アンゴルモア、令和ギャルになる。 〜地球滅ぼしに来た終末存在だけど、人間おもろすぎて守ることにした〜   作:池ポチャ

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第8話です。

前回、アトランティス中枢記録殿で、萌亜を地上へつなぎ止める鍵――地上定着核が見つかりました。

ただし、その本格起動にはアトランティス最深部へ向かう必要があります。

今回は、萌亜たちが最深部へ進みます。

そこにあったのは、地球全体を映す巨大な星図。

そして、世界各地に点在する外宇宙防衛機構の拠点でした。

アトランティス。

竜宮城。

エルドラド。

シャンバラ。

アヴァロン。

ムー。

そして、萌亜でさえ嫌そうな顔をする場所――ルルイエ。

地球、思ったよりだいぶヤバいです。



地球、大体神話で防衛してた

アトランティス最深部へ向かう道は、思ったよりも綺麗だった。

 

 白い石の回廊。

 青く光る水路。

 壁一面に刻まれた、古代文字と星の図。

 

 透明な天井の向こうには、深海の黒。

 その黒い海の中を、光るクラゲのような生き物がゆっくり泳いでいる。

 

 普通なら、神秘的な光景だった。

 普通なら。

 

「ねえリオナっち」

「何?」

「ここ、絶対映えするよね」

「しない」

「なんで?」

「深海古代都市の最深部で撮ろうとするな」

「でも背景チョベリグじゃん」

「チョベリグなのは認めるけど、今それどころじゃない」

 

 安藤萌亜は、少し不満そうに頬を膨らませた。

 その隣で、姫咲リオナは頭を抱えている。

 

 深海都市アトランティス。

 

 外宇宙選定機関に抵抗した古代文明の残骸。

 そして今、彼女たちは萌亜を選定機関の再調整から守るため、地上定着核を本格起動する祭壇へ向かっている。

 

 つまり、かなり重要な場面である。

 にもかかわらず、萌亜はずっと「映えやアトランティス限定プリ機」について考えていた。

 

「ネレイアちゃん、ここって写真撮れる?」

 

 萌亜が尋ねる。

 半透明の水色の少女、ネレイアは静かに首を傾げた。

 

『記録映像の保存機能なら存在します』

「それプリ?」

『プリ、という文化項目はまだ完全に解析できていません』

「じゃあ教えてあげる。人類の叡智だよ」

「盛りすぎ」

 

 リオナが即座に突っ込む。

 

 ゼルヴァード・ル=オルグレイは、呆れたように腕を組んだ。

 

「人類の叡智が写真に落書きする機械なのか」

「ゼルくん、プリ撮ったことないから分かんないんだよ」

「撮る必要がない」

「じゃあ今度撮ろ」

「撮らぬ」

「絶対撮る流れだこれ」

 

 リオナが小さく笑った。

 

 その少し前を、黒瀬カナメが歩いている。

 

 超対課の戦闘担当。

 黒い戦闘服に身を包み、対怪異用の短銃を構え、周囲を警戒していた。

 

「全員、気を抜くな」

「カナメっち、真面目」

「その呼び方はやめろ」

「カナカナ?」

「悪化している」

「カナメちゃん?」

「……任務中だ」

「任務終わったら?」

「呼ばせない」

 

 リオナは少しだけ驚いた。

 

 前よりも、カナメの返しが柔らかい。

 萌亜への警戒が消えたわけではない。

 だが、前回の試験接続を見て、カナメの中で何かが変わり始めているのは確かだった。

 

 萌亜は人類を滅ぼせる存在。

 

 それは事実だ。

 

 けれど、リオナを心配し、壊れた守衛に「おつかれ」と言い、今もくだらないことを言いながら歩いている少女もまた、同じ萌亜なのだ。

 

『この先から、外宇宙汚染が濃くなります』

 

 ネレイアが言った。

 その声に、全員の空気が引き締まる。

 

「汚染?」

 

