あなたがトリニティでやってはいけない事リスト   作:装甲アッサム春雨

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各人の簡単かつ雑な神秘
『あなた』¦アジ・ダハーカ、ザッハーク、ス、他それに関連し繋がる千の神秘
先輩¦特に考えてないけど、鳥とか天使的サムシング
塵塚¦名前そのまま
御手洗¦特に考えてない。いや、マジで



また、本作はエデン編で本編終了となり、おまけとして
ミレニアムエキスポ ~『あなた』初めてのミレニアム&全てから解き放たれたわんぱくFOX~
『あなた』初めての海 ~ティーパーティーバカンス&遭難レイダース~

を、お送りする予定にはなっています。


三十三冊目

「おのれ! おのれおのれおのれおのれおのれ!! 賤しいガキ共が……!」

 

激昂したベアトリーチェが三つ首をもたげ咆哮する。

しかし、対峙する三人は涼しい顔で心の底からつまらなさそうな顔をしていた。

 

「参ったわ。本当にデカイだけよ」

「キヒィ、……無線であいつの神秘をどうこう言っていたから警戒したが、全然だな」

「だね。尻尾ちゃんなら、このくらい平気だし」

 

ヒナ、ツルギ、ミカの三人(三人怪獣)は溜め息を吐く。

もし仮に、ベアトリーチェが彼女並みの耐久力を誇っていたら、流石に危うかった。

だが、塵塚達の爆破とナギサによる砲撃で鱗は焼け焦げ、衝撃で歪んで剥がれた部分からは出血がある上、ミカが殴り、ヒナとツルギが撃った左右の蛇首は鱗がひしゃげ、顎が歪んでいる。

彼女ならこの程度でそんな傷を負う事は無い。精々が擦り傷程度で、傷を負わすにはヒナとツルギ二人の割りと本気並みの火力をぶつける必要がある。

 

「大体、あの二つの首は何もしてこない訳?」

「火ぐらい吹けばいいのに」

「まあ、吹いても制服が焦げる程度だろう」

 

久々に思い切り暴れられると思っていた三人は、心の底から落胆した。

これなら、襲撃に来たアリウス生の方がまだ骨があった。

本当にがっかりだよ。

 

「これなら、ナギサ様の砲撃にお任せしてよかった」

「そうね。うちの子達の方がまだ抵抗するわ」

「でも、けじめはつけてもらわないとね」

「貴様らあっ!!」

 

三つ首が三人を見下ろし、その腮を開く。

禍々しい牙が乱立した口に毒々しい光が集まり、その輝きが最高潮に達した瞬間、一番前に立っていたツルギの姿が放たれた光に呑まれ消え、石畳が燃え腐っていく。

彼女の左の竜頭が吐く腐敗の炎、それがツルギに直撃したのだ。

 

「……ふ、ふふふふ! 粋がっても所詮は崇高にも至れぬ存在。やはりこの程度……」

「ふむ、やはり避けるまでもなかったか」

 

燃え腐っていく石畳の上で、ツルギは袖に燃え移った炎を吹き消し、軽く首を回す。

腐敗し爛れた顔は一瞬で完治し、火傷の痕すら無い。

 

「あー、なんかタメてたけど、やっぱり尻尾ちゃん以下かー」

「あの子、タメ無しであんなものじゃない出力出してたもの。避けたのが馬鹿みたいだわ」

「いや、避けてもらって助かった。仮にも賓客、怪我があってはこちらの品位に関わる」

「えー、そんな事なくない?」

「……ミカ様、今の発言を奴が聞いたら、説教二時間は確実でしょう」

「うわ……、羽ちゃん、まだ来てないよね?!」

「ちょっと待って。あの子、かなりの重症だったわよ? 動ける筈が……」

「いや、奴は来る」

「羽ちゃん、あれでかなり気が強いし、尻尾ちゃんに舐めた真似されたから、機関銃抱えて走って来かねないよ。いや、来るね」

「本気で、言ってるの……?」

「舐めるなぁ……!!」

 

ベアトリーチェが身をうねらせ、尾で三人を薙ぎ払おうとするが、それもミカに軽く抱き止められてしまう。

 

