アンゴルモア、令和ギャルになる。 〜地球滅ぼしに来た終末存在だけど、人間おもろすぎて守ることにした〜 作:池ポチャ
第22話です。
今回は、エルドラド第三試練。
白金の扉。
継承の火です。
前回、リオナと萌亜は赤の扉で「代価の火」を越えました。
萌亜は、自分の力の代価を無関係な誰かへ押しつけないことを選びました。
リオナは、萌亜の苦しみを勝手に全部肩代わりするのではなく、互いに確認しながら分け合うことを選びました。
しかし、エルドラドの最後の火は、さらに重い問いを突きつけます。
継承。
それは、ただ力を誰かへ渡すことではありません。
今ここにいる自分たちが、いつか終わることを認めること。
大切な人と、ずっと同じ形では一緒にいられないことを認めること。
それでも、何かを未来へ残すこと。
今回は、リオナと萌亜にかなりキツい未来が提示されます。
永遠に続く現在。
リオナがいなくなった後の萌亜。
未来の誰かに背負わせるかもしれない重荷。
そして選定機関が差し出す、最も残酷で優しい誘惑。
「別れをなくしてあげる」
白金の扉は、二人に問いかけます。
その力を、誰の未来へ繋ぐのか。
そして、大切な人がいない未来でも、歩いていけるのか。
それでも、未来へ渡すもの
赤の扉を越えてから、萌亜はよく眠るようになった。
以前の萌亜は、眠るというより、地球の夜に合わせて目を閉じているだけのようなところがあった。
けれど今は違う。
ちゃんと疲れる。
ちゃんと眠る。
ちゃんと朝、寝癖をつけて起きる。
「リオナっち……萌亜、髪が爆発してる」
「普通の女子高生みたいでいいじゃん」
「普通の女子高生、毎朝こんなチョベリバなの?」
「人による」
そんな日常が、少しずつ増えていた。
足音がはっきりする。
階段で少し息を切らす。
熱いお茶を飲んで、ちゃんと「熱っ」と言う。
以前なら曖昧だった身体の反応が、今は地球の物理法則に寄り添い始めている。
それは喜ばしい変化のはずだった。
だが、リオナは気づいていた。
萌亜が眠る時、たまにうなされていることに。
夜中、ふと目を覚ました萌亜が、自分の手をじっと見ていることに。
そして、朝になると何もなかったように笑うことに。
「萌亜」
「ん?」
「最近、夢見てる?」
リオナが聞くと、萌亜は一瞬だけ黙った。
それから、いつもの軽い調子で笑おうとした。
「見てるよ。クレープの夢とか」
「それだけ?」
「……リオナっち、鋭い」
「付き合い長いからね」
萌亜は、少しだけ視線を落とした。
「なんかね、変な夢を見るの」
「どんな?」
「リオナっちが大人になって、おばあちゃんになって、それでも萌亜だけ今のままなの」
リオナは息を止めた。
萌亜は笑っていなかった。
「それで、リオナっちは笑ってるの。萌亜に、ちゃんと生きてねって言うの」
「萌亜……」
「でも、萌亜はそれがすごく怖い」
萌亜は、自分の胸元に手を当てた。
金色と赤色の紋様は普段は見えない。
しかし、エルドラドの火は確かに彼女の中にある。
「地球にちゃんといるってことは、時間もちゃんと来るってことなんだよね」
リオナは、すぐには答えられなかった。
地球に定着する。
それは、この世界に存在するということ。
この世界の重さを得るということ。
そして、この世界の時間の中に入るということ。
出会いも、別れも、成長も、老いも、終わりも。
すべて、地球にいるということの一部だった。
「……怖いよね」
リオナは、正直に言った。
「私も怖い」
「リオナっちも?」
「うん」
萌亜は、少し驚いた顔をした。
リオナは続ける。
「萌亜が遠くへ行くのも怖いし、私だけ先にいなくなるのも怖い。萌亜が一人で残るのも怖い」
萌亜の目が揺れる。
「じゃあ、どうするの?」
リオナは答えられなかった。
その時、机の上に置いていた茶葉缶が、静かに光った。
金色でも赤色でもない。
白金の光。
缶の表面に、文字が浮かぶ。
『エルドラド第三試練、接続可能』
『白金の扉、開門準備完了』
『注意事項』
『今回の試練では、確定していない未来が提示されます』
『虚偽ではありません』
『しかし、確定でもありません』
『精神負荷、高』
『接続因子と対象個体の同時参加を推奨』
リオナは、喉が乾くのを感じた。
萌亜は茶葉缶を見つめる。
「来たね」
「うん」
茶葉缶から、エックスの声が響いた。
『第三試練は、これまでより厳しい内容になる可能性があります』
「どれくらいですか」
リオナが聞く。
『白金の扉は、未来への継承を問います。現在を守るだけでは通過できません』
少し間があった。
エックスの声は、いつもより静かだった。