 リオナが聞く。

 

『はい。アトランティス最深部は、地上定着核を起動するための祭壇であると同時に、選定機関の干渉を防ぐ最後の防壁でもあります。しかし、長い年月の中で防壁の一部が侵食されています』

「つまり、敵がいる?」

『可能性があります』

 

 ゼルヴァードが不機嫌そうに言った。

 

「可能性ではなく、いる。空間の質が変わっている」

「またそれ?」

 

 リオナが言う。

 

「空間の質って、結局どういう感じなの?」

「説明しても人間には理解できん」

「じゃあ、萌亜なら分かる?」

 

 萌亜は少し考えた。

 

「んー、なんか湿気ったポテチみたいな感じ」

「余計分かんない」

「おいしいけどチョベリバ」

「もっと分かんない」

 

 ゼルヴァードは眉間を押さえた。

 

「なぜ我より雑な説明で通そうとする」

「ゼルくんの説明、難しいんだもん」

「貴様の説明は食べ物に寄りすぎだ」

 

 その時、回廊の奥で光が揺れた。

 

 青い光ではない。

 黒い緑。

 濁った沼のような光。

 

 カナメが即座に手を上げる。

 

「止まれ」

 

 全員が足を止めた。

 

 壁に刻まれていた文字が、ひとつずつ黒く染まっていく。

 水路の光が弱まり、代わりにどこかから低い音が響いた。

 

 心臓の鼓動に似た音。

 

 どくん。

 どくん。

 

 リオナは思わず胸元を押さえる。

 

「何、この音……」

 

 ネレイアの表情が硬くなる。

 

『汚染防衛機構です』

 

 回廊の床から、白い石の人型が現れた。

 前回の守衛に似ている。

 

 しかし、今度は違った。

 石の身体には黒緑色の結晶が食い込み、顔のない頭部には、目のような赤い光が灯っている。

 

 一体ではない。

 

 二体。

 三体。

 五体。

 十体。

 

 回廊の奥から、次々と姿を現す。

 

 カナメが短銃を構える。

 

「数が多い」

 

 ゼルヴァードが舌打ちする。

 

「外宇宙汚染で制御系が変質している。前のように簡単には止まらんぞ」

「簡単だったんだ」

 

 リオナが呟く。

 

「人間から見ると全然簡単じゃなかったけど」

 

 萌亜は、目の前の守衛たちを見た。

 その表情から、いつもの軽さが少しだけ消える。

 

「この子たちも、ずっと守ってたんだよね」

『はい』

 

 ネレイアが答える。

 

『本来なら、祭壇を守るための防衛機構です』

「そっか」

 

 萌亜は少しだけ目を伏せる。

 

「じゃあ、なるべく壊さないで行こ」

 

 カナメが眉をひそめる。

 

「戦闘中にそれを言うか」

「だって、悪いのは汚染でしょ」

「そうだとしても、こちらを攻撃してくる」

「うん」

 

 萌亜は前に出た。

 

「だから、ちょっとだけ寝てもらう」

 

 守衛たちが一斉に動いた。

 

 槍のような腕。

 刃のような光。

 黒緑の結晶が弾け、回廊に異様な音が響く。

 

 カナメが一体の攻撃を弾き、ゼルヴァードが金色の術式で二体を拘束する。

 

 だが、数が多い。

 リオナの前にも一体が迫った。

 

「っ!」

 

 カナメが反応するより早く、萌亜の指が動いた。

 

 ぱちん。

 

 指を鳴らす音。

 その瞬間、リオナに迫っていた守衛が止まった。

 

 しかし、止まったのは一体だけ。

 残りの守衛たちは動き続ける。

 

 萌亜が眉をひそめる。

 

「あれ」

 

 ゼルヴァードが叫ぶ。

 

「汚染が命令系統を分散させている! 個別に書き換えるしかない!」

「めんど」

「面倒で済ますな!」

 

 カナメが前へ出る。

 

