アンゴルモア、令和ギャルになる。 〜地球滅ぼしに来た終末存在だけど、人間おもろすぎて守ることにした〜   作:池ポチャ

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第18.5話です。

今回は、本編の幕間回です。

第18話で、萌亜とリオナはシャンバラ第二同期を完了しました。
萌亜は「地球側隣接守護存在」として、さらに地球へ近づきました。

しかし、選定機関はすでに次の防衛拠点――太陽炉系統、黄金郷エルドラドへ視線を向けています。

その前に、ひとつ避けて通れない予定が入りました。

楠タクヤとのお茶会です。

場所は、GTG地球支部。
秋田県八幡平ドラゴンアイ。

雪解けの季節に龍の瞳のように見える神秘の場所――その奥に、宇宙交流茶会から発展した銀河規模の組織、GTGの地球支部が存在しています。

参加者は、楠タクヤ。
GTG最上級顧問エックス。
外宇宙交流局長ケル、休息環境整備最高責任者ポム、労働倫理監査局長グラウ、超科学開発局長ギギ、法務統括官などの古参最上級職たち。

そして、名誉終身守衛モー子。

招待者は、安藤萌亜と姫咲リオナの二名です。

さらに、タクヤのそばには、選定機関上位個体エクスキューショナー。

エックスはそれが気に入りません。

今回は、ほのぼのお茶会に見せかけた、宇宙規模の古参メンバー圧力会議です。



タクヤ達とのお茶会

 

 シャンバラ第二同期から数日後。

 

 姫咲リオナのスマホに、一通のメッセージが届いた。

 

 送り主は、叔父。

 楠タクヤ。

 

『リオナちゃん シャンバラお疲れ様だヨ〜(*^^*)✨

萌亜ちゃんもチョベリグだったネd(˙꒳˙* )

今度、お茶会しようネ☕ 

場所は秋田の八幡平ドラゴンアイだヨ!

交通費はおじさんが出すからネ(¥▽¥)

招待者はリオナちゃんと萌亜ちゃんの二名だヨ♡

ゆっくり話そうネ〜(っ¯ ³¯ )-♡』

 

 リオナは、スマホを見たまま固まった。

 隣で、安藤萌亜が目を輝かせる。

 

「師匠から?」

「見ないで」

「ドラゴンアイって何? 龍? 目? チョベリグ?」

「情報量が多い」

 

 リオナは額を押さえた。

 

「叔父さん、ほんと急に距離詰めてくる……」

「お茶会! クレープあるかな?」

「秋田まで行ってクレープ要求するの?」

「お茶会には甘味が必要!」

「それはそうだけど」

 

 だが、ただのお茶会で済むはずがなかった。

 

 楠タクヤ。

 リオナにとっては、親戚の中でも特にリオナを可愛がってくる存在。そしてやたら絵文字の多いメッセージを送ってくる困った叔父。

 

 萌亜にとっては、死語とおじさん構文の師匠。

 

 外宇宙から見れば、全宇宙接触禁止個体。

 選定機関から見れば、分類不能の危険因子。

 

 その人物が、シャンバラ第二同期の直後に茶会へ呼ぶ。

 

 しかも場所は、秋田県八幡平ドラゴンアイ。

 普通の観光地のようで、絶対に普通ではない。

 

「……行くしかないよね」

 

 リオナが呟くと、萌亜は元気よく頷いた。

 

「行こう! 師匠のお茶会、マンモス楽しみ!」

「不安しかない」

 

     *

 

 当然、超対課は難色を示した。

 

 宮内庁式外局・超常現象対策課。

 その会議室で、御門征十郎は胃薬の箱を開けていた。

 

「楠タクヤ氏からの招待?」

「はい」

 

 リオナがスマホ画面を見せる。

 

 御門の顔色が分かりやすく悪くなった。

 

「八幡平ドラゴンアイ……」

 

 黒瀬カナメが資料をめくる。

 

「秋田県と岩手県境に近い八幡平地域。自然観光地として知られるが、周辺には複数の異常観測履歴がある」

 

 ゼルヴァード・ル=オルグレイは、腕を組んだまま低く言った。

 

「外宇宙側の通信反射がある」

「通信反射?」

 

 リオナが聞き返す。

 

「普通の地形ではない。あの“眼”は、観測を折り返す鏡として機能している可能性がある。地球側からは湖沼に見え、外宇宙側からは接続点に見える」

「つまり?」

「GTG地球支部が隠れていても不思議ではない」

 

 御門が重く息を吐いた。

 

「GTG……ギャラクシーティーグループか。世界規模の大企業だ」

 

 萌亜が手を上げる。

 

「お茶の会社?」

「表向きは、そういう顔もある」

 

 御門は疲れた声で言った。

 

「だが実態は、外宇宙交流支援、人材保護、亡命支援、超科学倫理研究、選定機関対策を担う巨大ネットワークだ。とある筋によると始まりはただの小さな茶会らしいが」

「お茶会から宇宙組織になるの、意味分かんない」

 

