それは。
まるで。
巨大な槍。
「なんやあれ……」
ガウンさんが呟く。
メリスタ所長の顔が変わった。
「伏せるんだ!!」
ドン!!!
大地が揺れた。
「うおっ!?」
俺は地面へ手をつく。
土。
岩。
木。
周囲の全てが跳ね上がる。
凄まじい衝撃。
耳が痛い。
「な、なんだ……!?」
土煙の中。
巨大な影が見える。
槍。
さっき落ちてきた巨大な槍が。
センターの入り口付近へ深々と突き刺さっていた。
「……」
ガウンさんが口を開ける。
「おいおいおい」
槍を見る。
「まさか、入り口からセンター行かれへんからって」
少し間を置いて。
「槍ぶっ刺したんか!?」
「力技すぎるだろ!」
俺も思わず叫んだ。
センター。
本来なら、入り口から進む。
そして食欲を吸われる道を通り。
エリア0へ辿り着く。
だが。
グリーントロルは。
その道を使わない。
地球そのものへ。
直接。
穴を開けた。
「破壊するぞ!」
メリスタ所長が走る。
「分かった!」
俺とガウンさんも続く。
巨大な槍。
近づくだけで嫌な感じがする。
メリスタ所長が手を伸ばした。
「待て!」
触れる。
「ぐっ!?」
メリスタ所長の腕から、一気に食欲が流れ出した。
「メリスタ!」
すぐに手を離す。
メリスタ所長が数歩下がる。
「……なんだ、これは」
顔色が少し悪い。
「エネルギーを吸われたのか?」
「ああ」
メリスタ所長は槍を見る。
「触れた瞬間だ」
ガウンさんが扇を伸ばす。
先端だけ。
槍へ触れる。
「……っ!」
すぐに引いた。
「こらあかんな」
「ガウンさんも?」
「一瞬で持ってかれた」
ガウンさんの顔から笑みが消える。
メリスタ所長が首を横に振る。
「いかん……」
巨大な槍を見る。
「とてもではないが触れぬ」
その時。
「メリスタ!」
ガウンさんが上を指さした。
「小型機や!」
母艦。
側面。
次々と開いていく。
「めちゃくちゃ降りてきよるぞ!」
「……!」
黒い小型機。
一機。
十機。
百機。
まだ増える。
「アマジン!!」
メリスタ所長が俺を見る。
「センターの入り口から中を見てこい!」
「え?」
「この槍がどこまで届いているのか確認する!」
「でも……」
「お前しか行けん!」
俺は二人を見る。
「二人で大丈夫なのか!?」
「はぁ?」
ガウンさんがこちらを見る。
「見くびってるんちゃうで!」
扇を構える。
「余裕や、こんなん!」
「ガウン。数は見えているのか?」
「言葉のあやや!」
「……」
俺は少し不安になった。
だが。
メリスタ所長も既に構えている。
「行け、アマジン」
「……分かった」
俺はセンターの入り口を見る。
「行ってくる!」
「ああ!」
「中を確認したらすぐ戻れ!」
俺は走った。
巨大な槍の横を通る。
近づくだけでも。
食欲が引っ張られる。
「くっ……!」
グルメスモック。
体を覆う。
そのまま。
センターの入り口へ。
以前。
一度通った道。
俺は再び。
エリア0へと向かった。