あなたがトリニティでやってはいけない事リスト 作:装甲アッサム春雨
「状況報告!」
少女は声を張り上げ指示を飛ばす。
突然の轟音と衝撃、それにより立食会場は惨憺たる有り様だ。
「怪我人無し! ガス等の誘爆の危険性無し!」
「これより緊急事項に基づき、総員、災害救助態勢に入りなさい!」
「はっ!」
テーブルや植木の残骸から這い出したティーパーティーの接待要員と正義実現委員会の警備担当に指示を出し、少女は衝撃で形を失った生け垣越しに現状を把握する。
「一体、何が起きたと言うのですか……」
音と衝撃から爆発物である事は確認出来た。
だが、この規模の破壊となると並大抵の爆発物ではない。
少女は現状を治める為に動き出した。
「ナギサ様の安否は?!」
「警備隊と通信繋がりました。ナギサ様並びマコト様は無事です!」
「……宜しい。通信士は各部署長に連絡し、連携を密に事に当たり、先生の安全も確保。私は現場へ向かいます」
「了解」
ポケットに仕舞ったオルゴールを一度握り締め、少女は走り出す。
「あなた、どうか……」
少女が走り出したと同刻、彼女は瓦礫を押し退け這い出す。
「うぺぺっ、皆大丈夫。ですか?」
「だ、大丈夫。あんたは?」
「大丈夫。です」
爆発の瞬間、彼女は尾と全身を使い、儀仗隊を庇った。あの爆発だ。流石に危ないと心配するも、彼女は制服に着いた埃や汚れを払い、周囲を確認している。
簡単に言ってしまえば、彼女は無傷だった。
「ぐっ、今のは……」
「あ、ちょっとゲヘナの。大丈夫なの?!」
「あ、ああ、大丈夫だ。そっちは?」
「こっちは大丈夫。でも……」
そう言って見上げる。
上がれない程の深さではないが、上がるには一苦労な深さにまで地面が陥没していた。
「急いで登ろう」
「いや、その前に何が起きたんだ?」
「分からない。なんか空から降ってきたっぽい」
「……まさか、お前らの仕業じゃないだろうな?」
瓦礫から仲間を引っ張り出していたゲヘナ生の言葉、それは両校の関係だけなら当然とも言える言葉だったが、今の状況を考えれば違うとはっきり判る。
だからか、その発言をしたゲヘナ生もすぐに頭を振り訂正した。
「いや、すまん。いきなりな事で混乱してた」
「大丈夫大丈夫、私もなんかすごい事言いそうになったから」
「ええ……、こわ……」
「そ、それより、早く登らないと!」
「あ、ああ、だが、ここは……」
ゲヘナ生が観察するが、これは爆発の威力で開いた穴ではない。
明らかに地下にあった空間に落ちたのだ。
「まさか、カタコンベ? いや、それより今はナギサ様達を……」
「二人は無事。です。パテル隊の人達が守ってた」
「パテル隊なら安心ね」
「そんなになのか?」
「パテル隊舐めないで。あのミカ様の直参のゴリ……、ゴリラ部隊よ!」
「ねえ、なんで言い直したの?」
と、そんな事を言いながら、穴から出ようと全員が動き出した時だった。
彼女の尾が突然何かに反応し、強かにそれを打ち据え、瓦礫に叩き付けた。
「なに?! ……ホントになに?」
「敵襲か! なんだ今の……?」
「んん?」
とりあえず、いきなり現れた気配に攻撃したのだが、その相手は奇っ怪な出で立ちをしていた。
「……ねえ、私の目がおかしくなかったら、今、ハイレグボンテージガスマスクシスターが瓦礫に叩き付けられて消えたんだけど……」
「大丈夫だ。私達もハイレグピチピチボンテージガスマスクシスターが見えた。しかも消えた」
両校儀仗隊は全員で首を傾げた。
明らかにおかしい格好の不審者が突然現れたと思ったら、彼女に吹き飛ばされて消えたのだ。
「と、とりあえず上がろう。嫌な予感がする」
「そ、そうね」
彼女も頷き、再び穴から這い出そうと動き出す。
幸い、穴自体は深くなく壁面もなだらかな坂状になっていたので、特に苦労も無く脱出出来た。
「って、これ……」
「マジか……」
荘厳な式場は荒れ果て、周囲は正義実現委員会と風紀委員会、そしてアリウスと例の不審シスターが入り交じる戦場と化していた。
「何処から湧いてきた?!」
「それより援護……」
言い終わる前に、彼女は愛用のグレネードランチャーを警告無しでぶっ放した。
「ええ……」
「ああいうのは、湧いた端から潰す。です」
グレネードの二連続爆発で不審シスターとアリウスが吹き飛び、背後から近付いてきていた不審シスターも彼女の尾で薙ぎ払われた。
「うわ、容赦ねえ」
「容赦は要りません。あれは敵だ」
言いながら、彼女は次弾を装填し撃つ。
動きにまったく迷いも慈悲も無い。
ただただ、目の前の敵を的として処理している。
「すごいな」
