※勘違い要素アリ。
「……あーあ。図書室でうっかり寝落ちだなんて、ちょっと昨日はゲームで夜更かしし過ぎたかな。オンライン対戦って、気の合う人とマッチングすると止め時がみつからないんだよなー」
「っと、ここ……どうしようかな? 駅までの近道なんだけど、昼間はともかく暗くなってるし……壁の落書き、きっと縄張りとか、そういうのだよね……?」
「……行っちゃう、か! 人の気配はなんかしないような気がするし、大声で助けを呼びながら全力で逃げれば最悪は回避できるだろ、うん!」
「ドクロを基本にしたアート、いや、この場合はシンボルマークとかチームのエンブレムかな? 怖いけど、やっぱりカッコいいよなぁ」
「しかも、コレ。筆とか使わずにスプレーで描いてるんだから、ホントよくまぁ絵にできるなって感心しちゃうよ」
「オゥ。そんなに感心してくれるってんなら、見物料を払って貰おうか?」
「ぎゃぁぁぁぁッ!! 誰かッ!! ホモで変質者のヤンキーたちに襲われてまぁぁぁすッ!! 助けてくださぁぁぁぁいッ!!」
「なぁッ?! コイツ、いきなり……ッ!!」
「捕まえろッ!!」
「テメェ、ノータイムでナメたマネしやがってッ!!」
「ネズミのように危険を察知してゴキブリのように逃げるッ! 俺みたいな一般人は情けなくても生きるが勝ちなんだよォォォォッ!!」
「おっと。その根性は褒めてやるがよ?」
「悪いな。ココは通行止めだ」
「んげッ」
「まずは一発、大人しくさせてやんよッ!!」
「────ッ!?」
「なんだ……面白そうなコト、してるじゃねぇの。オレも……混ぜろよ?」
(わぁ……パンチを手の平でパシンッて受け止めるヤツ、初めて生で見たかも。でも状況的にはヤンキーが増えてるし俺のピンチは変わってなくない?)
「て、テメェは……“北高”の……ッ?!」
「ここは“中央”のシマだ、よそ者は────プゲャッ!?」
「ん、悪い。あんまり隙だらけなモンだからさ、ついつい手が出ちまった。いやぁ……本当に悪いと思ってるよ。どうにも雑魚相手だと加減が難しいな、ハハッ」
「ふざけやがってぇッ!!」
「いや、これはチャンスだ。アイツをボコれば北高のヤツらなんざ」
「へへッ、なるほど! 頭を先に潰しとこうってワケだ」
「この人数に勝てると思うなよッ!!」
「あー、ハイハイ。御託はいいから、さっさとかかってこいよ。オレぁ喧嘩は得意だけどレスバは苦手なんだ。ちょうどお前らと逆だな」
「ほざけぇッ!!」
「死ねやヒョロ野郎ッ!!」
(うわぁ〜どうしよう?! この隙に逃げられそうではあるけど、でも追加のヤンキーさんはどういうワケか俺を助けてくれてるのに見捨てるのはちょっと違うしそんなお天道様に顔向けできないようなコトするぐらいなら少しぐらいボコボコにされてクラスメイトに顔向けできないほうがまだマシだけど俺がここに残っててもあの人の邪魔にしかならないっていうかあの人マジ強くね? なんか、あっという間に数が……あ)
「く、クソがぁッ!! テメェのツラ、覚えたからなッ!!」
「いやぁ、自分で言うのもアレだけど、オレってなかなか有名人側だと思うよ」
「お、おぉ……なんて一方的な……」
「よぅ。大丈夫だったかい?」
「あ、ハイ。ありがとうございます。見ず知らずの俺を助けていただいて」
「ハハッ、やっぱわかんねぇか。一応、オレはお前に昔、世話になってるんだがよ? その恩返しってコトで助けたんだが」
「え?」
「────天地がキサマの悪行を見逃したとしてもッ!!」
「……ッ! 我らの正義は決してキサマを許さないッ!!」
「「覚悟しろッ! お前に懺悔は必要無いッ!!」」
「まさか……ツグちゃんッ?!」
「当たり。いやぁ、まさかとは思ったけど本当にヨッちゃんだったとは。でも近くで見たらソッコーでわかったよ。昔の面影あるし」
「俺は全然わかんなかったよツグちゃん……いや、変わりすぎでしょ。運動が苦手だったツグちゃんがヤンキー漫画バリの喧嘩無双する姿なんて想像もしたことないって」
「ん。なんかカラダ鍛えてたら北高のレア枠モンスターみたいな扱いになってた。ホラ、攻略推奨レベルじゃ勝てないステしてるヤツ」
「その言い方だとツグちゃん倒したら2パーくらいの確率で武器とかアクセサリーとかドロップしそうだね……」