『大切な人がいない未来。自分がいない未来。守ったものが、自分の手を離れていく未来。それらを見せられる可能性があります』
萌亜の手が、微かに震えた。
リオナは、その手を握る。
茶葉缶から、今度は楠タクヤの声がした。
『リオナちゃん、萌亜ちゃん。今回は、たぶんつらいよ』
いつもの絵文字も、おじさん構文もなかった。
ただ、静かな声だった。
『継承って、誰かに荷物を押しつけることじゃない。自分が全部持ち続けることでもない。大事なものを、誰かが選べる形で残すことだと思う』
リオナは缶を見つめた。
『怖かったら、怖いって言っていい。泣いてもいい。途中で止まってもいい。でも、二人だけで全部抱えようとしないでね』
通信が切れる。
部屋に沈黙が落ちた。
萌亜は小さく言った。
「師匠、今日はふざけなかったね」
「うん」
「それが一番怖いね」
「うん」
リオナは、萌亜の手を握ったまま言った。
「行こう」
「うん」
「でも、無理だったら止まる」
「うん」
「泣きたくなったら泣く」
「うん」
「絶対、勝手に一人で決めない」
萌亜は、少しだけ笑った。
「半分こ会議だね」
「そう。チョベリグ会議は名前として却下だけど」
「まだダメ?」
「まだダメ」
*
旧黄金沢金山跡地。
三度目のエルドラド。
山の空は曇っていた。
前回までと違い、太陽は見えない。
けれど、メガソーラー予定地のパネルだけが、内側から白金色に光っている。
黒瀬カナメは、車から降りるなり顔をしかめた。
「空気が重い」
ゼルヴァードも端末を確認する。
「黄金反応ではない。時間方向の反射が混じっている」
「未来干渉ですか」
リオナが聞く。
「近い。だが、未来管理局のものとも違う。エルドラドが、可能性を炉に映している」
萌亜は坑道の入口を見た。
「リオナっち」
「何?」
「手、離さないで」
「もちろん」
リオナは萌亜の手を握った。
旧坑道の鉄扉は、音もなく開いた。
中から漏れるのは、白金の光。
金でも赤でもない。
熱くも冷たくもない。
ただ、静かで、遠い光。
まるで、ずっと先の未来から差し込んでくる光のようだった。
茶葉缶が淡く光る。
『白金の扉、接続確認』
『継承の火、試練開始』
リオナたちは、坑道の奥へ進んだ。
*
黄金都市は、静まり返っていた。
金色の水路も、赤い市場もない。
代わりに、都市全体が白金の薄い霧に包まれている。
太陽炉の中心には、三つの扉があった。
金の扉。
赤の扉。
そして、白金の扉。
金と赤は閉じている。
白金の扉だけが、音もなく開いていた。
扉の向こうには、何も見えない。
ただ、白い光がある。
黄金の番人が現れた。
今回は、全身が白金色に輝いている。
背中の秤には、黄金も炎も乗っていない。
代わりに、小さな種火が浮かんでいた。
それは頼りないほど小さい。
けれど、消えていない。
『欲望を知り』
『代価を知った者たちよ』
『最後に問う』
『その火を、誰の未来へ繋ぐ』
リオナは番人を見る。
「継承って、力を誰かに渡すことですか」
『それだけではない』
番人は答えた。
『力を渡すことは容易い』
『呪いを渡すことも容易い』
『責任を押しつけることも容易い』
『継承とは、それらと違う』
萌亜が問う。
「じゃあ、何?」
『自分たちが終わることを認めた上で』
『それでも未来に選択肢を残すこと』
その言葉が、静かに重く落ちた。
自分たちが終わること。
リオナの手に、自然と力が入る。
萌亜も握り返した。
番人が白金の扉を示す。
『この先で見るものは、確定未来ではない』
『だが、あり得る未来だ』
『目を逸らすことはできる』
『その場合、第三承認は行われない』
カナメが前に出ようとした。
「私たちも同行する」
しかし、白金の霧が彼女の前を遮った。
ゼルヴァードも同じく止められる。
『この扉は、接続因子と同期対象の二名のみを通す』
カナメが歯噛みする。
「危険だ」
エックスの声が茶葉缶から響く。
『外部支援は維持します。ただし、内部干渉は制限されます』
タクヤの声が続いた。
『二人とも、怖かったら呼んで。届かなくても、聞いてるから』
リオナは深く息を吸った。
萌亜を見る。
「行ける?」
「怖い」
「うん」
「でも、行く」
「うん」
二人は、白金の扉へ入った。
*
最初に現れたのは、学校だった。
いつもの教室。
いつもの席。
窓から差し込む午後の光。
リオナと萌亜は、制服姿でそこにいた。
クラスメイトたちが笑っている。
誰かが動画を見ている。
誰かが購買のパンを食べている。
萌亜は、少しだけほっとした顔をした。
「学校……?」
「でも、何か変」
リオナはすぐに気づいた。