「普段はぽけーってしてるけど、ティーパーティーの最高戦力だし」
「あれでもまだ大人しいよ」
「てか、あたしらも援護ー!」
配給された小銃まで撃ち始めた彼女に続き、全員がアリウスと不審シスターに向けて発砲を開始する。
「万魔殿直参舐めんな!」
「ティーパーティーがデスクワークだけだと思うなー!」
全員で背会わせの位置取りで、矢鱈目鱈に撃ちまくる。
周りは敵だらけ、どう撃っても当たる。だが、何かおかしい。
「おい、どうなってる?!」
「分かんないよ! でも、なんか様子がおかしい」
「…………」
彼女は観察する。
スラムでも何処でも、敵の状態を探らなければ負けるし死ぬ。
だから、敵の状態を観察しながら両手の銃で、尾で、敵を蹂躙する。
そして、違和感に気付いた。
「……復活してる」
「まさか、ゲームじゃないんだぞ?!」
「でも、そうじゃないとって……!!」
「待て待て待て! 味方だ!」
「……っ?!」
不審シスターは倒した端から復活していた。
有り得ない話だ。だが、実際それが起きている。
そして、もう一つの違和感。
「くそっ! しっかりしろ! それでも風紀委員会か!」
「え? あれ? 私……」
「ほら、貴女も! どうしてこんな時に同士討ちなんてしてるのよ!」
「あれ? ゲヘナが攻めてきて……」
「はあ?! それはそっちでしょ!」
「いいから! 敵はあっち! こっちは味方!」
正義実現委員会と風紀委員会が戦い、それだけでなく同じ学園同士で戦っている。
何が起きているのか。彼女には解らないが、彼女はこれを知っている。
「アラサカ……」
あのスラムで、あの化物はこういった同士討ちを度々引き起こさせては、それを見ながら心の底から愉快そうに嗤っていた。
これは間違いなく、あれのやり方だ。
だが、あれはあの日、彼女が潰した。
右手を愛銃ごと噛み砕き千切り、尾で強かに打ち据え捻り折り曲げて、それでも嗤いながらあれは炎の中に自分から消えていったのだ。
だから、あれがまた現れる訳がない。
なのに、今起きている事は間違いなく、あの日と同じだ。
「てか、アリウスもおかしい」
「なんでそんなに必死に向かってくんだよ!」
正気に戻った二人を加えて、兎に角何処かへ合流しようとするが、味方の筈の仲間に不審シスター、それに必死の形相で向かってくるアリウス生の前に、これ以上前に進めなくなっていた。
否、彼女一人なら全てを蹂躙し薙ぎ倒して進める。彼女一人なら、情け容赦無く全て叩き潰せばいい。
スラムで生きていた絶対強者として、力を振るえば簡単に解決する。
だが、それは出来ない。
「ちょっ、クミ!? 目ぇ覚ませって!」
「アミも! どうしたのよ!」
――あなたは〝悪竜〟ではありません。あなたは〝守護竜〟です。
さっきまで一緒に笑っていた仲間を、先輩の大切な言葉を無視出来ない。
「ぎっ……!!?」
それにさっきより強くなった頭痛が、彼女の動きを鈍らせる。
どうすればいい。
全て壊せばいい。
どうしたらいい。
あの日に戻ればいい。
そうすれば、何のしがらみも無くお前はお前で居られる。
「ぎぎ……」
「あんた、どっか打ったの?!」
「マジか……。ここでお前が潰れるのはダメだって!」
耳には仲間の声が聞こえているのに、頭の中ではあの化物の声が木霊する。
「大丈夫?! 誰か痛み止め!」
「さっき落としちまった!」
「だい、丈夫……、です。オレが、突っ込みます……」
「バカ言わない! 今のあんた一人突っ込んでもどうにもならないって!」
その制止を振りほどき、彼女は一人敵に突撃しようとした時だった。
「各員、一斉掃射」
その言葉と共に、横列の一斉掃射がアリウスと不審シスターを薙ぎ払った。
「皆様、御無事ですか?」
「先輩……」
戦場にあって尚、その姿勢を崩さない少女がナギサ達の避難を終えたパテル隊を率いて現れた。
そして、それと同時にシスターフッドに守られながら避難していた先生も、ある出会いを果たす。
「君は……」
「先生、避けて!」
その出会いは銃声と共に始まった。
『あなた』
頭痛が引かなかったが、先輩が来たら治まった。
先輩
パテルゴリラ隊を率いて登場。
両校儀仗隊モブーズ
Q.なんで同士討ちしなかったの?
A.事前に強めの衝撃受けたから
ナギサ
ミカ、セイアと協同して作戦会議中
サオリ
何か考えてるっぽいし、そんなにベアトリーチェにビビってない。なんでやろな?
本編後モチベがあればトリニティバカンス 『あなた』初めての海&遭難レイダース
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