あなたがトリニティでやってはいけない事リスト 作:装甲アッサム春雨
トリニティとゲヘナの緩衝地帯にあるキヴォトス最悪の悪所とも言われる中規模スラム。
ゲヘナ以上の混沌、ブラックマーケット以下の治安と倫理観が支配する区域で、連邦法と自治区法が通じない。キヴォトスの犯罪者はスラムやブラックマーケットに逃げ込む事もあるが、この0番スラムに逃げ込む犯罪者はほぼ居ない。
入ればほぼ間違いなく出られない。仮に出られても何かを失う。
内部では大小様々なマフィアやギャングがひしめき合い、覇権を巡って日々争い合っている。
だが、その連中も『あなた』の縄張りには手を出さなかった。
それは曾て、〝0番スラム〟を手中に納めかけたマフィアが『あなた』を手駒にしようとして返り討ちに遭い、配下のファミリーごと壊滅させられたからだ。
あ、感想返信は明日以降纏めて返信しますので、お気軽にどうぞ
ここはトリニティ総合学園一年生のあなたのトリニティ並びにキヴォトスでの禁則事項です。
よく確認しておいてください。
45.念の為、もう一度言っておきます。……あまり、物騒な事は言わない様に。
・こ、今回はあなただけが悪い訳ではありませんが、念の為にもう一度言っておきます。
あまり、物騒な事は言わない様に。
・ええ、そうですね。確かに今回の発端はサクラコ様です。
しかし、あなたも解っている様にあれはあの方のタイプミスです。
塵塚さんが笑っていた事で気付けたでしょう。
なので、スラムでのそういった知識を披露するのは控えなさい。
・確かに、その知識と経験はあなたが生きてきた証とも言えるものです。
ですが、今あなたが居るのはトリニティ総合学園。その知識を無理に披露せずともよいのです。
・ええ、サクラコ様はトリニティ=スゴイコワイヒトとして有名ですが、モモトークでの発言の様な事をする方ではありません。
なので、上手なマフィアの焼き方とやらを披露せずともよいのです。
サクラコ様はマフィンを焼いただけで、マフィアは焼いていませんからね。
皆様も困っていたでしょう?
46.空崎ヒナ委員長は恐ろしい人かもしれませんが、あなたが警戒する必要はありません。
・あなた、また尾が立っていましたよ。
空崎ヒナ委員長は確かに恐ろしい人かもしれませんが、あの方は温厚で聡明な方です。
あなたが警戒する様な危険な人物ではありません。
・宇宙怪獣? あなたは一体何を言ってますの?
生物部の方達が言っていた? あれはもう人ではなく宇宙怪獣ヒナゴンだと?
……あなたにも言いたい事はありますが、それよりも生物部は一体何故その様な事を?
・以前極秘にゲヘナでのみ生息する紫色の円盤型生物を採集しに行った時に見たらしい。ですか。
……あなたには詳細を言っておりませんでしたが、ゲヘナに赴く事は禁止されている訳ではありませんが、現在のトリニティの規則では事前に申告が必要になり、その申告書の処理は私の仕事の一つでもあります。
そして、私の見落としが無ければ生物部からその申告書はこの数ヶ月提出されておりません。
・つまり、規則違反をした挙げ句、ゲヘナで問題を起こそうとしていた可能性まである、と。
ふー…………、おや、どうしましたか?
首? ……ああ、私とした事があまりにあまりな話を聞いて、首だけであなたの方を向いてしまいましたか。
これは失敬。では、ミカ様。大変申し訳ありませんが、私は少々所用が出来ましたので、先に失礼させていただきます。
47.ゲヘナ万魔殿議長はあなたが思う程、愚かではありません。……恐らく。
・……ただいま戻りました。あなたもお役目の方は恙無く終えた様で何よりです。
ええ、私の所用も終わりました。
……どうしましたか?
・万魔殿議長が何か隠してる? スラムでああいった態度の奴は大抵が蝙蝠?
ふむ、あのミカ様を相手に隠し事が出来るとは思えませんが、アズサさん達の事に気付いたあなたです。
きっと、何か感ずるものがあったのですね。ミカ様達にその事は?
伝えているのでしたら宜しい。
・成る程、ミカ様も勘づいておられましたか。
しかし、あなた。よく気付きますね。
ふむ? ああいう調子のいい事ばかり言う奴は、大体誰にでも同じ事をしていて、ミカ様がアリウスの存在をぼかして話をしたら明らかに慌てていた。ですか。
スラムで裏切るか、裏で美味しいところだけ持っていこうとする奴そっくり。だという事ですね。
・因みに、そういった者はどうなりましたか?