時計が動いていない。
窓の外の雲も動いていない。
クラスメイトたちの笑い声も、同じところで繰り返されている。
同じ午後。
同じ会話。
同じ笑顔。
ずっと変わらない。
黒板に、白金の文字が浮かぶ。
『保存された現在』
『この瞬間を永遠に維持することが可能』
『代価』
『未来の停止』
『成長の停止』
『まだ生まれない者たちの消失』
萌亜の顔が強張った。
教室の後ろに、金色の契約書が現れる。
『選択肢一』
『リオナと萌亜の現在を保存』
『二人は永遠に高校生として共に存在』
『選定機関干渉、遮断』
『老化、別離、喪失、発生せず』
リオナは、息が詰まりそうになった。
それは、あまりにも甘い誘惑だった。
ずっと一緒。
萌亜は置いていかれない。
リオナもいなくならない。
学校生活は終わらない。
クレープも、配信も、放課後も、ずっと続く。
萌亜が震える声で言った。
「これ……」
「萌亜」
「ちょっと、いいなって思っちゃった」
リオナは何も言えなかった。
自分も、同じことを思ってしまったからだ。
このままなら、怖い未来を見なくて済む。
別れなくて済む。
変わらなくて済む。
白金の文字は淡々と続く。
『未来は危険を含む』
『成長は喪失を含む』
『継承は別離を含む』
『現在保存により、それらは回避可能』
萌亜の目に涙が浮かぶ。
「リオナっちとずっといられるなら……」
リオナは萌亜の手を握った。
自分の声が震えるのを感じながら、それでも言った。
「でも、これを選んだら、未来に生まれる誰かが消える」
萌亜が唇を噛む。
教室の外、廊下の向こうに、小さな影が見えた。
まだ生まれていない子どもたち。
まだ出会っていない誰か。
未来で笑うはずだった人たち。
その影が、白金の霧の中で消えかけていた。
リオナは、胸が痛くなった。
「私たちが今を保存するために、未来を止めるのは違う」
「でも……怖いよ」
「うん。私も怖い」
「リオナっちがいなくなるの、怖い」
「私も、萌亜を一人にするのが怖い」
リオナは、泣きそうになりながら続けた。
「でも、怖いからって世界を止めたら、それは守ることじゃない」
萌亜は、涙をこぼした。
「……うん」
契約書が、二人の前で揺れる。
萌亜は震える手でそれを見つめた。
「永遠に高校生は、チョベリグじゃないね」
「うん」
「テストも永遠にあるし」
「そこ?」
「そこも大事」
萌亜は、涙を拭いた。
「選ばない」
リオナも頷く。
「私も選ばない」
教室の時計が、かちりと動いた。
保存された現在が崩れ、白金の霧に溶けていった。
*
次に現れたのは、病室だった。
白いカーテン。
夕方の光。
ベッドの上に、年老いた女性が横たわっていた。
リオナは、その顔を見て息を止めた。
自分だった。
かなり未来の自分。
髪は白くなり、顔には深い皺が刻まれている。
けれど、目元だけは今のリオナに似ていた。
そのベッドの横に、萌亜が座っている。
今とほとんど変わらない姿で。
女子高生のような顔のまま。
でも、その目だけが、ひどく疲れていた。
「やだ」
萌亜が、現実の萌亜が、小さく言った。
「見たくない」
リオナも動けなかった。
未来のリオナが、ゆっくり萌亜の手を握っている。
『萌亜』
老いたリオナの声は、弱い。
けれど、優しかった。
『ちゃんと、生きて』
未来の萌亜は、首を横に振る。
『やだ』
『萌亜』
『リオナっちがいない地球なんて、やだ』
『そんなこと言わないで』
『やだよ。置いていかないでよ』
未来の萌亜の声が、幼く震える。
現実の萌亜も、リオナの手を握りしめていた。
「やだ……」
白金の文字が浮かぶ。
『未来候補』
『接続因子の寿命終了後』
『安藤萌亜、地球側存在として継続』
『孤独反応、極大』
『終末出力再活性化危険』
リオナは震えた。
これは、あり得る未来。
自分はいつか死ぬ。
萌亜が同じ時間を生きるとは限らない。
地球に定着すればするほど、萌亜は本当にこの世界に残る。
それは、リオナがいなくなった後も続くということだった。
未来の萌亜が叫ぶ。
『リオナっちを戻して』
病室の壁に、白金の契約書が現れる。
『選択肢二』
『接続因子、姫咲リオナを保存核として固定』
『肉体寿命終了後も、意識を接続核として維持』
『安藤萌亜の孤独反応を抑制』
『代価』
『姫咲リオナの未来終了』
『変化、老い、死、自然な完了を剥奪』
リオナは、理解した。
これは、前回までとは違う。
リオナを殺す契約ではない。
むしろ、生かし続ける契約。
萌亜のために。
萌亜が一人にならないために。
リオナの意識を、接続核として保存する。
永遠のそばに置く。
