孤高のディザード、吸血鬼の築く理想郷   作:うまみちゃん

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10.人材の「逆・引き抜き(拉致と選別)」

ルクレツィアが目をつけたのは、地球連邦政府が進める「宇宙移民政策(スペースノイド棄民)」の歪みそのものだった。

この時代、連邦の官僚機構やアナハイムの派閥争いに敗れ、不当に失脚したエリートや、過激すぎる研究を理由に学会から追放された異端の科学者たちが、音もなく宇宙の闇へと葬られていた。

 

ルクレツィアは密輸業者たちのネットワーク(下位眷属の繋がり)を使い、彼らの「死亡データ」や「行方不明リスト」を監視。価値ある人材が宇宙に放り出される瞬間を狙って、ディザードで秘密裏に回収(拉致)していった。

 

彼らに与えられた選択肢は、常に合理的だった。

「連邦のブタ箱で飢え死にするか。あるいは、私の城で『不老の知性』となり、新しい歴史の裏方を担うか」

 

こうして、エリュシオンには宇宙世紀の表舞台から消された「最高の頭脳」が集結し始めた。

 

ルクレツィアは、自身のディザードのコンソールを眺めながら、思考を整理していた。

画面の隅には、スパロボのUIを思わせるステータス画面があり、機体名『ディザード』の下に、HPが毎ターン(リアルタイムでは1分ごとに)一定割合で勝手に回復していく「強化パーツの効果」が確かに刻まれている。

 

これはブラックボックスであり、宇宙世紀の人間がどれだけ顕微鏡で覗こうとも、その「回復する物理現象」の因拠は掴めない。システム的な絶対性だからだ。

 

「だが、パーツの恩恵を除いた『ディザードというHMそのものの基本設計』なら、この世界の優秀な頭脳たちが集まれば、十分に解析し、コピーし、宇宙世紀の技術として再現できるはずだ」

 

ディザードは、エルガイム世界における「ムーバル・フレーム(可動骨格)」や「ジーン・プラスチック装甲」の結晶だ。これらは魔術ではなく、ペンタゴナ・ワールドの高度な科学の産物。

おっさんは、連邦の闇から救い出した最高峰の人材をエリュシオンの地下工廠に集め、彼らにディザードの「純粋な科学的解析」を命じた。

 

ルクレツィアは、連邦のブタ箱や宇宙の闇から引き抜いてきた天才たちを、適材適所で組織の骨組みへと配置していった。

① 技術・研究開発部門:HMの解析と宇宙世紀版への昇華

チーフエンジニアのエレンの下に集められた、連邦の異端の研究者たち。彼らがディザードの内部構造を見た時の衝撃は計り知れなかった。宇宙世紀0010年代、まだモビルスーツの概念すら固まっていない時代に、全高18メートル超の巨体を「骨格(ムーバル・フレーム)」と「装甲」に完全分離させ、しなやかに駆動させるHMの設計思想は、神の業に等しかった。

 

彼らはディザードを一切傷つけることなく、センサー類によるスキャンと非破壊検査だけでその構造を暴いていった。特に注目したのが、外殻を覆う「ジーン・プラスチック」の分子結合パターンと、ソーラージェネレータによるエネルギー伝達効率だ。

 

彼らはエリュシオンに集められたチタン合金や高分子セラミックを使い、ジーン・プラスチックの「弾性と耐熱性を併せ持つ分子構造」を宇宙世紀の材料工学でエミュレート(再現)する理論を確立。これにより、自己修復こそしないものの、従来のチタン合金を遥かに凌駕する軽量・高剛性の「独自プラスチック複合装甲」の開発に成功した。さらに、HMのムーバル・フレームを参考に、宇宙世紀の基準で動く独自の「試作人型機(モビルスーツの先駆)」の設計図を1から引き始めた。

 

