アルベルとネルが宿屋で一夜を過ごします。
長旅で慣れた宿屋の扉はもはや人差し指の手応えだけで開けられた。すでに顔を見知った支配人はアルベルが一瞥もくれずに通り過ぎると、「ごゆっくりなさいませ」とカウンターの中に身を縮める。廊下ですれ違ったメイドは盆の上から水を垂らしながら怯えたように頭を下げた。
一目で人を恐れさせるには慣れていた。
人をたじろがせるには十分な物恐ろしく睥睨する眼光、色の定まらない髪、狂気としか思えない服装など、アルベルの外見は、人を恐れさせるのに最適の格好だった。
ここももはや泊まり慣れた一○三号室の扉の前まで歩く。この宿屋に泊まる際は、この部屋が定番になっていた。しかし、この部屋の前まで来ると、アルベルは深く息を吐く。逡巡するようにじっと目を閉じる。しかし考えることは何も無かった。ここで立っていても仕様がない。意を決して扉を開けると、
「おかえり」
最高の笑顔が待っていた。
アルベルは思わず喉の奥をひくつかせる。胃のあたりから胸のあたりまで、力が入って筋肉が緊張する。最高の笑顔というのはアルベルの幻覚に等しいが、それに気づく余裕さえアルベルにはなかった。
「特訓は順調だったかい?」
アルベルは、髪で顔を隠すように目を背けると、後ろ手に扉を閉めた。できるだけ怪しくならないように支障ない動きを意識する。女の問いを無視して、ずんずん部屋の中を歩いた。歩きながら一目で壁際のベッドを見定めると、ごろりと乱暴に横になった。壁の方に身体ごと向かせて、くの字に身体を折り曲げる。何も見ないようにぐっと目を閉じた。
「まったくあんたは……なんで部屋になるといつも背中を向けるのさ?」
後ろから女の声がため息で問いかけてくるが、アルベルは「うるせぇ」と籠った声で悪態をつくだけだった。
なんで俺がこいつと同じ部屋なんだ。それは長い旅で繰り返されるアルベルの疑問だった。
知る限り、この女はパーティーの中でも最もアルベルを憎んでいるはずの人間だった。敵国として前線に立ち、アルベルは女の部下を目の前で足蹴にした。憎まれる覚えは幾らもあった。実際、初めてパーティーに加わる時など、女は不満を直接アルベルにぶつけている。アルベルは女の怒りと憎しみに満ちた眼を忘れていなかった。
ところが、この状況は何だ、とアルベルは誰にともなく訊きたくなる。いつの頃からか、宿に泊まるとなればこの女と同室に割り当てられることが多くなった。明らかに可笑しな状況だ。もっと言うならば、これは自分ではなく、あの女へこそ嫌がらせではないのか、とアルベルは首を傾げたくなる。
そんな状況にも関わらず、女はこの事態を受け入れ、あまつさえ笑顔まで見せてくる。これこそがアルベルの最も不可思議な状況であった。
確かに、ここ最近の女は見識が広がったとみえ、一時の敵対感情をアルベルに向けたことを恥じてすらいるとも言っていた。それに、あの女は元来人を憎み続けることに慣れていないようでもある。人を憎み続けるには真実の仇か偏見と固着観念が必要だからだ。しかし女はそのどちらも持ち合わせていないようだった。あるいは、公の為にそれを捨てたのだ。
しかし、それにしても同室はないだろう、とアルベルは思った。
女が傍で動く気配がする度、アルベルは悶々として身体を強ばらせた。これでは針の筵だ。女の清廉さに絆されては駄目だとアルベルは自分を戒めていた。アルベルは、こんなに堅忍している自分を誇ってもいいのではないかとすら思った。以前、戦闘中に偶然身体が触れた時に、『あんたってそんなに温かかったのかい』と平然と返してきたことにすら耐えたのだ。
アルベルは頭の下の枕を胸元に抱いて、ぐっと身を縮めた。眠気が訪れてくれれば御の字だった。
しかし後ろから女が、
「あんた、お腹が痛いのかい?」
と見当外れなことを言う。
「……違ぇよ」
面倒なことにならないようにぼそりと返して、アルベルは堅く目を閉じ続けた。
女も女で放っておけばいいのに、何かと元敵同士であるはずの自分を気にかけるようなことを言ってくる。その度にアルベルは妙な気持ちにとらわれるのだった。
「……そんなに」
女がまた話しはじめる。
「私と……一緒が、嫌……なのかい?」
違う。そういう次元の話ではない。アルベルはそう答えたいが、ぐっと喉の奥で堪える。しかし、妙に言葉が途切れ途切れに聞こえた。篭ったり明瞭に聞こえたり、なにか声の調子がおかしい。流暢な話し振りではない。
──まさか泣いているのか?