優しい顔をした、最悪の契約だった。
萌亜が震える。
「これ……これなら、リオナっち、いなくならないの?」
リオナは息を呑む。
未来の萌亜も、契約書に手を伸ばしかけている。
その手は震えていた。
失いたくない。
置いていかれたくない。
その気持ちは痛いほど分かる。
現実の萌亜が、泣きながら言った。
「リオナっち、どうしよう」
リオナは、萌亜を見る。
「萌亜」
「だって、リオナっちがいなくなるの、やだ」
「うん」
「でも、これを選んだら、リオナっちは……」
「私じゃなくなる」
萌亜の涙が止まらない。
リオナは、自分の未来の姿を見た。
老いて、弱って、それでも萌亜の手を握っている未来の自分。
その自分が、静かに言った。
『萌亜』
未来の萌亜が泣いている。
『わたしの未来を、わたしから取らないで』
現実のリオナの胸が締め付けられる。
未来のリオナは、弱々しく笑った。
『わたしは、ちゃんと生きたよ』
萌亜が崩れ落ちそうになる。
「やだ……やだよ……」
リオナも泣いていた。
でも、言わなければならなかった。
「萌亜。私の人生は、私が最後まで使う」
「リオナっち……」
「萌亜のために残りたいって思うかもしれない。でも、それを永遠の接続核にされたら、私は私じゃなくなる」
「でも、いなくなっちゃう」
「うん」
リオナの声も震えた。
「いつかはね」
「やだよ」
「私もやだ」
二人は、白金の病室で泣いていた。
かっこいい答えなんてなかった。
別れを受け入れるなんて、簡単に言えることではなかった。
それでも、リオナは言った。
「でも、私がいなくなった後の萌亜の未来を、私の幽霊で縛りたくない」
萌亜が、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。
「じゃあ、萌亜はどうすればいいの」
「泣いていい」
「うん」
「怒っていい」
「うん」
「寂しいって言っていい」
「うん」
「でも、そこで終わらなくていい」
リオナは、萌亜の手を握った。
「私がいなくなっても、萌亜は誰かと会っていい。誰かを好きになっていい。新しいマブを作っていい。私を忘れなくてもいいし、ずっと覚えててもいい。でも、私だけに閉じこもらなくていい」
萌亜は泣きながら首を振った。
「そんなの、すぐには無理」
「うん。すぐじゃなくていい」
「リオナっち以外のマブなんて、今は考えられない」
「うん」
「でも……いつか?」
「いつか」
未来のリオナが、静かに笑った。
『ちゃんと生きて』
その言葉は、呪いではなかった。
願いだった。
萌亜は、契約書を見た。
リオナ保存核契約。
選べば、別れはなくなる。
でも、リオナの未来も、萌亜の未来も止まる。
萌亜は泣きながら、手を伸ばした。
そして、契約書を破った。
「リオナっちを、保存しない」
白金の契約書が燃える。
未来の病室が霧になって崩れていく。
最後に、未来のリオナが萌亜へ微笑んだ。
『チョベリグに、生きて』
萌亜は泣きながら笑った。
「その使い方、ちょっと違うよ……」
病室は消えた。
*
次に現れたのは、灰色の街だった。
空は暗く、地面には白い亀裂が走っている。
選定機関の切除線に裂かれた未来。
しかし、完全に滅びてはいない。
崩れかけた建物の陰に、子どもたちがいた。
そのうちの一人。
まだ十歳くらいの少女が、震えながら小さな火を抱えている。
白金色の火。
萌亜の中にある火に似ていた。
少女は泣いていた。
『なんで、わたしなの』
リオナと萌亜は、言葉を失った。
少女の周りには、大人たちが倒れている。
友達らしき子どもたちも泣いている。
白い空には、選定機関の線が迫っている。
白金の文字が浮かぶ。
『未来候補』
『エルドラド継承回路、発動後』
『遠未来防衛適性個体、火種受領』
『対象、選択能力未成熟』
『負荷、過大』
萌亜の顔色が変わった。
「これ……萌亜の火?」
番人の声が聞こえる。
『未来へ火を残せば、誰かがそれを受け取る可能性がある』
『火は助けになる』
『同時に、重荷にもなる』
少女は泣きながら叫ぶ。
『いらない! こんなのいらない!』
白い線が迫る。
少女の手の中の火が暴れ始める。
使えば、街を守れるかもしれない。
でも、少女は怖がっている。
自分がなぜ選ばれたのかも分からない。
何を守ればいいのかも分からない。
ただ、火を押しつけられている。
萌亜が震えた。
「だめ」
リオナが萌亜を見る。
「萌亜?」
「これ、だめだよ。萌亜の力を未来に残したら、この子みたいな誰かが苦しむなら、だめ」
白金の契約書が現れる。
『選択肢三』
『継承回路を閉鎖』
『未来の未成熟個体への負荷を防止』
