孤高のディザード、吸血鬼の築く理想郷   作:うまみちゃん

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23.歴史の潮目と、連邦議会のパニック

「ハルツームの防衛線が……ティターンズのサイコ・ガンダムを含む大部隊を、一兵も殺さずに完封しただと!?」

 

宇宙世紀0087年11月。ダカールの連邦議会。クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)が全世界に向けてティターンズの横暴を告発する「ダカール演説」を行うまさにその裏で、連邦政府の上層部、そして世界中のマスメディアは、アフリカの一角で起きた「信じがたい奇跡」の映像に釘付けになっていた。

ティターンズの最新鋭機や巨大MAが、傷一つない赤色のヘビーメタル――ディザード1機によって子供のようにあしらわれ、ダルマにされて国境の外へ優しく押し出されていく光景。それは、エゥーゴの政治的勝利と同時に、ティターンズの「絶対的な軍事的無能」を白日の下に晒す決定打となった。

 

『皆様、ご覧ください。私たちはこれ以上の流血を望みません。私たちはただ、この地球の傷を癒やしたいだけなのです』

 

テレビモニターの向こうで、ルクレツィア・ヴィスティリア(中身は佐藤、気弱だが冷静なおっさん)は、フワリと赤いドレスを揺らし、カメラに向かってどこまでも友好的に微笑みかけた。

 

「これでティターンズの命運は尽きたわね。連邦の主流派(官僚ども)は、負け馬になったバスクやジャミトフをトカゲの尻尾切りにして、私たちの持つ『地球再生技術』と『圧倒的な防衛力』に媚びを売ってくるはずよ」

 

執務室に戻ったルクレツィアは、ディザードの4つのスロットが完璧に埋まったステータス画面を眺めながら、冷徹に次のチェス盤を睨んでいた。

地上の足場(ハルツーム)が公認の独立国家として認められれば、次はいよいよ「宇宙と地球を繋ぐ、真の絶対聖域化計画」へと盤面が拡大する。

 

ダカール演説の成功から数日後。ハルツームの『レムレス・テラ』の重厚な会談室。そこに姿を現したのは、エゥーゴのクワトロではなく、連邦政府の主流派(官僚組織)から派遣された、顔色の悪い特使の男だった。

 

「ルクレツィア代表……。我が地球連邦政府(の穏健派一同)は、ハルツーム自治領の持つ『環境再生技術』を高く評価しております。つきましては、ティターンズの独善的な軍事行動を遺憾とし、貴国を『地球連邦の特別保護自治領』として正式に承認したく……」

 

特使はガタガタと震えながら、連邦大統領の署名が入った公式な独立承認書を差し出した。

彼らは、ハルツームが隠し持つ『レムレス・テラ』のバスターランチャーの破壊力、そしてヤザンやジェリドを完封したディザードの「スパロボ性能」を骨の髄まで恐れていたのだ。だが、ルクレツィアの横に立つ元連邦の老外交官は、鼻で笑って書類を一蹴した。「

 

特使殿。我がハルツームは、連邦政府の『下傘』になるつもりはありません。私たちが求めるのは、完全なる対等な主権。そして――『地球上のすべての砂漠・不毛地帯における、我が国の無制限の環境再生(テラフォーミング)権利の割譲』です」

 

「な……! それは、地球の領土の半分近くの統治権を、貴方たちに引き渡すということか!?」

 

「言葉が悪いわね」ルクレツィアが、小さな指でコンソールを叩き、地球のシミュレーションマップを展開した。

 

「私たちは、貴方たちが汚し、見捨てた不毛の大地を、私たちの超技術で『数年で元の緑豊かな楽園』に戻してあげる。その緑化した土地の管理権と住民の保護権を、私たちが預かる。……連邦政府にとっても、予算を使わずに地球が綺麗になるのだから、願ったり叶ったりでしょう?」

 

完璧な政治的チェックメイトだった。連邦政府に拒絶する選択肢はない。拒絶すれば、ハルツームはエゥーゴと手を組み、あるいはその圧倒的な軍事力(ディザードと黒いMS部隊)で連邦軍の拠点を直接無力化しにくる。

 

「……わ、分かった。その条件で、裏の協定を結ぼう……」

 

