なんとなく書いた小説です。生暖かい目で見守ってください。
目を覚まして最初に見た光景は、知っていて知らない星空だった。
空に瞬く星は、いつも見上げていた星たちよりも綺麗に光り輝いている。憧れていた月も、手を伸ばしたら届きそうな程、近くにある。
細長いコンクリートで出来たビル群から垣間見えるだけの小さな空は視界一面に広がっていて、その周りを木々が囲んでいた。
その光景に違和感を感じる。
そして背中で感じる感触が、アスファルトのざらざらとした硬い感触じゃなくて、ちくちくとした、葉っぱが肌を刺してくる痒みだことに気付いて、此処があの都市でないことを悟る。
死んだのかと言う、喜びと諦めと、ほんの少しの哀しさが混じった感情が心の底から湧き上がって来た。あそこに残してきたものは何もないと言うのに、戻らなければと言う焦燥感が頭の中を埋め尽くす。何故?
そんな疑問も頬をつつく細い指によって霧散する。と言うよりも、そちらに気が取られてそれどころじゃないのだ。
その指は冷たく、その指の持ち主が生きているようには思えない。お迎えなのだろうか、死んでからお迎えと言うのも可笑しな話だが。
視線を横にずらすと、そこには蒼い少女がいた。髪色、眼の色、服の色、頭についたリボン、そのどれもが青く、胸元についた細く赤いリボンが一つのアクセントになっている。
そして一際目を引くのが、背中に浮かぶ氷のような三対の何か。少なくとも作り物には見えない。例えるのならば、まるで妖精の羽のような──
「ねー、大ちゃん。これ何かな」
「どうしたの、チルノちゃん。急にしゃがみ込んで」
「いやだからこれ」
「って人ぉ! なんでこんなとこに⁉︎」
「あたいがしってるわけないじゃん」
「チルノちゃんには聞いてない!」
その後ろから走ってきたのは、緑髪にサイドテールの少女。蒼い少女と似たような服装をしており、胸元のリボンが黄色になっている。
そして背中には、蒼い少女と同じように羽のようなものが浮かんでいる。こちらは、精緻なガラス細工の様に綺麗な一対の羽だ。
取り敢えず起き上がる。ばっ、とじゃなくてむくりと。が理想だったけど、身体が痛過ぎて、生まれたての子鹿の如くプルプルとしながら起き上がる。それかゾンビの様に。
その姿を見た少女達は、こちらをまるで化け物を見るかの様な目つきで見てくる。その目には涙が浮かんでおり、体を震わせながら後ずさる。それこそ、生まれたての子鹿の如く。
少女達の方へと上半身を向け、腕を伸ばす。それが襲ってくる合図にでも見えたのか、少女達は一目散に森の中をかけて逃げて行った。
そう、森の中だ。私が寝転んでいた場所は、創作で見る様な森の中のくせに木が生えていない、ちょっとした原っぱの様な場所。
私がいた都市もよくコンクリートジャングルなどと揶揄されていたが、それを形作っていたのは灰色の無機質な木々だけで、目の前に広がる緑と茶色の有機物など、緑化活動のアピールの為に道の端に数本が植えられていただけのはずである。決して、その奥が見えない程に鬱蒼と生い茂ってはいなかった。
何故、都市と比べているのだろう。そんなにも、私は生きたかったのか? あんなゴミ溜めの様な場所で。いいや、違う。私はあんな場所、嫌いでしかなかったはずだ。只、生きていく為だけに暮らしていた場所だ。あんな場所に戻りたいだなんて思うはずが無い。そうだ、私は、あの場所が、嫌いだ。
森の中から向けられた殺気を感じて、思考を中断する。ねっとりと絡みつく様な殺気。こちらを品定めしているかの様な、気味の悪い視線がこちらを見ている。
周りの森からも、同じ様な殺気が飛んできた。その殺気は、木々が落とす影から向けられている様にも思える。どれほどの数がいるのだろうか、八人までだと助かる。
ゆっくりと立ち上がり、最初に殺気を向けた奴がいるであろう場所へと、視線を向ける。
「こんばんわ、月が綺麗ですね」
先の見えない暗闇に向かい言葉を掛ける。へんじがない、ただのしかばねのようだ。
「あれを見てそう思えるなら、相当狂ってるね」
生きていた様だ。闇の中から少女の声が聞こえる。さきほどの少女の声では無い。また新しい少女の様だ。美少女なら大歓迎だけど、殺気を向けられるのはご容赦願いたい。
「月は、綺麗でしょう?」
更に声をかける。説得できるかもしれない。
「何も見えない暗闇の方が綺麗だよ」
どうやら趣味が合わなかった様だ。告白だと思われたに違いない。
「でも、食べないであげる」
おや?
「あなたの目が綺麗だから。食べたらもったいない。じゃあね」
どうやら、私の瞳は彼女のお眼鏡にかなった様だ。殺気がおさまっていく。
彼女の気配が森の奥へと遠ざかって行き、そして完全に消えた。
その場に座り込み、空を見上げる。
目が覚めてからの出来事を振り返り、天を仰ぐ。
どうやら、私は、死んでいない様だ。
今日の日記
美少女二人と出会った。眼福。