あなたがトリニティでやってはいけない事リスト   作:装甲アッサム春雨

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『あなた』
先輩からやり過ぎ注意が発令されたので、戦闘より狩りにシフトチェンジ。

先輩
緊急時の部隊指揮訓練も積んでいるので、今回はパテル分派ゴリラ隊の指揮。


二十二冊目

「ふむ」

 

少女は手渡された現状を簡易に纏めた報告書を読み、正面を見据える。

大型ライオットシールドを構えたパテル分派重装隊(フィジカルゴリラ隊)のファランクス越しに見るアリウス部隊残党は、校庭の植え込みや植木鉢、ベンチを利用したバリケードを組み、池を背後に徹底抗戦の構えを見せていた。

 

「さて、困りましたね」

「如何致しますか? 秘書官補佐殿」

「このまま擂り潰すというのは、彼女達の憎しみを増すだけです。さて、どうしましょうか」

「我々ならこのまま朝まで囲えますが、それは彼女達を衆目に晒す事になります。それは避けるべきかと」

「そうです。しかし、彼女達が抗戦する理由とその抗戦の弱々しさが判りません」

「どういう意味でしょう?」

「おかしいのです。アリウス分派は我々トリニティに憎しみを抱いている。なのに、今宵の襲撃部隊はこちらの反撃を見るや総崩れになりました。積年の恨みを抱えた復讐者がそう簡単に崩れるでしょうか?」

 

少女の疑問に、パテル分派重装隊にも同じ疑問が生まれる。

確かに自分達は決死の覚悟で復讐に来るだろうアリウス分派を待ち構え、それにぶつかった。

ミカからもアリウスが抱える憎しみの事は聞いていて、それ相応の覚悟を持ってこの戦線に立っている。

それなのに、たった一回のシールドチャージと斉射だけで、アリウス部隊は崩れた。

いや、それ以前にカタコンベからの突入も連携が取れていない上、保全部制作の奇怪な兵器へのまともな対応すら取れていなかったと報告がある。

各部隊が易々と各個撃破される。積年の恨みを積み重ね、訓練をしてきた復讐者の集団がこの様な事が有り得るのか。

これでは、スケバンやヘルメット団はおろか、毎日何処かで騒動を起こす一般生徒の方がまだ手強い。

何かがおかしいが、何がおかしいのか判断する鍵が足りない。

少女達がこのまま攻めるべきか迷っていると白衣の生徒、救護騎士団団員の一人がファイルを抱えて走り寄ってきた。

 

「ミネ団長より報告です!」

「拝見します。………なんという事を……」

「どうされました?」

「総員、急ぎ装備を整えてください。彼女達を撃破、いえ、救出します」

「急ですな。なにか?」

「こちらを」

「………総員、装備点検。急げ。アリウス分派を止めろ」

 

救護騎士団より渡された資料はカルテ、救護したアリウス生徒の内数十人分だが、そこには少女達が絶句する内容が書かれていた。

まだ診断中の生徒も含め、ほぼ全員が中~軽度の栄養失調、乱雑な治療による傷口の化膿と炎症からくる発熱、中には破傷風の疑いのある生徒まで居た。

あのバリケードに立て籠る生徒達の中には、これよりも酷い症状の者が居る可能性がある。

少女はパテル分派隊が装備点検を終える短い間に、最悪の事態を想定して出来る限りアリウス生徒に呼び掛けを始める。

 

「皆様、私はティーパーティー秘書官補佐の者です。既に勝敗は決しました。これ以上の戦いは無意味です。速やかに投降を」

「秘書官補佐殿!」

 

返事は言葉ではなく、銃弾だった。

少女の頬を掠め、翼の羽根が削れたが少女は微動だにせず、呼び掛けを続ける。

 

「アリウス生徒の皆様、貴女方の憎しみと怒り、それは当然のもの。こちらにはそれを受け止める準備と覚悟があります。どうか、皆様の御言葉をお聞かせください」

 

次の返事は無かった。

少女が唇を噛む中、バリケード内では弱りきった混乱が満ちていた。

 

「どうしよう。思わず撃っちゃった……」

「いや、撃っていいんだって」

「でも、もう皆捕まっちゃったんだよ? このままじゃアリウスにも帰れないし……」

「帰ってもどうせ……」

 

立て籠るこのアリウス部隊の全員は薄々気付いていた。

今日、トリニティへの突撃隊に任命されたのは訓練の落伍者や、忠誠心の低い者。回復が遅い怪我人やまだ動ける病人ばかりだと。

それでも動けたのは、トリニティへの憎しみから。

でも、それも折れかけている。

 

「なんで、トリニティが憎かったんだっけ?」

 

バリケード越しに、あちこちが焼け焦げたハンチングを被り、何故か脚立を担いだ作業着の生徒が、同じくあちこちが焼けた仲間を引き連れて来たのが見えた。

アリウスでは見た事が無い食べ物を抱えた仲間達の顔には、突撃前の憎しみが消えていた。

解っていた。

こんなもの、ただの逆恨みだと。

過去にあった事で、今の自分達は今のトリニティに何もされていないと。

目の前の貧しさと虚しさ、惨めさから判りやすい口車と恐怖に負けて、負けたままこうなったのだと。

 

「Vanitas vanitatum」

「そうだね。このまま投降してもマダムがアリウススクワッドを寄越してくるかも……。なら……」

 

アリウス生徒の一人が、ベルトポーチからあるものを取り出す。

 

「それって」

「〝ヘイロー破壊爆弾〟、もしもの時はって渡されたんだ」

「そっ、か……」

 

