孤高のディザード、吸血鬼の築く理想郷   作:うまみちゃん

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自分用に作ったけど折角だから公開します。そんなに長くないです。


1.覚醒のコックピット

気が付くと、真っ白な空間の「システム画面」のような場所で、前世の記憶を持ったまま新しい肉体(真祖吸血鬼の幼女)へ魂が移送される際、「エラー防止および初期生存率向上のためのセーフティ措置」として、手持ちの端末(のようなインターフェース)から特典を1つだけ選ぶようアナウンスされた。

そこに表示されていたのが、前世でやり込んでいたスパロボの強化パーツ一覧。気弱で冷静なおっさんは、チート武器や派手な能力には目もくれず

「ガンダム世界にディザードを持ち込んだら、絶対に現地で修理も補給もできない。一回被弾しただけで詰む」

と秒速で冷静に計算し、迷わず「メンテナンスフリー(自己修復)」のパーツをタップした……

 

宇宙空間の暗闇の中、冷たいコックピットの警告音が響いていた。

 

元・気弱だが修復不可能な状況ほど冷静になるおっさん。それが、今の彼の魂の持ち主だった。しかし、コンソールに映る自分の顔は、どう見ても白磁の肌と赤い瞳を持つ、6歳ほどの愛らしい真祖吸血鬼の幼女。さらに、彼が座っているのは宇宙世紀のモビルスーツではない。エルガイムの世界に存在するはずのHM(ヘビーメタル)、それも『スーパーロボット大戦』仕様の「ディザード」だった。

 

ここは宇宙世紀0010年。一年戦争が始まる前の、静けさと混沌が同居する時代。

 

彼が転生特典として選んだのは、戦闘力ではなく「自己修復する強化パーツ(ナノマシンユニット)」だった。理由は極めて合理的だ。エルガイム世界の装甲にジーンプラなどの特殊技術が使われている以上、この宇宙世紀の地球連邦軍やアナハイム・エレクトロニクスに泣きついても、修理もメンテナンスも絶対に不可能なのだ。完全なメンテナンスフリーを狙うことだけが、この世界で生き残る唯一の手段だった。

 

吸血鬼の渇きと、おっさんの冷徹な思考が交差する。

 

 

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ガタガタと、不規則な振動が全天周囲とは程遠いスクリーンを揺らしていた。

頭痛。それも、脳が裏返るような激しい痛みに、彼は小さな悲鳴を上げようとした。

 

「……あ、う……」

 

喉から漏れたのは、おっさんの野太い声ではない。鈴を転がすような、しかし酷くかすれた幼い少女の声だった。

反射的に視線を落とすと、ぶかぶかのパイロットスーツの袖から、驚くほど白く細い、小さな5本の指が覗いている。

コンソールの計器盤に反射した自分の顔を見る。燃えるような真紅の瞳、尖った犬歯。それは神話に語られる「真祖の吸血鬼」の、それも僅か6歳ほどの幼女の姿そのものだった。

 

「……落ち着け。まずは、状況の確認だ」

 

おっさんとしての魂が、気弱な心を冷徹な理性で押さえつける。

彼が握っているのは、一対の操縦桿。

視界に広がるのは、見渡す限りの漆黒の宇宙空間と、遠くに青く輝く地球の輪郭。そして、眼下に広がる建造物の残骸――それは、かつての宇宙世紀0080年代の戦火を思わせる、放棄された古い密閉型スペースコロニーの無残な外壁だった。

 

宇宙世紀0010年。

ジオン公国もまだその名を完全には成しておらず、地球連邦の統治下に不穏な空気が漂い始めた時代。

 

「機体ステータス、表示……」

 

音声認識が作動する。

画面に浮かび上がったシルエットは、赤色の装甲を持つHM、ディザード。

ソーラージェネレータ(動力源)は正常。しかし、システムログにはスパロボの奇妙な仕様が刻まれていた。通常兵器の射程や威力が、この宇宙世紀の物理法則と「ゲーム的ルール」の狭間で歪んで固定されている。

そして画面の隅で、緑色の光が明滅していた。

 

『強化パーツ:ナノマシンユニットシステム――作動中。機体損傷率0.02%を検知。自動修復を開始します』

 

微かな駆動音と共に、装甲の微細な傷が内側から塞がっていく。

 

「……良かった。これなら、アナハイムに技術を盗まれる心配も、パーツがなくて鉄屑になる心配もない」

 

彼は小さく胸を撫で下ろした。エルガイム世界の装甲技術は、この世界のどの組織にも解析できない。ならば、自己修復による完全な「隠匿」こそが最大の武器になる。

 

生存への渇き

 

安堵したのも束の間、彼の幼い体に、激しい「飢え」が襲いかかった。

胃が焼け付くような、それでいて水や食べ物を拒絶するような、どす黒い衝動。

 

「くっ……これが、吸血鬼の……!」

 

真祖の肉体は、人間の血を求めていた。

幸いなことに、真祖は日光や宇宙線への耐性が高い。だが、血がなければ理性が消し飛ぶ。

この宇宙世紀0010年において、生身の人間が宇宙空間に浮いているはずがない。コロニーの残骸に、不法居住者(サンクチュアリ)か、あるいは連邦の警備艇でもいなければ、飢え死にする(あるいは狂う)のは時間の問題だった。

 

「レーダー展開。熱源、または救難信号の捜索……」

 

ディザードのセンサーが、コロニーの内部ポートに向けて照射される。

チカ、と小さな光点が電子音を鳴らした。

微弱な熱源。モビルスーツではない。旧式の作業用プチモビルスーツか、あるいは小規模な密輸船の動力炉だ。

 

「人が、いる」

 

彼はゴクリと唾を飲み込んだ。

6歳の幼女の身体が、獲物を見つけた獣のように歓喜に震える。

その本能を、おっさんの冷静な意志が強引に手綱を引いた。

 

「襲撃はしない。僕はただの気弱なおっさんだ……いや、今は子供か。うまく交渉するか、あるいは『迷い込んだ子供』を演じて、血液パックの一本でも掠め取る。最悪の場合でも、無力化だけだ。殺せば、連邦軍に追われることになる」

 

ディザードの背部ランドブースターが展開し、エネルギーが四肢に駆け巡る。

宇宙世紀のAMBAC(アンバック)技術とは異なる、HM特有のしなやかな、それでいてどこか不気味な駆動。

推進レーザーが闇を裂き、ディザードは音もなく放棄されたコロニーのハッチへと滑り込んでいく。

 

「ここから、どう生き延びるか……」

 

ガンダムの世界。これから数十年、血で血を洗う戦争が続く地獄。

モビルスーツの修理も、人間の食事も必要としない、孤独な真祖のディザード。

彼は操縦桿を握り締め、暗黒のハッチの奥へと、機体を進めた。

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