好きなシナリオ発表ユーザーが〜♪   作:はめるん用

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 ※ざまぁ描写ほぼなし


ざまぁもいいけど自滅もね! なヤツ。

「本はインスピレーションの宝庫だ」

 

「もちろん、娯楽として純粋に読書を楽しむのも好きだ。画家でないときは読書家だと、妻に笑われたこともある」

 

「いわゆる世間が文学として認める気取った作品から、頭を空っぽにして楽しめるラノベまで、相当な……うん、一軒家がほぼほぼ書斎になるぐらいには読んだ」

 

「だから、まぁ。タイムリープというか、前世の知識……いや、前回の知識かな? そういうのを持ったまま若い頃からやりなおす作品も沢山読んでいた」

 

「だけど。だけど、さぁ……」

 

 

 

 

 

 

「自分が“そう”なるとは思わないじゃん……」

 

 

 

 

 

 

「うわ、なっつ〜。意外と記憶に残ってるというか、コレ、この部屋の感じアレだ。高校1年生のときに戻ってたのか。制服とかほぼほぼ新品だし、カレンダーも4月の────そうだ、時間は?! ……なんだ、今日は春休みか。よかった、いきなり学校とか難易度がね……さすがに、ちょっと、高すぎるかな……うん……」

 

「いや、まだ問題はあるぞ。父さんと母さんも当然、生きてるワケだよね……。コレ、顔見て、泣かずにいられるか? ヤバい、想像しただけで少し……アカン、コレ僕ダメかもしれんな……」

 

 

 

 

「画家として成功した経験が活きたな。魑魅魍魎相手にのらりくらりと愛想笑いで生き抜いたのは伊達じゃない。まぁ、母さんの作ってくれたご飯を食べたあと、部屋で少し泣いちゃったけど」

 

「だけど逆行転生における最大の山場は越えたでしょコレ。2度と会えないハズだった両親との再会、父さんとの何気ない会話に母さんの手料理という最大級のエモいポイントは乗り切った。ここから先、僕に精神的動揺による泣きは無いと思っていただこう! ……たぶんネ」

 

「取り敢えず今日から再び高校生活が始まる。別に青春を取り戻したい、みたいな願望は無いけれど……画家を目指さなかった僕がどんな人生を送ることになるのかは気になるからね。勉強の内容は忘れても、勉強の仕方は覚えているし、せっかくなら成績も上位を狙って────」

 

 

「あ、おはよう! 今日から高校生だね! もう気持ちがこう、ワクワクして昨日はなかなか眠れなかったよ!」

 

「……あぁ、うん、おはよう。そうだね、やっぱり中学校とは色々と違うだろうから」

 

「あ、でも、高校でも美術部に入るのは、もう決めてるんでしょ? 小さい頃から絵を描くの好きだもんね!」

 

「まぁ、ね」

 

 

(とかなんとか言ってるけど、僕が小さい頃から絵を描くのが好きだと知っている上で、僕の作品を盗んでコンクールで最優秀賞を取った先輩と付き合うんだからイイ性格してるよ)

 

(ジャンル的には幼馴染の寝取られになるのかな? でも別に恋人でもなければ彼女と呼べるほどの仲でも無いしな……。なんとなく、幼馴染として一緒にいるのが当たり前みたいなフワッとした関係だったし)

 

(ま、だとしても裏切られたって感覚はそこまで八つ当たりでもないだろ。だってキミは地道に努力を続けてきた幼馴染よりも他人の成果を楽して奪う先輩を選んだんだもんな?)

 

(だけど安心してくれていいよ。今回は僕もキミの幸せに協力してあげるから。前回で、キミも、先輩も、結局いろんなモノを失っているからね。僕の復讐は始まる前から終わってるんだ、この世界ではキミのことも先輩のことも見逃してやるさ)

 

 

「……ねぇ、私の話。ちゃんと聞いてた?」

 

「ゴメン、緊張してて聞いてなかった」

 

「んもぅ! でもいいわ、今日ぐらいは」

 

 

 

 

「苦い思い出のある美術部にわざわざ入部する理由はもちろん幼馴染を奪わせないため、じゃない。むしろ先輩と末永くヨロシクしてもらうための下準備だ」

 

「画家は目指さないけど、絵を描くのは好きだからね。だから、先輩が今後なにかと困らないようストックを用意することにした。顧問の先生もグルだから、保管の手間とかそういうのは気にしなくてもいい。勝手に連中が上手いこと管理してくれるハズだ」

 

