あなたがトリニティでやってはいけない事リスト 作:装甲アッサム春雨
三つ首の蛇の様な竜が鎌首をもたげ、こちらを睨み付けている様な感じ。
先輩のヘイローイメージ
梟を基準に、猛禽類が羽を広げている感じ。
今回は前回に差し込めなかった側の動きになり、暴走『あなた』は次回になります。
「状況は?!」
「各員奮戦により膠着状態! しかし、救護騎士団より何らかの影響による錯乱が見られると!」
「先手を取られたか……」
セイアは歯噛みしつつも、上がってくる情報を元に指示を飛ばす。
「非戦闘員並びに一般生徒の避難完了です」
「よし。戦線を押し返す。ミカは?!」
「現在、アリウス他戦力と交戦中! 迷いなく呼びましたね!」
「当たり前だ! ツルギとあの子に並ぶ最大戦力、使うわずして何時使う!」
現時点でトリニティの個人最大戦力は三人、剣先ツルギ、聖園ミカ、彼女だ。
だから、迷わず投入する。
セイアの判断に間違いはない。
だが、
「正義実現委員会より入電! 不利的状況!」
「は? ツルギだぞ?! 列車に轢かれて戦車砲直撃しても平気な奴だぞ?!」
「情報入りました! 敵戦力ユスティナ聖徒会! ユスティナ聖徒会?!」
「なんでシスターフッドの前身が出てくる?!」
「まさか、シスターフッドが?」
「分かりません! しかし、敵戦力は確かにユスティナ聖徒会で、倒した端から復活してくると!」
「落ち着け! そんな事ある訳ないだろう! だとしたら、我々はツルギ委員長並みの回復力のある連中と戦ってる事になるぞ!」
もたらされた情報に指揮所は混乱を始めた。
無理も無い。警戒して日々訓練は積んでいたとはいえ、こんな事態になるとは誰も思っていなかった。
セイアはその明晰な頭脳で現状の打開を計る。
だが、錯綜する情報と混乱し始めた現場、そして被害規模から最悪の事態が過り、指揮が止まってしまった。
「セイア様、指揮を!」
「セイア様!」
「ぐっ……!」
――私だけでは……!!
今の状況では、何が正解なのか。
予知夢で見た状況よりも悪化した現状に、セイアは言葉を出せなかった。
「セイア様!!」
「皆さん、落ち着いてください」
そんな状況の中、指揮所に入る影があった。
桐藤ナギサ、浦和ハナコ、そして何故か緩くパーマがかかった羽沼マコトの三人だ。
「トリニティの淑女たる者、常に冷静を保ちなさい」
「さもないと、あの人からお説教されちゃいますよ」
「キキキ。まあ、トリニティのお嬢様には荷が重いか」
現れた三人に指揮所が停止する中、三者三様に言葉を向け、それぞれに指揮を始めた。
「情報は全て私に、セイアさんはハナコさんと分析を」
「セイアちゃん、今の状況を」
「この指揮所のチャンネルを教えろ。そして、ゲヘナからの情報は全て私に回せ。ゲヘナ式をお嬢様に教えてやろう」
一気に来た指示に混乱が起きるかと思ったが、今の状況では一周回って冷静さを取り戻し、指揮所は再び稼働を開始した。
「先生より入電! シスターフッド護衛の元、アリウススクワッドの錠前サオリと合流しアリウス戦力、空崎ヒナと共に式典会場へ向かっているとの事!」
「情報量が多い! なんで最重要警戒対象と先生達が合流してるんだ?!」
「また、ユスティナ聖徒会はベアトリーチェが仕組んだ複製体で、錠前サオリが対策を知っているそうです!」
「増やすな情報を! えぇい、ヒナに繋げ! とにかく撃ちまくれ! 奴なら無限湧きシスターだろうが叩き潰せる!」
「いえ、その前に対策の周知を。次第によってはこのままアリウス自治区に攻め入ります」
「ナギサ、それは尚早だ。まだ、戦力も解っていないんだぞ」
「いいえ、戦力ならミメシスとアリウス生です。それに、突入準備は保全部が済ませてくれています。……ミカ、聞こえますね」
『はいはーい、聞こえてるよー』
「全て叩き潰してください。情報では錯乱した生徒はちょっと小突けば正気に戻ります。なので、全部叩き潰してください。いえ、叩き潰せミカ」
『りょー』
スピーカーから聞こえてくるミカの声は軽いが、それと一緒に聞こえてくる音は明らかに銃撃戦ではなく、何か重くて硬いもので肉を打つ音だ。
それに指揮所が引いていると、椅子に座り指揮を続けるナギサがいつの間にか用意していた紅茶を飲み始め、静かに笑い始めた。
そして、マコト以外の全員が気づいた。
あ、ナギちゃんキレた、と。
「うふふ、ふふふふふふふふふふふふふふ……。やっと、やっと終わったと思ったら、これですか。そうですかそうですか。最初は穏便に保全部謹製の自走式爆弾120発で済ませてあげようかと思ってましたが、もう赦しません。トリニティ全戦力全火力でアリウスを焼いてあげます。……塵塚さん」
『おーう、こちら保全部。避難者の護送完了だ』