「私が足止めする。安藤萌亜、可能なら制御を奪え」

「了解、カナメっち」

「黒瀬だ!」

 

 カナメは守衛の群れへ突っ込んだ。

 その動きは速い。

 無駄がない。

 

 短銃から放たれる霊的弾丸が、守衛の関節部を撃ち抜く。

 刃が青い光を断ち、足元に符が展開される。

 

 守衛の動きが鈍る。

 

 その隙に、萌亜が一体ずつ指を鳴らしていく。

 

 ぱちん。

 一体が止まる。

 

 ぱちん。

 二体目が膝をつく。

 

 ぱちん。

 三体目の赤い光が消える。

 

 リオナは、その様子を見ながら息を呑んだ。

 

 萌亜が全部プチッと消すのは簡単なのだろう。

 

 でも今は、消していない。

 壊さないように。

 眠らせるように。

 力を抑えている。

 

 それは、たぶん簡単なことではない。

 ゼルヴァードもそれに気づいたのか、苦々しげに言った。

 

「本気でやれば一瞬だろうに」

「それをしないのが、今の萌亜なんだよ」

 

 リオナが言う。

 

 ゼルヴァードは一瞬黙った。

 

「……理解しがたい」

「でしょ」

「だが」

 

 ゼルヴァードは金色の術式を広げ、守衛二体をまとめて拘束した。

 

「悪くはない」

 

 リオナは笑った。

 

「ゼルくん、だいぶ素直になってきたね」

「なっていない!」

 

 最後の守衛が、黒緑の光を膨らませた。

 自爆のような反応。

 

 カナメが叫ぶ。

 

「下がれ!」

 

 だが、萌亜は下がらなかった。

 そっと手を伸ばし、守衛の胸に触れる。

 

「おつかれ」

 

 その一言と同時に、黒緑の光が消えた。

 守衛は力を失い、静かに膝をつく。

 やがて、石の身体から黒い結晶が剥がれ落ちた。

 

 青い光が一瞬だけ戻る。

 まるで、礼を言うように。

 そして、守衛は完全に停止した。

 

 回廊に静寂が戻る。

 

 カナメは息を吐いた。

 

「全員、無事か」

「うん」

 

 リオナが答える。

 

「萌亜は?」

「大丈夫」

 

 萌亜は停止した守衛を見下ろしていた。

 

 少しだけ、寂しそうに。

 

「この子たち、守りたかっただけなんだよね」

『はい』

 

 ネレイアが静かに答える。

 

『彼らは、最後まで役目を果たしました』

「そっか」

 

 萌亜は小さく笑った。

 

「じゃあ、あとは萌亜たちがやるね」

 

 カナメは、その横顔を見ていた。

 

 人類を滅ぼせる存在。

 でも、壊れた守衛にまでそんな言葉をかける存在。

 

 彼女の中の警戒心は、まだ消えない。

 けれど、認識は確実に変わりつつあった。

 

「安藤萌亜」

「ん?」

「……今の判断は、悪くなかった」

 

 萌亜は目を丸くした。

 

「カナメっち、褒めた?」

「黒瀬だ」

「でも褒めたよね?」

「任務上の評価だ」

「照れてる?」

「違う」

 

 リオナがにやにやした。

 

「カナメさん、ツンデレ枠?」

「違う」

 

 ゼルヴァードが鼻を鳴らす。

 

「この集団、素直でない者が多すぎる」

「ゼルくんが言う?」

「我は常に率直だ」

「クレープ好きって言えないのに?」

「黙れ」

 

 ネレイアは、そのやり取りを不思議そうに見ていた。

 

『人間関係は複雑ですね』

「だいたいこんな感じ」

 

 リオナが答えた。

 

「慣れるよ」

『記録します』

「しなくていいです」

 

     *

 

 最深部の扉は、回廊の終わりにあった。

 

 巨大な円形の扉。

 白い石と青い結晶で作られ、中央には地球のような紋様が刻まれている。

 

