孤高のディザード、吸血鬼の築く理想郷   作:うまみちゃん

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27.歪まぬ光の奇跡と、おっさんの「火事場泥棒」

アクシズ・ショック

それはアムロ・レイのνガンダム、そして地球圏のすべての兵士たちの「生きたい」という意志がサイコフレームと共鳴し、地球へ落下する巨大な岩塊を押し返した、宇宙世紀の歴史における絶対的な到達点。

 

「アクシズ・ショックは原作通りに引き起こさせる。アムロとシャアの魂の決着には、1ミリも干渉しない。……けれど、サイコ・フィールドの光によって『摩擦熱すら伴わずに綺麗に破砕され、地球圏から離脱していくアクシズの巨大な残骸(岩塊や基地施設)』。あれをそのまま宇宙のゴミにするのは、あまりにも勿体ないわ」

 

ルクレツィアの冷徹なサバイバル精神と、おっさんとしての抜け目のなさが合致した。

地球の半分(不毛の地)を完璧に環境再生し、文化と娯楽の楽園を完成させた今、エリュシオン(本拠地)とハルツームの次なる課題は、さらなる「領土(物理的な質量)」の拡大だった。

 

歴史の奇跡によって綺麗に分解され、地球の引力圏から弾き飛ばされたアクシズの破片を、誰にも気づかれぬように幽霊艦隊で丸ごと「回収(サルベージ)」し、エリュシオンの新しい細胞として有効利用する。

 

「エレン、リリィ、そして成長したプルシリーズたち。レムレス・テラの可変フレームを展開し、宇宙(そら)へ発艦しなさい。宇宙世紀最大の奇跡の裏側で、私たちは最高の人類遺産(アクシズ)を丸ごと火事場泥棒させてもらうわよ」

 

宇宙世紀0093年3月12日。地球の衛星軌道上。歴史は、何一つ狂うことなく『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のクライマックスを迎えていた。分断された小惑星アクシズの後部が、地球の引力に捕らえられて落下を開始する。

絶望の中、アムロ・レイのνガンダムがその巨体に文字通り肉薄し、狂気的なまでの意志で押し返そうとする。やがて、地球圏のすべてのサイコフレームが共鳴し、宇宙を埋め尽くした「温かい緑色の光の津波(サイコ・フィールド)」が、アクシズを地球から遠ざけるように弾き飛ばしていった。

アムロとシャアの気配が、光の彼方へと消えていく。連邦軍もネオ・ジオンの残党も、その奇跡の光に涙し、呆然とそれを見つめていた。その誰もが、地球圏から離脱していくアクシズの「巨大な破片群」の行方など、気にも留めていなかった。

 

――その、光の網のすぐ外側。変形機構(ムーバル・フレーム)を最大まで展開し、ただの巨大なデブリ塊のフリをしながら、ブースター(移動力+1)で機動力を得た『レムレス・テラ』、そしてエリュシオンの隠密回収艦隊が、音もなく光の影へと滑り込んだ。

 

「リリィ、プルたち! ディザードを中核としたMS部隊を発艦させなさい! 連邦やジオンのレーダーがサイコ・フィールドの余波で完全にマヒしている今がチャンスよ。高性能レーダー(射程+1)の精密照準で、アクシズの『核融合炉の残骸』と『主要ブロック』に随伴し、私たちの生体ネットワークの網をかけるのよ!」

 

「了解、お姉様! 亡霊の回収作業を始めます!」

 

10代半ばへと美しく成長し、エリュシオンの冷徹な防衛教育と西暦時代の戦術を遊びながらマスターした8人のプルシリーズの妹たちが、独自の黒いMS部隊を駆って宇宙へと躍り出た。

彼女たちの脳のスペックはクローン技術により最高峰。さらに、ルクレツィアのディザードは、ナノマシン、ハロ、チョバムアーマー、大型ジェネレーターの「スパロボ補正」により、サイコ・フィールドの余波の重力波すら物ともせず、完全なトップパフォーマンスでアクシズの残骸を誘導していく。

 

「実に見事な奇跡(アクシズ・ショック)ね。摩擦熱で融けることもなく、こんなに綺麗な状態で基地施設や採掘ブロックがバラバラになってくれるなんて、最高のプレゼントだわ」

 

ルクレツィアは、ディザードのパワーランチャー(ハロ補正により超長距離・超精密射程)を放ち、地球の引力圏から外れた直径数キロメートルのアクシズの破片(旧ジオン工廠ブロックや、無傷の核融合ジェネレーターの残骸)の軌道を、システム的な確定命中弾でわずかに変更していった。そこに、デブリに同化していた数千の「下位眷属(不死の兵士たち)」が一斉に取り付き、生体の制動アンカーとなって岩塊の速度を落とす。