「え? 軽……。尻尾ちゃんの真似ならちょっと肋くらいは覚悟してたのに……」

「へえ、あの子ってそんなに強いんだ」

 

言うなり、ヒナは重機関銃をベアトリーチェの右蛇首に向けて撃った。

 

「ぎゃあぁぁぁぁっ?!」

「うん。強いよ。なんたって、ツルギちゃんの肋全部持ってったからね」

「奴の尾と顎は規格外だ。油断すると一瞬で持っていかれる」

「……そういう話を聞くと、うちに欲しくなるわね」

「えー、ダメダメ。あの子はうちの子ですー」

 

のたうち回るベアトリーチェを尻目にミカが唇を尖らせ、ツルギがそれを宥める。

三人は完全に崇高とやらに至ったベアトリーチェを舐めきっていた。

 

「貴様ら……!!」

「ちょっとくらい貸し出しとか」

「ダメですー。尻尾ちゃんも羽ちゃんも、貸し出し厳禁ですー」

「あの、ミカ様。エデン条約締結後は新しいETOが設立されますので、我々やパテル隊も対象になりますから奴だけ除外という訳には……」

「えー、尻尾ちゃんは護衛だし羽ちゃんは秘書官補佐だよ?」

「しかし、武と政の協同条約でもありますので……」

「そうね。なら、後日届け出を出すわ」

「このガキ共がぁ……!!」

 

血を流し、立ち上がるベアトリーチェが憤怒の色に染まった六眼を向ける。

憤怒に染まって尚、自らの尊大と傲慢からくるプライドで、ベアトリーチェは冷静さを失いきってはいない。

だから見えた。先生を含めたトリニティゲヘナ連合がこちらに近付き、包囲しようとしているのを。

そして、嗤った。

 

「……まだ何か手があるのかしら?」

「ふふ、愚かな貴女達に理解出来るか解りませんが見せてあげましょう。この崇高を……!」

「……っ!?」

 

ベアトリーチェは、今まで持っているだけだった杖を掲げ、どす黒い赤に染まった宝珠が輝きだす。

その瞬間、それを止めようとしたミカ達の動きが止まり、全員が頭を押さえて蹲る。

 

「ぎっ?! これは……」

「この宝珠は〝悪神〟の欠片。人々の内なる悪を制御し増幅させる。つまり、使い方次第で貴女達の脳を破壊出来る」

 

宝杖を掲げ、蹲る連合を眺め哄笑する。

そう、これが本来あるべき姿。子供は大人に平伏し許しを乞い、惨めに従うべきなのだ。

 

「ベアトリーチェ……!」

 

激痛に呻くサオリ達に寄り添う先生を見つけたベアトリーチェは一層笑みを濃くする。

そして、語りかける。

これが現実だと。

 

「これで理解出来たでしょう? 先生。子供とは力と威光の前に平伏し、従うだけの存在だと」

「こんな、こんなものが、正しい訳がない……!」

「しかし、それが現実なのです。貴女が語る理想は子供にとって毒にしかならない」

「違う! 大人に従うだけだなんて、そんなものが正しい筈がない!」

 

文字通り、頭が割れ、脳を引っ掻き回される様な痛みに耐え、鼻から血を流しても先生は一歩も退かない。

 

「確かに子供は未熟だ! でも、それは支配していい理由にはならない!」

「未熟だからこそ、私の様な大人が管理し適切に使うべきなのです」

「違う! 未熟だからこそ、私達大人が責任を以てこの子達の背を支えて、未来へ歩ませるべきだ……!!」

「世迷い言を。……もう語る事はありません。サオリ、先生を撃ちなさい」

「なにをっ……?!」

 

ベアトリーチェの指示に従う理由は無い。だから、サオリは拒絶した。

なのに、サオリの手は震えながらも確かに拳銃を手にし、先生に銃口を向けようとしていた。

 

「リーダー……?!」

「くっ、何故……。この、止まれ!」

「ほら、憎いでしょう? 貴女達が苦しく辛かった時に居なかった癖に、今更現れて助けに来たなどと宣う大人が。遠慮は要りません。ほら、撃ちなさい」

「姉さ……、あれ? ちょ、ちょっと待って……?!」

 