アルベルははたと思い当たって、思わず目を開ける。
恐る恐るそっと振り向くと、女が下着姿で着替えていた。
「はああ!?」
「ちょっとなんでこっち向くんだい!?」
アルベルが手元のシーツを女に投げる。
「隠密が服を脱ぐな!」
「隠密は関係ないだろ!」
「とにかく急に服を脱ぐな!」
女がシーツで身を隠し、アルベルは慌てて壁に向き直る。
「だってあんた今の今まで頑なに壁を向いてたじゃないか! なんで急にこっち向くのさ!」
「知るか阿呆!」
突如始まった怒鳴り合いで、急に平時の二人の空気が流れる。
この部屋に張り詰めていた緊張の糸がいつのまにかほぐれていた。
アルベルは調子を狂わされ、思わずベッドに胡座をかく。一気に疲労で喉が渇いた。
女が着替え終わったか確かめてから、サイドボードまで歩いていく。上の水差しの水をぐびぐびと飲み干していく。
するといきなり女が歩み寄ってきて、
「風呂にするかい? それとも食事にするかい?」
アルベルは思わず水を噴き出しそうになった。懸命に飲み込むために喉がゴクリと鳴った。
「……何だ、その使い古したセリフは」
「何って、質問だけど」
女は返事に詰まってまごついているアルベルなどどこ吹く風で首を傾げている。この女は素で言っているのか。第三という選択肢がないのは本当に訊いているからなのか。
「どっちにするんだい」
「……じゃあ……俺は風呂に入る」
「わかった。じゃあ私は工房でご飯を作るから、上がったらちゃんと来るんだよ」
女は物足りなさを感じるほど飾り気のない態度でアルベルを見上げると、これが約束の証だというように目を見つめ合わせた。それから買い物袋を持ってくると、颯爽と部屋の扉を開けて出て行ったのだった。扉が閉まった瞬間、アルベルは思わず座り込んだ。
なんだ、この同棲生活は……。
あの女は無自覚でやっているからなお一層たちが悪い、とアルベルは思わず項垂れた。
夜中、ふいに目が覚めたようだった。
アルベルは薄目で暗い壁を見た。
夕食のあいだ、パーティーで集まって旅の次の工程を詰めたり、戦闘中のポジショニングを確認することが多い。
この奇妙な同棲生活は、最初のうちこそからかいや心配の対象になったが、今では空気のように当たり前の存在になっていた。アルベルは自分の感覚がおかしいのだろうか、と首をひねるが、アルベルもアルベルでそれに馴染んでいるのも否めない事実だった。バトルでコンビになろうが、食事で隣になろうが、部屋の外に出れば他の誰よりもそれが馴染んでいる。しかしそれが本当に二人きりになると、これは本当に良いのだろうかと問いかけたい気分にもなってくる。女が何気ない様子で過ごしているのが、アルベルには不思議で仕方がなかった。
今も隣のベッドで、女が無防備に眠っているのだろうか。ふと気になり、肩越しに首だけひねって様子を窺う。すると、布団の中は空だった。
「ん?」
どこかへ行っているのだろうか。
アルベルは眠気の張り付いた目を重たく開きながら、ゆるゆると身体を起こした。両ベッドの間の窓から月光が明るく室内を照らしだす。部屋の中を見回すと、隣のベッドの足元に赤いものが揺れた気がして目に止まった。アルベルはまばたきを繰り返しながら、よく見ようとする。それはやはり、女の丸い赤毛だった。
「起きていたのか」
アルベルは眠い声で赤毛に話しかける。すると赤毛が振り向いて、
「ああ、あんた。目が覚めてしまったのかい?」
と応えた。
