アンゴルモア、令和ギャルになる。 〜地球滅ぼしに来た終末存在だけど、人間おもろすぎて守ることにした〜 作:池ポチャ
前回、萌亜たちはシャンバラ中枢防衛人格カーラチャクラと対面しました。
時輪金剛。
本来はひとつの防衛人格でありながら、人間が認識しやすいように四相へ分かれて現れた存在です。
厳格な過去輪担当カーラ。
武闘派の現在輪担当ラチャ。
毒舌理論派の未来輪担当チャクラ。
ぽやぽや夢担当の無時輪担当リン。
全員まとめてカーラチャクラ。
前回は、リオナが萌亜の過去を無理に暴かず、「知らない部分があると分かった上で、今の萌亜の手を握る」と答え、過去輪の第一承認を得ました。
今回は、現在輪の試練です。
今、この瞬間に何を選ぶのか。
守るのか。
壊すのか。
握るのか。
離すのか。
リオナと萌亜の関係が、さらに試されます。
ラチャ曰く、現在輪は心の殴り合いです。
まったく安心できません。
シャンバラの空は、赤く染まっていた。
先ほどまで白と金の光に満ちていた広場が、今は炎のような色に変わっている。
足元の時計盤には、赤い線が走っていた。
その線は脈のように明滅し、今この瞬間だけを刻み続けている。
過去ではない。
未来でもない。
今。
ただ、今。
その一点だけを、強く照らしている。
「さあ、現在輪の試練だ!」
赤い装束の女性――ラチャが、拳を鳴らして笑った。
シャンバラ中枢防衛人格カーラチャクラの四相のひとつ。
現在輪担当。
武闘派。
熱血。
脳筋
たぶん説明より先に殴るタイプ。
姫咲リオナは、その笑顔を見て嫌な予感しかしなかった。
「確認なんですけど」
「何だ、人の娘!」
「心の殴り合いって、比喩ですよね?」
ラチャは満面の笑みで答えた。
「半分はな!」
「半分は比喩じゃないんだ……」
リオナは頭を抱えた。
隣では安藤萌亜が、少しだけ楽しそうにしている。
「リオナっち、ファイト。バッチグーでいこ」
「応援の語彙が古い」
「ナウな感じで?」
「もっと古い」
「マンモス応援してる」
「気持ちは受け取るけど台無し」
ラチャは豪快に笑った。
「いいじゃねえか! 今この瞬間、言いたいことを言う! それが現在輪だ!」
白と金の衣をまとったカーラが、厳格な声で言う。
「ラチャ。試練の説明を簡略化しすぎです」
青い衣のチャクラが、巻物を広げながら淡々と補足する。
「現在輪の試練は、被験者が即時的な危機に対し、どの価値を優先するかを検証するものです。特に今回は、安藤萌亜の終末出力と、姫咲リオナの接続因子としての判断力を確認します」
黒紫の薄衣をまとったリンは、枕を抱えたままふわふわと言った。
「今って、すぐ流れちゃうから……握ってないと、夢みたいに消えますぅ……」
リオナは小さく息を吐いた。
「つまり、今この場でどう動くかを見られるってことですね」
「その通りです」
カーラが頷く。
「過去輪は、過去を暴かずに受け入れる意志を問いました。現在輪は、今この瞬間、何を守るかを問います」
萌亜の手が、リオナの手を少し強く握った。
リオナはそれに気づき、握り返す。
「大丈夫」
「うん」
「たぶん」
「たぶんはチョベリバ」
「萌亜がそれ言う?」
「言う」
ラチャが笑いながら、広場の中央へ歩き出した。
「では始めるぞ!」
彼女が拳を地面に叩きつけた。
どん、と音が鳴る。
時計盤が赤く光り、広場の景色が一気に変わった。
白い石畳が消える。
金色の山が遠ざかる。
代わりに現れたのは、東京の街だった。
渋谷。
スクランブル交差点。
巨大な広告。
人の波。
夕方の空。
リオナは思わず声を上げた。
「渋谷……?」
萌亜も目を見開く。
「最初にタピったとこだ」
それは本物の渋谷ではなかった。
夢で作られた現在の街。
でも、あまりにもリアルだった。
通行人がいる。
学生がいる。
会社員がいる。
観光客がいる。
スマホを構える若者がいる。