「年間に3作ぐらい発表するとして、150枚ぐらい用意すれば50年は足りるな。世界各地で個展を成功させ、億単位の金を動かしたアーティストの本気を見せてやろうじゃないか……ッ!!」

 

 

「なんて、意気込んでいたのが半年前。うーん、サクッとコンクールで勝ち申したか先輩どん。普段は美術になんて興味のない学校も大騒ぎだね。ま、自分のトコの生徒が海外からも注目されているとなれば、そりゃお祭り気分にだってなりたいよね〜」

 

「……そのお祭り気分に参加できないヤツもいるけどな? 具体的にはクラスメイトの作品が盗まれたことを知っているヤツとか」

 

「なんかゴメンね? 悪事の片棒を担がせてるみたい、というか不正を黙ってるようお願いしてるんだから普通に悪事だったわ」

 

「お前な……。けど、少しだけ納得はしたかな。先輩、なんつーか……忙しい、ってのも変だけど。確かにお前がコンクールで優勝? してたら絵を描くヒマなんて無かったかもな」

 

「ある意味、有名税だね。僕には必要ないモノだよ。マンガやラノベの主人公じゃあるまいし、成り上がりなんて冗談じゃない。先輩と話してるときの校長や理事長の顔、見た?」

 

「見た。あんな大人にはなりたくねぇな。つか、先輩も含めてさ、マンガやラノベの例えで言うなら、アレ完全に“やらかす”ポジのキャラまんまじゃん」

 

「違いがあるとすれば、僕がそれをひっくり返したくないと思ってることだね。余計なお世話をしたがる大人も厄介だし、ネットのオモチャにされるのもイヤだし。このまま先輩には僕の身代わりになってもらうよ」

 

 

 

 

「失礼しまーす」

 

「おう、来たな。じゃ、早速だけど……進路については、このまま進学でな、まぁ大丈夫だろ。成績も、内申点も。強いて言うなら、去年の美術部の部長みたいな実績があれば学校側としても強く推薦できたんだが」

 

「僕はあくまで自分が楽しむために絵を描いていましたからね。先輩みたいにコンクール連覇とか、そういうのは目指していませんでしたから」

 

「そうか。個人的には高校の部活はそれでもいいと思うがな。どうにも日本人って種族は“ただ好きなだけ”を認めたがらないヤツが多いからな」

 

「なんか実感こもってますね」

 

「ほれ、好きこそものの上手なれって言葉あるだろ? それが逆に面倒なときがあるんだよ。好きなのに下手なの? とか、好きなのに詳しくないの? みたいな」

 

「あー、そういう」

 

(前世でもあったなソレ。僕の作品の厄介なファンだったり自称知識人が、SNSとかで僕の作品を好きだって言ってくれた人にウザ絡みしてんの。それで僕にまで批判が来るんだから参っちゃうよね……)

 

「で……将来は翻訳の仕事をしたい、と」

 

「まずは無料で使える投降サイトでコツコツ活動する予定です。最悪、趣味の範囲で終わっても構いませんからね。仕事は仕事、って割り切るなら選択肢も沢山あるでしょうから」

 

「なんつーか、ここまで手が掛からないと教師として申し訳ない気分になってくるわ」

 

「書類関係だったり各種手続きだったりを学校側が引き受けてくれるだけでも助かりますよ」

 

「お前のそれはもう学生じゃなくて社会人の感覚だな」

 

(そりゃ何十年も社会人やってましたからね)

 

 

 

 

「絵は趣味として割り切って、前世で身に付けたスキル【マルチリンガル】を活用した翻訳で承認欲求を満たす。いやぁ、正直なところ知らんうちに失敗したらと怖がってたけど、意外と上手く回るもんだね」

 

「思ってたより拍子抜けというか、平和なまま大学編が始まる僕の人生リトライ。やはり復讐の心を置いてきたのが正解だったな。先輩は僕があまりにも絵にも幼馴染にも無関心なものだから、早々に絡んでこなくなったし」

 

「しかし、幼馴染の自爆だけは意味わかんなかったな。クリスマスのお泊りデートの言い訳に僕を使うのはさすがにマヌケ過ぎじゃない? そりゃご近所さんなんだから僕が家にいることなんて簡単にバレるのに。ウチの父さんと母さんは苦笑いしてたけど、おじさんもおばさんも気まずそうだったっけ」

 

「ま、僕にとっては嬉しい誤算だったけどね。少なくとも前世みたいに先輩との間に出来たオメデタを僕に押し付けてくるようなマネは出来なくなったんだから。そもそも今回の先輩はいまのところ順風満帆みたいだし、僕のところに金の無心に来る必要もないだろうけど」