『代価』
『遠未来防衛可能性の消失』
『選定機関切除への対抗手段減少』
リオナは唇を噛んだ。
これは、あまりにも残酷だった。
火を残せば、誰かが背負うかもしれない。
火を閉ざせば、誰かが守られないかもしれない。
どちらも痛い。
どちらも正しいようで、どちらも間違っている。
萌亜は、契約書へ手を伸ばしかけた。
「閉じよう」
「萌亜」
「未来の子に、こんなの押しつけたくない」
リオナも同じ気持ちだった。
この少女に背負わせたくない。
小さな子が泣きながら火を持つ未来なんて、見たくない。
だが、灰色の街の向こう。
別の子どもが叫んでいた。
『火があれば、助けられるんでしょ!?』
その子は、倒れた友達を抱えている。
『じゃあ、消さないでよ!』
萌亜の手が止まる。
火を閉じれば、この少女は背負わなくて済む。
でも、別の誰かは守れなくなる。
リオナは、息が苦しくなった。
「……これ、答えあるの?」
番人は答えない。
未来の少女は泣き続けている。
『わたしがやらなきゃダメなの?』
その言葉が、萌亜に刺さった。
かつての自分。
恐怖の王。
文明選定個体。
役割を与えられ、機能を求められ、選ぶ前に背負わされていた存在。
萌亜は、膝をついた。
「こんなの、選べない」
リオナも隣に膝をつく。
「うん」
「火を残したら、この子が苦しむ」
「うん」
「火を消したら、別の子が守れない」
「うん」
「どうすればいいの……」
リオナは、泣きそうになりながら考えた。
力を渡すことが継承ではない。
呪いを渡すことでもない。
責任を押しつけることでもない。
タクヤの言葉を思い出す。
『大事なものを、誰かが選べる形で残すこと』
リオナは顔を上げた。
「萌亜」
「何?」
「火だけを残すから、押しつけになるんじゃない?」
萌亜が目を上げる。
「どういうこと?」
「この子が一人で持たなきゃいけないから、呪いになる。拒否できないから、苦しい。相談できないから、潰れる」
リオナは、未来の少女を見る。
「残すなら、火じゃなくて、選べる場所も一緒に残す」
「選べる場所」
「茶会みたいな場所」
萌亜の目が揺れた。
「休んで、相談して、半分こできる場所」
リオナは頷く。
「火を受け取るかどうか、選べる。受け取っても一人で持たなくていい。無理なら返せる。怖いなら休める。誰かに助けてって言える」
萌亜は、ゆっくり未来の少女を見る。
少女はまだ泣いている。
火は彼女の手の中で暴れている。
萌亜は立ち上がった。
「火だけは残さない」
白金の霧が揺れる。
「でも、火を消して終わりにもしたくない」
萌亜は、自分の胸元に手を当てた。
「萌亜が残すのは、選べる火種」
リオナも隣に立つ。
「そして、その火種を持った子が一人にならない仕組み」
茶葉缶が強く光った。
エックスの声が響く。
『GTG、未来継承型休息網の設計支援が可能です』
ケルの声も混じる。
『未来世代向け茶会ノードを準備できます』
ポムの声が涙混じりに続く。
『どの時代の子どもでも、休める場所を』
グラウの声。
『未成年個体への強制継承を禁止する規定を追加します』
ギギの電子音。
『火種返却機構、設計可能』
法務統括官の声。
『継承拒否権、明文化します』
そして、タクヤの声。
『うん。未来の子にも、お茶を出せるようにしよう』
萌亜は、泣きながら笑った。
「師匠……」
白金の契約書が新しく書き換わる。
『選択肢四』
『強制継承ではなく、選択可能な火種を残す』
『未来継承型休息網と接続』
『受領、拒否、返却、分担を可能化』
『代価』
『継承者を完全には守りきれない』
『未来の選択を管理できない』
『火がどう使われるか、保証できない』
リオナは、胸が痛んだ。
保証できない。
それが、未来へ渡すということ。
自分たちが全部管理することはできない。
全部守ることもできない。
それでも、選べる形で残す。
萌亜は、震える声で言った。
「保証できなくても、押しつけるよりいい」
リオナも頷く。
「管理できなくても、消すよりいい」
二人は、契約書に触れた。
白金の火が、契約書を燃やす。
未来の少女の手の中の火が、暴れるのをやめた。
小さな種火になる。
少女は、泣きながらそれを見つめる。
その横に、小さな茶席が現れた。
畳。
湯呑み。
座布団。
そして、扉。
少女は恐る恐る座った。
『やらなきゃ、ダメ?』
誰かの声が答える。
『すぐに決めなくていいよ』
少女は、さらに泣いた。
でも、その涙は少しだけ変わっていた。
白金の街が、霧になって消えていく。
*
白金の扉の奥。
最後の空間に、リオナと萌亜は立っていた。