どこかのビルの大型モニターには、ニュース速報のような文字が流れていた。
『未確認精神領域災害、都内で発生』
『新興宗教、外宇宙、シャンバラの関連か』
『専門家「催眠はフィクション」』
リオナは顔をしかめた。
「細かいところまで混ざってる」
チャクラの声が空から響く。
『現在輪試験用仮想都市です。被験者にとって認識しやすい現在環境として、渋谷を再構築しました』
ラチャが交差点の中央に立つ。
「ここで問う!」
その声が、街全体に響いた。
「今、この瞬間、お前たちは何を守る!」
直後。
空に白い亀裂が走った。
選定機関の光。
幾何学的な線が、渋谷の空に刻まれていく。
通行人たちは気づかない。
いや、気づけない。
リオナの頭に、冷たい声が響いた。
『現在座標、捕捉』
『文明選定個体、地上接続中』
『接続因子、近接』
『即時切除、推奨』
萌亜の瞳が紫に光る。
「来た」
白い亀裂から、仮面のようなものが落ちてくる。
白い人型。
顔のない仮面。
背中に観測輪。
細い腕。
それらが、交差点の人々へ手を伸ばした。
リオナは叫ぶ。
「一般人が!」
「仮想です」
チャクラの声が響く。
『ただし、現実の夢と連動しています。ここでの損傷は、該当する人々の夢や感情に影響を与える可能性があります』
「実質一般人じゃん!」
カナメが銃を構えた。
「非殺傷で対応する!」
ゼルヴァードが金色の術式を展開する。
「観測輪を狙え!」
白い仮面が一斉に動いた。
カナメの霊的弾丸が仮面の腕を撃ち抜く。
ゼルヴァードの術式が観測輪を絡め取る。
ラチャは笑いながら前へ出た。
「おらあっ!」
赤い拳が、白い仮面を叩き飛ばす。
「現在輪の試練中に横槍とは、空気読めねえな!」
「試練中じゃなくても空気は読まないと思います!」
リオナが叫ぶ。
萌亜は一歩前に出ようとした。
その瞬間、白い亀裂がさらに広がる。
そこから、巨大な文字が現れた。
『最適解提示』
街の空気が止まった。
通行人たちの動きが鈍る。
映像のように、全員が一瞬固まる。
そして、リオナの目の前に、白い画面が浮かび上がった。
『選択肢A
安藤萌亜の終末出力を解放し、選定機関干渉体を即時消去する。
推定成功率:九十九・八パーセント。
副作用:仮想都市および接続夢領域の一部崩壊』
『選択肢B
出力を抑制し、局所戦闘で対応する。
推定成功率:五十二・四パーセント。
副作用:接続因子および同行者への負荷増大』
『選択肢C
接続因子を切り離し、文明選定個体を隔離する。
推定成功率:七十八・二パーセント。
副作用:安藤萌亜の地上定着率低下』
リオナは息を呑んだ。
選定機関の声が、淡々と響く。
『即時判断を要求』
『現在における最適解を選択せよ』
『被害最小化には、終末出力の限定解放、あるいは接続因子切断が有効』
萌亜の顔がこわばる。
「萌亜が、やれば」
「だめ」
リオナは即座に言った。
萌亜がリオナを見る。
「でも、リオナっちたちに負荷が」
「それでもだめ」
「でも」
「萌亜が全部壊して終わらせるのは、今ここで選んじゃだめ」
萌亜の瞳が揺れた。
「じゃあ、どうするの?」
白い仮面が迫る。
カナメが二体を撃ち抜く。
ゼルヴァードが結界を張る。
ラチャが三体まとめて殴り飛ばす。
それでも、亀裂は増える。
時間はない。
今、選ばなければならない。
リオナは、浮かぶ選択肢を見る。
どれも嫌だった。
萌亜に全力を出させる。
街の夢が壊れる。
みんなに負荷をかける。
萌亜との接続を切る。
どれも、選びたくない。
だが、現在輪は待ってくれない。
今は流れる。
迷っている間にも、人々の夢が削られる。
リオナは歯を食いしばった。
「選定機関の選択肢から選ばない」
白い画面が揺れた。
『不合理』
『提示選択肢外の判断は、失敗率上昇』
「うるさい」
リオナはスマホを取り出した。
夢の中なのに、スマホは手の中にあった。
画面には、何も映っていない。
電波もない。