「オゥ、遠慮なく挑んでくれていいぞ。オレは全滅しても所持金がへらないタイプのイベントモンスターだから。そんな手段でカネ稼いでたらオヤジたちが悲しむからな」
「そっか。ツグちゃんは昔と全然変わってないね、そういう優しいところ。遠足とかで小さい子たちが……って、そうだ! 電車! ツグちゃんゴメン! え〜と、連絡先! 早く!」
「お、おぅ……ホラ」
「ヨシッ! あとでメッセ送るね! 今日はありがとうッ!」
「お〜、またな〜。……スゲー、相変わらず陸上部かってぐらい足速ェなヨッちゃん。ちっちゃいころから逃げ足だけは誰にも負けないって言ってたけど、昔っからけっこう……トラブル巻き込まれ体質? だったモンなぁ」
「いやぁ、小学校を卒業するとき引っ越しちゃったから会えてなかったけど、久し振りにツグちゃんに会えて良かったな〜。そう思うと、あのとき不良の人たちに絡まれたのも結果的に悪くないってコトなのかな? あんまり嬉しくないけど」
「だけど今日は嬉しい出会いがあるって決まってるからプラマイゼロみたいなもんかな! フフフ……西区のゲーセンで俺の推しキャラのプライズがあるって情報をゲットできたからね」
「こんなこともあろうかと、日々コツコツと五百円玉貯金をしていた甲斐があるってね。軍資金が足りないぶんは勇気で補えばいい! よし、いくぞ〜ッ!!」
「逆の想定外って、あるもんなんだな……。前のお客さん、かなりイイ感じの位置まで動かせてたコト気付かないまま諦めちゃったんだろうな」
「う〜ん、せっかくだしほかのゲームも遊んでいこうかな。なにか……あっ。俺がオンラインでやってる格ゲーの筐体あるじゃん」
「コントローラー以外で遊ぶことあんまり無いけど……フレは専用コンで遊んでるこだわり派って言ってたし、俺も少しだけ……」
「よっ」
「んん?」
「なんか……」
「これは」
「なるほど」
「こういう感覚の」
「よしよし、そこそこ慣れて────あ、挑戦者。おぉ、ゲーセンっぽいイベント始まったな」
「ウォーミングアップも終わってるし、わざわざ挑戦してくるぐらいだからきっと強いだろうし、ここは様子見無しの開幕全力で行くぞ!」
「……くッ?! なかなか、だけどッ! ……燃えてきたな、やっぱ生身の人間相手ってのは────ん? いまのコンボのパターン、もしかして……?」
「……ここだッ!」
「……ッ?! チッ、やっぱツエーな。さすがはランクマ上位の【発走ピョンピョン】さんだぜ」
「いやいや、たまたま俺が【モリモリ一世】さんのクセに気が付けたってだけですよ。どうも、初めまして」
「……どーも」
(あ、モリモリ一世さんバリバリの不良の人だったんだ。なんとなく声の感じとか喋り方がぽいなーとは思ってたけど、アレ素だったんだね。ツグちゃんがイマ風のヤンキーなら、クラシカルな番長って感じだ)
「……フーン。ヨッちゃん、中央だったんか」
「それでモリさんは“西高”だったんだね。まさかフレがこんな近くにいたなんて驚きだよ」
「……つーか、よ」
「なに?」
「いまさらだけど、よ……オレのこと、怖くねーのか?」
「だって知らない仲じゃないし。ボイチャと雰囲気が全然違うとかでもないし。あ、でもそのサングラスはカッコいいと思うよ! 真っ黒じゃなくてちょっと透けてる感じとか、良く似合ってるよ」
「……コレは、尊敬してる親戚の叔父さんから貰ったヤツ、だ」
「そうなんだ。じゃあモリさんの叔父さんはオシャレが得意なんだね。モリさんにピッタリのヤツをプレゼントしてくれたんだ」
「まぁ、な……喫茶店のマスターしてる人で、言われてみれば普段着もけっこうしっかりしてるっつーか、背中を真っ直ぐにして歩いてるイメージだ」
「そうなんだ。憧れてるんだね、その叔父さんに。そうだ、良かったら連絡先交換しない? チャットより次に遊ぶときの約束とかしやすいし」
「次? 次、か……あぁ、いいぜ。なら、今度はオレが中央に行ってみるか」
「うん! そのときは俺の友だちも紹介するよ!」
「……えーと、ヨッちゃんとの待ち合わせは」
「ねぇ、アレ……」
「西高の制服? ってうか」
「なぁ、アイツってウワサの」
「バカ野郎、目ェ合せんな」
(……ま、当然の反応だな。ナメられるほうが面倒だから別にどうでもいいが。しかし、こうなるとますますヨッちゃんの器がデケェと言うか、緩ィ気がすんな。変な事故とか巻き込まれないと────あ?)