アルベルは、眠気で軽く痛む頭を掌で押さえながら、呻くように女に問いかけた。
「俺は……またうなされていたのか?」
すると女はあっけらかんとした様子で、
「いや、全然。ただ、そろそろ始まる頃かと思ってさ」
「人を花火大会みたいに言うな」
女はガサゴソと荷物を開けながら、
「逆に起こしたみたいですまないね」
と謝った。
「いや、いい」
アルベルは立ち上がって、水差しの水を飲んだ。からからの喉に潤いが通り過ぎていく。
「何してる」
グラスを置きながらアルベルが問うと、ベッドサイドの足元に座った女は、荷物の中から小さな包みを取り出した。
「夜食にこれを食べようと思ってさ」
包みを開くと、夕食のデザートに出された洋梨のタルトの残りが月光を受けてきらきら輝いていた。アルベルの喉がゴクリと鳴る。
「あんたも食べるかい?」
女の甘い誘いに、俺はいい、と言って断ろうとしたが、正直言って好物なので戴くとする。アルベルが黙って自分のベッドサイドに座ると、女はふっと微笑んだ。
「一切れしかないから、半分こだよ」
女がフォークで綺麗に等分する。クリーム色の綺麗な断面が増えた。女はひとつを小皿に乗せて、二人の間に置く。
「荷物を減らしたいし、ワインも空けようか」
女が荷物の中からさらにワインボトルを出してきた。銘柄はアルベールマンと書いてあった。
「……気になる名だな」
アルベルは独りごちて緩く笑った。
「あんた、酒は飲めるのかい?」
「フン……当然だろう。辛口が好みだがな」
女はサイドボードからふたつグラスを出してきて、ワインをなみなみと注ぐ。ワインボトルの中は半分ほど入っていた。女が酒を持っているのは意外だった。しかも結構飲む口なのだろうか。アルベルは疑問に思ったが、それは口には出さない。
「塩っぱいものが欲しくなれば、ジャーキーもあるよ」
また荷物から包みを取り出してくる。突然ささやかな酒盛りが始まったようだ。
「お前は、夜な夜なこんなことしてたのか?」
幾つも包みを広げてワイングラスを揺らす女に、アルベルは訊ねる。部屋でも生真面目に折り目正しく過ごす女が、こんな遊びのような酒を飲むのは正直言って意外な面を見た気がした。
「たまにだよ。最近ちょっとハマってね。でも、昔クレアとこっそりしてた真夜中のパーティーみたいでわくわくするじゃないか」
女がそう言って、柔らかく笑うので、アルベルはどうしたらいいのかわからず、目を伏せる。
「……今宵の相手は俺ってわけか」
アルベルがぼそりと言うと、女がグラスを傾けてきた。
「乾杯」
手を伸ばしてグラスを触れ合わせると、カンと小気味よい音が鳴った。
互いのベッドサイドに寄りかかりながら、話題の中心はやはり旅の話だった。難敵だったスフィア社のクラブガンナーの話や、エクスキューショナーの話から、実は最も大変なのはアクアウィスプかもしれないという話まで展開した。
「あんたが魔掌壁で敵を留めてくれるのはありがたいけどさ、空振るとまぬけだね」
「うるせぇ。あれは結構難しいぞ、敵の角度とタイミングを合わせないとカチッと嵌らねぇ」
「私の鏡面刹と合わせて空振ると二人してまぬけだねぇ」
「……フン。よく見ろ、阿呆が」
実際、戦闘中に揃って空振ったことは何度もあり、思わず目を見合わせたりもした。空振った時の手応えのなさと来たら、綿と戦うより虚しいものがある。
今が夜中であること、酒の酔いも手伝って、アルベルも女も存外よく笑った。と言っても、鼻から抜けるような静かな笑いだが。
