時系列は、第一部完結後――マザー・グリード討伐後となります。
そのため、最終話後の変化も一部含まれています。
※本編の続きとなる物語ではありません。第二部の投稿時期は未定です。
千年後の地球のフルコース
かつて、美食神アカシアが世界中から選び抜いた八つの食材――地球のフルコース。
千年前には、八王が支配する大陸の奥地や、生者が立ち入ることさえ困難な領域に存在し、そのすべてを食べることは、人類史上でも限られた者にしか許されない偉業であった。
しかし、グルメ界の開拓が進んだ現代では、その多くがIGOの管理下に置かれている。
生息環境を丸ごと保護する特別管理ビオトープ、希少種を絶やさないための繁殖施設、猛獣の動向を観測する監視衛星、ワープロードを利用した緊急避難網――。
千年前の美食屋たちが命を懸けて切り開いた道は、現在では次の世代へ受け継ぐための「食の遺産」となった。
もっとも、安全になったからといって、誰もが自由に捕獲できるわけではない。
市場に流通する養殖品や加工品とは異なり、ビオトープ内で自然に育った天然の地球のフルコースを捕獲し、センターを除きすべて実食することは、最上位美食屋ライセンス取得条件の一つである。
これは、単なる強さを測るための試験ではない。
食材を傷つけず、環境を壊さず、必要な分だけをいただく。
地球のフルコースを巡る旅は、美食屋としての知識、技術、判断力、そして食に対する敬意のすべてを問う、地球最大の美食屋試験なのである。
なお、千年前の地球のフルコースに関する記録は長らく失われており、アカシアの名や当時の捕獲環境についても、現代ではほとんど知られていなかった。
資料が大幅に更新されたのは、18歳にして最上位美食屋ライセンスを取得したアマジン氏が、自身の持つ千年前の知識をIGOへ共有してからである。
その知識量から、現在では美食屋であると同時に、千年前のグルメ史を研究する考古学者の一人としても扱われている。
各フルコースの資料
■名称
センター
■分類
前菜
■概要
地球深部に存在する、グルメ細胞の核とも呼ばれる伝説の食材。
無数の生命を生み出す源であり、わずかな量でも失われた肉体を修復するほどの生命力を持つ。かつては死者すら蘇らせる「究極の蘇生食材」として、その存在自体が長く秘匿されていた。
千年前、センターへ至るには、地球のフルコースを正しい順番で食べ、肉体を地球深部の環境に適応させる必要があった。
現代では各食材の研究が進み、専用装備や裏の世界を利用した移動技術も確立されている。しかし、センターだけは他の七品のような完全なビオトープ化が行われていない。
センターは地球そのものの生命活動から生まれるため、生息地を別の場所へ移すことも、人工的に増やすこともできないからである。
現在、地球深部へ続く経路の大部分は、グリーントロルの槍によって固定されている。これにより以前と比べれば到達難度は大幅に低下したが、地殻変動や高密度の食欲エネルギーに満ちた内部環境は、今なお地球上で最も危険な領域の一つである。
■現在の管理状況
地球深部全域を「地球生命核・永久保全区域」に指定。
センターそのものを囲い込むのではなく、地上から中心部へ続く経路と、周辺の地殻活動を常時観測する方式が採用されている。
グリーントロルの槍によって形成された進入経路は、複数の封鎖壁と食欲エネルギー遮断膜で区切られており、IGO会長権限、または地球代表会議の承認がなければ開放されない。
■管理機関
IGO地球生命核管理局
地球代表会議・特別食材保全委員会
IGO第二宇宙研究所・地球内部観測部門
■アクセス方法
原則として、エリア1の地下に設けられた「センター降下管理基地」から進入する。
グリーントロルの槍に沿って建設された地下中継基地を経由し、複数回の身体検査とグルメ細胞の安定確認を受けながら降下する。
緊急時を除き、ワープロードによる地球深部への直接移動は禁止されている。センター周辺では空間そのものが不安定であり、出口位置が地中へずれる危険があるためである。
■ビオトープ概要
センターには、一般的な意味でのビオトープは存在しない。
代わりに、地球深部の環境を一切改変せず、観測と進入制限のみを行う「非干渉型保全区」として管理されている。
周辺には高濃度の療水や、グルメ細胞を持つ未知の微生物群が存在するが、研究目的であっても地上への持ち出しは厳しく制限されている。
■一般公開状況
非公開。