「アン? テメェ、西高の……」
「そういうオマエは北高の……」
「お、おい……アレ……」
「北高の、だよな……?」
「ね、ねぇ、さすがにヤバくない?」
「ちょっと、誰か止めなさいよ……ッ!」
「いやいやいやいや」
「ムリムリムリムリ」
(……参ったな、こりゃ。ヨッちゃん、せっかくだからオレに友だちも紹介したいって言ってたし、下手に巻き込むワケにはいかねぇんだけどなぁ)
(……チッ。こんなときに厄介なヤツとエンカするとは、日頃の行いか? だがオレはともかくヨッちゃんやお友達とやらが目ェつけられんのは避けなきゃなんねぇ)
(と、なれば)
(だったら)
(先手)ビキッ!?
(必勝か)ビキッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ッ!!!!
↑場のスゴみが増す音。
「おまたせー! って、アレ? もしかしてふたりとも知り合いだった?」
「ヨッちゃん! ……あぁ?」
「ヨッちゃん! ……おぉ?」
「なんだ、それなら話が早いね! 俺、お好み焼きの割引券持ってるんだ。前に行ったとき貰ったヤツなんだけど、けっこう美味しかったからさ」
「お好み焼き、か。いいね、オレも好きだぜ。アンタはどうだい? なぁ“西の闘犬”さんは」
「好きっちゃそうだがよ……1枚2枚じゃ物足りねェんだ。テメェはそうでもないのか? ウワサの“北の狂犬”はよ?」
「ツグちゃん、モリさん、やっぱり俺より先に友だちだった感じ? なんか仲良さそうだけど」
「まーね。少なくともいまたぶん……友だちだよ。たぶんね。ってか、オレは同じ小学校に通ってたから知ってるけど、そっちはどういうルートで知り合ったワケ?」
「ネトゲのフレンドだ。それが偶然、ゲーセンで」
「そりゃスゲェ確率でまた」
「いやぁ、レバー操作はコントローラーとは違う新鮮さがあっていいね。やっぱりコマンド必殺技とか出しやすいし」
「お、格ゲーの話か? ならオレもちょっとは自信あるぜ」
「……フッ。いいのか? あんまりチョーシくれてっと恥ィかくのはテメェだぜ?」
「いいね! あとでみんなで対戦しようよ! 言っておくけど、俺だって簡単には負けないからな!」
「なぁ、アイツ何者だよ……?」
「あの制服、中央……?」
「すごい仲良さそうに喋ってるケド……」
「なんか勝負とか言ってなかったか?」
「ふたりには負けないとか言ってたな……」
「マジかよ……闘犬と狂犬相手に……?」
「そんなヤベェのが中央にいたのか……」
「いやー、友だちとゲーセンで遊ぶのは楽しかったなー。なんでか知らないけど順番待ちもほとんど無かったし」
「でもそれはそれとしてシングルプレイ系のゲームも面白いっていうね。フリーで使えるアクセスポイントのあるハンバーガー屋さん、なんて快適な空間なんだ……」
「……ん? お近付き通信でなにかプレゼントボックスに……わぁお、コレ、原作マンガのコラボイベント限定のヤツじゃん。予約忘れてて買えなかったんだよなぁ。誰だかわかんないけどありがとうございます……ッ!」
「どういたしまして。ボクのほうにはアニメ限定版とセットのヤツが届いているからお互い様、かな?」
「あ、どうも」
「こんちわ。となり、いいかな?」
「もちろん! や〜嬉しいな〜、レアドロップとか、あとはレベリング効率とか、ネットで調べて悔しいと思ってたんだよ」
「ハハッ、それはボクも同じだよ。別に本編のダンジョンでコツコツ稼ぐのもキライじゃないけどね。じっくりゆっくり強くなっていくのも楽しいし」
「わかる。俺、攻略本のデータとか見てるのも好き」
「アハハ! それ、わかる。ボクも数字とかアイテムの名前とか並んでるの好きだよ」
(……うん? 男の人? 声は完全に女の子っぽい感じだけど。どっちだろう? でも別に女装を楽しむ男の人がいるんだから、男っぽい格好の女の子がいても不思議じゃないか。なにより似合ってるし、どっちでもいいや)
「……どうしたの? ボクの顔になにかついてたかな?」