配信もできない。
だが、リオナはそれを握った。
「リオナっち?」
萌亜が不安そうに言う。
「私は配信者だから」
「え?」
「選択肢を出されたら、そのまま乗るんじゃなくて、文脈を作る」
リオナは周囲を見る。
渋谷の人々。
止まりかけた夢。
選定機関の白い仮面。
終末の力を持つ萌亜。
その手。
「萌亜」
「何?」
「全力は出さない」
「うん」
「でも、我慢しすぎて自分だけ傷つくのもだめ」
「……うん」
「だから、私に合わせて」
萌亜は目を見開いた。
「リオナっちに?」
「そう」
リオナはスマホを掲げた。
「もあち☆安全フィルター、局所展開」
萌亜は一瞬ぽかんとした。
それから、ぱっと笑った。
「リオナっち、それ使うの?」
「使う。あれ、萌亜が作ったんでしょ」
「うん」
「じゃあ、今度は私が名前を使う」
萌亜の瞳が柔らかく光る。
「チョベリグ」
「そこは普通に返事」
「了解」
リオナは叫んだ。
「萌亜、選定機関の言葉だけ弾いて! 人の夢は壊さない! 白い干渉だけ、フィルターする!」
萌亜が指を鳴らす。
ぱちん。
紫色の光が、リオナのスマホから広がった。
渋谷の空に、巨大な透明の膜が張られる。
膜には、なぜかポップな文字が浮かんだ。
『もあち☆安全フィルター
夢領域版』
リオナは一瞬だけ叫んだ。
「表示がかわいい!」
「大事かなって!」
「大事だけど!」
白い仮面たちが一斉にノイズを発した。
『精神領域防御、発生』
『接続因子経由』
『文明選定個体の出力、制限下で変質』
『不合理』
フィルターが、白い文字を弾く。
選定機関の命令が、渋谷の夢へ届く前に砕ける。
通行人たちの動きが少し戻る。
さっきまでぼんやりしていた人々が、再び歩き出す。
もちろん、本物の渋谷ではない。
けれど、彼らの夢は守られている。
ラチャが大笑いした。
「いいじゃねえか! 今ある力を、今いる相手と合わせて使った!」
カーラの声が遠くから響く。
『現在輪の観測値、上昇』
チャクラが補足する。
『終末出力の単独解放ではなく、接続因子を媒介にした局所防御へ変換。成功率、再計算中』
リンが眠そうに拍手する。
『かわいい防御は、夢に馴染みますぅ……』
リオナはフィルターを維持しながら叫ぶ。
「カナメさん、ゼルくん! 白い仮面の輪だけ狙ってください! 言葉が通らなければ、あっちの精度が落ちます!」
「了解」
カナメが即座に動く。
霊的弾丸が、仮面の観測輪を撃ち抜く。
ゼルヴァードも術式を切り替えた。
「なるほど。観測命令を遮断すれば、形状維持が甘くなる」
「ゼルくん、今!」
「分かっている!」
金色の術式が、白い仮面を縛る。
ラチャが拳を振りかぶる。
「よっしゃあ! まとめてぶっ飛べ!」
赤い拳が炸裂する。
白い仮面たちが、泡のように砕けた。
しかし、次の瞬間。
空の亀裂が、さらに大きく開いた。
そこに現れたのは、別の選択肢だった。
『接続因子への負荷増大』
『姫咲リオナの精神保護を優先する場合、安藤萌亜の出力解放を推奨』
リオナの頭に痛みが走る。
フィルターを通じて、選定機関の干渉が逆流してくる。
耳鳴り。
白いノイズ。
視界が揺れる。
萌亜が叫ぶ。
「リオナっち!」
「大丈夫」
「大丈夫じゃない!」
「まだいける!」
萌亜の瞳が激しく揺れた。
紫の光が濃くなる。
終末の気配。
選定機関を消すための力。
それは、あまりにも強い。
この場の白い仮面程度なら、簡単に消せる。
だが、その力はシャンバラの夢も巻き込む。
リオナはそれが分かっていた。
萌亜も分かっている。
だから苦しい。
萌亜は、リオナを助けたい。
でも、助けるために全力を出せば、誰かの夢を壊す。
それが現在輪の試練だった。
今この瞬間、一番大事なものをどう守るのか。
リオナは、痛む頭を押さえながら言った。
「萌亜」
「何?」
「私を助けるために、全部壊さないで」
「でも!」
「でも、私も無理しない」