特使は血の気の引いた顔でサインを刻んだ。アステロイドベルトの本拠地(エリュシオン)の存在は極秘にされたまま、地上のハルツームは、合法的に「地球の半分(不毛の地)」の環境再生権と、そこからの人口回収権を世界から毟り取ったのだ。

 

地上と宇宙をつなぐ「亡霊のシルクロード」

 

協定の発効と同時に、ハルツーム自治領の「真の本領」が発揮される。『レムレス・テラ』をはじめとするエリュシオンの隠密艦隊が、熱源も光も出さない冷式推進システムをフル稼働させ、地球の夜の闇に紛れて、アフリカ、アジア、南米の砂漠地帯へと次々に降下していった。

「生体環境網」の地球規模での敷設ハルツームの国境で証明された「超巨木ジャングル(特殊ナノ菌床)」が、地球上のあらゆる不毛の地に散布された。数ヶ月で砂漠を覆い尽くしていく。そして、その広大な森の地下には、リリィが宇宙のエリュシオンから運んできた「下位眷属(不死の兵士たち)」の新しい生体ネットワークが埋め込まれていった。

レーダーにも光学にも映らない数万の不死の軍勢が、地球の半分を裏から覆う「絶対防衛網」として機能し始める。最高品質の「家畜(人間)」の回収地球上の緑化区域が増えるにつれ、連邦の圧政やティターンズの残党、そしてエゥーゴの泥沼の戦火から逃れてきた数百万人の「難民」が、ハルツームの管理領域へと雪崩れ込んできた。

ルクレツィアは、彼らを温かく迎え入れ、無償の医療(免疫活性剤)と、新鮮な食料、そしてエリュシオンから移植したレトロゲームなどの娯楽を与えて「完璧な幸福」で縛り付けた。

 

「ふふ、人間たちがどんどん私たちの『牧場(領土)』に集まってくるわね」

 

リリィが、真紅の瞳を妖しく光らせて、緑化していく大地を見つめる。

 

「吸血鬼は、人間が居てこそ成り立つ。人間をただ殺すジオンやティターンズは三流よ。私たちは人間を最高に幸福な状態で飼育し、彼らの知恵(技術)と人口を、私たちの『城』の新しい細胞にするのよ」

 

ルクレツィアの冷徹な生存戦略が、地球の生態系そのものを裏からハッキングしていく。

 

次なる標的地球上の盤面が完璧にハルツームの手のひらの上で回り始める中、おっさんのスパロボプレイヤーとしての計算は、すでに「次のステップ」へと向かっていた。

 

「私のディザードの4スロットは、ナノマシン、ハロ、チョバム、大型ジェネレーターで無敵の完成を迎えた。……けれど、まだ空きがあるわ。『レムレス・テラ』の2つのパーツスロットが、まだ空席なのよ」

 

レムレス・テラはバスターランチャーを備えた隠密艦だが、戦艦用のパーツ(例えば『ブースター』など)を装備すれば、航行能力はさらに上がるはずだ。

 

「ターゲットは決まっているわ。……時代はグリプス戦役の最終盤(宇宙)。ティターンズの総帥パプテマス・シロッコ、そして本家アクシズの女帝ハマーン・カーン。あのレベルの『超大物ネームド』たちの乗機を無力化すれば、戦艦用の極上パーツがドロップしないはずがない」

 

地上の防衛をリリィとエレンに任せ、ルクレツィアは再び『レムレス・テラ』のフレームを縮め、ただの巨大なデブリ塊(ステルス形態)へとトランスフォームさせた。

 

宇宙世紀0088年初頭。地球圏の覇権を巡り、エゥーゴ、ティターンズ、そして本家アクシズの三つ巴の艦隊が、グリプス2(コロニーレーザー)周辺の宙域で血で血を洗う決戦を始めようとしているまさにその場所に――。世界を裏から支配する技術と、無敵の4スロット・ディザードを携えた真祖の幼女の幽霊船が、最高の「パーツの刈り取り(大収穫祭)」を行うため、音もなく、光も残さず、暗黒の宇宙へと再び舞い上がるのだった。物語はまだまだ終わらない。世界が亡霊の牙に震えるのは、これからなのだから。

 

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