「いや、そのピアスがさ。カッコいいな〜って思って。蜘蛛をモチーフにしたデザインなのかな?」
「……本当に、そう、思う?」
「うん。昆虫とか、虫とか、苦手だって言う人の気持ちもわかるけど、俺はやっぱりカッコいいが勝つかな。蜘蛛とか蜂とか、生き物なのにメカニカルなデザインって感じがこう、神様の造形センスって凄くない?」
「〜〜〜〜ッ!! そう、そうなんだよ! ボクもそれ! まさにその通りで……やっぱり虫たちの直線と曲線が融合した美しいモデルって特別だと思うんだよ! 犬や猫の柔らかい愛らしさも好きだけど、ボクにとっての1番は違うんだよね……!」
「そうなんだ。ちなみに爬虫類系とかは?」
「う〜ん、キライではないけれど……ちょっと丸みと言うか、温度感が違うんだよね」
「じゃあ無機質で金属みたいに冷たい感じが好きなんだね!」
「アハッ♪ イイね、キミ。嬉しいよ。こういう話題にノッてくれる子が周囲にいなかったからね」
「趣味が合わないとどうしてもそうなっちゃうよね。あ、じゃもしかしてゲームのほうもガチパじゃなくて?」
「当然、好きなキャラで固めてるよ。縛りプレイで試行錯誤するのも────」
「へー、じゃあタダさんは東高なんだ。なんか勝手なイメージだけど、なんとなく“女子校”って廊下にゴミとか全然落ちてなさそう」
「そういうヨッちゃんは中央ってことは、成績優秀ってコトだね。ボクも勉強は苦手じゃないけど、飛び抜けて優秀ってワケじゃ……おっと」
「どうしたの?」
「ゴメン、そろそろ帰らないと。ボク寮生なんだ」
「そうなんだ。なんか大変そうだけど楽しそうだね!」
「んー、まぁね。それじゃ、また会おう。今度は約束通り、ボクのピアスコレクションを見せてあげるね」
「うん! 楽しみにしてるよ!」
「……さて、と。帰るまでにちゃんと気持ちを切り替えないと。憧れの王子様の仮面が外れてしまっていたら、皆をガッカリさせてしまうからね。それにしても……あぁ、今日は気分がいいなぁ。ボクの拳も疼いてる気がするよ。フフッ、この昂りを発散できるなら、経験値の少ない“ザコ”相手でも構わないかな?」
「犬の散歩は決まったルートを通るのが良いらしいんだけど、たまには遠くに行ってみるのも新鮮な気分でいいね。シズカもそう思う?」
「ワンッ!」
「よしよし、楽しんでくれてるみたいで俺も嬉しいよ。慣れない道で緊張させちゃったらどうしようって、ココまで来てから心配になっちゃってたからな〜」
「クゥ~ン? アォンッ!」
「そんなことない、って励ましてくてるのかな? シズカは昔から気遣いのできる優し子だね。でもおやつは増えないからね? 健康管理も飼い主の義務なんだから」
「(´ . .̫ . `)」
「そんな顔してもダーメ。脚が悪くなって散歩もできなくなったらシズカだってイヤでしょ? 寝たきりなんて、それでストレスで抜け毛とか大変なことになったら女の子なのに身だしなみが────うん?」
「この剣にて問おうッ! 汝が歩む覇道とはなにかッ!! その覚悟をッ!!」
「いまのはセリフは……あっちから? なんだろう、モノマネかな。それとも文化祭かなにかで演劇でもやったりとか。声は女の子だったけど上手だったな……ちょっとだけ、ちょっとだけね。邪魔しないよう声はかけないで見るだけだから────」
「ワンワンッ!!」
「あっ?!」
「ふぇ?」
「あ……」
「…………」
「…………」
「えっと」
「もしかして、聞いてた的な?」
「えっと、その……雰囲気もキャラクターそっくりで、本物の声優さんみたいにすごく上手だったよッ!」
「ぎゃおぉぉぉぉんッ?!?!」
「……そうなんだ。声優を目指して。俺よりひとつ年下なのに将来のことを考えて努力できるなんて、ケイちゃんはしっかりしてるね〜」
「どもッス……」
「そんなに落ち込まなくても……いや、覗き見してた俺が100割悪いんだけどさ。女の子のヒミツを覗き見とかデリカシーの欠片もなかったし。だから、その、元気を出して? あとシズカのことだけは怒らないでくれると……」
