あなたがトリニティでやってはいけない事リスト 作:装甲アッサム春雨
久々のお暴力にウキウキするも、なんか調子が出ない
先輩
『あなた』がやり過ぎないか内心ハラハラしているが、それは無いと確信もしている
感想返信はまた後日
「いやああぁぁぁぁっ!?」
阿鼻叫喚の地獄絵図とはこの事か。
トリニティ総合学園第三校舎にあるカタコンベ出入口から攻め入ったアリウス部隊は、一も二もなく理解出来ない存在に逃げ惑うしか出来なかった。
何故、こうなったのか。完全に夜間の不意討ちが決まり、このまま正門突入組と挟み撃ちの形であの憎いトリニティに自分達の痛みを思い知らせる事が出来た筈なのに、どうしてこうなったのだ。
その原因は、無駄に豪華な校舎の正面入口で高笑いする二人だ。
「ははははははははははは! アタシらの怒りを思い知れ!!」
「君達のせいで私達は……!!」
意味が解らない。お前達のせいで、と言うのならそれはこちらの台詞だ。
この第一突撃隊のアリウス部隊がトリニティに突入して、一番初めに見たのはハンチングを目深に被った背は低いが体格の良い生徒と、やけに手入れされた金髪の翼持ちの生徒で、二人して目が据わっていた。
だが、所詮は二人だけ。すぐに制圧して、情報を吐かせて積年の恨みを最初にぶつけられる。
そう思って、心のままに襲い掛かった。
それなのに、二人がライターで何かに火を点けた瞬間、理解出来ない存在が襲ってきた。
「よーし、試験無しのぶっつけ本番でもいけるな! 流石はアタシ!!」
「やったよ隊長! 延焼対策もバッチリ! 今日は満漢全席だ!!」
火花を散らし、不規則な動きで疾走して突如として爆発するドラム缶。
言葉にすればそれだけなのに、
「よっしゃ、これが終わったら飯だ! アタシの奢りだ!」
「やったよ隊長! 私ミックスフライ炒飯定食がいい!」
「おう、餃子とラーメンもつけろ! アタシは海南鶏飯もつける!」
「「はははははははははははははははははははははは!!」」
「このクソトリニティがぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
「誰がクソだ?! おら、追加じゃボケぇっ!!」
アリウス部隊が更に追加されたパンジャンドラムに追い回され、爆発に吹き飛ぶ仲間達に嘆き叫び保全部が笑う。
と、そんな惨劇の最中に見覚えのある黒い制服の集団が飛び込んできた。
「大丈夫ですか?! 保全部の皆さん、援護に来ま……え?」
正義実現委員会の静山マシロが、保全部の持ち場から不審な爆発が連続していると、報告を受けて遊撃部隊の一つを率いて保全部の援護に来た。
保全部は喧嘩っ早いが、直接戦闘力が高いのは塵塚だけで御手洗はそうではないし、戦えると言っても自分達の様な訓練も受けていない。
保全部は学園運営の要の部活、何かあっては今後に関わる。だから、マシロは急いで現場に来た。
そして、見た。
「マシロー!?」
不規則に走り、突然跳ねてこちらに飛んできた回転しながら火花を散らすドラム缶を。
そして、遊撃部隊を巻き込んでドラム缶が爆発した。
「……あー、そういやバランサーもアブソーバーも積んでないからそうなるか」
「うん、ジャイロも積んでないから、安定とかする訳ないよね」
「「………………やっべ」」
ふっと、冷静になった二人は逃げ出したが遅かった。
追加も含めた合計40機のパンジャンドラムは、遂にその牙を剥いた。
もし仮に、あれの制作現場を先生が見ていたら、全力でそれを止めただろうが、そうはならなかったからこうなった。
「うおおお! 走れお前ら!」
保全部を先頭に正義実現委員会とアリウス部隊が、背後に迫るパンジャンドラムの群れから逃げて並走する。
そして、その群れから外れた一機が校舎の近くで跳ねて爆発し、その爆発を皮切りに次々と爆破炎上していく。
「あ、隊長ヤバい! 火! 火点いた延焼!!」
「やべえ! お前ら手ぇ貸せ消火だ!!」
「なんで我々が貴様らに手を貸さなきゃならん!?」
「ばっかお前、校舎にまだあれあんだよ!」
「なんであんなものがまだあるんだ!?」
「カタコンベに突っ込ませる為だ!」
「イカれてんのかお前ら!!」
「とりあえず消火と迎撃ー!!」
第三校舎入口戦線、共通の敵の発生により共闘の後沈静化。
そして、
「キイィィィヤハハハハハハハッッッ!」
「バケモンだぁぁぁぁっ!!」
トリニティ総合学園正門前、正義実現委員会委員長剣先ツルギは喜悦の最中に居た。