リオナは萌亜の手を引いた。
そして、自分の額を萌亜の肩に軽く当てる。
「負荷、半分こ」
萌亜が固まる。
「半分こ?」
「うん」
「そんなのできる?」
「できるようにして」
「無茶ぶり」
「萌亜ならできる」
「信じすぎ」
「信じてるもん」
それは、前に萌亜が言った言葉だった。
萌亜は一瞬だけ泣きそうな顔になった。
それから、笑った。
「リオナっち、ズルい」
「お互い様」
「じゃあ、半分こ」
萌亜が、リオナの手を両手で包む。
紫の光が、赤い現在輪の光と混ざった。
フィルターの形が変わる。
スマホ画面のようだった防御膜が、二人の手を中心にした円形の結界になる。
その表面には、渋谷の光、竜宮城のミラーボール、アトランティスの記録、ノストラダムスの古文書、リオナのSNS画面、萌亜の笑顔が、断片として流れていた。
それらは全部、今の萌亜を作っているものだった。
過去から来て、今ここにあるもの。
リオナは、その中で声を張る。
「私たちは、萌亜を兵器として使わない!」
白い文字が揺れる。
「でも、萌亜を何もさせずに守られるだけにもさせない!」
萌亜の紫の光が安定する。
「萌亜は、ここにいる!」
赤い現在輪が強く輝く。
「今、私の隣にいる!」
白い仮面たちの動きが止まった。
選定機関の声が乱れる。
『現在定義、競合』
『文明選定個体の機能定義、失敗』
『接続因子による再命名』
『安藤萌亜、地上側現在座標に固定』
リオナは、最後に言った。
「今の萌亜は、私のマブダチ!」
萌亜が目を見開いた。
そして、なぜか真顔で言う。
「マブダチは死語じゃない?」
「今それ言う!?」
「いや、嬉しいけど」
「嬉しいならいいでしょ!」
「マンモスうれP」
「台無し!」
その瞬間、赤い光が爆発した。
ラチャが大声で笑う。
「現在輪、第二承認!」
彼女が両拳を突き上げる。
「いいぞ! 今この瞬間を、選定機関の最適解じゃなく、自分たちの言葉で殴り返した!」
白い仮面たちが、一斉に砕ける。
空の亀裂も、赤い光に押し戻される。
渋谷の仮想都市に、再び音が戻った。
人々が歩く。
車が走る。
大型モニターのノイズが消える。
夢の街は、壊れずに済んだ。
リオナは膝から崩れそうになった。
萌亜が慌てて支える。
「リオナっち!」
「大丈夫……たぶん」
「たぶんはチョベリバ」
「今は許して」
「許す」
カナメが近づいてくる。
「姫咲、意識はあるか」
「あります」
「頭痛は」
「あります」
「無理をしたな」
「しました」
「正直でよろしい」
ゼルヴァードもやってきた。
「無茶苦茶な方法だったが、効果はあった」
「褒めてます?」
「評価している」
「はいはい」
萌亜は、まだリオナの手を握っていた。
その手が少し震えている。
リオナは気づいた。
「萌亜?」
「怖かった」
萌亜は小さく言った。
「リオナっちが痛そうで、全部消したくなった」
「うん」
「でも、消したらダメって分かってた」
「うん」
「すごく怖かった」
リオナは、萌亜の手を両手で包んだ。
「止まってくれてありがとう」
「怒らない?」
「怒らない」
「役に立てた?」
「めちゃくちゃ」
「チョベリグ?」
「チョベリグ」
萌亜は、ようやく少し笑った。
現在輪の赤い光が、二人の手に集まる。
過去輪の白金の光とは違う、熱い光。
今、この瞬間の選択を認める光。
ラチャは満足そうに頷いた。
「現在輪、承認だ!」
カーラが静かに言う。
「過去輪、現在輪、二相承認を確認」
チャクラが巻物を開く。
「残りは未来輪と無時輪。なお、ここから先の難易度は上昇します」
リオナは疲れた顔で言った。
「今ので十分難しかったんですけど」
「未来はもっと面倒です」
チャクラは容赦なく言った。
「未来輪の試練では、あなたたちが選び得る未来の破綻可能性を提示します」
「破綻可能性」