 リオナが半目になる。

 ゼルヴァードが続ける。

 

「GTGは選定機関に対する実質的なカウンターだ。選定機関から逃げた個体、星間企業を辞めたい技術者、未来から避難した研究者、消滅文明の残存者を保護している」

「叔父さんが?」

「中心にいる」

 

 リオナは頭を抱えた。

 

「何で私だけ知らないの……」

 

 カナメが淡々と言う。

 

「今回の招待者は、姫咲リオナと安藤萌亜の二名のみ。超対課同行は認められていない」

「危険だ」

 

 御門が即座に言った。

 その瞬間、リオナのスマホに追加メッセージが届いた。

 

『御門さんたちも心配だと思うけど、今回は二人だけで大丈夫だヨ( •̀ω•́ )✧

外から見守れるようにしておくネ(*^^*)

危ないことはしないから安心してネ☕

たぶんネ』

 

 御門は無言で胃薬を増やした。

 

「最後の“たぶん”が最悪だ」

 

 萌亜は楽しそうに笑う。

 

「師匠、バッチグー!」

「萌亜は黙って」

 

 リオナはスマホを握りしめた。

 

「でも、行きます」

 

 御門が彼女を見る。

 

「理由は?」

「叔父さんのこと、私が知らなさすぎるからです」

 

 リオナは少しだけ真剣な顔になる。

 

「萌亜を地球側に繋ぐって決めたのに、その裏で叔父さんが何をしてきたのか知らないままなのは怖いです」

 

 萌亜がリオナを見る。

 

「リオナっち……」

「それに、たぶん叔父さんは、萌亜を敵として見てない。なら、話は聞いておきたい」

 

 ゼルヴァードは小さく目を伏せた。

 

「楠タクヤは、敵対者を敵対者のまま扱わない。それが最も危険だ」

「それも聞きます」

 

 リオナは息を吐く。

 

「家族として…姪として」

 

 御門はしばらく黙った後、諦めたように言った。

 

「分かった。ただし通信は維持する。異常があれば即時介入を試みる」

「ありがとうございます」

「無理はするな」

「はい」

 

 カナメが小型通信札を差し出した。

 

「何かあれば握れ。こちらで反応を見る」

「カナメさん、ありがとうございます」

 

「それと」

「はい」

 

「叔父に流されるな」

 

 リオナは真顔で答えた。

のらりくらりとする叔父が浮かぶ。

 

「そこが一番難しいです」

 

     *

 

 秋田県、八幡平。

 

 山の空気は、東京よりも澄んでいた。

 風は冷たく、木々の葉は季節の色を帯び始めている。

 

 山道を進んだ先にある、静かな水面。

 

 八幡平ドラゴンアイ。

 

 雪解けの季節には龍の瞳のように見えるという、神秘的な場所。

 

 リオナと萌亜は、その前に立っていた。

 

「ここがドラゴンアイ……」

 

 リオナは息を呑む。

 水面は静かだった。

 

 完全な龍の瞳の姿ではない。

 だが、それでも不思議な力があった。

 

 空を映す水。

 円い鏡。

 山の奥にある、地球の目。

 

 萌亜は水面を見つめて言った。

 

「見てる」

「萌亜にも分かる?」

「うん。こっちも見てるし、向こうも見てる」

「向こう?」

「宇宙側」

 

 その瞬間、水面に波紋が広がった。

 

 中心に金色の線が浮かぶ。

 

 円。

 瞳。

 茶葉の紋章。

 古い宇宙文字。

 

 リオナの足元が、ふわりと軽くなる。

 

「ちょ、待っ――」

 

 萌亜がリオナの手を握る。

 

「転移っぽい!」

「軽く言うな!」

 

 水面が、鏡のように開いた。

 

 二人は落ちるのではなく、招かれるように、その奥へ吸い込まれていった。

 

     *

 

 次に目を開けた時、そこは茶室だった。

 

 畳。

 障子。

 炉。

 掛け軸。

 

 しかし、普通の茶室ではない。

 

 畳の縁には微細な回路が走り、障子の向こうには秋田の山と星海が同時に見えている。

 

 天井には、茶葉の形をした星図が浮かんでいた。

 床の間には、墨でこう書かれている。

 

『疲れたら、お茶を飲んで休む場所』

 

 リオナは、思わず声に出した。

 

「……これ、叔父さんのやつ?」

 

 奥から、穏やかな声がした。

 

「いらっしゃい、リオナちゃん。萌亜ちゃん」

 

 楠タクヤが座っていた。

 

 黒髪の、穏やかな雰囲気を持つ男。

 程好く整った顔立ち。

 柔らかな微笑み。

 

 どこにでもいそうで、どこにもいない。

 

 その横には、白銀の髪の美女が立っていた。

 瞳にバツマークの虹彩。

 

 エクスキューショナー。

 

 彼女は静かに、タクヤのカップへ紅茶を注いでいる。

 