この最近はエデン条約反対派も大人しくなり、スケバンやヘルメット団、ゲヘナ生徒もツルギが出張る様な騒動を起こしていない。
平和なのはとても良い事だ。トリニティの治安維持の象徴である正義実現委員会としては、その役目の一端を十分に担えているという事になる。
しかし、自身の役目を暴力装置としているツルギとしては、充足しているが若干だが物足りない毎日でもあった。
だから今、その有り余った体力を存分に発散出来て、ツルギは大満足の最中に居る。
「ねえ、あれ当たってるよね?!」
「グレネードが効かない?!」
「ギィヒヒハハハ! どうした? 塵なら塵らしく舞ってみせろォォオハハハハハ」
「こっち来たぁっ!?」
ツルギが愛用のショットガンを撃つ度に舞い飛ぶアリウス生徒。それを眺めながら、ハスミは各所から集まる情報を元に指揮を飛ばしながら、しみじみと頷く。
「最近は運動不足でしたからはしゃいでますね」
「いや、あれはしゃいでますね。で済ましていいんスかね?」
「イチカ、たまには発散しないと溜め込むだけではいけませんよ」
報告と補給に戻ってきたイチカがハスミに問うが、ハスミはチョコバーを齧りながら平然と答える。
「いや、それは判るっスけど……」
「なら、そういう事です」
「はぁ……?」
「しかし、第三校舎の方も終わった様ですし、これなら早く済みそうですね」
「そうッス……」
ね、と続けようとしたイチカは背後の気配に振り向き、気配の主に銃口を向けた。
そこにはアリウス独自の白い制服が一人、あちこちが擦り切れ、赤が滲んだ姿で折れ曲がった足を引き摺り、捻れた腕を庇いながら割れ引き千切られたガスマスクの奥で恐怖に染まった目で、イチカに助けを求めていた。
「助け……」
その言葉にイチカ達が返事をする間も無く、アリウス生徒は校庭の夜闇から伸びてきたものに巻き付かれ、声を挙げる事すら出来ずに全身を引き絞られ気絶した。
「……こっちまで逃がしたのか?」
イチカとハスミ達が、その光景に絶句しているとアリウス部隊を叩き潰し終えたツルギが、アリウス生徒を巻き付けたままのそれに声を掛けた。
「……皆様、お目汚し失礼しました」
校庭の木々の間、そこから両手に力無く垂れ下がる両手足が無残に捻曲がったアリウスを掴んだ彼女が姿を見せた。
彼女は一瞬、両手と尾のアリウス生徒を放り投げそうになりながらも止まり、その場に静かに寝かせる様に置くと、ややぎこちないながらも丁寧なカーテシーと共に全員に頭を下げた。
「お前なら逃がす間も無く仕留めると思っていたが」
「無駄に怪我をさせるな。と、仰せつかってる。だが……」
イチカとハスミ達は警戒していた。
彼女の目は完全にあの時の、ツルギに重傷を負わせ肩を食い千切ろうとしたあの時の目だった。
〝悪竜〟、そう呼ばれたままかと、二人が緊張している中、部下に指示をしながらツルギは平然と会話を続けた。
「だが、なんだ?」
「壊さずに捕まえるのが、こんなに難しいとは思わなかった」
「だろうな。だが、それに慣れろ。あいつの期待に応える為にな」
「解ってる。オレ……、私も恩は返したい。……では、皆様。先を急ぎますので失礼させていただきます」
「ああ、任せた。それと、校庭にある池は底で地下水路と繋がっている。役立てろ」
「……ツルギ委員長、感謝致します」
彼女は頭を下げ、また夜闇に消えた。
そして、彼女と入れ違いにツルギの指示で校庭の確認に行っていた隊が戻り、ハスミからの報告を受け取りながら状況を確認する。
「どうだった?」
「よ、四十人程が無力化され山積みにされてました」
「まったく、広いとどうしても撃ち漏らしが出るな」
首と肩を回し、ふと右肩を見る。
あの日、ハスミが彼女の額に一撃入れるのが遅れていたら、もしかすると片腕を失っていたかもしれない。
その事に恐怖はした。だが、あの日の彼女の目には怒りよりも悲しみが深かった。
そして、今日とあの会議の時の目はあの日とは違った。
確かな責務、その色があった。
「ハスミ、ここは任せる。イチカ、
「はいッす。……はい?」
「了解しました。ツルギはどちらへ?」
「我等が戦姫の加勢だ」
彼女は変わった。あの日の獣から一人の人に。
これからのトリニティは騒動が尽きず大変だろう。だが、確かに良い方向へと変われる筈だ。
そこに自分が居られない事に寂しさもあるが、それでもその日々の礎となれる事を誇りに、ツルギは一人で第一校舎で戦線を支えるミカの援護へ向かった。