「クゥ~ン……」
「アハハ……シズカっちのことはもちろん許しちゃう的なカンジだし、ヨッちんパイセンのことも怒ってない的なヤツだし。ただちょっち、ビックリ的なヤツが抜けきらないだけ的なヤツだし」
「もしかして、マンガとかドラマでよくある“家族からはちょっと”みたいなだったりするの?」
「んーん。妹は応援してくれてる。あと、たぶんお父ちゃんとお母ちゃんも……なにも言わないけどバレてる的なヤツだと思うし。アタシがなんも言わないから気ィ使ってくれてる的な?」
「そうなんだ。良い家族だね!」
「マジそれな! アタシのカッコ、これ最初に見せたときお母ちゃんなんてノリノリでケータイで写真撮りまくり的なカンジだったわ〜」
「俺も似合ってると思うよ。正統派ギャルって雰囲気で、賑やかでオシャレなのに清潔感もあって」
「へへ、どーも! そーゆーヨッちんパイセンもキチッとしてる的なカンジでイイと思うよ。ムリにカッコつけようとしてない的なカンジが」
「別に全然興味が無いワケじゃないんだけどね。あんまりそういうお店にはこう、なんとなく入りにくいっていうか」
「あー、わかりみ。アタシも実はオタク的な趣味あんだけど、学校のツレとかに見られたら気まずくなりそう的な予感あるからなかなか……そうだ! ヨッちんパイセン、アタシがアクセ買うのエスコートしてあげる!」
「だから、俺にはアニメ系の店舗をエスコートして欲しい的な? うん、そういうことならお言葉に甘えちゃう的なカンジでよろしくお願いしようかな!」
「アハハ! 話の進み方が爆速でウケる! ほいじゃ、まずは連絡先の交換を────」
「ねぇ、もうコレでよくね?」
「ダメだよお姉ちゃん! 男の人とデートに行くんだから、妥協は許されないんだよ!」
「だからデート的なヤツじゃねーってば。ちょっとアクセ冷やかしに行くだけで」
「そんな甘い認識で天下とれると思ってるの?」
「なんでアタシが天下目指してる的なこと思ってんの?」
「いいよ、100万光年譲ってオシャレを控え目にするのは認めてあげる。でもさぁ……さすがに“ソレ”はダメじゃないかな」
「アタシのトレードマーク的なヤツだし、余計なナンパイベ発生したら困るだろうし。んじゃ、もう行くかんね」
「は〜い、いってらっしゃ~い」
(ちょい早く来すぎた的な……でもまぁ、待ち合わせに遅刻する的なことになるよりはね)
(男の子向けのアクセなんて選んだことねーから、とりまカッコいい系のヤツ置いてる的な店を選んでみたけど……ぶっちゃけアタシもココ入ったことねーんだよなー。ま、だから楽しみ的な部分もあるんだけど。……ん?)
「さて……せっかく彼にコレクションを見せるなら、なにかひとつぐらいプレゼント出来るようなモノを……おや? ボクになにか用かい?」
「あー、いや……スンマセン、ちょっとピアス、つい見ちゃったもんで」
「それはそれは。噂に聞きた“南高のブラッドファング”に興味を持っていただけるとは光栄だよ。キミの、その靴……鉄板が剥き出しになった安全靴は有名だからね」
「……ッ!? あー、ハイハイ。そゆこと。その蜘蛛のピアス、アンタが“東高の破壊のプリンス”的なコト。つーか女だったんだ。プリンスなのに」
「プリンセスはボクのキャラクターじゃないだろう?」
「いや知らねーケド」
「お! レベル高い子いるじゃん!」
「しかもふたり! おい、ちょっと声かけようぜ!」
「どれどれ……って、バッカ野郎! あのふたりは」
「オマエら見た目に騙されんな」
「あのふたりはなぁ、誰だって言えば」ゴニョゴニョ
「んげぇ、マジかよ」
「マジだ。蹴り潰されたくなきゃ迂闊に近寄るんじゃねぇ」
「触らぬ神に祟りなし、だな」
「ところで、キミもこのお店に買い物に来たのかな? もし良ければ一緒に見て回るのはどうだろう? と、いうよりも知恵を貸して欲しいんだ。実は」