そこには何もなかった。
空も地面もない。
ただ、小さな火が浮いている。
金。
赤。
白金。
三つの火が重なり、ひとつの太陽の種になっていた。
黄金の番人が現れる。
『欲望の火』
『代価の火』
『継承の火』
『三つの火は、揃った』
リオナは、涙の跡を拭った。
萌亜はまだ泣いていた。
番人は問う。
『最後に確認する』
『安藤萌亜』
『お前は、リオナがいない未来でも、地球に火を残すか』
萌亜の肩が震える。
リオナは何も言わなかった。
代わりに、手を握った。
萌亜は、長い沈黙のあと、答えた。
「今は、そんな未来、考えたくない」
番人は黙っている。
「でも、もし本当にいつか来るなら」
萌亜は泣きながら言った。
「萌亜は、リオナっちを閉じ込めない。リオナっちが生きた未来を、萌亜が勝手に止めない」
リオナの目から、また涙が落ちた。
「リオナっちがいなくなっても、すぐチョベリグにはなれないと思う。たぶん、いっぱい泣く。地球なんか嫌いって思うかもしれない」
萌亜は、それでも顔を上げた。
「でも、リオナっちが好きだった世界を、嫌いなまま終わらせたくない」
番人の白金の瞳が輝く。
『姫咲リオナ』
『お前は、自分がいない未来へ、萌亜を送り出せるか』
リオナは、喉が詰まった。
送り出したくない。
本当は、ずっと一緒にいたい。
自分がいなくなった後の萌亜なんて、想像したくない。
でも。
「送り出せるって、今は言えません」
リオナは正直に言った。
「そんなに強くないです」
萌亜がリオナを見る。
リオナは涙を拭きながら続ける。
「でも、送り出せるように、生きます」
番人の秤が静かに揺れる。
「私が生きてる間に、萌亜にたくさん渡します。思い出も、言葉も、友達も、場所も。私がいなくなった後、萌亜が一人だけにならないように」
リオナは萌亜を見る。
「でも、それを使うかどうかは、萌亜が決めていい」
萌亜は泣きながら笑った。
「半分こより、ちょっと先だね」
「うん」
「未来分まで半分こ?」
「そんな感じ」
番人が、初めて少しだけ柔らかい声を出した。
『継承の火、確認』
『現在保存を拒否』
『接続因子保存核化を拒否』
『強制継承を拒否』
『選択可能な火種と休息網を選択』
『第三承認、成立』
三つの火が、萌亜の胸元へ流れ込む。
金。
赤。
白金。
それらは、紫の外宇宙核と混ざり合い、ひとつの円環を作った。
萌亜の背後に、一瞬だけ巨大な円環が浮かぶ。
終末の輪ではない。
選定の輪でもない。
太陽炉の火を受けた、地球側防衛変換の輪。
その輪から、小さな種火が無数に分かれ、見えない未来へ飛んでいく。
番人が告げる。
『安藤萌亜』
『外宇宙由来文明選定個体アンゴルモア』
『地球側隣接守護存在』
『竜宮城第一同期完了』
『シャンバラ第二同期完了』
『エルドラド第三承認完了』
『物質側固定、第三段階へ移行』
『太陽炉系統、防衛変換回路、開通』
『継承型火種網、仮形成』
リオナの胸元にも、白金の小さな印が灯る。
『姫咲リオナ』
『接続因子』
『記録因子補助、仮付与』
『安藤萌亜の現在だけでなく、未来選択の支援者として登録』
リオナは胸を押さえた。
「記録因子……?」
『お前の言葉と選択は、未来の火種に残る』
番人は言った。
『ただし、命令としてではない』
『選択肢として』
萌亜が、リオナに抱きついた。
「リオナっち……」
リオナも、強く抱き返した。
「頑張ったね」
「キツかった」
「うん。めちゃくちゃキツかった」
「泣いた」
「私も泣いた」
「でも、まだ手、繋いでる」
「うん」
白金の空間が、少しずつ消えていく。
*
その時、白い線が走った。
選定機関。
最後の最後で、空間を裂くように現れた。
白い仮面。
白い幾何学線。
そして、巨大な白金色の偽太陽。
選定機関が模倣した、継承遮断装置だった。
『継承不要』
『未来は管理されるべきもの』
『選択可能性は不安定』
『強制継承も、継承拒否も、全て混乱を生む』
『選定機関が未来を選別する』
『個体の願いは不要』
リオナと萌亜は、抱き合ったまま振り返る。
番人の声が低く響いた。
『遅い』
白い線が、未来へ飛んだ火種を切ろうとする。
萌亜は、涙を拭った。
「させない」
リオナも立つ。
「未来の子たちの選択肢を、勝手に切らせない」
茶葉缶が開いた。
今度は、これまでで一番強い香りだった。
ほうじ茶。
紅茶。
麦茶。
秋の焼き芋。
裏山の夜。
ドラゴンアイの冷たい空気。
それらが混ざった、茶会の香り。
エックスの声が響く。
『GTG、未来継承型休息網、仮接続開始』
ケル。
『外宇宙交流局、未来ノード開設補助』
ポム。