センター降下管理基地の地上展示館のみ、一般見学が可能。
展示館では、千年前に使用された地球内部の予想図、グリーントロルの槍の観測映像、センターの成分を再現した非食用模型などが公開されている。
■捕獲方法
地球から自然にあふれ出たセンターを、生命活動を阻害しない範囲で採取する。
本体を切断したり掘り起こしたりする行為は禁止されており、専用の細胞膜容器を使用して、ごく少量のみをすくい取る。
採取量は一人につき一口分。ただ容器に移した後は急速に活性が落ちるため、原則として現地で実食する。
捕獲よりも、センターの前で食欲を制御できるかが最大の試験とされている。生命そのものを思わせる香りを前に、必要以上を求めない精神力が問われるのである。
■養殖状況
養殖不可。
過去にはセンターの細胞を地上で培養する計画も存在したが、地球から切り離された時点で通常の療水へ変質することが判明している。
現在医療用に利用されている再生液はセンターの構造を参考にしたものであり、センターそのものではない。
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■名称
ペア
■分類
スープ
■概要
エリア7に存在する、星のように輝く一対のスープ食材。
かつては「表裏一体の雫」と呼ばれ、猿王の一族が体内に蓄えた地球由来のスープとして知られていた。
千年前には、猿王バンビーナとの戦闘を避けてペアを得ることは事実上不可能であり、その捕獲には猿武の習得と、猿王に認められるだけの力量が必要だった。
現代ではその睾丸だけを残し、そこからペアの泉として湧き出ている。
■現在の管理状況
事実上養殖が非常に難しい為、
現在も変わらず厳重な管理体制。
また、かつて存在したという猿武の技術研究施設も増設された。
■管理機関
IGOエリア7生態管理支部
猿武技術研究所
■アクセス方法
交通機関であるキャンピングモンスターでペアビオトープへ行ける。
危険区入場口から零山脈を超え、元々100Gマウンテンがあった場所の中心へと向かう。
■ビオトープ概要
零山脈、元100Gマウンテン、産声の樹、など含んだ超広域ビオトープ。
ビオトープ内では絶滅したと思われた猿の生き残りが発見された。
■一般公開状況
ビオトープの管理地区のみ。
遠くから産声の樹の遠景観察などは楽しめる。
本物のペアは極めて希少であり、一般向けの試食会は数年に一度、自然回収量に余裕がある年のみ実施される。
■捕獲方法
ペアの泉から専用の容器ですくう。
持ち帰りは不可。その場で飲むこと。
■養殖状況
人工養殖は行われていない。
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■名称
アナザ
■分類
魚料理
■概要
エリア6の海域を泳ぐ魚。
アナザが泳いだ海には膨大な旨味が残され、その流れは地球上の海洋食材を育てる源の一つとされる。
危機が迫ると光を超える速度で魂の世界へ逃れ、移動中に無数の皮を脱ぎ捨てる。千年前、人間が調理していたアナザの多くは、この脱皮によって生まれた稚魚であった。
現代ではアナザに愛されたフワ爺という人物が中心となって、自身以外が出来る捕獲方法を研究している。
■現在の管理状況
エリア6全海域を複数の海洋保護区に分割して管理。
アナザの成魚を追跡する区域、脱皮した稚魚を回収する区域、一般漁業区域が明確に分けられている。
■管理機関
IGOエリア6海洋資源局
フワ爺
■アクセス方法
高機能のキャンピングモンスターで深海3万メートルまで潜る。
■ビオトープ概要
海中都市、ブラックトライアングル周辺海域を含んだ立体型海洋ビオトープ。
水質や温度を一定に保つのではなく、アナザが生み出す旨味の流れを妨げないことを最優先にしている。
人間が設置した観測装置も、アナザが接近すると海底へ収納される。
■一般公開状況
海上にあるアナザビオトープの巨大漁港周辺のみ
■捕獲方法
フワ爺に依頼するのが最も早い。
■養殖状況
稚魚の保護育成には成功しているが、完全養殖には成功していない。
人工海域で育てた個体は成長こそするものの、魂の世界へ移動する能力と、海へ旨味を与える性質を失う。
一般流通品は、天然の脱皮片から培養した旨味細胞を魚肉へ定着させた代替食材である。
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■名称
ニュース
■分類
肉料理
■概要
