幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第16話

 リメイク16

 

 雄英高校体育祭1年の部、第1種目。

 

 障害物競走がスタートした。スタートの合図と共に人がゲートに殺到する。

 

 しかし人の多さに対してゲートがあまりにも狭く、人があっという間に詰まってしまう。

 

 ……まぁ、当たり前だろう。数百人にも届くかもしれない人数があの広さのゲートに我先にと押し寄せたのだ。考えるまでもない。

 

 私はそれを読み、一旦後ろに下がって様子を伺っている。その手にはEGO『くちばし』が握られており、静かにゲート周辺の動きを見ていた。

 

 先頭が詰まり、その後ろからドンドン人が押し寄せ目に見えるスピードで人が溢れ、流れが止まる。

 

 

「……今だ」

 

 パンッ! パンッ!! 

 

 私はゲートの壁に向かって数発、弾丸を撃ち込む。

 

 ビシィッ! 

 

 着弾した壁は少しだけ小さなヒビを作る。普段ならそれで終わりだろう。しかし今は人が殺到して壁に強い圧力がかかっている。

 

 つまり……

 

「フッ……!」

 

 私は軽やかに飛び上がる。そして上からできたヒビに向かって銃弾を放ち、人が短時間なら立ち止まれる隙間を作る。

 

 私はそこに着地し、足に力を貯めて再び飛び上がる。

 

「なっ!?」

「どうやって……!?」

 

 私は軽やかに人混みを抜け着地し、後ろを振り返ることなく駆ける。

 

「じゃあな」

 

 私は呟いて前を見る。先頭集団は……少し先だが追いつけない距離では無い。

 

 入試の時にみたゼロポイントロボが大暴れしているのが見える。恐らくあれが最初の障害物なのだろう。

 

 私は気にせず走り出す。

 

 ……ヒヤリと、空気が1段階冷えた気がした。

 

 その瞬間、前のロボが一気に氷に包まれる。

 

 私はそれを見て足を止め、呆然と見つめる。

 

「なっ……!」

 

 ……なんだあの威力は……! 氷……氷の個性……轟か!! 

 

 あそこまでの出力とは思いもしなかった。最初の戦闘訓練で範囲は相当広いのは知っていたが……動き抵抗する物体を完全に止めるとは……

 

 私は少し考えたあと、今考えるべきではないと再び足を動かし始める。

 

 しかし……

 

 ガラガラガラッ!! 

 

 ロボの凍った隙間を通ろうとした瞬間、氷がガラガラと音を立てて崩れ始める。

 

「不安定な体制ん時に凍らしたからな……崩れるぞ」

 

「ッ……!」

 

 私は頭上から氷の破片と共に落ちてくるロボに押し潰されそうになる。

 

 しまっ……! けど……

 

 パリン、と鏡の割れる音を立てて私はEGOを切り替える。

 

「『4本目のマッチの火』……!」

 

 ドォォン!! 

 

 轟音を立てて炎と共に発射された砲弾は自分目掛けて落ちてくるロボを包み、溶かしながら粉砕し、危機を脱する。

 

「ッ……」

 

 熱風と余波の炎を浴びながら何とか突破する。入試の時より控えめな精神負荷を感じ、ふと私も前に進んでいるんだと実感する。

 

「今考えることじゃないな……」

 

 私はちょっと気分が浮つくもすぐに意識を張り詰め直す。今はまだ勝負の最中だ。

 

 この間に先頭集団との距離はさっきまでより空いてしまった。

 

「チッ……」

 

 ……遠い。

 

 ……いや、焦るな。まだ追いつける。

 

 走った先に見えてきたのは奈落と、不安定な足場が転々と存在する綱渡りだった。

 

 少し先には既にこの関門を突破した轟と爆豪の背が見えた。

 

 横では飯田が器用に縄の上をスルスルと走っていくのが見える。

 

「なるほど……」

 

 私は少し考え、崖に背を向け地面にマッチの火を構える。

 

「……フゥ……」

 

 目を閉じて1つ息をつく。

 

 ……さぁ、やろう。

 

「ハッ!!」

 

 私は目を見開き地面に向けて渾身の一撃を撃ち込む。

 

 爆風と共に体が宙に舞う。私は爆風を利用して一気に駆け抜ける選択をしたのだ。

 

 ……しかしほんの少しだけ距離が足りない。

 

「チッ……!!」

 

 私はもう一度マッチの火を構える。少しでも勢いを利用して届かない距離を埋めよう考えたのだ。

 

 ドォォン!! 

