好きなシナリオ発表ユーザーが〜♪   作:はめるん用

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 ※転移要素あり


定番の追放と知識チート味のヤツ。

「そこだッ!」

 

「甘い」

 

「ぐぅッ!?」

 

「ハァ〜ハッハッハ!! パパの勝ちィ〜♪ ……息子よ、冷静さを忘れるなとは言ったが、踏み込むべきときに迷うのは悪手でしかない。だが、以前と比べて槍に攻めの意志が込められている。その成長、王としても父としても余は嬉しく思う」

 

「頭の処理が追いつかないので、どちらかの話し方に統一してくれませんか?」

 

「ねぇねぇママ見てたぁ〜? 余たちの息子メッチャ強くなったと思わな〜い? まだちょこっと甘いところもあるけれど、そこも可愛げって言うか〜。いやぁ、こりゃ玉座をプレゼントしちゃう日も近いかな? 子どもの成長は嬉しいねハニー♪」

 

「もぉ〜パパったら、プライベートな時間だからってはしゃぎ過ぎよ? でもそうね、妾たちも忙しくてあまり構ってあげられなかったけど、それでもこうして立派に育っているところを見れるとホントに誇らしいやら申し訳ないやらで……どうしようダーリン、妾、幸せ過ぎて涙が出ちゃう!」

 

「あぁ! ハニーッ!!」

 

「えぇ! ダーリンッ!!」

 

 

「兄様。なんであんなこと言っちゃったんですか」

 

「心からすまないと思ってる。父上、母上、大変申し訳ないのですが、やはり責任ある立場としての振る舞いをお願いしてもよろしいでしょうか」

 

「息子よ。休息の前に武具の手入れを始めるぞ。他者を使いこなすのも王族としての務めだが、自ら動くことを忘れてはならぬ。まして戦士たるもの命を預ける武具を健全に保つことすら出来ぬようでは話にならん」

 

「娘も理解していますね? 我々砂の国の王族は他国とは違います。国の危機が迫れば率先して立ち向かわねばなりません。王とは兵に、民に護られる存在ではなく、兵と民を護るのが王たる者の姿なのですから」

 

「私たちもいつかはこんな感じになるんでしょうか。変わり身早いなぁ」

 

「妹よ、恐ろしいことを言わないでくれ。いや、時と場合を弁えて下さっているのだから問題は無いのだが」

 

「四角四面の態度ばかりでは部下を率いる立場として未熟ぞ。信用とは、信頼とは、誠実であることを前提条件にした上で人間性を磨かねば得られぬモノと知れ。だからたまにはパパと一緒にお風呂でお喋りでもしようZE☆」

 

「いや汗を流すなら水浴びで充分……わかりました! わかりましたから! 別に父上のことを嫌っているワケではありません! ご一緒しますから、そんな燃え尽きて灰になったかのように絶望しないでください!」

 

「チラッ、チラチラッ」

 

「私も母様も汗はかいていないでしょう。お湯の無駄遣いは慎んでください」

 

「がーん……ッ!?」

 

 

 

 

「ふぅ……息子の恋バナを聞き出しながらの湯浴みは最高だな。心まで洗われるようだった」

 

「私は余計な疲れが蓄積しましたけどね」

 

「パパは自由恋愛賛成派だから安心していいぞ! 問題があるとすれば、平民相手に余が直々に先方に頭を下げに行こうものなら萎縮させるどころでは無くなるということか。吉事であろうと己の感情を優先して民に迷惑を押し付けるなど王の振る舞いとして全く相応しくない」

 

「その気遣いをもう少し息子や娘に向けていただきたいのですがね?」

 

「そんなのヤダッ! パパ寂しいッ!!」

 

「あぁ……もぅ……」

 

「家族にぐらい甘えられんようではストレスで為政者など務まらんぞ。お前も個人ではなく他者を含めた責任のある仕事を経験すれば多少は────む?」

 

 

「これはこれは陛下、それに殿下も」

 

「なんだ、我が国の知恵者が揃って。なにか悪巧みか? 余を謀るのであれば愉快な催しにせねば許さんぞ?」

 

「ハハッ、そのときは大陸全土を巻き込むほど派手な祭りにしてみせましょう。実は、例の鍛冶師殿から相談を受けまして」

 

