あなたがトリニティでやってはいけない事リスト 作:装甲アッサム春雨
トリニティのモブが持ってるライフルとスラム時代から使っていたグレネードランチャー(AS-40)
先輩の使用武器
トリニティのモブが持ってるライフル。時折、機関銃を持ち出してくる。
桐藤ナギサは限界が近かった。
生来、高い言語能力と判断能力があり、自身の本音を隠す事が上手かった彼女は、自身の性格とは関係無く政治に対する適性が高かった。
だがそれは、桐藤ナギサの性格には合っていなかった。
「ナ、ナギちゃん……」
「……大丈夫です、ミカさん。ほら、紅茶も良い香りですよ」
大事な幼馴染みからの、あ、これヤバい。という普段なら気付ける視線にも気付いていない。
紅茶が並々と注がれたカップを唇に傾け、今にも震え出しそうな手を抑え込む。
「で? なんでアタシらまで呼ばれたんだ? ナギサさんよ」
「それにつきましては、皆さんが集合してから説明しますので……」
「早くしてよー。古聖堂の修繕、結構手間取ってんだからさ」
器物保全部、塵塚アヤコと御手洗ショウコ。
二人して保全部の作業服に泥汚れを着けたまま椅子に浅く腰掛け、塵塚はポケットからビーフジャーキーを取り出し齧り、御手洗は供された紅茶を舐める様に飲んでいる。
「つか、あの尾っぽは何処行きやがった?」
「いきなりニュッて出てきてそのままこうだもんね。あ、隊長。ジャーキーちょうだい」
「あいよ」
この会議室はジャーキーを齧る保全部二人と、紅茶を片手に現状を把握しようとするホスト二人だけ。
普段なら揃う事の無い四人、ジャーキーを齧る音とカップの音だけが響く中、塵塚が口を開いた。
「ナギサさんよ。あんた、ちゃんと飯食ってるか? 前より痩せてね?」
「……食事はちゃんと摂っていますよ」
「嘘。ナギちゃん、昨日私が気付かなかったら紅茶だけでお昼済ませようとしてたじゃん」
「ミカさん?」
「ほれ見ろ。アタシらがよく行く定食屋、紹介してやろうか?」
「いえ、そこまでしていただく訳には……」
「大丈夫だって。ナギサさんが気にする様なあれこれは起きないから。てか、起こした瞬間に常連から袋叩きにされて放り出される」
「アタシら器物保全部が倒れねえ理由だ。行って損はねえ。……まあ、今日は食い損ねたんだがな!」
「今日の日替わりは角煮定食だったのにー!」
つまらん話なら許さんぞ。と、今のトリニティで恐らく、一番タイトスケジュールで動いている肉体労働者二人からの恨めしい視線を受けて、ナギサの胃は更に軋んだ。
只でさえ今日はゲヘナとの会談で、風紀委員長の空崎ヒナを初めて見て一瞬で彼女が警戒状態に入ったり、万魔殿議長の羽沼マコトの胡乱な言動に頭を悩ませたり、気付いたら居眠りをしていた赤髪の万魔殿議員に頭が痛くなったりと、約三時間程の会談であったがかなりの疲れを覚え、流石に今日は早くに休もうとしたところで、少女から緊急の案件の連絡が飛び込んできてからのこの現状だ。
桐藤ナギサは限界が近かったが、まだ全員が集まっていない。
「ナギちゃん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
「ったく、次は辛子饅頭食わしてやる」
「ねーねー、ミカさん。何があったか聞いてないのー?」
「ご、ごめんね? 私もあの子の電話でいきなり呼ばれてね」
「……あいつも尾っぽに似てきたな」
「誰がでしょうか」
「うぉあっ!?」
突然の声に塵塚は椅子から転げ落ちそうになる。
「……お待たせしてしまい申し訳ありません。皆様をお連れしました」
少女は転げ落ちそうになった塵塚を軽く支え、そして礼をする。
そして、トリニティの主な面々が会議室に続々と入室していく。
「一体、何があったのですか?」
「それの説明が今からあるのでしょう」
シスターフッド首長歌住サクラコが何が起きているのか判らない顔で入室し、共に入ってきた救護騎士団団長蒼森ミネが厳しい顔で説明する。
「…………」
続いて、正義実現委員会委員長剣先ツルギがその経験からか、険しい表情で無言のまま入室する。
全員が何が起きているのか判らないままの夜半の緊急招集、トリニティの各派閥の首長から説明を求める視線がホストであるナギサに向けられ、ナギサの胃はまた深く軋んだ。
そして、少女が会議室の扉を閉めナギサの隣に立つ。
「皆様、この様なお時間でのお呼び出し、誠に申し訳ございません」
「……救護騎士団は夜間の救護もありますので問題はありません。しかし、トリニティの各首長の呼び出しとは一体何があったのですか?」
ミネの鋭い視線と言葉がナギサの胃を刺す。
ミネの隣に座るサクラコとツルギはナギサの状態に気付いて、心配そうな視線を向けてくるが、それも今のナギサの胃には重い打撃となる。
「ナギサ様、私が説明致します」
「……お願いします」
