なんか謎に強キャラ感を漂わせる好きな惣菜発表ドラゴンの絵面が浮かんできたので書きました
多分その内消します
この世界には「召喚士」と呼ばれる職業が存在する。その名の通り「召喚獣」を召喚し、ときおり世界の裏側から溢れ出るという異界の怪物「キメラ」を討伐することを生業とした職業だ。
そして、このヒーローのような職業である召喚士はとても人気があり、多くの人が一度はそれになりたいと夢見る。僕もその一人だ。
そんな平凡な人生を送るはずだった僕の幸運だった点は、召喚士になる可能性を秘めた才能を持っていたこと。そしてそれを帳消しにする勢いで不幸だったことは……
「好きな惣菜発表ドラゴンが〜♪好きな惣菜を〜発表します〜♪」
僕の相棒たる召喚獣がこいつ、「好きな惣菜発表ドラゴン」だったことである。好きな惣菜発表ドラゴンは読んで字の如く、好きな惣菜を発表するだけのドラゴンだ。見た目は一応ドラゴンだとわかるデフォルメされたマスコットのようなもので、爪や牙といった攻撃に使えそうな部位は持ち合わせていない。そればかりか、召喚獣ならどんなものでも持ち合わせているはずの人智を超えた力さえも使うことができない。現状ただ人語を介す(といっても基本的に惣菜のことしか喋らない)だけの置物でしかない存在、それが僕が相棒と呼ばざるを得ないパートナーの正体だ。
「手も足も出ずにやられるや〜つ〜♪」
「ギャオゥ!」
「そこまで!」
今は召喚士養成学校のカリキュラムの一つである定期的な模擬戦の最中。今回の相手はトップクラスの成績を誇る代々召喚士を務めてきた
「やっぱテメェは雑魚以下のゴミだな!歯ごたえがねえどころの話じゃねえ!碌な攻撃手段もない召喚獣しか引けなかった時点で詰んでんだよ!テメェはよォ!」
「……」
無言で燃くんの言葉を受け流す。こんなもの、僕がこの学園で生活してきて散々言われてきた言葉だ。落ちこぼれ、雑魚、ゴミカス、無能、才能なし、全て事実だ。僕には召喚士としての才能も実力もなかった。
それでも、もしかしたら、そう思いながらなんとかこの学園の底辺にへばりつくこと三ヶ月。何も起きなかった。僕のドラゴンは惣菜の名前を口にするだけだし、僕自身が他の召喚獣を召喚することもできない。なら、もう潔く諦めようか。
この学園では自主退学が認められている。まあ本当にすごい成績の持ち主だと引き止められたりすることもあるみたいだけど、僕はそれに当てはまらない。簡単に承認してもらえるだろう。
「なんか言ったらどうだ?落ちこぼれの劣等生サマよォ!」
「……そうだね。燃くん、君は強いよ。僕よりも、他の生徒の誰よりだって。だから君なら立派な召喚士になれると思う。がんばってね」
「……あ?」
もうこれで会うのが最後だと思うと、僕の心の奥にあった醜い嫉妬で覆い隠されていた賞賛の言葉がすんなり出てくる。彼はすごい人だ。僕なんかと比べてはいけないほどに。もう同じ場所に立つことはないけど、せめて遠くで彼と元クラスメイトだったってことくらいは自慢させてほしいな。
そんなことを考えながら、自主退学用の書類を受け取るために学園長室に向かって歩き出そうとしたその時だった。
「っ!?全員下がれ!」
突然、空が割れた。この現象が意味することを、僕は知っていた。
「gydfsauyaewfk!」
異界から来たりし怪物、カオス襲来の合図だ。
「なんでここにカオスが!?」
「ここは抑制区域だったはずだぞ!?」
模擬戦を観戦していた生徒たちが困惑の声を上げる。かくいう僕も、驚きのあまり一歩も動けずにいた。
(このカオス……今までの訓練用のやつと格が違う……!)