「あの流れの。変わった着眼点で便利な物から玩具まで色々と錬成しておるようだが、相談とはな」

 

「新たな魔術道具について、でございます。仕切られた空間を水と氷のマナで冷やすことで食料や医薬品の長期保管を可能とする道具なのですが」

 

「ほぅ。我が砂の国であれば、先に献上された水晶の槍よりも何倍も価値のある魔術道具だな。それだけに惜しい」

 

「……? 父上、聞いた限りでは錬成を躊躇うような理由などない、実に平和的な魔術道具のようですが。民の生活も楽になるのは」

 

「問題はそこなのだ、息子よ。そうだな?」

 

「はい。かの鍛冶師殿は、自身の技術による文化の侵略を懸念しております」

 

「文化の、侵略……?」

 

「いま、我が国でモノを冷やす手段については知っているな?」

 

「もちろんです。水を利用し、マナの消失に伴わせる形で熱を逃がすことで鮮度を保っております」

 

「鍛冶師が考案した冷却の箱があれば、その保存のための水は不要になるな?」

 

「そうですね。その冷却の箱が安価で生産できるのであれば」

 

「と、なれば……だ。水汲みや水運びで日銭を得ていた者たちの仕事が無くなるやもしれんな?」

 

「あッ!?」

 

「目先の利益を求めるのではなく、我が国のことを想い自制したか。なんとも喜ばしいことだな? 学べ、息子よ。知識を持つ者が賢人なのではない、知識の使い方を考えることが出来る者こそが真なる賢人なのだ」

 

「はい、肝に銘じます」

 

「うむ。しかし、なぁ……大臣、やはり惜しいな」

 

「はい。ですので我らもあぁでもないこぅでもないと頭を捻っております。鍛冶師殿は報告と相談という形で責任を果たしておりますからな、これで我々の知恵が足りず、せっかくの魔術道具を封印させるような真似など出来ませぬ故」

 

「頼むぞ。上手く我が国の文化に馴染ませることが出来れば、民の生活が楽になるのも事実なのだから。息子よ、お前もなにか考えてみよ。思い付きで構わん。案外、お前や余のような素人のほうが意外性のあるアイディアを閃くものだからな」

 

「そういうものでしょうか? 私など、夜中に目覚めたときに冷たい水を飲めるのであれば、きっと美味しいだろうと、その程度のことしか考えが浮かびませんでしたが……」

 

「ハッハッハ! そうだ、そういうのが良いのだ! 欲し望むことこそが創意工夫の始まりだからな! うむ、大臣、それに皆。苦労とは思うが頼むぞ」

 

「「「「御意」」」」

 

 

 

 

「ねぇダーリン、大臣たちが献上したいモノってなにかしら?」ベタベタ

「なんだろうねハニー。例の件で良いアイディアが出たのかもね」イチャイチャ

 

「兄様。愛があれば砂漠の気温も気にしない、両親の仲が良好なのは素晴らしいことなんでしょうね」

 

「そうだな、他国では世継ぎのためだけの政略結婚が当たり前なのだから私たちが幸せな家族なのは間違いないのだろう」

 

 

「失礼します。陛下、それに皆様も。遅れてしまい申し訳ありません」

 

 

「良い。家族とゆるりと語り合う時間が出来たと思えば、お前を咎める理由も無い」シュバッ

 

「えぇ、そうですよ。貴方たちが我が国を、そして我が夫のために尽力してくれていることは充分過ぎるほど理解てしいます」シュバッ

 

(転移魔術も顔負けの素早さだな……)

(どうせ大臣たちにもバレてると思うんだけどなー)

 

「ありがとうごさいます。では、早速」

 

「フフン。説明も無しに実演とは、急かすではないか」

 

「とある島国から百聞は一見にしかず、という言葉も伝わっております故。では、よろしく頼むぞ?」

 

「はい!」

 

「ふむ……? 箱に水を……それも、かなりの量を……そして、これは」

 

「氷のマナ、ですわね。かなり、高度で緻密な魔術式が刻まれているかと。我が国の周囲では高位の魔術師でも氷属性の魔術を行使するのは……箱の内側に刻まれた術式が見えずとも、美しいマナの流れが視えますわ」

 

 