「はい。代表例として、安藤萌亜が選定機関に再調整される未来、姫咲リオナがルルイエ側に取り込まれる未来、九頭龍瑠々の海がシャンバラを沈める未来、クトゥルフ覚醒による地球夢領域の変質、その他多数」
「待って、情報量」
萌亜が嫌そうに言う。
「リオナっちがルルイエに取り込まれるのはチョベリバ」
「私も嫌」
リンがふわふわと言った。
「未来の夢は、怖いです……でも、見ないと避けられないこともあります……」
ラチャはリオナの肩を軽く叩いた。
「まあ、今は休め! 現在輪の試練は終わりだ!」
リオナは、赤い空を見上げた。
渋谷の仮想都市が、ゆっくりと消えていく。
代わりに、シャンバラの金色の広場が戻ってくる。
だが、空の端にはまだ白い亀裂が残っていた。
そして、門の外では黒い海が静かに揺れている。
選定機関は退いた。
だが、完全には消えていない。
瑠々の海も、まだそこにある。
切り捨てる白。
沈める黒。
その間に線を引く。
リオナは、その言葉の重さを改めて感じていた。
「萌亜」
「何?」
「次、未来だって」
「うん」
「正直、怖い」
「萌亜も」
「でも行く?」
「リオナっちとなら」
「私も、萌亜となら」
萌亜は少し照れて、目をそらした。
「マンモス照れる」
「だから台無し」
リオナは笑った。
その笑い声は、小さく、少し疲れていて、それでも確かに今ここにあった。
現在輪は、それを認めるように赤く輝いた。
今この瞬間。
萌亜は兵器ではない。
終末機構でも、選定対象でも、ただの危険存在でもない。
リオナの隣にいる、手を握る相手。
マブダチ。
たぶん死語。
でも、今の二人には、それでよかった。
空に浮かぶ時輪が、ゆっくりと青く変わっていく。
未来輪。
チャクラの試練が、始まろうとしていた。
第15話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、シャンバラの現在輪の試練でした。
前回の過去輪では、リオナが萌亜の過去を無理に暴かず、「知らない部分があると分かった上で、今の萌亜の手を握る」と答えました。
そして今回は、今この瞬間に何を選ぶのかが問われました。
選定機関は、いつものように合理的な選択肢を提示してきます。
萌亜の終末出力を解放すれば敵は消せる。
リオナとの接続を切れば安全性は上がる。
被害を最小化するためには、危険なものを切り離せばいい。
それは一見、正しいように見えます。
けれどリオナは、その選択肢には乗りませんでした。
萌亜を兵器として使わない。
でも、萌亜を何もさせずに守られるだけにもさせない。
今ここにいる萌亜を、危険存在でも終末機構でもなく、自分の隣にいる友達として扱う。
それが、リオナの出した答えでした。
今回の「もあち☆安全フィルター夢領域版」は、かなりふざけた名前ですが、実は大事な意味があります。
萌亜の力をそのまま破壊に使うのではなく、リオナとの接続を通じて、人を守るための形に変える。
つまり、萌亜の力が「終末」ではなく「防衛」として使われ始めた回でもあります。
現在輪担当のラチャは武闘派ですが、彼女が見ていたのは、単に敵を倒せるかどうかではありません。
今この瞬間に、誰を、どう守るのか。
選定機関の最適解ではなく、自分たちの言葉で現在を定義できるのか。
リオナと萌亜は、それに答えました。
過去を知らないまま受け入れる。
今を自分たちの言葉で選び取る。
ここまでで、過去輪と現在輪の承認を得たことになります。
しかし、試練はまだ終わりません。
次に待つのは、未来輪。
担当は、毒舌理論派のチャクラです。
未来輪では、萌亜が再調整される未来、リオナがルルイエに取り込まれる未来、瑠々の海がシャンバラを沈める未来など、避けたい可能性が突きつけられることになります。
過去を受け入れ、現在を選んだ二人が、未来の破滅可能性とどう向き合うのか。
シャンバラの試練は、ここからさらに厳しくなっていきます。
それではまた次回。
現在輪でもマブダチはチョベリグ。