 

 放たれた弾丸は点在する足場のひとつに大きくクレーターを作って着弾する。

 

 私は目論み通り勢いにのりそのまま対岸に着地することができた。

 

「ケホッ……」

 

 髪の端が焦げる臭いがする。体操服も少し焼けこげ、呼吸も苦しい。

 

 ……何よりやはり精神の負荷と頭痛が酷い。

 

 前より慣れてきたとはいえ……多用すべきではないな。

 

 少しの目眩を無視して私は走り続ける。

 

 ……さっきより前との距離が詰まっている。

 

 無理する価値はあったのだろう。先頭を走るふたりとの距離はかなり縮まっていた。

 

 第3関門は……地雷原か。実況席からプレゼントマイクが喋っているのが聞こえる。

 

 威力自体は大したことないが……とにかく派手らしい。

 

 立ち止まる私の横を後ろから追い上げてきたライバルたちが次々と駆け抜けていく。

 

 ……落ち着け、よく見ろ、観察するんだ。安全で、1番早いルートを……! 

 

 ライバルたちが前に行くたびに地雷はどんどん爆発していく。

 

 1番前を走る轟たちは残りの距離が半分となった頃。

 

 私は走り出した。

 人が通った道、つまり地雷が既に爆発、あるいはないルートを。

 

 他の生徒たちは地雷がないか探しながら走っているためスピードはそこまで早くない。大して私は全力疾走できる。

 

 先程追い抜かれた分どんどん追い抜いていく。

 

 ……もう少しで先頭に追いつける。最後に飛び上がって、駆け抜けろ……!! 

 

 私は更に足に力を入れて走る。

 

 ……その時だった。

 

 ドゴォォォォン!!!! 

 

 後ろから今まで聞いた事のない爆音が聞こえてくる。とても1つの地雷が踏まれ、爆発した音とは思えない。

 

「なっ……!?」

 

 思わず振り返って立ち止まる。

 

 ……そこには、地雷の爆発を利用して一気に空を飛んで駆け抜ける、緑谷があった。

 

 ……なるほど、大量の地雷が爆発した勢いを利用して、一気に前に……! 

 

 さっき、私がマッチの火でやった行為と同じだ。恐らく真似をしたんだろう。

 

 私は息を飲む。走れ! 走れ! と脳が、理性が叫ぶ。それでも私は緑谷から目を離せなかった。

 

 空を舞う彼の、必死な顔から目を背けることが、出来なかった。

 

 ……誰よりも必死で、誰よりも他人思いで、誰よりも努力家な、その顔と姿から。

 

『ゴ────ル!!!!!!』

 

 ……緑谷が一番にゴールした事を伝えるプレゼントマイクの実況が鳴り響く。

 

 私はその時ようやく正気に戻って走り出したのだった。

 

「っ……」

 

 私は急いでゴールする。幸い、後ろも緑谷の爆発で少し怯んだおかげで順位の変動はなかった。

 

 4位。

 

 ……決して悪い数字ではない。むしろ後ろにいる生徒の数を考えると素晴らしい記録だ。

 

 私は緑谷の方を見る。

 

 1位でゴールインした喜びを、麗日達と分け合っている。

 

 ……はは。

 

 乾いた笑いしか出ない。私のあれは使い慣れているモノで、出力も発射感覚も全てを把握した上で下した判断だ。

 

 だが緑谷は違う。その場で、突発的に、振ってきたアイデアをその高い作戦構築術であっという間に成し遂げたのだ。

 

 私は、緑谷に負けた。雄英に来る前までは無個性だった、あの男の子に。

 

 ……悔しい。

 

 ……けど、それよりも……

 

 私はずっと彼から目線を背けることが出来なかった。

 

「……」

 

 自分でも、その気持ちを上手く言葉に出来る気がしなかった。




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