「────これが、鍛冶師殿の回答です。我々が悩んでいる間にも知恵を絞ってくれたのでしょう」

 

「美しいな。高純度の水晶のような氷の塊、それも整った立方体とは面白い。なるほど、遠回りだが我が国の文化との調和を目指している。息子たちよ、わかるか?」

 

「……水の需要を、逆に高めたのですね。氷のマナを集めることが難しいことを逆手にとって。これなら輸送手段の手間や創意工夫を収入としている者たちにも受け入れやすいかと」

 

「これと同じ物を他の職人が錬成できるようになるまでは時間を必要としますが、決して無理ではないのもポイントですね。模倣から始めて練度を高めれば追い付ける、鍛冶師様個人に頼らず量産する前提で考えられています」

 

 

「この【製氷機】の価値をご理解いただけましたところで、さらにもうひとつ。では、次のモノを」

 

「はい」

 

「今度はなにを……ふむ。氷を削って……?」

 

「ガラスの器に……まぁ! 果実を!」

 

「鍛冶師殿はこれを【かき氷】と呼び、素材集めを手伝っている子どもらに振る舞っておりました。すり下ろす果実を変えれば様々な味が楽しめると評判のようでございます」

 

「はむッ! ……兄様、私はこれから氷の魔術を究めようと思います」

 

「この製氷機という魔術道具の解析に力を入れたほうが近道だと思う。だが、確かに……他国で口にした、贅を凝らした菓子に負けない美味しさがある」

 

「あぁ、ひとつだけ注意点がございまして。鍛冶師殿が言うには、極端に冷たいモノを1度に食べ過ぎると頭痛に襲われると。あのように」

 

「「〜〜〜〜ッ!?!?」」

 

「父様……母様……」

 

「なら、熱病で倒れた者に食べさせれば回復できるかもしれないな」

 

「粗く砕いた氷を革袋に詰め、布で包んで頭の後ろや胸元、あとは股に挟むことで全身を巡る血液を冷やせるだろうとも」

 

「鍛冶師殿は医学にも通じているのか?」

 

「いくつもの国を渡り歩いて我らの国へとやって来たそうですからな。旅の心得として身に付けておられたのかもしれません」

 

 

「……よしッ! 息子たちよ、コレの扱いについて任せるとしよう」

 

「父上、頭は大丈夫ですか? ふたつの意味で」

 

「まだ芯の部分に違和感はあるが、ちゃんと理由があってのことだ。お前にも責任のある仕事を任せたいと思っていたからな。しかし学びのために他者の命を軽々しく利用するなど言語道断、となれば……魔術道具の扱いであれば試すには適当だろう」

 

「誰でも氷を手に入れることが出来るようになる魔術道具を……私が、この国に浸透させる……」

 

「判断が遅れても手遅れになることは無いが、判断を誤れば百年先まで我が国が得られたハズの利益を失うことになる。元より鍛冶師は他国からの流れ者と思えばマイナスにはならないが、優秀な人材を使いこなせないのであればプラスにもならない」

 

「つまり未来に対する責任がある、と。わかりました。私も王族として微力を、いえ全力を尽くします。まずは……いえ、先に鍛冶師殿に挨拶をするのが筋でしょうか。護衛の者には控えてもらい」

 

「いや、ひとりぐらいは同行させておけ。ゾロゾロと連れ歩く必要は無いが、居なければそれはそれで相手に気を遣わせる。まぁ、その辺りは……妻の意見も参考にすると良い」チラッ

 

「そうですね。ではこの件については妾が相談役を務めることにしましょう」チラッ

 

「うむ。では、余はまだ大臣と話すことがあるので────」

 

 

 

 

「……それで?」

 

「優秀が過ぎるのも考えもの、とは嫌な言葉ですな。器の不足を他責で誤魔化すなど嘆かわしいことです」

 

「余などは息子の成長が楽しくて楽しくて仕方ないのだが。まぁいい、つまり余の眼は曇ってはいなかったと。愚かだな、わざわざ優秀な錬成術の使い手を手放すとは」

 

「どうにも鍛冶師殿が本物の流れ者であることも関係しているようで。まぁ、努力を嫌いながら名声だけを欲しがる者は何処にでも現れるものでしょう」

 