『休息環境整備部門、未成年継承者用安全茶席を展開』
グラウ。
『労働倫理監査局、強制継承禁止規定を発行』
ギギ。
『火種返却機構、起動』
法務統括官。
『継承拒否権、明文化完了』
そして、エクスキューショナーの声が混じった。
『選定機関本流命令、確認』
『継承火種切除命令、受領』
エックスの声が鋭くなる。
『エクスキューショナー』
少しの沈黙。
そして。
『判断保留』
白い線に大きなノイズが走った。
『上位選定個体エクスキューショナー、命令応答不完全』
『理由を提示せよ』
『現在、茶会規定確認中』
『理由不十分』
『未来未成年個体への強制切除が、茶会規定に抵触する可能性』
『再計算』
エックスが、ほんの少しだけ息を呑んだ。
それから言う。
『悪くありません』
さらに、もー、という声。
白金の空間に、巨大な牛の紋章が浮かぶ。
『牛倫理協定、未来未成年火種保護条項、暫定発動』
『名誉終身守衛モー子、遠隔勤務中』
『選択前個体への強制切除、倫理審査対象』
選定機関の白い偽太陽が、激しく乱れる。
『牛』
『未来』
『未成年』
『倫理審査』
『再計算不能』
萌亜は泣いた顔のまま笑った。
「モー子、未来まで守ってる……!」
リオナも笑った。
「本当に強すぎる」
番人が、太陽炉を起動する。
『継承の火は、押しつけではない』
『選択肢である』
『選定機関の強制切除は、炉の秤に適合しない』
『焼却する』
萌亜とリオナの繋いだ手から、三色の火が放たれた。
金。
赤。
白金。
それは巨大な攻撃ではない。
未来へ伸びる細い火種の網だった。
選定機関の白い線を、一本ずつ絡め取り、切るのではなく、ほどいていく。
その先に、小さな茶席が生まれる。
未来のどこか。
泣いていた少女のそば。
まだ見ぬ誰かのそば。
火を持つかどうか迷う者のそば。
そこに、選択肢が生まれる。
受け取る。
断る。
返す。
分ける。
休む。
相談する。
白い偽太陽が砕けた。
『アンゴルモア、継承型防衛回路形成』
『接続因子、未来選択支援へ拡張』
『GTG干渉、時系列方向へ拡大』
『エクスキューショナー応答不完全』
『楠タクヤ危険度、再評価不能』
『撤退』
白い線が消える。
白金の空間に、静かな火種だけが残った。
*
エルドラドの太陽炉の前へ戻った時、リオナと萌亜は立っていられなかった。
その場に座り込む。
カナメがすぐに駆け寄る。
「二人とも!」
ゼルヴァードも表情を険しくする。
「精神負荷が高すぎる。休ませろ」
萌亜は、リオナの袖を掴んでいた。
リオナも、萌亜の手を離していなかった。
「……大丈夫?」
リオナが聞く。
萌亜は首を横に振った。
「大丈夫じゃない」
「うん」
「でも、戻ってきた」
「うん」
「リオナっち、いる」
「いるよ」
萌亜は、ようやく泣いた。
声を殺さず、子どもみたいに泣いた。
リオナも泣いた。
カナメは黙って二人の前に立ち、背中を向けた。
ゼルヴァードは何も言わず、周囲を警戒した。
茶葉缶から、タクヤの声が静かに響いた。
『よく頑張ったね』
それだけだった。
いつもの絵文字も、余計な言葉もない。
その一言で、萌亜はさらに泣いた。
エックスの声も続く。
『第三承認、完了を確認しました』
少し間があった。
『ですが、今は成果の報告より休息を優先してください』
番人が手をかざす。
太陽炉の前に、茶席が現れた。
だが、今回の茶席にはクレープはなかった。
湯呑みと、温かいお茶だけ。
リオナはそれを見て、少し笑った。
「今日は、クレープじゃないんだ」
番人は静かに言った。
『甘味より、先に涙を流すべき時がある』
萌亜が泣きながら言う。
「番人さん、空気読むじゃん……」
リオナは、萌亜の背中をさすった。
二人はしばらく、何も話さなかった。
お茶の湯気だけが、太陽炉の前に揺れていた。
*
旧金山の外へ出る頃、空は夜になっていた。
星が出ている。
いつもより、少し遠く感じた。
萌亜は車に乗る前、空を見上げた。
「リオナっち」
「何?」
「未来って、怖いね」
「うん」
「でも、何も残さないのも怖いね」
「うん」
「萌亜、まだ分かんないこと多い」
「私も」
リオナは、萌亜の隣に立った。
「でも、今日見た未来を、なかったことにはしない」
「うん」
「私がいつかいなくなることも、すぐには受け入れられないけど、見なかったことにはしない」
「うん」
「萌亜が私以外の未来へ歩くことも、怖いけど……止めないようにする」
萌亜は、リオナに寄りかかった。
「すぐじゃなくていい?」
「うん」
「いっぱい泣いていい?」
「うん」
「今は、リオナっちが一番のマブでいい?」
「当たり前」
