あなたがトリニティでやってはいけない事リスト 作:装甲アッサム春雨
ここはトリニティ総合学園一年生のあなたがトリニティ並びにキヴォトスでの禁則事項です。
よく確認しておいてください。
7.お茶菓子は食べ過ぎてはいけません。淑女たる者、常に慎みを以て行動してください。
・ケーキは一つ、クッキーはこのお皿のものを皆で分け合うものです。淑女たる者、常に慎みを以て行動してください。
・……貰ったというのであれば、仕方ありません。
ですが、それでも慎みというものを……。
ナギサ様?! ミカ様セイア様まで?! ちょ、ちょっとお待ちください! この子にそんなに与えては夕飯を食べなくなってしまいます!
・与えたらその分食べるから面白くなった。ではありません!
この子に親しみを以て接していただける事は恐悦至極にではありますが、淑女教育の一貫として……。
あ、こら! ケーキを持って逃げない!!
8.淑女たる者、勉学は必須です。知識無き者に光はありません。
・勉学とは学園の座学だけではありません。言ってしまえば、日々の事柄の全てが勉学なのです。
・え、ええ、そうですね。あなたが私の目を盗んで、あちこち駆け回っているのも、ある意味では勉学になります。
しかし、淑女たる者。無闇矢鱈に走り回るのははしたない事で……。
…………なんですか、それは?
・いえ、カブトムシは解ります。まだ季節は早いですが、確かにカブトムシですね。
私が聞いているのは、何故あなたが今、そのカブトムシを両手に持って私に近付いて来ているかです。
・カッコいい? ……んんっ!……、確かにカブトムシ等の甲虫は鎧兜を連想させる外見で、塵塚さんと御手洗さんの溜まり場に出入りしているあなたには、とても力強く惹かれる外見でしょうね。
ええ、そうですね。だから、そこで止まりなさい。
こら! 裏側を向けて走って来ない……!!
9.勉学は大事ですが、何事にもTPOや限度があります。
・……い、いいですか? 先程、勉学は大事で日々の事柄全てが勉学だと説明しました。
ですが、それにも限度があります。
あなたが生物や古物等に興味がある事を、私はとてもよく知っています。
しかし、中にはそれらが苦手な方もいらっしゃいます。
なので、自室で昆虫等の飼育は控えなさい。何故、先日のカブトムシの他にカニとエビが増えているのですか?!
・硬くてカッコいい? んんっ……!! 解りました。いや、解りましたと言ったから見せなくてよいのです! その蠢く裏側を見せなくてよいのです……!!
10.淑女たる者、常に落ち着きと礼節を以て行動と発言をしましょう。
・ナギサ様からの頼み事を完遂された事については、あなたの成長を知れて私はとても嬉しく思います。
ええ、本当ですよ。よく出来ました。
・しかし、いくら急用だからとヒフミさんが運転する戦車に飛び乗り、ヒフミさんを誘拐同然の方法で連れて来る事がありますか!!?
・止まってたから大丈夫? そういう問題ではありません!!
イチカさんから聞きましたよ? 止まっていた戦車に木の上から突然降ってきて、戦車に入り込むと同時にヒフミさんを抱えて木から木に飛び移って行ったと……。
・あなたの身体能力については私もよく知っていますし、ツルギ委員長からのお墨付きも戴いた誇らしいものです。
しかし、ゲストを小脇に抱えて木々を飛び移るのは淑女ではありません!
まったく、ドアからではなくテラスから目を回したヒフミさんを抱えて顔を出した時は肝が冷えましたよ……。
・……そうですね。あなたの謝罪を受け入れます。
いいですか。淑女たる者、常に落ち着きと礼節を以て行動をしなさい。
…………本当の緊急時以外はです。
11.確かに先日、真似をするべき相手の真似をしましょうとは言いましたが、ちょっと考えましょう。
・あなたのその、時折骨格の有無を心配する隙間に器用に入り込む特技はとてもよく知っています。
ええ、私も何度驚かされた事か……。
・ええ、特技があるのは素晴らしい事です。
ですが、それを悪用して一個人をつけ回す事はなりません!
まったくもう……、ミカ様からお許しいただけたからよかったものを……。事が事なら、私からのお説教だけでは済まなかったのですよ?!
・というかあなた、一体何処に居たのですか?
突然ミカ様の悲鳴が聞こえたと思ったら、あなたが纏わり付いたミカ様がティーパーティーテラスに飛び込んで来たのですが……。
・嫌な感じがしてミカ様を追い掛けてたら、私が前に入ってはいけないと言っていた所に、ミカ様が迷い込みそうになったから止めた?
んんっ……、そうであるならあなたの判断は正しいものですが、方法を考えましょう。
私はもう慣れてしまいましたが、調度品や家具の隙間からあなたが出てきて纏わり付いてくるのは、他の方々には驚愕以外の何者でもありません。
ああもう、こっちに来なさい。よく見たら埃まみれではありませんか!