「はぁ、はぁ! なんで、どうして……?!」
マダムとアリウススクワッドの作戦なら、完全に不意を討てて、積年の恨みが晴らせる。
その筈だった。
なのに、蓋を開けて見ればトリニティの主戦力が自分達を待ち構え、全員が散り散りになってしまった。
「どうなってるのよ」
マダムを信じていた訳ではない。だが、逆らえる程賢くもなければ、信用を得ていた訳でもない。
だが、作戦説明で聞いた情報とあまりに食い違いが大き過ぎる。
作戦では、ミカとか言う頭がお花畑な生徒の手引きでトリニティを内部から攻め、ホストである桐藤ナギサを確保する筈だったのに、そのミカがこちらを確認するなり突撃してきた。
応戦したが、銃弾が通じず突然庭木を片手で引き抜いて棍棒の様に振り回してくる怪物に勝てる訳がない上に、奇声を発しながらショットガンを乱射してくる化物まで現れた。
もう何もかもが滅茶苦茶だ。
考えられるのは、スパイのアズサが裏切ったか、スパイがバレて偽の情報を掴まされたか。
アリウス生徒達はもう何も判らなかった。
何人かは突然降ってきた盾を持った生徒に轢かれ、また何人かは凄まじく胡散臭い笑みの生徒が率いる部隊と交戦して捕らえられ、どうにか校舎に突入出来た部隊は突然現れた高笑いをしながらスズメバチの巣を抱えながら突撃してきた防護服の狂人集団に飲み込まれた。
もう何が何だか判らないし判りたくない。
だから逃げた。
「ね、ねえ、ここは大丈夫なの?」
「大丈夫、こんな所まで戦力を割くなんて……」
どうにか合流出来た各部隊の生き残りを連れて、命からがら逃げ延びたその場所は異様に冷たく、そして異常に静かだった。
何か嫌な予感がする。この場所が何か恐ろしい存在の縄張りな様な気がして背筋に冷たいものが走る。
でも、地上に出たら怪物達が待ち構えている。
「と、とにかく、今は逃げよう。トリニティから、アリウスからも」
「でも、何処に逃げたら……」
「わかんない。でも、ここよりは絶対にマシだよ」
足元を流れる水に、頭に落ちてくる水滴に怯えながらアリウス生徒達は薄暗い地下水路を進んでいく。
「あれ? ねえ、リナは?」
「え?」
不意に背後の気配が消えた事に気付いた一人が友人の行方を問う。
全員が後ろを振り返ると、そのリナだけではなく何人かの姿が無かった。
「嘘……」
「待ってよ……、さっきまでそこに居たのに」
絶句するが、現実は変わらない。
それどころか、更に悪くなっている。
リナだけではない。他にも何人も、この地下水路に逃げ延びた仲間の姿が消えている。
「なんなの? なんなのよぉ!?」
仲間の一人が錯乱し、水路に向けて銃を乱射し始める。
周りがどうにか落ち着かせようと、その仲間に近付くが、その仲間の姿が水路に消えた。
突然伸びてきた手に引きずり込まれたのだ。
「嘘、やだ……」
「なんなのトリニティって、なんなのよ?! ひっ!」
また一人、今度は蛇の様な何かが足に巻き付いて水路に消えた。
そして、何かに握り潰されたガスマスクが水面に浮いてきた。
「あ……」
そこでアリウス生徒は見た。
こちらを引き摺り込む異常に強い力と竜の様な目、そしてこちらのマスクを食い千切る牙。
それがその生徒が失神する直前に見た最後の光景だった。
『あなた』
先輩から言われたいき過ぎない暴力が思った以上に難しい上、アリウス生徒が想像以上に弱かった為、殴る蹴るから首をキュッとする方向に変えた。
これから地上の残存戦力を叩きに行く。
先輩
ゴリラ隊の指揮をしつつナギサの介抱
ナギサ
え、ヒフミさんもう来たんですか?!
ペペロ様の準備が……
え? ヒフミさん? どうしたんですか?
ヒフミさん? ヒフミさん??
保全部
どうにか鎮火の後、保全部の備蓄食糧で消火に協力してくれたアリウス生徒とパーティー。
でも、カタコンベにパンジャンドラムをぶちこむ予定。
マシロ
轢かれた
ツルギ
事前に予測した数と実際捕縛した数が合わなかった為、『あなた』に逃走経路の予想を伝える。
『あなた』がちゃんと変わっている様で嬉しい。
生物部
なに? 襲撃だと?! これは功績を立てて、アリウス自治区の生態調査許可をもぎ取るチャンスである!
総員我に続け!! この時の為に飼育していたスズメバチ愚連隊と共に栄光を勝ち取るのだ!!
救護騎士団
怪我人救護に生物部によるバイオテロ対抗戦が増えた。
サクラコ
あの、何故そのように怯えるのですか?
私はただ、皆様の身を案じて……