 リオナは半歩引いた。

 

「……あの人」

 

 萌亜も一瞬だけ目を細める。

 

「選定機関の匂い」

 

 エクスキューショナーは二人を見る。

 

「安藤萌亜。文明選定個体アンゴルモア。地球側隣接守護存在」

 

 次にリオナを見る。

 

「姫咲リオナ。接続因子。人の娘」

 

 タクヤがのんびり言う。

 

「そんな固く呼ばなくてもいいよ。二人とも、お茶会に来てくれたお客さんだから」

「呼称調整、判断保留」

「うん。ゆっくりで」

 

 リオナはタクヤを見た。

 

「叔父さん」

「うん」

 

「説明」

「まず座ろうか」

 

「説明」

「お茶、冷めちゃうから」

「叔父さん」

 

 声に圧がこもる。

 タクヤは少し困ったように笑った。

 

「怒ってる?」

「怒る要素が多すぎる」

「そっかあ」

 

 萌亜はタクヤへ駆け寄りそうな勢いで目を輝かせた。

 

「師匠!」

「萌亜ちゃん、来てくれてありがとう。シャンバラ登録、おめでとう」

「ありがとう! チョベリグだった!」

「うん、チョベリグだったね」

 

 リオナは頭を抱える。

 

「通じ合ってるのが一番怖い」

 

 その時、茶室の襖が静かに開いた。

 

 入ってきたのは、白い髪の美女だった。

 

 黒を基調とした洗練されたスーツ。

 雪のような肌。

 瞳には、かすかなバツ印の名残。

 

 エックス。

 

 GTG最上級顧問。

 

 彼女が入った瞬間、茶室の空気が変わった。

 

 リオナは直感した。

 この人は、選定機関に似ている。

 

 けれど、違う。

 

 白い切除の冷たさではない。

 白から抜け出し、それでも白のまま立っている存在。

 

 エックスはタクヤへ一礼した。

 

「タクヤ。準備は整っています」

「ありがとう、エックス」

 

 その声に、エクスキューショナーの瞳が一瞬だけ動いた。

 エックスも、彼女を見る。

 

 無言。

 

 白い美女と、白銀の美女。

 瞳にバツの名残を持つ者と、現役のバツ印を持つ者。

 

 茶室の空気が、静かに凍る。

 

 リオナは小声で言った。

 

「……何これ」

 

 萌亜が小声で返す。

 

「白美女バトル?」

「言い方」

 

 エックスは、にこりともせずに言った。

 

「エクスキューショナー。給仕はGTG側で行います」

 

 エクスキューショナーは静かに答える。

 

「私は現在、楠タクヤの茶会補助を実施中です」

「GTG地球支部内では、GTG規定が優先されます」

「私は招待対象ではなく、同行観察個体です」

「なおさらです」

 

 タクヤが穏やかに言う。

 

「二人とも、今日は仲良くね」

 

 エックスとエクスキューショナーが同時に言った。

 

「「判断保留します」」

 

 リオナは思わず突っ込んだ。

 

「そこは揃うの!?」

 

     *

 

 茶室には、さらに数名が入ってきた。

 

 細長い外宇宙人、ケル。

 丸い体型のポム。

 真面目な顔のグラウ。

 銀色の機械生命体ギギ。

 三つ目で四本腕の法務統括官。

 

 いずれもGTGの古参。

 現在では、それぞれが最上級職に就いている。

 

 最後に、障子の向こうから声がした。

 

「もー」

 

 リオナは固まった。

 

「牛?」

 

 障子が少し開き、黒白模様の高齢の牛が顔を出した。

 

 首には銀色の鈴。

 堂々とした風格。

 

 守衛モー子。

 

 萌亜が目を輝かせる。

 

「牛!」

 

 リオナはタクヤを見た。

 

「叔父さん」

「うん」

 

「茶室に牛」

「守衛だよ」

 

「守衛?」

「モー子は昔から守ってくれてるから」

 

 モー子は、もー、と鳴いた。

 その鳴き声に反応して、畳の回路が淡く光る。

 

『牛倫理協定、GTG地球支部茶会保護条項、待機中』

 

 リオナは目を閉じた。

 

「もう何も分かんない」

 

 エックスが静かに言う。

 

「モー子は、GTG名誉終身守衛です」

「牛が?」

「はい」

 

「宇宙規模で?」

「はい」

 

 萌亜は楽しそうに言った。

 

「チョベリグ牛!」

 

 モー子は、もー、と鳴いた。

 たぶん肯定である。

 

     *

 

 茶会が始まった。

 

 席順は明らかに調整されていた。

 

 中央にタクヤ。

 右にリオナ。

 左に萌亜。

 対面にエックス。

 斜めにエクスキューショナー。

 

 周囲にGTG古参最上級職たち。

 入口にモー子。

 

 完璧な布陣である。

 リオナは座ってすぐ気づいた。

 

 これは、ただの歓迎ではない。

 

 観察されている。

 同時に、守られてもいる。

 