 

「うーん、心が軽やかだと景色の見え方も違うねぇ。下手に名前が売れてからは純粋に絵を楽しむ時間も減ってたもんね。やっぱり好きなことは自由に楽しんでこそ、だよ」

 

「それにしても……色鉛筆、いいモノだね。前回の僕は手を出さなかったけど、コレは面白いや。翻訳のバイト代もそろそろ入るし、100色ぐらいのヤツも買ってみるのも……いや、ここは敢えて16色を使い分けて無限のグラデーションにチャレンジしてこそ絵描きとしての」

 

 

「失礼。少し、よろしいですかな?」

 

「え? あ、はい」

 

「突然、すまないね。実に楽しそうに、そして……味わい深い絵を描いてなされたもので、つい気になって。もしご迷惑でなければ、そのスケッチブックを拝見させていただいても?」

 

「まぁ、別に……どうぞ」

 

「ありがとうございます。ふむ……ほぉ……なるほど……」

 

(出たな、時間移動系の定番。これが歴史の修正力ってヤツか。謎の老人、その正体はアーティスト界隈の超重鎮。先輩に絵も幼馴染も奪われて心が折れていた僕が再起する切っ掛けをくれた人だ)

 

(高校生のときに出会わなかったから、もうこの世界では縁が無いだろうと思っていたけど……)

 

「実に、素晴らしい。豊かな表現力をお持ちのようですね。スケッチブック、お返しします。どうもありがとうございました」

 

「お粗末さまでした」

 

「いえいえ、粗末などと、とんでもない。もし、気が向きましたらコチラへ……こんな老いぼれのアトリエですが機会があれば、是非」

 

「はぁ、どうも」

 

「貴方であれば、アーティストたちの話題になっている活躍中の“彼”以上に素晴らしい作品を作り上げることができるかもしれません。では、失礼します」

 

 

「…………行ったか」

 

「貴方にはお世話になったし、心から感謝しているけれど……僕は、もう、満たされているんです。申し訳ありませんが、この名刺は処分させてもらいます。ごめんなさい」

 

「この手の成り上がりって、こういうアイテムが切っ掛けで余計なイベントが起きたりするのが定番だからな……またエンカウントしたら厄介なことになりかねないし、今後はこの公園に近付かんようにしとこ」

 

 

 

 

「サメ映画の翻訳ですか。やります」

 

『即答か。だが助かる。なぁ、お前。バイトじゃなくて正式にウチの事務所にこないか? もちろん大学を卒業してからで構わん』

 

「いやぁ、僕も先のことはわからないのでなんとも。何事もなく卒業できればそのときは是非お願いします」

 

『なんだ、トラブルに巻き込まれる予定でもあるのか?』

 

「少しだけ心当たりが。所長、他人の功績を自分の物にして成り上がってる人間がやらかす失敗ってどんなことが起こり得ると想います? ちなみに功績を奪われた側は初めからそんなもの全部渡すつもりだったという前提です」

 

『詳しくは聞かないでおいてやるが、そうだな……やはり本人の能力不足によるトラブルは絶対に起きるだろう。しかもそいつは苦労や挫折を知らんワケだろう? リスクマネジメントを学ぶことなく成功体験だけを積み重ねていれば……周囲から“どうしてこの程度のことすら予測できないんだ”って思われるようなミスをする。しかも、取り返しのつかないレベルで』

 

「……そんなに、ですか?」

 

『お前が想像できるバカは、お前が想像できる範囲のバカでしかない。世の中には犬や猫を洗ってから乾かそうとしてレンジに入れるバカもいる。次にお前は“そんなバカな”と言う』

 

「そんなバカな……ハッ!?」

 

『理解したか? それがモノを知らないということだ。まぁいい。マヌケが自滅するだけならお前の責任にもならんだろう。映画に関する資料はすぐに用意する。じゃあな』

 

「はい、どうもでーす。……いや、さすがに大丈夫だよな?」

 

 

 

 

 

 

『もしもし? 俺だけど。先輩、逮捕されたってよ』

「はいぃぃぃぃッ?!」

 

 

 

 

 

 

「……失礼します」

 

「どうぞ、そちらに。本日は事情聴取にご協力いただきありがとうございます」

 

「はい。それで、高校時代の先輩が逮捕された話と僕になんの関係が?」

 

「元顧問の男性のことは覚えていますか?」

 