その腕についた鋭い爪、鷲と蛇と二種類の頭を持つ異常性、何より纏っている威圧感。何もかもが恐怖の対象だった。
「全員避難しろ!」
先生が避難の指示を出す。だがみんなが動き出そうとする間にも、その怪物は人を食い殺さんと暴れまわった。
「rweouadbh!」
意味のわからない雄叫びを挙げて、風と毒のブレスを吐き出すキメラ。それを止めたのは、他の誰でもない燃くんだった。
「ハハッ!いい具合の獲物じゃねえか。俺の糧になってくれよ!行け!フェニクス!」
彼の召喚獣である燃え盛る大鳥、フェニクスが炎のブレスを吐きつつその身に業火を纏って突進する。それだけで大半の敵なら倒せるレベルのコンボだ。……そう、
「なっ!?おいフェニクス!しっかりしろ!」
フェニクスがいとも容易く吹き飛ばされた。持ち合わせている驚異的な再生能力も、あのキメラの毒に蝕まれて作用していないようだ。
……僕は何を呆けて眺めているんだ?早く避難しなければ。ただでさえ自衛手段のない僕のことだ。そうしないと一瞬でお陀仏だ。じゃあ、なんで……
「おい
僕は燃くんを守るようにあのキメラの前に立ちはだかっているんだ?
「……僕がやられてる間に逃げて」
「はァ!?」
そうだ、才能のない僕よりも、いずれあのキメラを倒せるくらいになるであろう燃くんの命の方が価値が重い。ならここで犠牲になるべきがどっちかなんて決まってる。
「……いくよ、『好きな惣菜発表ドラゴン』……せめて肉盾くらいにはなりにいこうか」
「……」
ドラゴンは無言だった。意味のわからない命令をする主に対して、愛想を尽かしたのかもしれない。別にそれでも構わない。どうせ僕が死ぬのは変わらないのだから。
「……来いよ!クソキメラ!お前はこんな落ちこぼれ一人殺せないほど弱いのか!?」
「gadusg……!」
人間の言葉が通じたとは思えないけど、それでも挑発には成功したらしい。ばっちり二つの頭で僕の方を見据えている。これなら誘導はできそうだ。
「ああああああああ!」
ヤケクソになって叫びながら、わずかにでも被害を抑えるために誰もいない方向に走る。そっちに攻撃が来ても……
「eyagsssvhcgfmzdvsckgy!!」
あ、駄目だこれ。走る暇なんてない。この一撃で僕は死ぬ。でもこれで時間が稼げるなら、それで……
「……友達のために命を懸けて前に出るや〜つ〜」
……あ、れ?死んで、ない?
なんでだろうと考えながら目を開けると、そこには普段の数倍の大きさになった好きな惣菜発表ドラゴンが立っていた。
「……ははっ、本当に肉盾になってくれるんだ。じゃあせめて一緒に死のうか!」
僕が死に際のハイテンションに起こされながらそう言うと、ドラゴンは否定するように首を振り、こう歌い出した。
「好きなドラゴン発表ドラゴンが〜♪好きなドラゴンを〜発表します〜♪」
「……え?」
「中華風♪」
全身に鱗の生えたとても大きな体長のドラゴン、いや龍が、キメラをその尾で叩きつけるように攻撃した。
「西洋風♪」
今度はこれぞまさしくドラゴン!というような見た目の赤黒い怪物が、その口から真っ赤な炎を吐き出しキメラの肉体を焦がした。
「人外要素を残して擬人化するや〜つ〜♪」
最後に、満身創痍となったキメラを真っ白な革鎧を身に纏ったどこか緩い雰囲気を漂わせる女性がその拳で殴り飛ばした。たったそれだけで、さっきまであんなに怖かったキメラは塵となって消えた。
「正式名称が〜わからないドラゴ〜ン〜も〜♪好き好き大好き〜♪」
僕の相棒たるドラゴン……が人化したのであろう女性は、この戦いを締めくくるようにそう歌うとこちらを向いてにっこりと笑った。それは僕が食事中によく目にした、好きな惣菜発表ドラゴンの笑い方とそっくりだった。
「君は……誰なの?」
「好きな惣菜発表ドラゴン。君の相棒だよ」
こうして、僕と好きな惣菜発表ドラゴンの大いなる戦いは幕を開けることとなった。え?なんで次があるってわかるのかって?だってこいつがこう歌っていたからね。
「一話目が終わった感じのや〜つ〜♪」
ならきっと「二話目」もあるのだろう。でも、どんな障害でも僕と好きな惣菜発表ドラゴンならきっと乗り越えられる、そんな気がしたんだ。
これは僕と好きなものを発表したがるドラゴンが、救うまでのお話。もしくは……好きな展開発表ドラゴンってところかな。
(一発ネタなんで続きなんて)ないです