 エックスは、リオナと萌亜をまっすぐ見た。

 

「姫咲リオナ」

「はい」

 

「安藤萌亜」

「はいはーい」

 

「GTG最上級顧問、エックスです。かつて選定機関の選定個体候補でした」

 

 リオナは息を呑む。

 

 萌亜も表情を変えた。

 

「選定機関……」

「今は違います」

 

 エックスは静かに言った。

 

「私は、選定機関へのカウンターとして存在しています。判断保留を許されなかった者、分類だけで切除される者、休む場所を奪われた者を保護する側です」

 

 リオナは、彼女の瞳を見る。

 バツ印の名残。

 

 エクスキューショナーに似ている。

 けれど、奥にあるものが違う。

 

 エックスは、タクヤを見た。

 

「私は、タクヤに麦茶とおにぎりを渡されました」

 

 萌亜が目を輝かせる。

 

「師匠!」

「当時の私は、帰るか逃げるか、自分で決めることができませんでした。タクヤは、分かるまで休もうと言いました」

 

 リオナは黙って聞いた。

 

「それがGTGの始まりのひとつです」

 

 ケルが頷く。

 

「我々も同じです。タクヤは、疲れているなら休んだ方がいいと言った」

 

 ポムが涙ぐむ。

 

「お茶は悪くないと」

 

 グラウが真面目に続ける。

 

「その結果、外宇宙労働倫理は変わり始めた」

 

 ギギが電子音を鳴らす。

 

『星間企業の過剰契約にも対抗可能になりました』

 

 法務統括官が資料を開く。

 

『現在GTGは、選定機関、星間企業、未来管理局、その他複数勢力から追跡、再調整、契約強制を受ける個体への一時保護を行っています』

 

 リオナはタクヤを見る。

 

「叔父さん」

「うん」

「何してたの?」

 

 タクヤは少し困ったように笑った。

 

「お茶会かな」

「規模がおかしい」

 

「大きくなっちゃって」

「なっちゃってで済まない」

 

 萌亜は、尊敬の眼差しでタクヤを見ている。

 

「師匠、やっぱマンモスすごP」

「萌亜、その言い方やめて」

「もうしてる」

「手遅れ!」

 

 エックスは萌亜を静かに観察した。

 

「安藤萌亜。あなたは、かつて文明選定個体でした」

「うん」

 

「今も、その力を持っています」

「うん」

 

「ですが、シャンバラにより地球側隣接守護存在として登録された」

「そうだよ」

 

「その意味を、理解していますか」

 

 萌亜は少し黙った。

 いつもの軽さが、ほんの少し消える。

 

「全部は分かんない」

 

 リオナが萌亜を見る。

 萌亜は、自分の胸元に手を当てた。

 

「でも、前より地球が近い。リオナっちの隣が、前よりちゃんとある感じ」

 

 エックスは目を細める。

 

「悪くない答えです」

 

 萌亜はぱっと笑った。

 

「悪くない、いただきました!」

 

 エックスは少しだけ表情を緩めた。

 

「その言葉は、私にとって重要です」

「じゃあチョベリグも重要にする?」

 

「検討します」

「するんだ」

 

 リオナは思わず笑った。

 

     *

 

 茶菓子が運ばれてきた。

 

 秋田の菓子。

 

 金萬。

 バター餅。

 りんごの甘煮。

 栗を使った小さな羊羹。

 山ぶどうのゼリー。

 

 そして、なぜかクレープ。

 

 萌亜が即座に反応した。

 

「クレープ!」

 

 タクヤがにこにこ笑う。

 

「萌亜ちゃん、好きかなと思って」

「好き! 師匠、バッチグー!」

 

 リオナは半目で見る。

 

「叔父さん、萌亜を甘やかさないで」

「リオナちゃんにもあるよ。山ぶどうクリーム」

「食べますけど」

 

 エックスが給仕を指示する。

 エクスキューショナーは、その様子を静かに見ていた。

 

 そして、皿に置かれたバタークッキーをひとつ取る。

 エックスの視線が鋭くなる。

 

「そのクッキーはGTG正式茶菓子です」

 

 エクスキューショナーは答える。

 

「摂取許可は」

「あります」

「では摂取します」

 

 かじる。

 沈黙。

 

 エクスキューショナーの瞳のバツ印が、わずかに明滅した。

 

「評価」

 

 全員が注目する。

 

「悪くない」

 

 エックスの眉が、ぴくりと動いた。

 

「その評価語彙は、GTG初期記録に由来します」

「使用不可ですか」

「不可ではありません」

「では使用します」

 

 空気が張り詰める。

 

 タクヤが穏やかに言う。

 

「エックス、エクスキューショナーも、ゆっくりでいいよ」

 

 エックスはタクヤを見る。

 

「タクヤ」

「うん」

 

「あなたは、また選定機関の上位個体にお茶を出しています」

「そうだね」

 

「危険です」

「うん」

 