エリア5の食域の森で育つ、無数の肉が折り重なったような食材。
かつては鹿王の背に広がる森の中に存在し、アナザを食べて新たな味覚を得た者でなければ、その味を認識することすらできなかった。
ニュースを食べることで、人工的な裏の世界であるワープキッチンやワープロードを生み出す能力が開花する。
現代社会の長距離移動を支えるワープ技術の多くは、ニュースの研究から発展したものである。
ただし、一般的なワープ装置はニュースを食べていない者でも利用できるよう機械的に再現したものであり、自ら裏の世界を生み出す能力とは異なる。
■現在の管理状況
食域の森を「時間食材保全ビオトープ」に指定。
森の時間流が乱れないよう、機械式の観測設備は最小限に抑えられている。
■管理機関
IGOエリア5時間環境局
食域の森保全隊
■アクセス方法
エリア5外縁の「時間差調整都市」から、認証済みワープロードで食域の森入口へ移動する。
森の内部では外部との時間差が発生するため、入域者には体内時計を保護する時差固定器が配布される。
アナザを実食していない者はニュースを発見できないため、最深部への立ち入りは認められていない。
■ビオトープ概要
食域の森を中心とした、時間の流れそのものを保存する特殊ビオトープ。
区域によって植物の成長速度、光の進み方、体感時間が異なる。
一部には、外界の数分が内部では数か月に相当する場所もあり、道を外れた場合は救助までに肉体が老化する危険がある。
■一般公開状況
外縁部のみ公開。
時間差の小さい観察路では、数分で開花と結実を繰り返す植物や、極端にゆっくり歩く猛獣を観察できる。
ニュースそのものは、アナザ未実食者には味も香りも認識できないため、一般向け提供は行われていない。
■捕獲方法
極力泣かさないように近づき、肉を切り分ける。
もしニュースが泣いてしまった場合、猛獣が近づくものを襲う。
■養殖状況
限定的に成功。
食域の森から採取した組織を、人工時間圃場で育成することは可能となった。
ただし、養殖ニュースはワープキッチンを生み出すほどの効果を持たず、主にワープ装置の燃料や時間調理用の補助食材として使用される。
天然ニュースの価値は現在も極めて高い。
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■名称
GOD
■分類
メインディッシュ
■概要
地球上のすべての食材の頂点に立つとされる、黄金の巨大蛙。
かつては数百年に一度、グルメ日食に合わせて成体となり、世界中の生命を飲み込むほどの食欲を見せた。
千年前には捕獲レベル一万とされ、接近しただけで命を奪われかねない、地球最大級の超危険生物であった。
千年前の大規模な戦いから数年後、IGOと再生屋協会は残された組織とおたまじゃくしの研究を進め、世界で初めてGODの人工繁殖に成功した。
千年を経た現在では、地球のフルコースの中で最も養殖技術が進んだ食材となっている。
現代の登録表記では、成熟した天然個体であっても「希少度100・危険度D」。千年前の捕獲レベル一万から見れば大幅な低下だが、それは人類側の基礎能力と管理技術が向上した結果であり、GODそのものが無害になったわけではない。
■現在の管理状況
エリア2の大部分を「GOD生態研究ビオトープ」として管理。
候補者向けに調整された外縁区域、繁殖個体を育成する中層区域、巨大な天然成体が生息する奥地区域に分けられている。
深部の天然個体は生態系の頂点として扱われ、IGO職員であっても捕獲許可なしには接近できない。
■管理機関
IGOエリア2GOD管理局
国際再生屋協会
■アクセス方法
エリア2の管理都市から、生体反応を遮断する専用車両でビオトープへ入域する。
一般見学者は養殖池周辺まで。
■ビオトープ概要
地球のフルコースを管理する施設の中では、最も開発が進んでいる。
小型のおたまじゃくしを育てる繁殖池、候補者が捕獲技術を学ぶ訓練区域、天然成体が自由に活動する広大な湿地帯が存在する。
奥地では、GODが舌を伸ばした際の被害を防ぐため、空と地上の双方に捕食軌道観測網が敷かれている。
■一般公開状況
養殖区域は一般公開。
GODの幼生観察や、養殖GODを用いた料理を提供する公式レストランも存在する。
ただし、天然GODの肉は最上位美食屋および特別許可を受けた料理人にしか提供されない。
■捕獲方法
養殖個体は、食欲を満たした状態で専用池から捕獲する。