「前から訊きたかったんだが」
アルベルはワインをちびりと飲んで前置きすると、赤毛がひらりと舞ってこちらを見た。アルベルはふいに、今なんて清い眼をしているのだと、女を見た。
「なんでお前は俺と同室なんだ?」
それはアルベルのかつてからの疑問でもあった。何故この女は、自分と同室であることを許しているのだろう。
女はそんなことかというように肩をすくめて、洋梨のタルトを齧った。
「だって、フェイトとクリフからはあんたが夜中にうるさいって苦情が出てるし、他の女性陣は問題外だし、となると私が引き受けるしかないじゃないか」
女は当然のことのように言う。つまり、女は自身の責任感からアルベルの『子守り』を申し出たとでも言うのだろうか。アルベルは複雑な気持ちでこめかみを押さえた。
「なんだ、その謎の責任感は」
「訓練を受けてるしね」
女は堂々と言い張る。
「どんな訓練だよ……」
「そりゃあ、どんな環境にも耐えられるような」
「俺を猛獣扱いするな」
「猛獣そのものだろ」
「そのものではないだろ」
「大体お前は……」とアルベルは続けようとするが、その言葉は胸の奥に深く沈んでしまう。
(女じゃないか……)
女であることは、断るには十分な材料だった。何故その手を使わないのか。それがアルベルの最も不思議に思う部分だった。しかし女は説明は完全に終わったというように、タルトを咀嚼している。
「俺としちゃぁ……」
アルベルは口を開いた。
「お前が一番困る」
それはアルベルにとってほとんど告白に近かった。誰よりも女として見ていると白状しているに等しいからだ。しかし女はむっとしたように急に目を細めて、奥歯を噛み締める。
「そっちからの苦情は受け付けてないんだけどねえ」
アルベルの魔掌壁は空振ったとみえ、女をふくれっ面にさせただけに留まった。アルベルは頭を掻き毟る。どうにも伝えづらい。大体普通ではないだろう。振り向けば女が着替えているところが見える暮らしなんて、危なっかしくて仕様がない──二人が交際している関係でもなければ。
交際してもいないのに、女が布団にくるまっているところも、歯を磨いているところも、鏡を見てため息をついているところすら見たことがある。あまりにプライバシーを侵害しているように思えてならなかった。この女はそういうところに無頓着過ぎるだろう。
アルベルは神経質に拳を膝の上に叩いた。
「言っとくが、俺にも限度というものがあるからな」
アルベルの言葉に、女はますますいじけたように唇を噛んだ。
「なんだい、私がそんなに迷惑なのかい」
「迷惑なわけじゃねえ。むしろその逆だ」
「逆? どういう意味だい」
「お前は、嫌じゃねえ」
「なんだい、困るって言ったり嫌じゃないって言ったり、わけのわかんない男だね」
ぶつぶつと文句を言いながら、女はグラスのワインを飲み干している。アルベルは埒があかず困り果てた。女というものは、なんと難しいものなのだろう。ただぶっ飛ばしておけばいい男と違って、女というものは言葉を尽くしても通じることができない。大切にしたい存在なら尚更だ。
と、そこまで考えて、自分が目の前の女を大切にしたがっていることに改めて気づき、愕然とする。確かにこの女は好ましい。腕も立つし、根性もある。甘くはあるが甘えは無い。アルベルを気にかける人間味は、今やアルベルにとってなくてはならない心地の良いものだと、むしろ居なくなった時ほど感じている。