「また引き抜き疑惑が発生します」

「引き抜いてないよ」

「過去にも同じ発言をしています」

 

 リオナが小声で萌亜に言う。

 

「叔父さん、前科あるっぽい」

「師匠、歴史あるね」

「そういう問題じゃない」

 

 エクスキューショナーは静かに言った。

 

「私は引き抜かれていません」

 

 エックスが即座に返す。

 

「現時点では」

「判断保留」

 

「その言葉を使う段階で、すでに危険です」

「危険とは」

 

「選定機関から外れ始めています」

「外れた場合、私は何になりますか」

 

 茶室が静かになった。

 その問いは、機械的ではなかった。

 ほんの少しだけ、個人的だった。

 

 エックスは、彼女を見た。

 

「それを、すぐに決めなくていい場所が茶会です」

 

 エクスキューショナーの瞳が、微かに揺れた。

 タクヤがにこりと笑う。

 

「うん。そうだね」

 

 エックスはタクヤを見ずに言った。

 

「ただし、タクヤの隣席と給仕権限については別問題です」

 

 リオナが吹き出した。

 

「そこは別なんだ!?」

 

 萌亜も笑う。

 

「白美女バトル継続!」

「萌亜、実況しない」

 

 モー子が、もー、と鳴いた。

 

 その一声で、なぜか場が少し和んだ。

 

     *

 

 茶会が中盤に差しかかった頃、エックスは本題へ入った。

 

「リオナ、萌亜。あなたたちを招いた理由を説明します」

 

 リオナは姿勢を正す。

 

「お願いします」

「シャンバラ第二同期により、萌亜の精神領域座標は地球側へ大きく固定されました」

「はい」

 

「次に選定機関が狙うのは、物質側、出力核、肉体構成です」

「エルドラドですね」

 

 エックスは頷いた。

 

「黄金郷エルドラド。太陽炉系統。物質変換とエネルギー安定の防衛拠点」

 

 萌亜がクレープを食べながら言う。

 

「金ぴかのところ」

「そうです」

 

「暑い?」

「非常に」

 

「クレープ焼ける?」

「可能です」

「チョベリグ」

 

 リオナは止める。

 

「そこで盛り上がらない」

 

 ギギが表示を出した。

 

『エルドラド接続点候補。日本国内、廃金山およびメガソーラー計画地。楠関連財団の出資あり』

 

 リオナはタクヤを睨んだ。

 

「叔父さん」

「うん」

 

「また何かしてる」

「ちょっと準備を」

 

「小学生の頃から?」

「リオナちゃんが小さい頃からかな」

「早すぎる!」

 

 タクヤは、相変わらず穏やかに笑っている。

 

「必要になると思ったから」

「何で分かるの」

「何となく」

「その何となくで宇宙規模の準備しないで」

 

 ケルが真面目に言う。

 

「タクヤの“何となく”は、過去複数回、宇宙規模の危機を回避しています」

「叔父さんを補強しないでください」

 

 ポムが続ける。

 

「でも、大体本当に必要になるんです」

「もっと怖い」

 

 エックスは話を戻した。

 

「GTGは、エルドラド接続点への安全経路と、太陽炉干渉に対する防護を準備しています」

 

 リオナは真剣な顔になる。

 

「協力してくれるんですか」

「はい」

 

「理由は?」

「タクヤがあなたたちを大事にしているからです」

 

 即答だった。

 

 リオナは言葉を失う。

 エックスは続けた。

 

「そして、萌亜が選定機関から外れ、地球側へ定着することは、GTGにとっても重要です。選定機関の分類絶対性を崩す事例になる」

 

 萌亜は首を傾げる。

 

「萌亜がチョベリグになると、選定機関が困る?」

「かなり困ります」

 

「やったー」

「軽い」

 

 リオナが突っ込む。

 エックスは、今度はリオナを見る。

 

「ただし、注意してください」

「何をですか」

 

「GTGは味方ですが、万能ではありません。私たちは保護し、支援し、対抗します。しかし、あなたたちの選択を代わりに行うことはできません」

「……分かってます」

 

「特にリオナ。あなたは、白い切除と黒い海の間に線を引いた。今後は、黄金の欲望にも線を引く必要があります」

「黄金の欲望」

 

「エルドラドは、欲しいものを問う場所です」

 

 茶室の空気が少し重くなる。

 

「力が欲しいか。安全が欲しいか。萌亜を完全に人間にしたいか。地球を守るためなら、どこまで変換していいか。そういう問いが来ます」

 

 リオナは黙った。

 

 萌亜を守りたい。

 地球に残してあげたい。

 普通に笑っていてほしい。

 

 その願いは、欲望でもある。

 

 白い切除とは違う。

 黒い海とも違う。

 金色の誘惑。

 

 良い願いの顔をして近づいてくるもの。

 

「……分かりました」

 

 リオナは頷いた。

 

「でも、私は萌亜を勝手に別のものに変えたくない」

 

 萌亜が、リオナを見る。

 