見れば、サオリだけでなくヒヨリやミサキ、他のアリウス生達も苦悶の表情で先生に銃口を向けようとしている。

 

「くそっ! どうなってやがる?!」

「隊長……。やだよ、私達やっと……」

「ちょっと皆! って凄い力! 隊長!!」

「待ってろ。今なんとかしてやる。蒲郡!!」

「分かっている! 総員立て! 我らが同胞を救え!」

 

塵塚や蒲郡、他のトリニティやゲヘナ生が必死に先生に向こうとする銃口を押さえ込もうとする。

だが、塵塚と蒲郡の剛力ですらアリウス生の手を止められない。

止められないなら、自分達が盾になろうとパテル隊が筆頭に銃口の前に立つ。

 

「見なさい先生。これが現実です。子供は愚か故に大人に従い、その決定には逆らえない。効率的に使う道具に過ぎない」

「……黙れ」

 

その声は哄笑するベアトリーチェでも瞠目し、先生の前に立とうとしたヒナ達が止まってしまう程に冷たい声だった。

 

「支配? 使う? ふざけるなよ。お前如きが神にでもなったつもりか?」

「何を……」

「アツコとあの子から奪った神秘で至った崇高? ふざけるのも大概にしろ。お前は支配してるんじゃない。子供達に寄生してるだけだ」

「貴様!」

「その姿と力、その杖も、全部生徒達の力。お前自身が成した事なんて一つも無い。お前はただ生徒達を騙し、支配した気になってる寄生虫だ! 蟲が私の生徒に話し掛けるな!!」

「蟲だと? この私を蟲と力を持たない弱者が愚弄するか! いいでしょう。そこまで言うなら試してあげます。愛する生徒とやらに撃たれても、その口が聞けるかを……!!」

 

激昂したベアトリーチェが宝杖を更に強く握り締めると宝珠の輝きが増し、止めようとしていた蒲郡達を振り払いアリウスの銃口が先生に向く。

 

「では、先生。何か言う事は?」

「皆、気にする事は無いよ。そして、蟲が人の言葉を喋るなよ」

「そうですか。やはり愚者、ならばもう語る事はありません」

 

感情が失せた眼と声でベアトリーチェは先生を見下す。

所詮は力無き愚者、しかし見せしめにするにはこれ以上無い象徴でもある。

 

「では先生。さようなら」

「先生……!!」

 

ミカやヒナ、ツルギ。ナギサ達が痛みに耐え、先生の元へ駆け寄るが間に合わない。

先生は四方八方から撃たれ死ぬ。

先生がキヴォトス人ではない以上、その結果は変わらない。

ベアトリーチェが禍々しく嗤い、皆が絶望に染まる中、乾いた音がアリウスに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、実に興味深いね」

 

アリウスに響く乾いた音の連続。それは拍手だった。

 

「ふむ、成程成程。距離による減衰、若しくは認識、痛覚に対する耐性も影響しているのか? しかし、外部から人間の脳に影響し、行動を支配するとは……。電磁波の類いだとしても、行動の強制となれば何かアンテナの様なものが必要に……」

 

ぶつぶつと呟きながら混乱の真ん中を歩く白衣。腰まで届く所々が跳ねた癖のある黒髪、四角く細いレンズの奥にある知識欲が渦巻く瞳。

まるで、そこに自分以外には誰も居ない無人の野を歩くかの如く、ただ歩を進める姿。

それは間違い無く、トリニティ生物部部長鴨下だった。

 

「あれ、部長?」

「ん? ああ、君達。一体何をしているのかね?」

「え? いや、あれの毒電波で頭が……」

「なら、原因を究明し給えよ。まず、脳自体に痛覚は無い。頭痛は頭蓋内の他組織が感じる痛みだ」

 

あっけらかんと言い、鴨下はまた何かを呟きながら歩を進める。

そして、皆が呆気に取られ、支配されたアリウス生達すら呆然とする中、気付けばベアトリーチェの前にまで辿り着いていた。

 