「ふーん、プレゼント的なモノを買いたい……ね。ま、ケンカ売られたんならともかく、仲良くしよう的なノリは別にイイんだけどさ。マジで悪ィんだけど、アタシ、いま待ち合わせ的な状況だし」
「む……そういうことなら仕方ないね。先約があるのに邪魔するワケには」
「おまたせ! ゴメン、なんか待たせちゃったみたいで────あ」
「ヨッちゃん! ……んん?」
「ヨッちんパイセン! ……ふぇ?」
「あれ、ケイちゃん、タダさんと知り合いだったの?」
「知り合いっつーか、知っていはいた的なっつーか。ちゃんと話したのは今日が初めて的なアレだけど」
「ほほ〜う? これはこれは……もしかして、ボク、お邪魔だったかな?」
「いやそんなんじゃねーって、だから。ヨッちんパイセン、コイツも同じ店に用事ある的なヤツらしくてさ。一緒でもいい?」
「もちろんだよ! タダさん、よろしくね!」
「まさか本人の目の前でプレゼントを選ぶことになるとは……コレはハードルの高さも爆上がり、ってヤツかな? ま、いいか。たまにはこういうアクシデントも」
「お、おい……なんか、誰だよアイツ」
「わかんねぇ……でも知り合いって雰囲気だけど」
「マジかよ……スゲェな、あのふたりと」
「オレ、女連れを尊敬するの初めてかも」
「あのふたりと一緒は、ちょっとな」
「なんだか最近、いきなり東西南北それぞれに友だちができたなぁ。いや、ツグちゃんは昔からの知り合いだからノーカンか。そのうち皆で集まって遊べたら────って、アレはッ!?」
「だからよぉ、テメェらが前をちゃんと見てねぇからぶつかったんだろぉ? だったらよぉ、しっかり頭ぁ下げて詫びるのがスジってもんだと思わねぇか?」
「で、ですからちゃんと謝って」
「あぁ〜! 痛ぇ、痛ぇよぉ〜! こんなんじゃ次の大会に出られなくなちまうよ〜!」
「大丈夫かぁ〜! あ〜あ、こりゃヒデェ!」
「こりゃすぐにでも慰謝料をもらって病院に行かねぇと!」
「おぅ、待ってろ。すぐに済ませっからよ」
「っつーワケでさ? 大事なトモダチにケガさせといて、ゴメンナサイで終わるワケないって、わかるよね?」
「そ、そんな……」
(どどどどどうしよう?! アウトロー系のゲームなら序盤のチュートリアルで終わるようなイベントだけど、リアルじゃそんな都合良く助けてくれる人なんて……ッ!?)
(っていうか、周りの人は……そりゃ助けたくないし関わりたくないよねぇッ!? 警察に連絡……いや、たぶん野次馬の人たち無関係だからって写真は撮ってても通報してる人いなさそう……)
(うぅ、どうしよう……俺なんて喧嘩なんてムリだし……)
(…………いや、待てよ?)
(別に喧嘩ができなくたって、あの子たちを逃がす方法はある。俺が代わりにアイツらの注意を引き付ければいいんだ……ッ!)
(たぶん、大丈夫。さすがに命までは……これだけ人の目があるんだし、最悪でもナイフで刺されたりみたいなことにはならない、はず……ッ!)
(よ、よ、よ、よしッ!! 死ぬほど怖いけど、もうちょっと漏らしそうだけど、俺だって男だッ!! よく見たらあの制服、俺が卒業した中学のヤツだし、先輩として後輩を見捨てることなんてできるワケがないッ!!)
(いくぞ、やるぞ、もう止まんねぇぞッ!! 人間、死ぬ気になりゃ大抵のことはできるッ!! 武士道は死ぬことと見つけたりだチクショウがッ!!)
「オレたちもヒマじゃねぇんだ、いい加減に────ぐぉッ?!」
「な、カバンが飛んで……誰だぁ! ナメたマネしやがったのはぁ!」
「俺だよ。悪いな、あんまり見苦しいモン見せられたからさ。ついつい手が滑っちゃったよ。ゴメンね?」
「あぁン? その制服、テメェ、中央かよ。お勉強しか取り柄のねぇモヤシがずいぶんなオチャメしてくれんじゃねぇか、えぇッ!!」
(ホントにねぇぇぇぇッ!? ヤバい、俺、死んだかな? 少なくとも入院コースは確実かな……ハハッ。ギャラリーもなんかヒソヒソ声で喋ってるけど、まぁ誰も助けてはくれないよなぁ知ってたよもぉぉぉぉッ!!)
