不安症の彼が怖いもの

1 / 1
いつもの日常

「ああ、もうこんな時間か」

 

 掛け時計を見ると、3時20分だった。

 

 今日の学校は寝不足で辛いだろうけど、もう少しで映画見終わるから――。

 

 

 どれくらい経ったんだ?

 

 時計の針は、12時を指していた。

 

 おかしい、俺はまだこの映画を見ているんだ。6時間以上の映画なんて俺は知らない。

 

 目を見開いて、振り返った。誰もいない、いつも通りのリビングだ。

 

 視線を戻すと、そもそも時計の針が停止していることに気づいた。

 

 時間が止まった?

 

しかし、映画は流れている。じゃあ否定された。

 

 裏世界か。 

 

 あるわけない……とも言えない。

 

 確か、電波時計だったはず。通信が悪いだけかもしれない。

 

 きっとそうだ。

 

 杞憂であることを祈って時計を見つめる。

 

 突如、針はありえない速さで回り始めた。それに俺の脳もフル回転する。

 

 映画は早送りになっていない。

 

 体が急激に老けたわけでもない。

 

 なら大丈夫か。

 

 恐らく針は4時前に止まる。3時40分からそこまで経っていないと思うからだ。

 

 2時を超えた。

 

 映画の続きを見てもいいが、見届けてからでもいいだろう。

 

 あらゆる最悪の可能性を想像してしまうのだ。

 

 3時を過ぎる。

 

 止まるよね?

 

 4時を超えた。

 

 え?

 

 焦燥がぞわっと体を撫でた。

 

 針は高速で回り続ける。

 

 幸いにも映画は異常なし。あと12分で終わるけど、さっさと私室に行こう。

 

 テレビの電源を消して、洗面所に向かう。

 

 歯ブラシに歯磨き粉を付けて、階段を上がり。

 

 私室のドアを開けて、ベットに座った。

 

 詰めていた息を吐いて、スマホで動画サイトを開く。

 

 因みに洗面所の鏡には、当たり前だが自分しか映らなかった。

 

 

 はは、この動画おもろいわ。

 

 ウォークインクローゼットからは誰も覗いていなかった。

 

 

 

 

 スマホの時計は4時50分を指していた。

 

 そろそろ寝ないと、通学中に事故りそう。

 

 つまり、歯ブラシを戻しに洗面所にいく必要がある。下に行かなければならないのだ。

 

 ――大丈夫、大丈夫さ。ただ時計が壊れただけだ。いつもと何も変わらない。

 

 しかもこの家には家族が居る。1人じゃない。

 

 シェルター兼私室を出て、階段を下りた。

 

 やっぱり、洗面台横のドアが開いている。その先は真っ暗なリビングだ。

 

 時々、誰かが居る気がする場所。

 

 俺は洗面所に入ると、鏡を見ないようにぺーをする。

 

 口を濯ぐ。

 

 目を閉じるのも怖いので、強制的に鏡が視界に入る。

 

 誰もいなかった。

 

 階段に足をかけると、自分の服がすれる音がする。

 

 音が二重になっていないか耳を澄ませた。

 

 いや、ドタドタと猛スピードで階段を駆け上がってくるかもしれない。

 

 あれ、今聞こえなかった?

 

 首筋が静電気を帯びたようにピリピリして、歩が早くなる。

 

 私室のドアから漏れた光が俺を歓迎してくれているようだ。

 

 ドアを開けると、飛び越えるように中に入ってドアを閉めた。

 

 ベットに座り、ゆっくりと閉まるドアを見つめる。

 

 手がはみ出してくることはなかった。

 

 電気を消して、布団を被った。

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。