常に優雅たれ。代々続くティーパーティーホストの不文律。しかし、ナギサの胃は連日の激務に限界を迎えつつあった。
「……まだ揃ってはおりませんが、改めまして、今回皆様にお集まりいただいたのは、トリニティ引いてはキヴォトスの危機回避の為に御座います」
「それは一体、どういう……」
驚愕したサクラコが思わず問おうとし、ナギサの胃に何かが刺さった瞬間、会議室の扉が割りと勢いよく開かれた。
「先輩、セイア様とアズサ連れて来た。ました」
「扉はもう少し静かに開けなさい」
「まあ、そう言わないでやってくれ。なかなかに良い乗り心地だったんだ。アズサもそうだろう?」
「あ、ああ、そうだな」
入室したのはティーパーティー三首長の最後の一人、百合園セイアと転入生白洲アズサ。そして、セイアを自身の尾の根元に座らせ、アズサを巻き付けた彼女だった。
「セイア様?!」
彼女の尾に座るセイアにミネが駆け寄る。
「ああ、ミネ。大丈夫だ。今日は調子が良いし、この子も私への負担が無いようにしてくれたからね」
「しかし……」
「それに寝てばかりでは気が滅入る。気分転換だと思ってくれ」
「……畏まりました。しかし、何かあればすぐさまお止めしますので、御容赦を」
「ああ、頼んだよ」
いつかよりもずっと顔色が良いセイアの姿を見たナギサは、胃痛が若干だが引いた。
激務に続く激務、ミカも同様だが彼女はナギサの為に努めてそういった面は見せない様にしているし、そもそも元々の体力がナギサとは違う。
限界が近いナギサだが、セイアが戻ってくればこの激務も少しはマシになる。今回の話だって、きっと解決策を見出だしている筈だ。
「セイアさん、良かった……」
「それに、今回の話は私とアズサが必須だ。何せ、これからトリニティは過去からの怒りと対面する事になる」
「セイアさん……?」
そう思っていた。
おかしい。セイアは大分、というよりかなり思わせぶりで大仰な言い方をするが、長い付き合いで冗談かそうでないかは表情で見分けがつく。
それに、隣に座るミカの様子もおかしい。
彼女の尾から降りたアズサを見てから、視線が右往左往しているし、アズサもミカを見て申し訳無さそうに視線を伏している。
ナギサの胃が引き絞られた。もう紅茶しか入っていないのに、何かの塊が出てきそうだ。
過去からの怒り、というからにはまさかゲヘナから何かあったのか。
しかし、アズサはゲヘナからの転入生ではなかった筈。なら何故、彼女が推薦したミカの様子がおかしいのか。
ナギサは叫び出したかったし、隣に立つ少女に並ぶ彼女に、何時もポケットに忍ばせているビスケットでも与えて現実逃避もしたかった。普段の茶会で食べる菓子類より一段落ちる品だが、そんなものでも彼女は無邪気に喜んでくれるのだ。
背後で揺れる彼女の尻尾の尾鰭に、こっそり乗せて渡そうかとポケットに膝に置いた手を伸ばすが、それを察した隣の少女からの猛禽類の如き視線もナギサの胃に突き刺さった。
「……それでセイアさん、お話というのは……」
「そうだね。手早く結論から言おう」
どうか、どうかお願いします。ゲヘナ間での問題なら、まだエデン条約内でどうにか出来ますので……。
ナギサな痛む胃を周囲にバレない様に庇いながら、神や最近通話越しで話しただけの先生にも祈った。
溺れる者は藁をも掴むというが、今のナギサの心境は沈没寸前のクルーズ船だ。
どうにか自分という船体を立て直そうと、救助に来たセイアから投げ渡される浮き輪に手を伸ばしていた。
「曾て、公会議により我々トリニティが追放したアリウス分派が、我々に牙を剥こうとしている」
「んんっ……!!」
セイアから投げ渡されたのは浮き輪ではなく石で、ナギサは胃の辺りから感覚が消えた。
『あなた』
セイアを大急ぎで運びながら、怪しい気配が無いか探っていた。
ナギサから餌付けの気配を感じて、こっそり尻尾を伸ばしたが、隣からの凄まじい視線を感じて大人しくした。
スラム時代は頂点捕食者みたいな立ち位置に居た。
先輩
特にナギサを睨んだつもりは無く、ただナギサを心配して視線を向けただけ。『あなた』に対しても、尻尾を揺らすなという警告のつもりだった。
ナギサ
エデン条約締結に向けた激務で胃が痛い。
今、痛みが消えた。
ミカ
アズサには悪戯でビックリ箱を届けてもらっただけの筈なのに、何故かセイアからアリウスの名前が出て混乱中。
原作よりゲヘナ嫌いはマシ。うっすら苦手だな。程度
セイア
木から木へ、建物から建物へのパルクールがとても楽しかったやんちゃフォックス。
今は本当に体調が良い。
次はナギちゃんキレる。
二人の名前
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要る
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要らない