「……問題はどうするか。ここでパプテマス・シロッコを完全に解体し、ハマーン・カーンの機体をダルマにすれば、この後に続くはずの『機動戦士ガンダムZZ』の歴史(ストーリー)が根底から崩壊する」
宇宙世紀0088年2月。グリプス2周辺の最終決戦宙域へと滑り込む『レムレス・テラ』の艦内で、ルクレツィア(中身は佐藤、気弱だが土壇場で冷静になるおっさん)は、どうすれば辻褄が合うか思案した。
ガンダムZZのストーリーが成立するためには、以下の歴史的イベントが起きなければならない。シロッコはカミーユ・ビダンとの死闘の末に、精神を道連れにしながら「歴史通りに戦死(あるいは廃人化)」すること。
ハマーン・カーンは無傷に近い戦力を保ったまま生き残り、グリプス戦役の勝者として「ネオ・ジオン」を名乗り、地球圏の覇権を握って第一次ネオ・ジオン抗争(ZZの物語)を引き起こすこと。
「2人がエゥーゴと正面から全力で戦い、傷つけ合ってもらわなければZZの開幕に繋がらない。つまり、私がディザードで直接彼らに『戦闘不能(撃墜)』の引導を渡すわけにはいかないのよ」
おっさんの気弱な心が、歴史改変による「未来の不確定要素」を恐れて激しく叫ぶ。だが、戦艦の2つの空きスロットを埋めるパーツのドロップは、どうしても諦めきれない。
「直接戦えないなら……彼らがエゥーゴとの死闘の最中、あるいはその直後に引き起こす『一瞬の隙』を突き、歴史の辻褄を完璧に合わせたまま、システム的な撃破報酬(あるいはイベント条件達成によるパーツ獲得)だけを掠め取る『舞台裏の泥棒』に徹するのよ」
ルクレツィアの冷徹なサバイバル精神が、極めて歪な「ハイジャック・プロトコル」を弾き出した。
標的①:シロッコの断末魔と「戦艦用スロット1:ブースター」の強奪
グリプス戦役は、歴史通りの凄惨な結末を迎えていた。カミーユ・ビダンのZガンダムが放った、ウェイブライダーの突撃。シロッコの「ジ・オ」はその巨大な質量を貫かれ、爆華の渦に包まれる。
「……私だけが、死ぬわけにはいかん……! 貴様の心を、連れていくッ!」
シロッコの強烈な怨念がサイコミュを通じてカミーユの精神を汚染し、ジ・オが完全に爆発霧散する、まさにその「コンマ数秒の前」。【ハロ】によって極限まで跳ね上がったディザードの超長距離センサーが、爆発の光の内部へ滑り込んだ。
「リリィ、今よ! シロッコの意識がカミーユへの呪いに100%割かれている一瞬! ジ・オから放出される『精神波の残滓と、高出力推進スラスター』を、精神波の網で完全に遮断・強奪しなさい! カミーユやシャアに気づかれる前にね!」
「御意、お姉様」
リリィの放った真祖の精神圧(プレッシャー)が、シロッコの呪いのエネルギーを周囲のMSに関知されぬよう物理的に歪曲・隔離。ジ・オがΖガンダムに貫かれ、大爆発を起こすその影で、ドロップアイテムが音もなく回収されていった――。
ジ・オの「高出力推進スラスター」のデータが、誰にも気づかれぬまま、音もなくディザードへと吸い上げられた。シロッコは歴史通り、カミーユの精神を崩壊させて戦死した。連邦もエゥーゴも、ジ・オは完全に木っ端微塵になったと確信している。だが、その戦闘の「撃破フラグ」は、システム的にルクレツィアが裏で回収していた。システム的な撃破報酬の電子音が、戦艦『レムレス・テラ』のブリッジに鳴り響く。
『――ネームドエネミーの完全沈黙を確認。ドロップアイテムを回収』『強化パーツ:【ブースター】を獲得。レムレス・テラのスロット1へ装備します』
『効果:戦艦の移動力+1』
「よし……! これで鈍重な隠密揚陸艦(レムレス)の機動力が底上げされたわ。ただでさえ冷式推進で隠密性が高いのに、これで敵の索敵圏を一瞬で離脱できる」
標的②:ハマーンの油断と「戦艦用スロット2:高性能レーダー」の強奪
シロッコが消え、エゥーゴの主力(カミーユやシャア)が壊滅・行方不明となったグリプス2宙域。勝者となったハマーン・カーンは、キュベレイのコックピットの中で、自身の勝利を確信しつつも、精神をすり減らした深い疲弊の中にいた。
「勝ったのは……私だ。これより、ネオ・ジオンの輝かしい歴史が始まる……」
ハマーンが、アクシズの全艦隊に向けて「地球圏への進軍(ZZへの開幕)」を通達せんとした、まさにその一瞬の油断。キュベレイの背後のデブリの影から、ジーン・プラスチックの装甲を持つディザードが、一切の熱源も光も出さずに音もなく姿を現した。