 

連邦もジオンも「アクシズの破片は地球圏外へと永遠に漂流していった」と確信していた。だが、その漂流の先を裏で完全にコントロールし、網の目で手繰り寄せていたのは、暗黒の亡霊たちだった。

 

 

宇宙世紀0090年代の終わり。地球圏の人々が、シャアの反乱の傷を癒やし、来るべき宇宙世紀0096年の「ラプラスの箱」を巡る新たな火種(ユニコーンの物語)へと無自覚に進みつつある中、アステロイドベルトの深淵は、人知れず「究極の変貌」を遂げていた。

 

極秘のまま維持されてきた本拠地「小惑星エリュシオン」。その横には、アクシズ・ショックの戦場から丸ごと火事場泥棒され、冷式推進艦隊で運ばれてきた「アクシズ」の巨大な工廠ブロックや、無傷の居住区、そして最高密度のレアメタル採掘区画が、見事にドッキング(再結合)されていた。

 

元々のエリュシオン、かつてマハラジャたちに脅迫状を突きつけた不可侵領域、そして奇跡の裏で回収したアクシズの残骸。これらが完全に統合され、地球圏のどのサイドよりも巨大で、どの国家よりも強固な、文字通りの「超・自己完結型要塞国家エリュシオン・アクシズ」が完成したのだ。

 

「ルクレツィア様、回収したジオンの旧工廠から、サイコフレームの生データ、および超大型プレス機のサルベージが完了しました。エレンの技術部が、我が国の独自MSのラインに組み込んでいます」

 

元連邦の老外交官が、誇らしげに報告を上げる。

 

「素晴らしいわ。これで私たちの城の生産力は連邦のジャブローすら凌駕したわね」

 

ハルツーム自治領、そして新しく拡張された宇宙の超巨大居住区。そこには、地上の砂漠化から救われ、宇宙世紀の戦争から完全に隔離された数百万人の民間人たちが、今日も病気も飢えもなく、最高の幸福の中で暮らしていた。

彼らの街には伝統の音楽が鳴り響き、子供たちは西暦時代の『スーパーロボット大戦』の新作ゲームやアニメ映画に興じ、おっさん(ルクレツィア)への狂気的なまでの絶対的忠誠心を胸に抱いている。もし、この平和を乱す犯罪者が現れれば、彼らは音もなく消え去り、国境を護る生体防衛網の「生きた部品(下位眷属)」となって国に貢献することになるだけだ。

 

「お姉様! 今日のゲームの大会、私が優勝したから、イチゴパフェを奢って!」

 

「ずるい! 私の方がスコアが高かったのに!」

 

玉座の周りで、すっかりエリュシオンの次世代の最高幹部に成長した8人のプルシリーズの妹たちが、ルクレツィアに甘えるように賑やかに笑い合う。

 

「はいはい、みんなよく頑張ったわね。パフェくらい、いくらでも奢ってあげるわよ」

 

ルクレツィア・ヴィスティリア(中身は佐藤、気弱だが冷静な元おっさん)は、6歳の幼女の姿のまま、愛娘(眷属)たちの頭を1人ずつ愛おしそうに撫で回した。

おっさんとしての趣味(幼女趣味)が極限まで満たされた、最高の老後。ディザード(ナノマシン、ハロ、チョバム、大型ジェネレーター装備の完全無敵)。レムレス・テラ(ブースター、高性能レーダー装備による超長距離隠密強襲仕様)。

歴史のレールを歪ませることなく、そのすべての美味な果実(プルシリーズ、アクシズの残骸)だけを裏から完璧に掠め取り、地球の半分と宇宙の深淵をハッキングした吸血鬼の亡霊国家。これから宇宙世紀がラプラス事変を迎えようが、マフティーの反乱を迎えようが、あるいは100年後に宇宙戦国時代(Vガンダム)へと突入しようが、この絶対聖域だけは、誰にも触れられず、誰にも知られず、不老不死の魔王たちの楽園として永遠に君臨し続ける。

 

「ジオンの独立も、連邦の大義も、結局はただの砂上の楼閣だったわね。……さあ、みんな。お茶にしましょう。私たちの静かで楽しい『老後(生存)』は、これからが本番なんだから」

 

真祖の幼女(おっさん)は、燃えるような真紅の瞳を妖しく、そしてどこまでも満足そうに輝かせながら、世界で最も幸福な亡霊たちの城の中で、静かに微笑むのだった。

 

 

(ガンダム世界宇宙世紀・エリュシオン建国編――完)




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