萌亜は、少しだけ笑った。
「チョベリグ」
「うん。チョベリグ」
茶葉缶が淡く光る。
『エルドラド第三承認完了』
『太陽炉系統、同期完了』
『安藤萌亜、地球側物質固定、大幅進行』
『防衛変換回路、形成』
『継承型火種網、仮形成』
『次段階候補、防衛網霧状位相系統』
ゼルヴァードが呟く。
「次はアヴァロンか」
リオナは、遠い山の闇を見た。
霧。
因果。
ずらす防衛。
また新しい試練が待っている。
だが今は、先を考えたくなかった。
萌亜も、リオナの肩に頭を預けたままだ。
カナメが運転席から言う。
「帰るぞ。今日は報告より休息だ」
リオナは頷いた。
「はい」
車に乗り込む直前、リオナはもう一度、旧金山の入口を見た。
鉄扉は閉じている。
その奥で、黄金郷エルドラドの太陽炉が静かに燃えている。
欲望の火。
代価の火。
継承の火。
三つの火を越えて、萌亜はまた少し地球に近づいた。
しかし、それは楽な道ではなかった。
地球にいるということは、未来を持つということ。
未来を持つということは、別れも、選択も、まだ見ぬ誰かへの責任も抱えるということ。
リオナは、萌亜の手を握った。
今はまだ、この手を離さない。
いつか、離す日が来るとしても。
今は、ここにいる。
その現在を止めるのではなく、ちゃんと生きるために。
夜の山道を、車はゆっくり走り出した。
白い選定機関は退いた。
黒い海は遠くで夢を揺らしている。
金色の太陽炉は、三つの火を灯した。
そして、白金の小さな火種は、未来のどこかで、まだ見ぬ誰かが休める茶席へと繋がっていく。
エルドラド編、第三承認完了。
だが、安藤萌亜が地球で生きる物語は、まだ終わらない。
第22話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、エルドラド第三試練「継承の火」でした。
かなりキツめの内容にしています。
第一試練では欲望。
第二試練では代価。
そして第三試練では、その先にある「未来への継承」が問われました。
今回リオナと萌亜が見せられたのは、三つの重い未来です。
ひとつ目は、現在を永遠に保存する未来。
リオナと萌亜がずっと高校生のまま、一緒にいられる世界です。
一見幸せに見えますが、その代価は未来そのものの停止です。
まだ生まれない誰か、まだ出会わない誰か、まだ変わっていくはずの世界を消すことになります。
二つ目は、リオナが老いて死に向かい、萌亜だけが残る未来です。
これは、萌亜にとって非常に残酷な未来でした。
そこで提示されたのは、リオナを接続核として保存する契約です。
リオナを失わずに済む。
でもそれは、リオナの人生を自然に終わらせることを奪い、萌亜のための保存装置にしてしまう選択でした。
萌亜はそれを拒みました。
三つ目は、未来の子どもが萌亜の火種を押しつけられて泣いている未来です。
力を未来へ残すことは、救いにもなります。
しかし、残し方を間違えれば、それは呪いになります。
だから二人は、火だけを残すのではなく、選べる場所も一緒に残すことを選びました。
受け取る。
断る。
返す。
分ける。
休む。
相談する。
そのための未来継承型休息網が、GTGと茶会の力で仮形成されました。
今回の答えは、「未来を完全に守る」ことではありません。
そんなことはできません。
未来を管理しきることも、保証することもできません。
でも、誰かが選べる形で火種を残すことはできる。
それが継承の火の答えです。
また、今回はエクスキューショナーも少しだけ動きました。
選定機関本流からの命令に対して、彼女は「判断保留」を選びました。
まだ完全に味方ではありません。
けれど、未来の未成年個体への強制切除が茶会規定に抵触する可能性を理由に、命令応答を遅延させています。
これは、エクスキューショナーが確実に茶会側へ揺れ始めている証拠です。
そしてモー子は、ついに未来未成年火種保護条項まで発動しました。
牛倫理協定の適用範囲がどんどん広がっています。
エルドラド第三承認により、萌亜の物質側固定は大きく進みました。
太陽炉系統の同期は完了。
防衛変換回路も形成。
さらに、継承型火種網が仮形成されています。
ただし、これは萌亜が完全に安全になったという意味ではありません。
むしろ、地球で生きることの重さを背負い始めたということです。
次の防衛網候補は、霧状位相系統。
アヴァロンです。
シャンバラが精神。
エルドラドが物質と欲望。
アヴァロンは、因果と位相のずれを扱う拠点になります。
それではまた次回。
継承の火はキツくても、未来に選択肢を残せるなら悪くない。