「リオナっち」

「萌亜が自分で選ぶまで、私は線を引く」

 

 エックスは静かに頷いた。

 

「悪くない」

 

 タクヤが嬉しそうに笑う。

 

「リオナちゃん、強くなったねえ」

「叔父さんに言われると複雑」

「そっかあ」

「でも……ありがとう」

 

 タクヤは、少しだけ目を細めた。

 

「うん」

 

     *

 

 その時だった。

 

 茶室の星図が、白く揺れた。

 

 全員が一斉に反応する。

 

 選定機関の観測線。

 茶会空間の外側。

 

 ドラゴンアイの水面を通じて、白い幾何学線が侵入しようとしている。

 

 エクスキューショナーの瞳が明滅する。

 

「選定機関本流、観測接続」

 

 エックスの表情が冷える。

 

「茶会中です」

 

 白い文字が空間に浮かんだ。

 

『未登録会合』

 

『文明選定個体アンゴルモア』

『接続因子、姫咲リオナ』

 

『GTG最上級顧問エックス』

『上位選定個体エクスキューショナー』

 

『楠タクヤ』

 

『危険接触』

『記録』

『分類』

『切除準備』

 

 リオナの背筋が冷える。

 萌亜の瞳が紫に揺れる。

 

 エックスが前に出た。

 

「GTG地球支部における茶会中の無断観測は、茶会規定に反します」

『GTG規定、選定機関権限外』

「こちらも、選定機関の権限を認めていません」

 

『エックス。元選定個体候補。帰還拒否個体』

「はい」

 

『異常個体』

「いいえ」

 

 エックスの声は静かだった。

 

「判断保留を経て、自己定義を更新した個体です」

 

 白い線が揺れる。

 

 エクスキューショナーが、その横に立った。

 エックスが彼女を見る。

 

「あなたは、どちら側ですか」

 

 エクスキューショナーは、少しだけ沈黙した。

 白い観測線は、彼女へ命令を送っている。

 

『上位選定個体エクスキューショナー』

『対象会合を観測せよ』

『必要なら切除補助』

『GTG干渉を記録』

 

 茶室に冷たい圧が満ちる。

 

 リオナは思わず息を止めた。

 だが、エクスキューショナーは静かに言った。

 

「判断保留」

 

 白い線にノイズが走る。

 

『応答不完全』

「現在、茶会中です」

 

『任務優先』

「茶会規定確認中」

 

『任務優先』

「クッキー摂取中」

 

 リオナは目を剥いた。

 

「そこ!?」

 

 エクスキューショナーは、バタークッキーをもう一枚手に取った。

 

「摂取完了まで、切除補助は保留します」

 

 エックスが、ほんの一瞬だけ目を見開いた。

 それから、わずかに口元を動かした。

 

「悪くありません」

 

 タクヤが嬉しそうに言った。

 

「ほら、仲良くできそう」

「「判断保留です」」

 

 二人の白い美女が、また同時に言った。

 

 その瞬間、入口でモー子が鳴いた。

 

「もー」

 

 銀色の鈴が強く光る。

 畳の回路が一斉に輝き、茶室の外周に巨大な牛の紋章が浮かんだ。

 

『牛倫理協定、GTG地球支部茶会保護条項、発動』

『名誉終身守衛モー子、勤務中』

『茶会中の過剰観測、休息妨害に該当』

『お茶菓子摂取中の切除命令、倫理審査対象』

 

 白い観測線が、明らかに乱れた。

 

『牛』

『茶菓子』

『倫理審査』

『楠タクヤ』

 

『再計算』

 

 ケルが静かに言う。

 

「外宇宙交流局より通告。現在、本茶会はGTG保護下にあります」

 

 ポムが続ける。

 

「休息環境整備部門より通告。参加者の心理安定を妨害しないでください」

 

 グラウが声を低くする。

 

「労働倫理監査局より通告。任務中であっても休息権は存在します」

 

 ギギが電子音と共に防壁を展開する。

 

『超科学開発局、観測遮断膜展開』

 

 法務統括官が四本腕で書類を広げた。

 

『法務統括より通告。茶会参加者への強制連行、強制切除、強制再調整、強制観測は全て異議申し立て対象です』

 

 エックスが最後に告げる。

 

「そして、最上級顧問として通告します」

 

 彼女の瞳のバツ印の名残が、白く輝く。

 

「選定機関。あなたたちの分類は、ここでは絶対ではありません」

 

 白い観測線が、音もなく軋んだ。

 

『分類不能』

『GTG干渉強度、上昇』

 

『楠タクヤ危険度、再評価』

『エクスキューショナー応答不完全』

『安藤萌亜、地球側定着進行』

『姫咲リオナ、接続因子強化』

 

『直接介入、非推奨』

『撤退』

 

 白い線が、ドラゴンアイの水面へ引いていく。

 

 茶室に静けさが戻った。

 

 リオナは大きく息を吐く。

 

「……今の、めちゃくちゃ怖かった」

 