「えぇ、まぁ。先輩のマネージャーみたいな仕事をしていて、教師として働いていたときよりも随分と生活に余裕があったと友人に教えて貰いました。なんでも、SNSの投降も羽振りが良かったとか」

 

「その男性がですね、取り調べの中で、彼が売却した100以上の絵はキミが学生時代に描いたモノだと証言していましてね」

 

「……世界中で、ときには億の値段で売れたとかいうウワサの絵を、僕が? 高校生のときに?」

 

「まぁ……そう、ですね」

 

「しかも100点以上?」

 

「そう……言ってますね」

 

「月あたり3作から4作のペースで、数百万の絵を量産できるなら、僕でも天才を名乗って許されそうですね」

 

「えぇ……許されるでしょうね」

 

「あの、こういうこと聞いてもいいのかわからないんですけど。ぶっちゃけ、刑事さんも仕事だから質問しただけで、こんな頭の悪い責任転嫁なんて信じてないでしょう?」

 

「一応、仮に真実であれば、元顧問の男性と先輩の彼がキミを脅迫していた可能性もあるので。当時の担任の先生にお話を聞いた限りでは、そういうことは無さそうでしたが。なかなかユニークな発表を文化祭でしたと聞いています」

 

「あぁ、アレですか。友人たちと協力して4人で仕上げた【ドスケベ全裸女神像】のことですね。女子からは卒業まで白い目で見られていましたが、僕らの友情は不滅のモノとなりました」

 

「でしょうね。私も友人がそんなマネをしたら拍手喝采で褒めたたえますよ。はい、ご協力ありがとうございました」

 

「え? もう終わりですか? なんかニュースで裁判がどうとか言っていたのチラッと聞いていたので、けっこう身構えて用意してきたんですけど」

 

「それは特別講師として招かれた美術大学で、デタラメな知識を披露していると生徒に指摘され、逆上して殴りかかったからです。あくまで別件で、元顧問の男性の証言について話を伺いたかっただけです」

 

(美術大学で特別講師ィ〜? やっちまったなァ!? おま、そんなん……そんなこと出来るワケないだろ常識で考えてッ!? 僕の絵を転売するだけで成り上がった人間に美術のことなんてわかるわけ無いだろッ!! なんでそんな無謀なことを……ッ!!)

 

「それと」

 

「まだなにかあるんですか……?」

 

「キミの幼馴染の女性がね、元顧問の証言に近いことを言っているんだ。幼馴染として、キミが毎日のように絵を描いているのを見ていたと」

 

「そりゃあ……中学生のときも美術部でしたので……」

 

「まぁ、そちらも向こうの親御さんから色々とお話を聞かせて貰っていますので、元顧問と口裏を合わせていた……という判断に落ち着きました」

 

「は、はぁ……。あの」

 

「なんでしょう?」

 

「そもそも、先輩だけでなく顧問の先生と幼馴染もなにか……やらかした、んですか?」

 

「彼のアトリエの、お弟子さんの作品を、彼の新作だと偽って売買していました」

 

(はい余裕の仏恥義理でアウトォッ!! なんでだよ100点のストックを売り捌いた時点でお金なんてタップリあったでしょぉッ?! それでも在庫が50近く残る計算じゃんッ!? 僕かッ?! 僕が悪いのかッ?! 変な成功体験なんて積ませるから3人集まってアホになっちゃったのかッ?!)

 

 

 

 

「……取り敢えず、先輩がパクってった絵は先輩が描いたモノとして扱われてるのがせめてもの救いだなぁ」

 

「ホント、なんでだよ……おかしいよ、こんなの。僕は復讐はもちろん、こんな“ざまぁ系”みたいな転落劇なんて求めてなかったのに」

 

「ただ、僕も、先輩や幼馴染たちも、それぞれの道を面白可笑しく生きられるように配慮しただけなのに」

 

「はぁ〜〜〜〜」

 

「…………」

 

「取り敢えず、気分転換に色鉛筆とスケブ持って出掛けよ。なんかスッキリしないけど、今度の人生では自分の楽しみのために絵を描けているからな」

 

「きっと、彼らに無意味な復讐をしなかったことで神様が見守ってくれているんだろう。ありがとう神様、これからも僕は誠実さと謙虚さを忘れずに生きていきます」

 

「あ、そうだ。そろそろ例のサメ映画の資料が届くんだっけ。ふふん、別に2回目の人生だからって、前回の記憶があるからって、ムリに成り上がりなんてしなくても……こういうので良いんだよ、こういうので」

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