天然個体の場合、真正面から力でねじ伏せるのではなく、GODが舌を伸ばす方向と捕食周期を読み、攻撃直後の短い静止時間を狙う。
食材として使用する部位だけを切り分け、個体を殺さず自然へ戻す「部分捕獲」が主流。
巨大成体を一頭丸ごと討伐する行為は、特別な生態系調整命令が出た場合を除き、現在は禁止されている。
■養殖状況
完全養殖に成功。
養殖個体は味、栄養、再生力ともに高水準だが、天然個体と比べると食欲エネルギーが穏やか。
一般市場へ流通しているGOD料理のほぼすべてが養殖品である。
美食屋として認められるのは、ビオトープ奥地で自然繁殖した個体のみ。
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■名称
エア
■分類
サラダ
■概要
エリア8に存在する、空気そのものを凝縮したような果実。
千年前には、エアの巨木へ数百年に一度だけ実る、全長千五百メートルを超える超巨大食材だった。
地球の熟成が終わり、エアの巨木を取り巻く大気環境が安定したことで、現在の天然エアはスイカほどの大きさまで小型化している。
大きさは変化したものの、内部へ蓄えられる空気と旨味の密度は高く、食べた者の酸素吸収能力、自然治癒力、無酸素環境への耐性を大幅に高める。
現代表記は希少度62・危険度Z。
食材単体には逃走能力も攻撃能力もなく、成熟個体の収穫自体は非常に容易である。
ただし、生息地へ至るまでの毒雨草原やのろま雨の丘など、周辺環境には今も危険が残っている。
■現在の管理状況
エアの巨木と周辺地域を「大気循環特別ビオトープ」に指定。
エアは周辺の大気組成を調整する役割も持つため、年間収穫量は巨木の状態を見ながら厳密に決められている。
成熟した実をすべて収穫せず、一定数を自然落下させることで、土壌と大気へ栄養を戻している。
■管理機関
IGOエリア8大気資源局
妖食界・山神料理人協会
■アクセス方法
エリア8の管理港から、蜂の巣平野、毒雨草原、のろま雨の丘を経由してエアの巨木へ向かう。
美食屋試験では、完全に整備された観光航路ではなく、自然環境が残された旧捕獲路を通ることが求められる。
■ビオトープ概要
エアの木を中心に、周囲の草原、雨雲、大気生物まで含めた広域ビオトープ。
エアの成熟時期には、周辺の空気が澄み、遠方の山脈まで肉眼で見渡せる。
一方で毒雨草原には、装備を腐食させる紫色の雨と毒気が発生する。
■一般公開状況
巨木外縁部は一般公開。
観光区域では、養殖エアを使用したサラダやジュースが提供されている。
■捕獲方法
成熟したエアを枝から切り離す。
食材自体は抵抗しないが、切る位置を誤ると、内部の空気と旨味が一気に抜けてしまう。
果実が呼吸するように膨らんだ瞬間、表面に現れる食材の声へ沿って刃を入れることが重要。
料理人が同行しない場合は、IGO認定のエア専用収穫具を使用が推奨される。
■養殖状況
完全養殖に成功。
一般市場では、小型の養殖エアが野菜や果物と同じように販売されている。
ただし、ビオトープ内で大気を吸収して育った天然個体と比べると、酸素吸収能力を高める効果は低い。
巨大エアを再現する復元栽培も行われているが、成熟まで数百年を要するため、研究対象として保護されている。
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■名称
アース
■分類
デザート
■概要
グルメの園に咲く花々が、地球上の甘味を根から集めて生み出す究極のデザート。
花の中心から、ソフトクリームのようになめらかな甘味があふれ出す。
アースに含まれる糖質とエネルギーは極めて高く、少量でも長期間活動できるほどの栄養を持つ。
千年前は世界中の甘味を吸い上げる性質から、周辺地域の食材へ影響を与える危険があった。
現代では根の広がりが詳細に観測され、甘味を吸収する地域と量が調整されている。
■現在の管理状況
グルメの園全域を「地球甘味循環ビオトープ」として管理。
アースを収穫するだけでなく、吸収された甘味を各地の土壌へ戻す循環設備が整備されている。
過剰な収穫は周辺の果実や蜜の味を薄くするため、収穫量は花ごとに決められている。
■管理機関
IGOエリア4植物資源局
世界菓子職人協会
■アクセス方法
老いの洞穴を越え、グルメの園に行かねばならない。
抜け道もあるが、その場合少しでも触れたら腐食してしまう花畑を超える必要がある。
■ビオトープ概要