もうこれで理解した。この作戦、マダムには成功しようが失敗しようがどうでもよかったのだと。

自分達は最初から捨て駒でしかなかった。ただ、アリウス自治区で処理するのが面倒だから、トリニティに処理させる為に集められただけだった。

 

「それ、どうするの?」

「本当はあっちに投げようかなって思ってたけど、そんな事したら捕まった皆が酷い事されそうだから……」

「そうだね。……ルカ、大丈夫かな? 怪我してたし、酷い事されてないかな……」

「大丈夫、ほら」

 

仲間に促され、バリケードの隙間から向こうを見ると、制服があちこち焼け焦げていたが治療されて集まっていた。

 

「ルカ、第三校舎隊だったんだ」

「ね、大丈夫。だから……」

「そうだね」

「うん」

 

〝ヘイロー破壊爆弾〟を置き、それを中心に全員が円陣の様に集まる。

状況を詳しく確認する為、塵塚に持ってきてもらった脚立に登り、バリケードの方を見た瞬間、少女は声を張り上げ叫んだ。

 

「なりません……!!」

「よし、あいつらを説得する為…ってどうした?!」

「総員突撃!! 彼女達を止めてください……!!」

 

脚立から転げ落ちながら、少女は率先してバリケードへと走り、パテル分派隊もそれに気付き全速力で突撃を開始した。

 

「それは何の解決にもなりません! どうか……!!」

 

全速で駆けてくる少女とパテル分派隊、そして遅れてこちらに来る仲間達を見て、アリウス生徒達は微笑んだ。

 

「優しい人、だったんだ……」

「あの部隊指揮してる時、怖かったけどね」

「うん。ねえ、もし生まれ変わりがあったらさ。あの人みたいな人の所に行きたいね」

「皆で行きたいよね」

 

アリウス生徒達は無言で頷き、ヘイロー破壊爆弾の起爆スイッチに震える手を伸ばした。

 

「じゃあ、皆。またね」

 

そう言って、仲間の顔を見てスイッチを入れようとした時だった。背後にある池の水面が揺れた。

普段なら気にもしないそれに、何故か気を取られた瞬間、アリウス生徒の何人かが水飛沫を上げて池から飛び出してきた何かに強かに打ち付けられた。

アリウス生徒は打ち付けられた後、校庭を二度三度と転がり、痛む箇所を押さえ嗚咽を漏らしながら動けなくなった。

一体、何がと涙と痛みで歪む視界で、池から飛び出してきた者の正体を確かめる。

 

「…………」

 

月明かりに照らされる蛇の様な鱗と竜の様な甲殻に被われ、それに沿う様にした尾鰭のある長い尾。

そして、前髪から滴る水の隙間からこちらを睨む縦に割れた竜の様な瞳と、口の間から見えた硬く鋭い牙の様な歯。

 

「う、うわぁぁぁっ!?」

 

彼女の姿に混乱したアリウス生徒が、その尾の持ち主に銃口を向け乱射するが、その尾の持ち主。彼女はその身に当たる銃弾を全く意に介さず、やがて銃弾が尽きた辺りで乱射したアリウス生徒の頭を掴み上げ、目の前で手にしていたライフルの銃身を噛み砕いた。

 

「……まだ、抵抗するなら容赦はしない」

 

砕けた銃身の破片を吐き捨て、見下ろす目に憐れみも慈悲も何も無く、怒りすら無い。

ただただ、獲物を見定める捕食者のそれだった。

 

「……投降、する。だから……」

「そうか」

 

彼女はそれだけ言うと、もう興味は無いと言わんばかりにアリウス生徒から手を離した。

今宵、襲撃してきたアリウス生徒は全員捕縛され、戦意を完全に失った。

後の世に語られるアリウス事変、その第一戦はトリニティの勝利で終わった。




『あなた』
池に戻ってきたらアリウス生徒が何かやってたので、尾で軽く叩いた。
爆弾を見て先輩達が居なかったら、顔に噛み付いてた。
地下水路に逃げたアリウス生徒は、地下水路にある先輩も知らない『あなた』の秘密基地にて保護。救護騎士団により回収済み

先輩
脚立から転げ落ちる時に顔からいったが、そのまま立ち上がって走った。
やっぱりフィジカルが弱い。
自決しようとしたアリウス生徒が回復した後、謝罪と大お説教大会と、『あなた』への少しやり過ぎですお説教大会開催予定。

保全部
とりあえず和解したアリウス部隊引き連れて合流したら、なんかとんでもない事になった。

パンジャンドラム
まだいっぱいある。

アリウス部隊
アリウス自治区でも教義に懐疑的であったり、マダムへの忠誠心が低かったり、身体的に弱かったりした生徒により構成されていた。
その指示を出したのは、錠前サオリと梯スバルの両名であり、マダムもそれに了承しているが、何故その提案が出来たのかは不明。
もしかしたら、過去のアリウスにマダムの支配でも塗り替えられない何かが居た可能性がある。かもしれないし、無いかもしれない。

第三校舎隊
パンジャンドラムに保全部、正義実現委員会と共に追い回され、何故か友情が芽生えた。
この後、救護とリハビリ、淑女教育を終えた後、保全部入りして、塵塚と御手洗により次代の保全部となる。が、その前に二人により滅茶苦茶に食わされるので、アリウスに里帰りした時に一瞬誰か気付いてもらえない程度に太る。

生物部
ハーッハッハッハッ! アリウス何する者ぞ!
我ら生物部の敵ではない!
ん? 仲正、どうしたのかね? その手錠は一体?
や、やめたまえ! 我らはトリニティの平穏に……!

もう一回 二人の名前情報

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  • 要らない気がする
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