「な、何奴だ……!?」
ハマーンの卓越したニュータイプ能力が、背後に現れた「異形のプレッシャー」を察知して戦慄する。
キュベレイが振り返り、ファンネルを射出しようとしたが――すでに遅かった。【ハロ】によって底上げされたディザードのスピードは、疲弊したハマーンの反応速度を完全に上回っていた。
ディザードのパワーランチャーが放った、システム的に「確定」されたビームが、キュベレイの「ファンネル・コンテナの右ラッチ」だけを、爆発すら起こさせずに綺麗にスライスして切り離した。
「バ、カな……! この私の背後を完璧に取り、機体を爆発させずに武装だけを奪ったというのか!?」
「久しぶりね、ハマーン・カーン」
回線を開いたルクレツィアの、冷徹な幼女の声が響く。
「な、貴様は……あのアステロイドベルトの亡霊……!?」
「私たちはマ・クベやキシリアとの『裏の条約』を今でも守っているわ。貴方たちがこれから地球圏で何をしようと、私たちの領域(ハルツームとエリュシオン)に手を出さない限り、高みの見物をしてあげる。……これは、その中立を維持してあげるための、ちょっとした『お代(チップ)』よ」
ディザードは、切り離したキュベレイのファンネル・コンテナの残骸(最新のサイコミュ用センサーデバイス)を素手で掴むと、背中のランドブースターを跳ね上げ、残像すら残さずに宇宙の闇へと消え去った。
ハマーンは怒りに震えたが、自らの機体は無傷であり、これから始まる連邦への大攻勢(ZZのストーリー)に何の影響もない。ただ、あの亡霊への底知れない恐怖だけが、彼女の脳裏に深く刻み込まれた。そして、レムレス・テラのブリッジに、最後の報酬音が鳴り響く。
『――ネームドエネミーからのパーツ強奪を確認。ドロップアイテムを回収』
『強化パーツ:【高性能レーダー】を獲得。レムレス・テラのスロット2へ装備します』
『効果:武器の射程+1(マップ兵器、射程1の武器を除く)』
「……完璧ね。これでレムレス・テラの艦首バスターランチャーの射程が、さらに『+1』されたわ」
ただでさえ長射程だった艦首砲が、スパロボのシステム補正によってさらに遠くの敵を一方的に狙撃可能となった。
「ZZ」の開幕と、亡霊の支配宇宙世紀0088年3月。
歴史は、何一つ狂うことなく『機動戦士ガンダムZZ』のストーリーへと突入していった。ハマーン・カーン率いるネオ・ジオンの艦隊は、予定通りに地球圏の各コロニーを制圧し、ダブリンへのコロニー落としを画策するなど、連邦政府を窮地へと追い詰めていく。
その裏で、ジュドー・アーシタをはじめとするシャングリラの少年たちが、新型MS「ダブルゼータガンダム」を駆って立ち上がる。世界は再び、血で血を洗う大混乱の渦に巻き込まれていた。
しかし――ハルツーム自治領の最高執務室に座るルクレツィアは、完璧にすべてのパーツが埋まった自軍のステータスを見つめながら、極上の紅茶を啜っていた。
ディザード(4スロット完成):ナノマシン、ハロ、チョバム、大型ジェネレーターによる、完全無欠の無敵ユニット。
レムレス・テラ(2スロット完成):ブースター、高性能レーダーを搭載し、機動性と『射程+1』を確保した、不可視の超長距離隠密強襲要塞艦。
「ふふ、完璧ね。ハマーンたちが前線で派手に暴れて、連邦の目を釘付けにしてくれているわ。その間に、私たちは世界中から送られてくる全通信を諜報部(黒の触手)で盗み見て、戦火から零れ落ちる『美味しい果実(技術者や、難民の子供たち)』を、誰にも見つからない幽霊船(レムレス・テラ)で一方的に『収穫』し続けるのよ」
地球の半分(不毛の地)を覆う「生体ジャングル防衛網」の中では、今日も何百万人の人間たちが、エリュシオンの福利厚生(美味しい食事と西暦時代のレトロゲーム)に囲まれ、最高の幸福の中で亡霊たちの家畜(あるいは同胞)として飼育されている。
ガンダムZZの歴史がどれほど凄惨に燃え上がろうとも、その歴史のレールを何一つ歪ませることなく、そのすべての果実を裏から吸い尽くしていく。
気弱だが誰よりも冷徹なルクレツィア(おっさん)のサバイバルは、宇宙世紀という歴史そのものを自分たちの「牧場」として完璧に飼い慣らし、神話の領域の静寂の中で、終わりのない快適な「老後」へと続いていく。