「そんなに怒るなよ。俺は親切心で止めてあげたんだよ? 中学生数人を、高校生が大人数で囲んで大声なんて出してさ。そんなの“僕たちは大勢で弱い者イジメしかできないカス野郎の集まりなんです〜”って宣伝してるようなモノでしょ? そんな噂が広まったら恥ずかしくて生きていけないと思ってさ。ね? 親切心でしょ?」
「ほぉ……そうかよ。じゃあ、その親切心とやらのお礼をしてやらなきゃいけねぇよ────なぁッ!!!!」
(ひぃぃぃぃ殴られるぅぅぅぅッ!?!? だけどここが踏ん張りどころだ目を逸らすなヤンキーとのケンカは野生動物のそれと一緒だココで引いたら名前も知らない後輩たちが大変なことになる耐えろ俺死ぬ気で耐えろ根性ぉぉぉぉッ!!!!)
ドガッ!!
(あ、メッチャ痛い……涙出そう……コレ、歯、折れたかな? 口の中、ちょっと血の味するし。なんかもう痛過ぎて逆に冷静なの怖い……振り戻しヤバそう……どうにか倒れるのだけは耐えたけど、死ぬほど痛いよこれぇ……)
(こ、コイツ……殴られる瞬間も、まばたきひとつしてねぇ……ッ?! しかも片手をポケットに突っ込んだまま痛がる素振りもねぇ……だとぉ……ッ?!)
「あーあ、バカがよぉ。カッコつけて余計なことしなけりゃ痛い思いしなくて済んだのになぁ!」
「おーい、ちゃんと手加減してやれよぉ! うっかり殺しちまうかもしれねぇからなぁ!」
(目を逸らしたら負け目を逸らしたら負け目を逸らしたら負け目を逸らしたら負け目を逸らしたら負け)ギロッ!!
(う、うぅ……なんなんだよコイツ……ッ?! 顔面を殴られてんだぞッ?! なのに……ッ!!)
(こ、このあと、どうすれば……あ、挑発。確かヤンキー漫画とかではそういうとき、なんかこう、強い言葉を使ってたよね。うぅ、タダでさえ痛いのに、でも、俺がヘイトを引き受けないと中学生の子たちが逃げられないし……ひぃん……ッ!!)
(あ、口の中に血が)
「……ペッ」
「…………ッ?!」ビクンッ
「いま、なにかしたか?」ギロッ!!!!
「う、うぅ……ッ?!」
(なんだ、コイツ、妙な……スゴみが……)
「そこのキミ。キミたち。ここはもう大丈夫だから、早く行きなよ」
「へ? あ、ハイッ!!」
「すみません、すみませんッ!!」
「あ、あ、ありがとうございますッ!!」
「うん、これからは気をつけてね〜。……それで? 後ろの連中はいつになったらお礼をしてくれるのかな? 人に親切にしてもらったらアリガトウゴザイマスって返すんだって、道徳の授業でも習っただろう? ほら、中学生を取り囲まなきゃ威張ることもできないキミらのために動かないでいてあげるからさ。いくらキミたちみたいなカスでも、タダのカカシも同然の相手にならケンカ売ることできるだろう?」
「「「「あぁンッ!?!?」」」」
「ば、よせッ! コイツはなにかおかしい────」
(ナムアミダブツナムアミダブツナムアミダブツ大丈夫死なない大丈夫死なない大丈夫死なない大丈夫ホントかホントに大丈夫かコレやっぱり俺ここで死ぬんじゃないの変な見栄張ったせいで救急車どころか霊柩車呼ばれるパターンとかいや大丈夫目的は果たしたんだから土下座でもなんでもして謝ればSNSとかネットでオモチャにされて笑い者にされたとしても最悪まではいかないはず取り敢えず目を逸らしたら負けだチクショウ根性だせ俺だって男の子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!)
ヒュッ!
パシンッ!
「…………へ?」
「なんだ……面白そうなこと、してるじゃねぇの。オレも……混ぜろよ? なぁ、ヨッちゃん」
「なんだテメェ────ポギャラベッ?!」
「ツグちゃん?!」
「ツレねぇじゃねぇか、ソロプレイでお楽しみなんてよ? こういうときはフレも呼ぶもんだぜ?」
「ひ、ひぃッ?! 西の闘犬がなんで────ヘゲロビャアッ?!」
「モリさん?!」
「ほら、お水。コレで口の中をサッパリさせるといい。その間に、ゴミ掃除はボクたちが終わらせておくからさ」
「はぁ? 女はスッこんで────エビョパァッ?!」
「タダさん?!」
「あーあ、コッソリ遊びにきて驚かす的なプランだったのに。ま、ヨッちんパイセンのカッコいいトコ見れたのはラッキー的な?」
「ちょ、ま、その靴はダメだろ────ヒギィンッ?!」
「ケイちゃん?!」
(なんで、みんながここに……?)