「フンッ。他者を貶めて評価を得たところで、自身の真なる価値はなにひとつ変わらんというのに。まぁいい。それで、いまのところ動きはあるのか?」

 

「ありません」

 

「……それはそれで、どうなのだ?」

 

「問題が起きるのはこれからでしょう。見様見真似の粗悪品でも、取り敢えずは機能しますので……草たちの報告によれば、鍛冶師殿の価値に気付いている者は頭を抱えているようですが」

 

「ふむ。流れて来るか?」

 

「可能性は低くないかと」

 

「よろしい。立場を弁えて頼ってくるのであれば歓迎しよう。それと、外交官たちには件の鍛冶師が砂の国を故郷(ホーム)と認識していることは」

 

「もちろん把握しております」

 

「そうか。さて、あとは息子たちの働き次第か……フフフ、逃がした魚は大きいと気付いた連中がどう動くか、楽しみだな?」

 

 

 

 

 〜 概ね700日ぐらい後 〜

 

 

 

 

「……なんと申しますか、随分と痩せられたようで。最後にお会いしたのは2年前、聖女を名乗る政治を知らぬ小娘と、交渉の場で剣を抜く意味も理解できぬ騎士を名乗る蛮族たちの引率をしていたときでしたかな?」

 

「いや、1年前の、吟遊詩人たちが7日間戦争などと面白可笑しく広めた記録的大敗の事後処理のときだな。ワシは戦いは専門ではないが、それでも自軍がどれだけ無様だったのか報告だけで想像できた」

 

「事の始まりは『複数の国で問題を起こし逃亡した犯罪者を匿うような国とは取引できない!』と一方的に交易をメチャクチャにしてきたことでしたな」

 

「それで魔術道具に使う魔水晶が不足すると、今度は『砂の国は資源を独占して不当に利益を得ようとしている!』と騒ぐのだから呆れたものだ」  

 

「……仕事ですので、一応、確認しますが」

 

「こちらの条件は食料支援、だそうだ」

 

「それは、また」

 

「そうだ。我が国は未だ砂の国が食糧を輸入に頼り切っていると思い込んでいる」

 

「なるほど。他国の調査も満足に出来ないほど人材が不足しているというワケですか」

 

「あの養鶏場とかいう施設は面白い。家畜は放し飼いにするのが当然だという常識など関係ない、と言わんばかりだ。あの男が関わっているのだろう?」

 

「鍛冶師殿の頭の中には最初から完成したイメージがあったようでしてな。試行錯誤というほどでもなく、楽しく作業が出来たと現場の者からは」

 

「ワシも愚かだった。何故、あの男があのようなことをしたのか、ではなく。本当に、あの男がそんなことをしたのか? と疑わねばならなかったというのに」

 

「個人として信用しても、公人としては動けぬこともありましょう。言っておきますが、鍛冶師殿は手放しませんよ? 彼は我が国を故郷としてくれていますのでね。これは外交官として云々ではなく、陛下の御命令でもあります」

 

「彼が正しく評価され活動しているようで安心した。ところで、ひとつ個人的に相談したいことがあるのだが……そろそろ、第二の人生とやらを歩んでみようと思っていてな? もう政治に関わるのは疲れてしまった」

 

「あー、いや。出来れば、その経験と知識は活かす方向で就職活動をしていただきたいのですが……」

 

「いやぁ、親孝行な子を持つとこういうときに助かる。先に避難していた息子夫婦から魚の飼育場の仕事を手伝うよう誘われていてな? 怠けていた筋肉を鍛えなおしておいたのだ」

 

「左様で……。いや、別に良いのですがね。食糧が豊富で困ることはありませんし。しかし、他国から逃げて来た人材のほとんどがそちらに流れるのは、こう、勿体ないと申しますか……」

 

「余所者が政治に関わってもロクなことにならんだろ。いや〜、明日から楽しみだわい」

 

「明日っすか。早いですね」

 

「そりゃ最初から見限る前提でココに来とるからな。なに、心配は無用だ。あの国は王族も大臣たちも貴族たちもバカとアホとマヌケしかおらんからな。命令すればなんでも思い通りなると信じている。当然、人材の流出に危機感など」

 

「もう終わりだよあの国」

 

「次の戦争は3日で終わるかもしん。ハハッ、まさに“ざまぁみろ”というヤツだな?」

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