大抵が両方から攻撃されるか、騙していた方にツケを払う事になる。ですか。
万魔殿議長はあのゲヘナをまがりなりにも統治する方、そうならない事を祈りましょう。
まあ、ミカ様が勘づいている時点でパテル派式交渉を向けられるとは思いますが。
「お二人、カップの持ち方はそうではありません。私の様にお持ちください」
補習授業の間の穏やかなティータイムだが、ある種の緊張感が漂っていた。
「こうか?」
「そうです。コハルさん、もし持ち難かったらハンドルに指を通しても構いません」
「だ、大丈夫よ」
「相変わらず細けえな。好きにすりゃいいじゃん」
「塵塚さん。彼女らはこれからのトリニティを背負う事なる身です。その時にマナーの不出来で恥をかくのは彼女達。私は彼女達の不利益を許しません」
「浦和と阿慈谷、白洲はアタシらと同学年だろ」
「だからこそ、です。貴女もですよ」
「へいへい」
ティーカップを湯飲みの様に持ち、紅茶を流し込む。
少女からの視線が更に鋭くなった気がするが、こちとら万年肉体労働学生なのだ。そんな事は知った事ではない。
「まあまあ、二人共。せっかくのお茶なんだしさ」
「そうは申されますが、先生。マナーとはその人の第一印象の一つ、そこを疎かにするのは彼女達の不利益です」
「でもさ、親睦会みたいなものだし、私達しか居ないんだから、そこまで固くならなくてもいいとは思うよ」
「……ふむ、確かにそうですね。先程から少々、熱が入り過ぎた様です」
そう言うと、少女から緊張感の様な威圧感と言うべきか判らない雰囲気が消えた。
厳しいばかりかとも思っていたがナギサ達の話通り、柔軟に事を見れる様だ。
「しかし、先程も申し上げましたが、この期間中は皆様は勉学に向けて邁進してもらう事になります。そこを忘れぬ様に宜しくお願い致します」
「固い固い。息抜きはしてもいいが、そこんとこしっかりしとけ。でいいじゃん」
「塵塚さん、貴女はもう少し発言に慎みをお持ちなさい」
「へいへい」
少女の目がまた鋭くなるが、どこ吹く風と塵塚は受け流す。
もう慣れたものだ。
と、そんな時だった。彼女の携帯から通知音がした。
「失礼する。です」
ティーパーティーホストの護衛も務める彼女、急な護衛かと思い携帯を取り出し、通知内容を確認する。
そして、首を傾げる。
「どうしたよ? 尾っぽ」
「えと、んん?」
どう説明するべきかまよった彼女は、塵塚にモモトークの画面を見せる。
通知の送り主はサクラコ。
内容は
――マフィアがたくさん焼けましたので、お立ち寄りの際はお声掛けください。
だった。
「ぶっは! 見ろよ阿慈谷、浦和。サクラコさん、またやりやがった!」
「サクラコ様……」
「あ、あはは……」
「あらあら、サクラコさんも大胆ですね」
「ほら、お前らも」
「マ、マフィアって……」
「これが、噂に聞くシスターフッドか。すごいな……」
「サクラコ……」
「あの方はまた……」
画面を見た面々は各々に笑ったり呆れたりだったが一人、彼女だけは反応が違った。
目を軽く見開き、鼻息荒く立ち上がる。
「あなた、どうしました?」
「私、マフィアの上手な焼き方知ってる。ます。だから、サクラコ様に教えてきます」
「お待ちなさい。いや、本当にお待ちなさい! ……ああもう! 皆様、申し訳ありませんが失礼させていただきます!」
「あ、では私も一緒に。皆さん、お先に失礼します」
すぐにでも駆け出そうとする彼女を少女が止め様とするが間に合わず、マリーと共に彼女の後を追って走り出す。
そして、塵塚がサクラコにタイプミスを知らせる連絡を入れると、すぐに訂正のモモトークが飛んできた。
――先程の連絡に誤りがありました。正しくはマフィンです……。
「ほら、見ろ。サクラコさん恒例のタイプミスだ」
「サクラコ様、どうしてモモトークの時ばかり……」
「あの、塵塚さん。先程のは……」
「ん? ああ、尾っぽの事か。お前と下江なら知ってるか。あいつはスラム、それも〝0番スラム〟から来た。いや、連れて来られたが正しいか」
「〝0番スラム〟って、あの〝0番スラム〟!?」
「アヤコ、それは……」
「落ち着けよ、先生。別に隠してる事じゃねえ」
コハルの驚愕と先生の制止をやんわりと受け止めて、マリー手製のクッキーを口に放り込み、ハナコとコハルに視線を向ける。
「〝0番スラム〟、通りで……」
「どうした? 阿慈谷」
「え? いや、前に戦車から引き摺り出された事があって……」
「ああ、アタシも見てたわ。配管の詰まり抜くみたいに引っこ抜かれて連れてかれてたな」
「私もツルギ先輩と戦ってるところ……」
「あれは刺激強かったろ。まあ、ツルギさんが許してんだ。大目に見てやれ」
「でも……」
「コハル」
先生が塵塚に先んじて口を挟む。
「怖かった?」
「え? うん……」
「そっか。私もナギサ達から話を聞いた時は驚いたよ。でも、恐怖に負けちゃいけない。あの子も怖かったし必死だったんだ」