だから、隙間に入り込む癖を直しなさいと……!!
……しかし、私が禁止した場所はシスターフッドと地下のカタコンベくらいです。
シスターフッドは言わずもがな、カタコンベの危険性はミカ様もご存知の筈ですが……。
12.頼まれ事を引き受けるのはいいですが、時には断る事も大事です。
・例え相手がシスターフッドと言えど、礼節を以て頼まれたなら引き受けるべきです。
しかし、もう少しこう、あったでしょう?
・いや、首を傾げるのではなく……。私に連絡するとか、着替えるとか。
ティーパーティーの制服で野良仕事の助力をするとは……。
いいですか? ティーパーティーとはこのトリニティ総合学園並びに、トリニティ自治区の法と秩序の代表なのです。
そのティーパーティーの者が、制服を泥に汚すのはあってはならない事です。
・いや、頼まれ事を引き受けるなという話ではなく、今回の様に野外や肉体労働をする際には着替えて制服を汚さない様にしなさいという事です。
13.暴力に頼るのは最もいけない事の一つです。
・……よいですか。このトリニティ、ひいてはキヴォトスにおいて暴力というのは非常にありふれた手段です。
しかし、ありふれているからとそれに頼るのは、淑女としても人としてもあってはならない事です。
・そうですね。今回はお説教ではなく確認です。あなたがまずは言葉で争いを止めようとした事、私は非常に誇らしく思います。
そして今回、暴力による解決に至った経緯も致し方ない事だと理解しています。
・ええ、皆がそうなればよいのですが……。言葉による相互理解、これを欠いては何も為せません。
今回の転入生の白州さんも、これを機会に知ってくれるとよいのですが……。
……失礼、電話です。少々お待ちを。
・……………今回、お説教は無しと申しましたが撤回します。
あなた、正義実現委員会とも交戦しましたの?!
し、しかもツルギ委員長に関節技を仕掛けて、ハスミ副委員長にバックドロップをしてそのまま逃げた……?!
何をやってますのあなた!?!?
・ええい! そこに直りなさい!!
あなた、本当に何をやってますの!? 仲裁? コブラツイストとバックドロップは仲裁ではなく、プロレスリングの技です!!
ああもう! ほら、行きますわよ! 決まっているでしょう。正義実現委員会に謝罪です!!
14.物は大切にしましょう。しかし、消耗品等はその限りではありません。
・なんだ? アタシも書くのか?
あー、念の為だが一応シスターフッド麾下組織の器物保全部部長の塵塚アヤコだ。
まあ、物を大切にするのは大事だ。特にこの学校の連中が使ってるのは大半が高級品、アタシらみたいなモンにゃ手が出ねえ。
・そうだな。だから、お前みたいに直し方を聞きに来る奴は珍しい。大体は壊れたら買い直すからな。
しかし、今回は骨が折れた。こんなに手の込んだ装飾と内部機構を弄ったのは久々だ。
・手入れも難しいから、定期的にアタシん所に持ってこい。あ? 自分でやってみる?
はっ、いいじゃん。やってみな。どうしようもなくなったら手は貸してやる。
しかし、こんなオルゴール。何処で手に入れた? シスターフッドとティーパーティーでも、なかなか見ねえぞ。
・なに? フリマ? マジか……。アタシもショウコ連れて見に行ってみるか。
そんじゃ、アタシはもう行くぞ。
ん? あいつに会って行かねえのか? まあ、茶ぐらい飲みたいが、サクラコさんから古聖堂の修繕を頼まれててな。急がねえと。
しかし、あの古聖堂を何に使うんだ?
『あなた』
身体能力が高く、ツルギが驚愕する程非常に頑丈な身体を持つ。狭い隙間に入り込む癖がある。時折、骨格の有無を心配する様な隙間から出てくる事があり、先輩を心配させている。
最近はティーパーティー三首長から餌付けをされており、先輩は粗相をしないか肝を冷やしている。
先輩
『あなた』の教育係となってから、改めて自身の立ち振舞いを見直し、『あなた』の教育係として恥ずかしくない様心掛けている。
身体能力はあまり高くなく、逃げ出した『あなた』を息を切らしながら追い掛ける風景が、最近のトリニティの風物詩となっている。
ほぼ毎日、お説教から逃げ出す『あなた』を追い掛けているせいか、脚が筋肉質になってきた。
塵塚さん
トリニティ総合学園二年生、シスターフッド麾下組織器物保全部部長。雑に纏めた髪とハンチング帽がトレードマーク。
トリニティ総合学園の歴史ある施設や物品の保全補修修繕を一手に引き受ける部の代表だが、現在の正式な保全部は塵塚と御手洗の二人だけであり、かなり忙しなく走り回っている。
この間は大捕物の末に建物の一部を破壊した正義実現委員会に、金槌とヤットコ両手に襲い掛かった。