 萌亜が言う。

 

「でも、モー子強い」

「そこ?」

「牛つよつよ」

 

 モー子は、もー、と鳴いた。

 心做しか誇らしげである。

 

エクスキューショナーは、クッキーを食べ終えた。

 

「切除補助、保留完了」

 

 エックスが彼女を見る。

 

「あなたは、今、選定機関命令を実質的に遅延させました」

「茶会規定確認のためです」

「それを、こちらでは判断保留と呼びます」

「判断保留」

「はい」

 

 エックスは、少しだけ目を細めた。

 

「悪くありません」

 

 エクスキューショナーは、静かに答えた。

 

「その評価語彙は、先ほども使用されました」

「何度でも使います」

「記録します」

「してください」

 

 リオナは小声で言った。

 

「仲悪いんだか、良いんだか……」

 

 タクヤはにこにこしている。

 

「大丈夫。お茶会はだいたいこんな感じだから」

「叔父さんの“だいたい”は信用できない」

 

     *

 

 茶会の終わり。

 

 ドラゴンアイの星茶室には、柔らかな夕暮れの光が差し込んでいた。

 

 現実の時間とは少しズレているらしい。

 

 窓の向こうには、秋田の山々と星海が重なって見える。

 リオナは、湯呑みを両手で持ちながらタクヤに言った。

 

「叔父さん」

「うん」

「今まで、何で黙ってたの」

 

 タクヤは少し考えた。

 

「リオナちゃんには、普通に育ってほしかったから」

「普通?」

「うん。友達と遊んで、学校行って、好きな服着て、配信して、怒って笑って。そういうの」

 

 リオナは、何も言えなかった。

 タクヤは続ける。

 

「宇宙は大変だからね。巻き込みたくなかった」

「もう巻き込まれてる」

「そうだね」

「萌亜のことも?」

 

 タクヤは萌亜を見る。

 萌亜はクレープを食べながら、少しだけ真剣にこちらを見ていた。

 

「萌亜ちゃんは、リオナちゃんの友達だから」

「それだけ?」

「それは、かなり大きいよ」

 

 エックスが静かに頷く。

 

「タクヤにとって、それは十分な理由です」

 

 リオナは、叔父の顔を見る。

 

 いつも目を細めている。

 どこまで知っているのか分からない。

 どこまで準備しているのか分からない。

 

 でも、少なくとも。

 この人は、リオナを利用するために待っていたわけではない。

 たぶん、本当に守ろうとしていた。

 

 やり方はおかしい。

 規模もおかしい。

 おじさん構文もおかしい。

 

 でも。

 

「……ありがとう」

 

 リオナは小さく言った。

 タクヤは嬉しそうに笑う。

 

「うん」

「でも、おじさん構文は控えて」

 

「えっ」

「そこは本当に」

 

「努力するね」

「努力じゃなくて実行して」

 

「判断保留かな」

「叔父さん!」

 

 茶室に笑いが起きた。

 萌亜が楽しそうに言う。

 

「リオナっちと師匠、仲良し!」

「違う!」

「親族情動、複雑」

 

 エクスキューショナーが呟く。

 エックスが頷く。

 

「複雑ですが、悪くありません」

 

 モー子が、もー、と鳴いた。

 

 それが、この茶会の締めの合図だった。

 

     *

 

 帰り際。

 

 エックスはリオナと萌亜に、小さな茶葉の缶を渡した。

 

「GTG地球支部の正式連絡媒体です。GTGの人気商品でもあります。」

 

 リオナは缶を見る。

 

「茶葉?」

「はい。危険時に開封してください。茶葉の香りを媒介に、GTGへ接続します」

「緊急通信が茶葉……」

「茶会ですので」

「納得していいのかな」

 

 萌亜は缶を覗き込む。

 

「いい匂い!」

「萌亜、勝手に開けない」

「めんご」

 

 エックスは、萌亜に言った。

 

「安藤萌亜。あなたが地球側へ定着することを、GTGは支援します」

「ありがとう」

「ただし、あなたを兵器として扱うつもりはありません」

 

 萌亜の表情が少し変わる。

 エックスは続ける。

 

「あなたをただ保護対象として閉じ込めるつもりもありません」

 

 リオナは、エックスを見る。

 その言葉は、シャンバラ現在輪でリオナが選んだ答えに近かった。

 

 萌亜を兵器にしない。

 守られるだけにもさせない。

 

 エックスは静かに言った。

 

「茶会は、すぐに答えを出せない者のための場所です。必要な時は、来てください」

 

 萌亜は笑った。

 

「うん。お茶飲みに来る!」

「それで構いません」

 

 リオナは深く頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

「こちらこそ」

 

 エックスは一瞬、エクスキューショナーの方を見た。

 

「監視対象も増えましたので」

 

 エクスキューショナーは答える。

 

「私は監視対象ですか」

「判断保留参加候補です」

「分類が長い」

「あなたが分類不能になり始めているためです」

「記録します」

 