② 指揮官・戦術部門:吸血鬼の能力を前提とした「軍事ドクトリン」

リリィの下位眷属となった元連邦軍中佐の指揮官。彼は、おっさんのディザードが持つ「スパロボOE性能」――すなわち、ガンダム世界の物理法則を無視した「異常な命中率(システム的補正)」と「射程の絶対性」をシミュレーター上で徹底的に数値化した。

 

ディザードのパワーランチャーが放つビームは、宇宙世紀のメガ粒子砲とは異なり、ミノフスキー粒子の妨害(のちに発生する)下でも減衰しにくい特殊な粒子特性を持つ。指揮官は、この「絶対にブレない一撃」を最大効率で活かすため、エリュシオンの生体デブリ防衛網と組み合わせた戦術を考案。デブリに潜む下位眷属が敵を足止めし、外縁からディザードがスパロボ仕様の確定命中ビームで戦艦のブリッジを次々と撃ち抜くという、最小の兵力で大艦隊を完封するための「亡霊流星戦術」を部隊の教本として叩き込んだ。

 

③ 外交・政治部門:対等に渡り合うための「ハッタリの言語化」

おっさんの直轄となった、元連邦の失脚外交官。彼は、エレンたちが解析した「HMの技術データ(ただし宇宙世紀向けにダウングレードしたもの)」と、ディザードの戦闘データを基に、地球連邦政府およびサイド3(ジオン)を政治的に脅迫・交渉するためのシナリオを何百枚ものレポートにまとめた。

 

もしエリュシオンの存在が露見した場合、彼らは「私たちは地球圏のいかなる勢力にも属さない、独立した技術ギルドであり、不可侵を望む」と宣言する。もし連邦が武力行使に出れば、アナハイムすら驚愕する「ムーバル・フレームの基礎理論」をジオンに全面開示すると脅し、逆にジオンが迫れば、連邦にその身を委ねると揺さぶる。吸血鬼の持つ「嘘を見抜く超感覚」を隣でリリィに発揮させながら、老外交官は相手の国家予算や政治的弱みを握り潰すための、完璧な「第三勢力としての外交プロトコル」を完成させた。

 

宇宙世紀0020年代。

小惑星エリュシオンの内部は、おっさんが最初に望んだ「ただの隠れ家」の領域を完全に超え、洗練されたひとつの「亡霊国家」の体を成していた。

 

頂点に君臨するのは、気弱だが誰よりも冷徹なサバイバル精神を持つ真祖の幼女(ルクレツィア)。

その下で、リリィの「血の階層(ヒエラルキー)」によって絶対の忠誠を誓わされた不死の兵士たちが要塞を守り、人間のままその知性を遺憾なく発揮するエレンや外交官たちが、組織の頭脳として機能している。

 

ドックの中央に佇むディザードは、今日も装備された強化パーツの輝き(スパロボのシステム)によって、微細な歪みすら残さず完全な姿を保っている。そしてその周囲には、HMのムーバル・フレームを解析して作られた、宇宙世紀の物理法則で動くエリュシオン独自の「黒い量産型人型兵器」が、静かに何機も並び始めていた。

 

「お姉様。私たちの解析部隊は、この世界の科学の枠組みで、ディザードのデッドコピーではない『私たちの兵器』を作り上げました。外交カードも、戦術思想も、すべてが連邦やジオンを迎え撃つために噛み合っています」

 

リリィが、静かに、しかし誇らしげに報告する。

おっさんは、合成血液のパックを机に置き、小さな身体で満足そうに深く椅子にもたれかかった。

 

「素晴らしいわ。この世界の人間たちの知恵でここまでの牙を作り上げた。これなら、万が一私たちが歴史の表舞台に引っ張り出されても……ただの化け物ではなく、地球圏を三分する『第三勢力』として、堂々と彼らの前に君臨できるわね」

 

完璧な隠蔽。しかし、露見した瞬間に世界を恐怖と政治的混乱に叩き落とすだけの「国家の骨組み」を完成させたおっさんは、来たるべき宇宙世紀の激動の時代を見据え、妖しく真紅の瞳を輝かせるのだった。

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