「ああ、もうこんな時間か」
掛け時計を見ると、3時20分だった。
今日の学校は寝不足で辛いだろうけど、もう少しで映画見終わるから――。
どれくらい経ったんだ?
時計の針は、12時を指していた。
おかしい、俺はまだこの映画を見ているんだ。6時間以上の映画なんて俺は知らない。
目を見開いて、振り返った。誰もいない、いつも通りのリビングだ。
視線を戻すと、そもそも時計の針が停止していることに気づいた。
時間が止まった?
しかし、映画は流れている。じゃあ否定された。
裏世界か。
あるわけない……とも言えない。
確か、電波時計だったはず。通信が悪いだけかもしれない。
きっとそうだ。
杞憂であることを祈って時計を見つめる。
突如、針はありえない速さで回り始めた。それに俺の脳もフル回転する。
映画は早送りになっていない。
体が急激に老けたわけでもない。
なら大丈夫か。
恐らく針は4時前に止まる。3時40分からそこまで経っていないと思うからだ。
2時を超えた。
映画の続きを見てもいいが、見届けてからでもいいだろう。
あらゆる最悪の可能性を想像してしまうのだ。
3時を過ぎる。
止まるよね?
4時を超えた。
え?
焦燥がぞわっと体を撫でた。
針は高速で回り続ける。
幸いにも映画は異常なし。あと12分で終わるけど、さっさと私室に行こう。
テレビの電源を消して、洗面所に向かう。
歯ブラシに歯磨き粉を付けて、階段を上がり。
私室のドアを開けて、ベットに座った。
詰めていた息を吐いて、スマホで動画サイトを開く。
因みに洗面所の鏡には、当たり前だが自分しか映らなかった。
はは、この動画おもろいわ。
ウォークインクローゼットからは誰も覗いていなかった。
スマホの時計は4時50分を指していた。
そろそろ寝ないと、通学中に事故りそう。
つまり、歯ブラシを戻しに洗面所にいく必要がある。下に行かなければならないのだ。
――大丈夫、大丈夫さ。ただ時計が壊れただけだ。いつもと何も変わらない。
しかもこの家には家族が居る。1人じゃない。
シェルター兼私室を出て、階段を下りた。
やっぱり、洗面台横のドアが開いている。その先は真っ暗なリビングだ。
時々、誰かが居る気がする場所。
俺は洗面所に入ると、鏡を見ないようにぺーをする。
口を濯ぐ。
目を閉じるのも怖いので、強制的に鏡が視界に入る。
誰もいなかった。
階段に足をかけると、自分の服がすれる音がする。
音が二重になっていないか耳を澄ませた。
いや、ドタドタと猛スピードで階段を駆け上がってくるかもしれない。
あれ、今聞こえなかった?
首筋が静電気を帯びたようにピリピリして、歩が早くなる。
私室のドアから漏れた光が俺を歓迎してくれているようだ。
ドアを開けると、飛び越えるように中に入ってドアを閉めた。
ベットに座り、ゆっくりと閉まるドアを見つめる。
手がはみ出してくることはなかった。
電気を消して、布団を被った。