「怖かった?」
「そう、一応話は聞いていても、それでも自分の知らない世界に放り込まれて攻撃されて、だから自分の身を守る為にあんな事になった」
事の発端は彼女という未知の存在に対する好奇心だった。
しかし、そこからエスカレートしてとうとう越えてはいけない一線を越え、当時学園に残っていた正義実現委員会を半壊寸前にまで追い詰める事になってしまった。
該当生徒も一部を除いて悪意があった訳ではない。
ただ、その一部が彼女の逆鱗に触れた。
先生はこの一連の流れを十代特有の未知に対する好奇心と無知、これが原因と見ている。
人は自身の知識と理解から外れたものを恐れると同時に、それに対する好奇心を抱く。
十代は特に好奇心が先行しやすい。そして同時に恐怖もだ。
「さっきのお説教で、正義実現委員会は他人を守り安寧や安堵を約束する立場だって言われたよね?」
「うん」
「でもそれは一方的に事件を起こした相手を排除しろって話ではないんだよ。問題を起こした方にも何故と、追及しないとただ事件を起こしたからで誰かを追い出してしまう。それを繰り返すと誰も居なくなってしまう」
説明が下手でごめんね。と先生は続けた。
「だから、言葉がある。そして、言葉は知識の塊であり恐ろしい力を持つ癖にはっきりとした姿形を持たない武器でもある」
「武器、ですか?」
「うん。キヴォトスの皆は普通に銃という武器を持ってるよね。そして、それは違いはあるけど〝銃〟という形から外れた物は無い」
先生は自分の手で所謂指鉄砲の形を作る。
銃はデザインや用途の差があれど、グリップの上に銃身がある。この形から変わる事は無い。
だが、言葉は違う。
「言葉というのは便利な道具でもあり武器にもなる。誰かを守り救う事も出来るし、その反対に誰かから奪い殺す事だって出来る。共通してるのは使い方を間違えたらそうなるって事だね」
「かなり大袈裟な気もしなくはないですが……」
「そうだね。ハナコの言う通り、私はかなり極論で語ってる。でも、言葉にはそれだけの力がある。何せ、人類をここまで発展させたものの一つだからね」
そして、
「言葉を形にした文字、これも同じ。文字もその並びや組み合わせ、その場面で姿形をコロコロ変える。視覚で判断出来る分、言葉よりも危険な存在かもしれない」
「だが、危険だからと使わない訳にはいかない」
「そ、アズサの言う通り。危険だから、危ないから、怖いから、解らないから、これを理由に逃げると間違った使い方をして最悪の事態を引き起こすかもしれない。まあ、つまり何が言いたいかと言うと……」
「ちゃんと勉強して正しい知識を身に付けねえと、とんでもねえ事しでかすぞ。だろ? 先生」
「正解。言葉を使うには知識、知識を得るには勉強。あの事の切っ掛けになってしまった子達も、言葉の使い方を間違えてしまった」
文字とは力を持つ。なら、文字の羅列である言葉とは力そのものだ。
言葉は良き隣人であり恐れるべき怪物でもある。そして、人はその怪物を御して発展してきた。
だからこそ、物事を学び怪物を御する手綱を手に入れなくてはならない。
だから、
「だからこそ、知らない知らなかったでは済まない事もある。なので、勉強は大事でそこで得た知識をどう使うのか。勉強はそれを考える力にもなりますってね」
「だから、あんまり尾っぽを怖がってやんな。こっちから妙な事しなきゃ、何もしてこねえから」
「いや、それは誰だって同じでは?」
「ああ、そうだ。つまりはそういうこった。んじゃ、アタシも行くわ。勉強ちゃんとしろよ」
「アヤコもまた来なよ」
「こっから大詰めなんだわ。何せ、二週間以内って〆切があるもんでな」
手を振りながら教室から出る塵塚と、それを見送る先生と補習授業部だったが、その中でハナコが誰にも聞こえない声で呟いた。
「エデン条約締結にはまだ時間があるのに、〆切が二週間以内……?」
『あなた』
各校最大戦力にも水中なら圧倒出来る。
マフィアの上手な焼き方を知っている。
コツは逆らう、抵抗する、反抗する心を徹底的にへし折り、擂り潰し、二度と穴ぐらから出てこられなくなるまで叩き潰す。
先輩
生物部に対して淑女式ダイナミックエントリーを敢行した。今回はデザートイーグル二丁を持ち、途中で見つかってしまったイチカを伴って行った。
サクラコ
何故かプライベートな発言する際によく誤字をする。
マフィアは焼いてない。サクラコ様は清廉潔白かつ品行方正で慈悲深い方です。
ヒフミ
『あなた』はスラムから来ただけだよ?
アズサ
『あなた』のフィジカルに納得
コハル
ツルギの肩を食い千切りかけた瞬間を目撃していた。
ハナコ
塵塚さんはエアコンの点検を頼んだから来た。なら、何故シスターフッドとティーパーティーがこの補習授業部に?
そして、二週間以内の〆切?
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