(っていうか、タダさんとケイちゃんもケンカ強い人だったんだ。女の子なのにすごいな……今度、身を守るためのコツだけでも教えてもらえないかな? さすがにケンカは俺にはムリだしなぁ)
(……取り敢えず、ありがたく、水飲ませてもらお)
「さぁて、それじゃ」
「残ってんのは」
「ヨッちゃんを殴っておきながら」
「ちゃっかり後ろに逃げてたテメェだけか」
「あ……うぅ……ッ?!」
「ボクは最後でいいよ。イライラが強いせいで加減なんて利きそうもないから」
「アタシはとりま玉ァ潰せればケジメ的なカンジでいいや。3番目的なカンジで」
「じゃあ、まずはオレらで半分こだな。どうする? 縦と横、どういう割り方したい?」
「モノは分け合うのがマルチプレイの鉄則だからな。平等に縦割りで分けようや」
(ウソだろ……なんで中央の真面目野郎がこんな、こんな……こんなSレア枠のバケモンどもと……おかしいだろッ?! と、とにかくヤバい……ここは恥だのメンツだのこだわってる場合じゃねぇッ!!)
「わ、悪かったッ! オレらが悪かった! ちゃんと謝る、この通りだッ! もう2度と、ナメた真似はしねぇッ!!」
「……ふーん。だってさ? ヨッちゃん、どうする?」
「いや、どうするって言われても」
(なにもしてない俺が口出しするのもおかしくない? いや、でもなぁ……今回は奇跡的に運良く後輩の子たちを助けられたけど、次もこう上手くいくとは限らないし、確認だけしておこうかな)
「ねぇ、ツグちゃん。それにみんなも。勘違いや思い込みがあるといけないから確認しておきたいことがあるんだけどさ。この場合のナメた真似はしないって約束は」
「────次は(弱い者イジメはもうしない的な意味で)無いってことで、いいんだよね?」
「ん? そりゃもちろん、次は(必ずブッ殺す的な意味で)無いって意味で言ってるでしょ。なぁ?」ビキィ?!
「当然だな。テメェひとりだけ無傷で済まそうってんだ、ならコイツも(必ずブッ殺す的な意味で)承知の上だろ。なぁ?」ビキィ?!
「この場合の約束って、そういうモノだからね。万が一のときはちゃんと責任を(必ずブッ殺す的な意味で)取ってもらわないと。ねぇ?」ビキィ?!
「ヨッちんパイセンに手ェ出しといてテメェだけ無傷で終わらそう的なコトしてんだ。コレでやらかすならもう(必ずブッ殺す的な意味で)終わり的なコトでよくね?」ビキィ?!
「うぅ……ッ?!」
「そっか。それなら良かったよ。でもまぁ、一応ね……俺の目を見てもう一度、約束してもらおうかな? もう2度とこんなことしないって、言ってみてよ」ニコォ
「は、はいッ! 金輪際、こんなコトしませんッ! ちゃんとマジメに生きますッ!!」
「うんうん、それなら俺から言うことはもうないよ。みんな、わざわざゴメンね? お詫びにタコ焼きでもおごるよ。ちょうど割引券を持ってるんだ」
「タコ焼きか、いいね。軽く運動したせいで小腹も空いてるし」
「別に自腹でもいいんだが……ま、お礼だってのを断るのも野暮か」
「……実はボク、あんまりそういうの食べたこと、ないんだよね」
「それマ? ならアタシとシェア的なカンジでいろんな味も試してみる的なカンジで」
「は、はは……助かっ、た……のか……」
「…………」
「帰ったらまず、オヤジとオフクロにいままでのこと謝って……明日から、いや、今日から真面目に勉強しよ……」
「聞いたか? あのウワサ」
「あぁ、中央にヤベェのがいるって話か」
「東西南北の頭を従えてるってヤツのことか」
「見た目は普通だか、そうとうキレてるらしいな」
「つまり、ソイツを潰せば自動的にこの辺りは全部支配下になるってコトか。へッ! 面白くなってきたじゃねぇか……ッ!!」