 タクヤが笑う。

 

「仲良くなれそうだね」

 

 二人は同時に言った。

 

「「判断保留です」」

 

 リオナは、もう突っ込む気力がなかった。

 

     *

 

 ドラゴンアイの水面が、再び開いた。

 リオナと萌亜は、現実の八幡平へ戻る。

 

 山の風が頬を撫でた。

 水面は静かだった。

 まるで何もなかったかのように、空を映している。

 

 だが、リオナの手には茶葉の缶がある。

 萌亜の口元には、クレープのクリームが少しついている。

 

 夢ではない。

 

 リオナは、遠くの山を見た。

 

「萌亜」

「何?」

 

「叔父さん、思ったよりヤバかった」

「うん!」

「うんじゃない」

「でも、悪いヤバさじゃなかった」

 

 リオナは少し黙った。

 そして、小さく頷いた。

 

「たぶんね」

 

 萌亜は笑った。

 

「次はエルドラド?」

「だね」

 

「金ぴか?」

「たぶん」

 

「GTGも来る?」

「支援はあると思う」

 

「モー子も?」

「牛は……来るかも」

「チョベリグ!」

 

 リオナは、思わず笑ってしまった。

 

 シャンバラで精神を固定し、ドラゴンアイで茶会を経て、次は黄金郷。

 

 白い選定機関。

 黒い海。

 金色の欲望。

 

 そして、茶葉の香り。

 

 世界はどんどん複雑になっていく。

 

 でも、リオナは前より少しだけ分かった。

 

 叔父が何を守ってきたのか。

 GTGが何のためにあるのか。

 

 そして、萌亜が地球に残ることは、ただ二人だけの問題ではなくなっていることを。

 

 それでも、リオナが握る手はひとつだった。

 

 萌亜の手。

 

「帰ろう」

「うん」

 

 二人は、八幡平の山道を歩き出す。

 

 背後で、ドラゴンアイの水面が一度だけ揺れた。

 まるで龍の瞳が、二人を見送るように。

 

 そして、そのさらに奥。

 GTG地球支部の星茶室では、タクヤがのんびりとお茶を飲んでいた。

 

 エックスとエクスキューショナーは、まだ席順について判断保留していた。

 

 モー子は入口で草を食べていた。

 

 宇宙は今日も、少しだけ分類から外れている。

 




第18.5話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、シャンバラ編の直後に入る幕間回でした。

舞台は、GTG地球支部。
秋田県八幡平ドラゴンアイの奥にある、星茶室です。

現実では神秘的な自然景観として知られるドラゴンアイですが、この物語では「地球と外宇宙の観測を折り返す鏡」として機能する、GTG地球支部の入口になっています。

今回の参加者は、楠タクヤ、エックス、GTG古参の最上級職たち、守衛モー子、そしてエクスキューショナー。

招待者は、安藤萌亜と姫咲リオナの二人です。

この話で重要なのは、リオナが初めて「叔父さんが何をしてきたのか」に直接触れたことです。

リオナにとって楠タクヤは、困ったおじさん構文の叔父です。

ですが、外宇宙から見れば全宇宙接触禁止個体。
選定機関から見れば分類不能の危険因子。
GTGから見れば宇宙交流茶会の原点。

そのギャップを、リオナがようやく認識し始める回になりました。

また、エックスとエクスキューショナーの関係も今回の見どころです。

エックスは、かつて選定機関の選定個体候補でした。
タクヤに麦茶とおにぎりを渡され、「分かるまで休もう」と言われたことで、選定機関から外れ、現在はGTG最上級顧問として選定機関へのカウンター存在になっています。

一方、エクスキューショナーはまだ選定機関側の上位個体です。
ですが、タクヤのそばで紅茶を注ぎ、クッキーを食べ、判断保留を覚え始めています。

エックスから見れば、それはかつての自分と重なる危険な兆候です。

だから警戒している。
嫉妬ではありません。

たぶん。

今回の茶会で、エクスキューショナーは選定機関本流からの命令に対し、「クッキー摂取中」という理由で切除補助を保留しました。

かなり小さな行動ですが、選定機関にとっては大きな異常です。

任務よりも、茶会の時間を優先した。
それは、タクヤの茶会における最初の変化でもあります。

そして、守衛モー子は今回も強いです。
牛倫理協定がGTG地球支部で発動し、選定機関の観測線を退けました。

宇宙規模の防衛機構に牛が混ざる。

この作品らしい光景です。

最後に、エックスはリオナと萌亜へGTGの正式連絡媒体として茶葉の缶を渡しました。

今後、エルドラド編で危険が迫った時、この茶葉がGTGとの接続手段になります。

次回からは、いよいよ黄金郷エルドラド編へ進みます。

白い選定機関。
黒い海。
金色の欲望。

そして、茶葉の香り。

萌亜を地球へ定着させる旅は、さらに複雑になっていきます。

それではまた次回。

ドラゴンアイでも、お茶会は悪くない。
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