「予算は後からいくらでも出します。……全部吹っ飛ばしてください」
『了解。カタコンベの変化パターンも組終わった。後は直通ルート開通だ』
「では、よしなに。ツルギ委員長」
『はっ』
「正義実現委員会全火力の使用許可を出し、貴女にも全力許可を出します。トリニティの武力の象徴として、アリウスに教授してあげなさい」
『了解しました』
スピーカーから響く奇声と悲鳴、そして異常な破壊音にマコトは引いた。
いくらゲヘナでもここまではしない。というか、スピーカー越しでも判る程、現場が凄惨になっている。
なんかこう、柔らかいものを擂り下ろしていたり、なんか爆発したりしてる。
マコトはとりあえず、このトリニティに喧嘩を売らなくてよかったと思いつつ、努めてそれを表に出さずにあるスピーカーから聞こえてくる音に違和感を覚えた。
「ん? 式典会場はどうなってる?」
「式典会場にはパテル隊が向かった筈です。既に事を終えたのでは?」
「いや、何かおかしい。なんだこの音は? おい、パテル隊聞こえるか」
返事は無い。
そこでナギサ達トリニティ組の背に冷たいものが走った。
パテル隊はあのミカ直属でもあり、トリニティでも随一の屈強な部隊かつ忠節の者達だけで構成されている。
それに、今は少女が指揮を取っている。
まさかあの少女に限って、通信を聞き漏らす事などという事は無い。
なら、何が起きたのか。
その答えはすぐに返ってきた。
『■■■■■■■■■■■■■……っ!!』
スピーカーだけでなく、指揮所自体を揺らす咆哮。
悲鳴や驚愕の声を漏らす事、錯乱する事すら許さない生命の根幹に恐怖を刻み付けるかの如きそれの正体に、ナギサ達は瞬時に気付いた。
彼女だ。
「……っ! 今すぐ式典会場へ戦力を!」
『ナギサ、今のは?!』
「先生、式典会場で何かが起きました! 今どちらに?!」
『会場に向かってる! って何今の?!』
「先生何があったんですか?!」
「ヒナ、応答しろ! 何が起きた!?」
『……分からないわ。でも、何かが光って爆発した』
「何を言ってる。映画の話をしてるんじゃないぞ」
『いや、マコト。ヒナの言ってる事はホントだよ。本当に何かが光って爆発したんだ。それにこの声? 音? 只事じゃないよ』
『マズイな。先生、代わってくれ。……すまない。こちら錠前サオリ、聞こえるか』
「聞こえます。何か知っているのですか?」
スピーカーから聞こえるサオリの声に、ナギサは若干の警戒を持ちつつ応答する。
『単刀直入に言う。マダムの狙いはある生徒の暴走だ』
「暴走?」
『ああ、狙いといっても副次的なもので、その目的までは判らないが、〝0番スラム〟から来た生徒に反転という現象を起こさせ、暴走させる事が奴の狙いらしい』
「そんな……」
ナギサ達は絶句した。
サオリの言う反転という現象は判らないが、あの咆哮を聞く限りまともなものではないと判る。
「……ならば、尚更急がねばなるまい。ヒナ」
『なに?』
「全力で当たれ。ゲヘナ最強たる由縁を見せろ」
『分かったわ』
「先生も頼めますか。そして、サクラコさん。先生をお願いします」
『任せて。生徒のあんな声聞いて、動かない私じゃないよ』
『畏まりました』
『私からも。ミメシスの停止方法だ。ゲヘナとトリニティ、アリウスの三方でミメシスは成り立っている。だから、この三竦みに介入するか崩せば、ミメシスは機能不全に陥る筈だ』
「三竦み……。……すみません、皆さん。私は先生の元へ行きます」
サオリの言葉にハナコがまず動き、そして全員が事態解決に向けて動き出す。
「ツルギ委員長に連絡、急ぎ戦線を食い破り式典会場へ」
「救護騎士団を急がせろ! 確実に何かが起きている!」
「聞こえてるかサツキ。隊を式典会場へ向けろ。風紀委員が居たらそいつも拾え」
慌ただしく動き出したトリニティ。
「なんですかこれは……。これを、こんなものを奴は、奴は生徒だと……? いえ、しかしこれが手に入ると考えれば、奴の考えも頷ける」
そして、アリウスでも動き出した。
暗い、一切の光の無い場所だった。
「ここは……」
そんな場所に少女は立っていた。
「やあ、初めましてかな」
「貴女は……」
そして、やけに慇懃なのに軽薄、しかし無礼とまではいかない。
なのに、その透ける様な声と容姿からはドス黒い何かが滲む。
「ああ、名乗らなくていい。君はただ、私の要求を飲んでくれたらいいだけだ」
「……要求とは?」
「簡単な話だ。〝あれ〟を返してくれ。〝あれ〟は私のものなんでね」
そんな女と少女は対峙していた。
本編後モチベがあればトリニティバカンス 『あなた』初めての海&遭難レイダース
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