「ふむ、君がマダム・ベアトリーチェだね」

「……如何にも」

「それは僥倖。私は鴨下という生物学の学徒だ。実はね、アリウスの子ら聞いた崇高とやらに興味があって来たのだが、私の好奇心は間違っていなかった様だ」

「ほう? 私の崇高に興味を?」

「ああ、実に興味深い。生物とはその姿を変えるのに進化や変態という膨大な時間とリスクを必要とする。しかし、君の姿は話に聞いた妙齢の女性とは違う。つまり、極短時間で自身の生物としての姿を変えた。これだけなら昆虫等が成長の際に行う変態だが、哺乳類に変態をする種は居ないし、その機能は無い。となれば、その生物の限界を超えた変化をもたらした神秘や崇高とやらは、既存の生物からはかけ離れたものになる。生物学の学徒の端くれとして、是非とも君の論を御教授願いたい」

「……いいでしょう」

 

ベアトリーチェはほくそ笑んだ。

愚かで矮小な生徒、しかしこれはただ純粋な知識欲だけでここに立っており、ベアトリーチェの崇高に一定の理解を示そうとしている。

愚かで矮小ながら見所がある。

故にベアトリーチェは語った。滔々と自身の崇高を、そこに至るまでの道のりを。

 

「あ、ヤバ……」

「え、何が?」

 

とりあえず、原因を究明するにも痛みを止めねば思考は回らぬと、特製の痛み止めを配る生物部の生徒が口を手で押さえていた。

その様子に痛み止めを受け取りながら、先生が疑問する。

 

「部長はさ、基本的に凄い寛容ってか、何が知識の探求に繋がるか分からないからどんどんやれってスタイルなんだけど……」

「なんだけど?」

「その分、なんでそれをやって、その結果何が解ったのか。これを論として説明出来なかったら駄目なんだよね。まあ、これは学問全部そうなんだけど」

「まあ、ね」

「だから、下手でも論として破綻してても、まずそれを言葉として説明出来なきゃ、何もかも無意味になる。これが部長の考え」

「つまり、今の奴の語り口だと……」

「うん。多分、というかもう興味無くしてる」

 

ベアトリーチェは自らの崇高について語り終えた。

久々に思う様に口が動いた。ここまで素晴らしい気分になれたのは何時以来だろうか。

この鴨下とやらも、きっと我が考えに感涙しているに違いない。

そう思い、鴨下に視線を向ける。

そこにはベアトリーチェに興味を失った鴨下が、足元の雑草のスケッチを取っていた。

 

「ん? ああ、終わったかね?」

「……貴様何を聞いていた。私の崇高は……」

「ああ、もういいよ。まったく、私は君の論を聞かせてくれと言ったのだ。なのに君は論ではなくポエムを詠み始めた。一体どういう事かね?」

「は?」

「は? ではないよ。折角、生物の新たな可能性を見出だした同志に会えると思っていたのに、これこそまさに骨折り損というものである。ああ、私もポエム、詩歌を嗜む情緒が無い訳ではないが、それを加味しても君のポエムは下の下だ。まずは詩歌の基本を先人に学び給えよ」

「貴様……!!」

 

やはり愚かな子供に自分の考えは理解出来ない。

激昂したベアトリーチェは、鴨下に向けて宝杖を振り上げるが、鴨下はそれを見てもスケッチを止めない。

 

「ああ、後ね。私の出番は終わりだ。後は君達主役に任せる。と言いたいが、劇には主役だけでは足りぬものだ」

「何が言いたい?!」

「劇には脇役、助演とも言い替えられる者達が居る。それを蔑ろにしては、どんな名作も台無しだ」

 

つまり、だ。と、鴨下が指を鳴らす。

そして、異様とも言える程に規則正しい足音がアリウスに響いた。




『あなた』
ハルカとキャッキャッしてたが、先輩から何故か大嫌いなあいつの匂いがして全力マーキング(体擦り付け)。

先輩
淑女メーター臨界突破。ハイパーモード中

一日ルーティン

  • 先輩
  • 『あなた』
  • 保全部
  • ナギサ
  • ミカ
  • セイア
  • 蒲郡
  • 鴨下
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