アルベルは深く息をつくと、壁際に置いていた自分の荷物から、ある物を取り出した。柄にも無いことをしようとしている、という自覚はあった。もはや打つ手はアルベルには無いのだった。
アルベルは立ち上がると、女の傍に片膝をついた。
「手ぇ出せ」
女は不思議そうにアルベルを見つめる。
「それは殴れという意味かい?」
「違ぇよ……両手を出せ」
女がわけがわからないという顔で素直に両手を胸の前に出す。すると、アルベルはそこに癒しネコを置いた。
「やる」
女の目がぱっと見開かれる。それから驚いたように唇を結び、こくりと唾を飲み込み、それから不審げに眉を寄せ、ためつすがめつ手の中を眺めた。
「……これって……爆発したりしないだろうね?」
「するか」
アルベルは自分のベッドサイドに戻ると、胡座をかいた。もはや何でもありの気分だった。
「どうしたんだい、これ」
「あの青髪のクソ虫が何故か俺に押し付けて来やがった」
「ソフィアにでもあげればいいだろう」
「ンなことするくらいなら捨てる」
「私にならいいというのかい?」
「……ああ」
アルベルが頷くと、女は癒しネコをつまんで、くるくる回していた。
「フフ。可愛いね」
機嫌は直ったようだ。アルベルは、癒しネコをつつく女の横顔をじっと見つめた。
「こんなに可愛い物を誰かにもらったのは久しぶりだよ」
「久しぶり……? 前にも誰かに貰ったことがあるのか?」
「まあね」
女は幸せそうに微笑んだ。この笑顔をさせた男が別にいるということか。
(誰だよ)
アルベルは訊きたくなったが、踏み込みすぎたら逃げられる。せっかく笑顔を浮かべるまでになったのだ。ここは濁されたのを察するべきだろうと、自分を戒めた。
「クレアにだよ」
女はいきなり言った。
(言うのかよ……つーかまた『クレア』かよ……)
自分の最大のライバルはひょっとするとクリムゾンブレイドの片割れかもしれない、とアルベルは密かに歯噛みするのだった。
それからしばらく酔いにまかせて話していたが、いつのまにか静かになったのでふと見ると、女が赤い顔をしてすやすや眠っていた。
「弱ぇのに飲んだのかよ……」
アルベルは手酌をして、ボトルが空になるまで飲んだ。
女はベッドの足元に頭を預けて、ずり落ちそうになっている。アルベルは立ち上がり、女の首の下と膝の下に手を入れて抱き上げた。それからベッドの上に寝かせてやる。女はすぅと大きく寝息を立てただけで、ひとつも目を覚まさなかった。
「仮にも元敵同士の最強の隠密がこんなに無防備に寝やがって……」
アルベルは独りごちる。
「……今は仲間、か」
女の瞼はやわらかく閉じられて、静かに寝息を立てていた。肩の横に無雑作に置かれた右手には、アルベルがあげた癒しネコが今も握られていた。女の唇に赤い毛束が張りついていたので、指で取ってやる。
「……ネル・ゼルファー」
女の名前を呼ぶ。
「……俺の女になりやがれ」
アルベルは、寝息を立てている女に告白した。もちろん答えは返ってこない。しかし口に出してみると、必ずそうしてやるという闘志が湧いてきた。
アルベルは、自分のベッドサイドに背を預けて、窓の光を見た。月が綺麗だ。やけにくっきりと濃紺の空に浮かんでいる。明るい月の光が、自分と女のあいだに降り注いでいた。
女の静かな寝息を聴く。この感情に名前を付ける気など無い。しかし確かにアルベルは、大きく動く感情を自覚していた。
「こんなに俺を悩ませやがって、この阿呆」
アルベルが当てつけるように言うと、女の寝顔は月の光の中でほの白く輝いていた。