地上の花園だけでなく、地球各地へ伸びる巨大な根のネットワークまで含むビオトープ。
区域ごとに果実系、蜜系、乳脂肪系、香草系など、吸収される甘味の傾向が異なる。
開花期には空気そのものが甘くなり、食欲を制御できない者が花へ近づきすぎる事故も発生する。
■一般公開状況
外縁花園は一般公開。
アースそのものではなく、根から分けられた余剰糖分を利用したアイス、菓子、飲料が販売されている。
■捕獲方法
花から自然にあふれ出したアースを、根と花弁へ触れないよう専用スプーンですくう。
完全に成熟する前に採取すると、周囲の甘味をさらに吸い上げようとして根が暴走する。
花の香りが最も弱くなる瞬間が成熟の合図。甘い香りが弱くなるため直感に反するが、その瞬間こそ内部に甘味が凝縮している。
■養殖状況
株分けによる栽培に成功。
ただし、地球規模の根を持たない養殖アースは、周囲数キロメートルからしか甘味を吸収できない。
一般流通品としては十分な品質を持つが、天然アースの莫大なエネルギー量には及ばない。
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■名称
アトム
■分類
ドリンク
■概要
エリア3のクラウドマウンテンから宇宙空間へ噴き上がったマグマが、宇宙に漂う無数の有毒物質を吸収し、再び地球へ降り注ぐことで生まれる飲料。
見た目は煮えたぎる毒の泥に近く、未調理の状態では、耐毒能力を持つ美食屋であっても即死しかねない。
千年前には、毒を抜き取る調理難度がアナザやGODに次ぐとされた。
現代ではアトムに含まれる毒物質の解析が進み、専用のろ過設備が存在する。しかし、天然アトムは落下する時期ごとに毒の組成が変わるため、完全な自動調理は実現していない。(最終調整は料理人の手でしなければならない)
■現在の管理状況
クラウドマウンテン上空から知恵熱橋までを「宇宙毒性食材管理区域」に指定。
噴火と落下の予測、宇宙空間で吸収した物質の解析、地上へ流れ落ちるアトムの封じ込めを同時に行っている。
落下周期にはエリア3上空の飛行が全面禁止される。
■管理機関
IGO第二宇宙研究所
世界毒料理人協会
■アクセス方法
知恵熱橋の下流に設けられた「アトム採取基地」から入域する。
天然アトムへ接近する者は、毒物耐性検査、宇宙物質汚染検査、耐熱装備の確認を受ける。
専用防護服を着用していても、装備表面へ付着した毒を区域外へ持ち出さないよう、帰還時には全装備が分解洗浄される。
■ビオトープ概要
活火山、上空の宇宙噴出経路、毒の滝、知恵熱橋を一体として管理する縦長のビオトープ。
アトムの毒を栄養とする微生物や植物も存在し、単純に毒を除去すると生態系が崩れる。
そのため、食用分だけを分流し、残りは本来の滝へ戻している。
■一般公開状況
採取基地の観測室のみ公開。
毒の滝を耐毒ガラス越しに見学できるが、自然落下が予測される期間は閉鎖される。
一般向けアトム飲料は、養殖原液を数百段階ろ過したもの。天然アトムとは味も効果も大きく異なる。
■捕獲方法
毒の滝から原液を採取し、その場で成分を分析する。
毒の種類に合わせ、加熱、冷却、遠心分離、食材による吸着、料理人の毒抜きを組み合わせる。
決められた調理法は存在せず、落下した年によって工程が変わる。
■養殖状況
代替生産に成功。
宇宙空間で採取した微量物質を人工マグマへ混ぜ、アトムに近い原液を生産している。
味と栄養は高いが、天然アトムを飲んだ際に得られる、美食物質を視認する能力は確認されていない。
・・・
地球のフルコースと現代の美食屋
現在、地球のフルコースは、千年前のように「人類には手の届かない幻の食材」ではない。
養殖GODはレストランで提供され、エアを使った商品は市場へ並び、ニュースの研究から生まれたワープロードが人々の生活を支えている。
かつて世界の命運を左右した食材は、長い年月を経て、人類の文化と暮らしの中へ溶け込んだ。
だからこそ、天然の八品を巡る旅には意味がある。
便利な道を利用しながらも、最後には自然の中へ入り、自分の手で食材と向き合う。
命を奪わずに捕獲する方法を考え、食材が育った環境を知り、自分が食べる一口のために、どれほど多くの生命と時間が関わっているのかを学ぶ。
地球のフルコースは、もはや最強の美食屋を決めるためだけの試練ではない。
千年前から受け継がれてきた地球の味を、次の千年へ残す資格があるか。
それを確かめるための、八つの問いなのである。