月を見上げる、星空に手を伸ばす   作:そこけせ

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暫くリメイク作業に勤しむので一旦未完設定にします。もしかしたら間に何話か挟むかも。
この事を伝える為にパーって書いた話なので、短めで出来も悪いです。ご了承ください。出来が悪いのは元から? そか



顔を覗かせて、

 目を覚まして最初に見た光景は、最早見慣れた天井だった。

 背中に感じる感触は、柔らかいクッションの様な感触。そして柔らかい布が体の上にかかっている。

 周りを見渡してみると、いつも通りの洋風の内装。棚があったり、その中にしまわれている本だったり、部屋の中心にはテーブルと椅子がある。左手側は壁になっていて、それについている窓から太陽の光が差し込む。特に弄ったりしていないから、いつも同じ光景だ。

 

 ベットの脇にあるテーブル──なんて言うんだったか、調べようとも思わない──には、ベルと書き置きが残されている。

 小さな四角い紙は、こちらから見える様にベルに立てかけて置かれており、流れる様な筆記体で、目を覚ましたら鳴らすこと、と書かれていた。

 

 身体を起こし、腕をベルの上へ動かして、ベルを掴んで、手を振る。

 チリーンと、静かな音が家中に響いた。

 

 暫くして、部屋のドアが開く。アリスさんだ。

 その姿は弱々しく、憔悴しきっている。何か、嫌な事でも起きたのだろうか。人形全部ダメになったとか?

 

「…起きたのね」

 

 どうにか聞こえるくらいの大きさの声で、話しかけてくる。何というか、見ているだけで、気の毒になってくる。雰囲気が暗い、通夜じゃないんだから。

 

「朝ご飯、出来てるから、食べておいて」

 

 それだけ言うと、部屋を出て行った。…誰かの葬式でもあったんじゃないかってぐらい、雰囲気が暗い。本当にあったんじゃないか? まぁ、葬式してもらえるんだから、相当な金持ちだったに違いない。あとアリスさんがあんなになるんだから、相当良い人だったんだろう。

 私も死ぬ時はしてもらいたいものだ。今じゃない、今しなくていい、あとこれは願いじゃない。

 

 仮面を手に取り、部屋の外へ出る。フラフラはしない。低血圧じゃない様だ。

 

 リビングの椅子に座り、美味しそうな朝食が並ぶテーブルの上のピッチャーを手に取り、空のコップに中のオレンジジュースみたいなものを注ぐ。

 手を合わせて、

 

「いただきます」

 

 フォークを手に取り、彩りの良いサラダを口に運ぶ。美味しい。

 

 あっという間に全てを食べ尽くし、フォークを置く。

 手を合わせて、

 

「ごちそうさまでした」

 

 食器を流し場に持っていき、綺麗に洗う。汚れ一つ残してはいけないし、魔法も使ってはならない。自分の手で洗うことに価値があるのだ。って誰かが言ってた。誰だっけ。

 

 それを終わらせ、椅子に座っていると玄関の扉が開き、アリスさんが入ってきた。暗い雰囲気が幾分かマシになっている。明るさ最低値の懐中電灯から、常夜灯に変わった感じだ。感情に折り合いでもつけられたのだろうか。

 

 気分の暗さを表す様に、いつもよりゆっくりとこちらに歩いてくると、意図のわからない質問をしてきた。

 

「昨日あった事を教えて」

「? 昨日なら魔法の練習したじゃないですか」

「出来るだけ詳しく」

「えっと──」

 

 確か朝起きて、ご飯食べて、そのあと外に出ると森が燃えてて、それを雨を降らして消化して、雨を降らしたせいで体が濡れたからお風呂に入って、アリスさんから魔法について教えてもらって、夕ご飯食べて、

 

「──眠った。昨日はそんな感じだったと思います」

「…そう」

 

 その答えを聞くと、アリスさんは少し微笑んだ。ついでに頭を撫でてくれた。

 

「今、私以外の声が聞こえる?」

「はい。聞こえます」

「話している内容は?」

「なんか、願い叶えるよー、だから願ってよー、お願いだよー、みたいな」

「………ふふ」

 

 アリスさんは顔を背けて、吹き出した。暫く肩を震わせていると、まるで憑き物が落ちたかのような笑顔をこちらに向ける。心なしか雰囲気も明るくなった気がする。気分が晴れたなら良いんだけど。

 

「ずっと聞こえる?」

「違いますよ? これ良いなーって思ったら聞こえます」

「それじゃあ、その声の言う事は聞かないでね、絶対よ」

「わかりましたけど、この声何なんですか?」

「知らない方がいいわ、特に貴方は」

 

 じゃあ良いや。特に迷惑になっているわけでもないし、こいつの言う事は無視すれば良いのだろう。

 

「でも、その声は魔法を学んで使う程、大きくなるし、魔法を使うのをやめれば聞こえなくなる。それでも魔法を使いたいかしら?」

「はい」

 

 こいつの声を無視すれば何も気にしなくても良い。それに魔法は素晴らしいものだ、使えないなんて勿体無い。って誰かが言ってた。多分あいつ。

 

「そう。それじゃあ、他の魔法使いに会いに行くわ。彼女達に学んできなさい」

「アリスさんが教えてくれるんじゃないんですか?」

 

 そう私が問いかけると、アリスさんはほんの少し顔を歪ませた。それは、自罰的で、何かを後悔するような表情だった。自分を罰することに意味などないというのに。

 すぐに大袈裟な笑顔に戻ると、質問に答える。

 

「魔法を使うのなら見聞は広い方が良いわ。それには他の魔法使いに学ぶのが一番よ」

「へー、そうなんですね」

 

 他の魔法使いというと、昨日の失敗魔法使いが思い浮かぶ。まずはその魔法使いの所に行くのかな?

 

「明日か明後日のどちらかで行きたいんだけど、どっちが良いかしら」

「なら、明日で」

「分かった」

 

 そして、アリスさんは玄関へと向かい扉に手を掛けて、何かを思い出したかのように振り返った。

 

「貴方、名前は?」

「ああ、私は…」

 

 あれ? 何だっけ、思い出せない。わからないじゃなくて思い出せない。ここにきてから決めた名前があったはずなのだが。

 黙り込んだ私をどう思ったのかは知らないが、こんな提案をしてきた。

 

「無いなら私がつけてあげる」

「…お願いします」

 

 どうしても、思い出せない。思い出せないのだから仕方ない。どうせ大した意味もない、記号みたいな名前だったのだろう。名無しじゃ呼びにくいから、便宜上つける名前。そんな名前を名乗るよりは、人に名付けられた名前の方が良い。

 

「アルミス、とかどうかしら」

「…良いですね。そうします」

 

 そう名付けられた名前を噛み締め、感慨に耽る。

 アルミス、まるで最初からそんな名前だったかのように、しっくりくる。

 

「それじゃあ、行ってくるわね、アルミス」

「はい。いってらっしゃい、アリスさん」

 




今日の日記
名前が決まった。
アルミス、良い名前だ。意味は知らない。
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