「誰が座敷わらしか、俺はただの人間だよ!」全員「んなわけあるかッ!!」 作:ティファールは邪道
「……ボーダー、って、三門市の?……えっと、その方がどうしてうちの勝と……?」
「ごめん、母さん……詳しくは中で話そう?」
母親の戸惑いに勝はそう言い、それを聞いた母もそうね……っと納得して二人をリビングに通した
お茶を淹れる母親の手が、かすかに震えている……
テレビから流れる三門市のニュースや、防壁の映像でしか見たことのない『ボーダー』という組織……
そんな組織の人が、なぜ四塚市の我が家にいるのか、母親には理解が追いつかない
ローテーブルを挟んで、迅と勝、そして母親が向き合う形で座った
迅は出されたお茶に一口だけ口を付けると、いつもの飄々とした空気を完全に消し、真摯な面持ちで切り出した
「お母さん。驚かせてしまってすみません。単刀直入に言います。……勝くんは、三年前の『第一次大規模侵攻』のあの日、三門市にいましたね?」
その問いに、母親は頭に?を浮かべる……
「?……あの日、ですか……?いえ、その日は主人含めて私も仕事で家にいませんでしたし、その日は土曜で、学校は休みだったので、息子は家にいたと思いますが……」
「……母さん、ごめん……」
勝は静かに、しかし遮るような声で謝った……
「あの日、三門市に行ってたんだ、俺……」
「はぁ!?」
それを聞いて驚く母……
当然である。
ニュースでも一時期話題となった、ネイバーからの侵略……
その日に息子を経験していたというのだから
「あ、怪我はしてないよ。だって…怪物は倒してたし」
「え……?」
母親の思考が完全に停止する。我が子が何を言っているのか、言葉の意味が脳に届かない
勝は自分の右の掌を、じっと見つめた
「実は、俺はある力を持ってるんだ……。あの日、三門市に行ったのは、その力を制御するための特訓のため」
勝は少し気まずそうに頭を掻き、正直に白状した
「……自分の力が、どれくらい通用するのか、試したかったんだよ。オーラの放出を全開にしたら、どこまで速く走れるか、どこまで遠くへ行けるか。そしたら、ちょうどあの黒い穴が開いて、化け物がたくさん出てきて……。逃げれる自信があったから、少しちょっかいをかけてみたら倒せたから、襲われそうになってる人たちを、助けた。それが、三年前の本当のこと」
「オーラ……? 力を試すって、あなた……」
混乱する母親の前で、勝はすっと息を整えた
――『練(レン)』
勝が心の中で呟いた瞬間、リビングの空気が、肌がピリつくほどの濃厚な圧力に支配された……
母親の目には何も見えない。だが、部屋のカーテンが不自然に外側へ膨らみ、テーブルの上の湯呑みがカタカタと小さく震え始める……
迅も、間近でそれを受けて、驚き、固まっていた…
「……『念(オーラ)』。人間だけでなく、命あるもの全てが持っている生命のエネルギー、そして、それを操ることを『念能力』という……。
僕はそれを自由に使える……。
三年前も、この間の土曜日も、三門市へ赴いて、狩っていた」
勝の身体から放たれる圧倒的な「存在感」を前に、母親は言葉を失い、ただ息を呑むことしかできなかった
そんな親子のやりとりを静かに見守っていた迅が、ぽり、と持参したぼんち揚を一枚齧り、緊張した空気を柔らかくほぐした
「お母さん、勝くんの言うことは全部本当です。彼はトリオン……ネイバーと戦うための素質は今のところ確認されてません……しかし、それを抜きにして僕らの科学では測れない『規格外の力』を使ってネイバーと戦っている……。
僕らボーダーは、彼のことを三門市を守る都市伝説――『座敷わらし』って呼んで、ずっと探してたんですよ」
迅は勝に視線を戻し、悪戯っぽく笑う
「……でも、まさか『ちょっかいをかけてみた』なんて理由で三門市まで大遠征してただなんてね。動機を聞いたら、本部の偉い人たちも脱力しちゃうよ」
「……改めて思うと、不謹慎だった……ごめん……」
勝は申し訳なさそうに視線を逸らしたが、迅の表情はすぐにまた引き締まった
「でも、勝くん。理由はどうあれ、君が三年前に救った人の中に、この前君に声をかけていた人……三輪秀次って、言うんだけど、彼は今、ボーダーのA級……いわば上部隊長として君の正体を必死に追っている。そしてボーダー上層部も、君のその『念能力』を危険視して、身柄を確保しようと動き出してるんだ」
迅の言葉に、母親がハッと我に返り、勝の肩を抱き寄せるようにして迅を睨んだ
「確保って……! この子を捕まえて、どうするつもりですか!?」
「俺は、そんなことさせたくないから、本部を出し抜いて先に来たんですよ、お母さん」
迅は二人の目を真っ直ぐに見据え、優しく、しかし確固たる意志を込めて言った
「勝くん。君の持つ『念』の力、そしてその実力……ボーダーで、正しく使ってみる気はないかい?」