 その周囲を、七つの小さな円が囲んでいた。

 

「これ、何?」

 

 リオナが尋ねる。

 

『星図殿への入口です』

 

 ネレイアが答える。

 

『アトランティス最深部にして、地球防衛機構全体を記録する場所です』

「地球防衛機構全体?」

 

 リオナが聞き返す。

 

 ゼルヴァードの表情が変わった。

 

「待て。全体と言ったか」

『はい』

「アトランティス以外にも存在するのか」

『存在します』

 

 その言葉に、全員が黙った。

 カナメが低く言う。

 

「初耳だな」

『超対課の記録には存在しないでしょう。多くは神話、伝承、あるいは存在しない土地として処理されています』

「存在しない土地……」

 

 リオナは嫌な予感がした。

 ネレイアが扉に手をかざす。

 

 青い光が走り、円形の扉がゆっくりと開いていく。

 

 中から、冷たい光が溢れた。

 その先にあったのは、広大な円形の部屋だった。

 

 白い石で作られた床。

 天井には無数の結晶。

 壁には、星座のような光の線。

 

 そして中央には、巨大な球体が浮かんでいた。

 

 水晶のように透明な球体。

 内部には、青白い光が渦巻いている。

 

 まるで、地球そのものを閉じ込めたような装置だった。

 

 ネレイアが静かに言う。

 

『ここが、アトランティス最深部――星図殿です』

 

 リオナは息を呑んだ。

 

「綺麗……」

 

 萌亜も目を輝かせる。

 

「めっちゃ映える」

「その感想でいいの?」

「だって映えるし」

 

 カナメは周囲を確認する。

 

「敵影なし。だが、異常反応はある」

 

 ゼルヴァードは中央の球体を睨んでいた。

 

「これは……ただの記録装置ではないな」

『はい』

 

 ネレイアは球体の前に進み出る。

 

『星図殿は、地球全域に残された外宇宙防衛機構の位置と稼働状況を記録する場所です』

「外宇宙防衛機構……」

 

 リオナが呟く。

 

『地球は、何度も観測され、何度も選定されかけました。そのたびに、地上の文明や神話的勢力は、外宇宙に抗うための拠点を築きました』

 

 ネレイアが手をかざす。

 

 中央の球体が強く輝く。

 

 次の瞬間、広間の空中に巨大な地球の立体映像が浮かび上がった。

 

 青い海。

 緑の大陸。

 白い雲。

 

 その各地に、小さな光点が灯っている。

 

 一つではない。

 十数個。

 いや、もっとある。

 

 リオナは呆然と見上げた。

 

「これ……全部?」

『はい。かつて存在した、あるいは現在も残存している外宇宙防衛機構の拠点です』

 

 ゼルヴァードは信じられないという顔をした。

 

「ありえん。地球にこれほどの防衛網があっただと?」

『はい』

「ならば、なぜ選定機関は即座に地球を切除しなかった」

『切除しようとしました』

 

 ネレイアの声は静かだった。

 

『その結果、多くの拠点は沈み、隠れ、封じられ、伝承へと変わりました』

 

 地球図の一点が拡大される。

 

 大西洋深部。

 今いるアトランティス。

 

『アトランティス。観測遮断と記憶保存を担う中枢拠点。現在、限定稼働中』

 

 次に、日本近海が光った。

 

 海底に、巨大な宮殿の影が浮かぶ。

 金と青の光。

 龍のような紋様。

 

『日本近海。竜宮城』

「竜宮城!?」

 

 リオナが思わず声を上げた。

 

『時間隔離型防衛機構。外宇宙観測から、対象領域の時間流を一時的に切り離す拠点です』

「浦島太郎のやつ!?」

『伝承としては、その名で残っています』

 

 萌亜が目を輝かせた。

 

「竜宮城、マジであるんだ。チョベリグじゃん」

「いや、実在するテンションで受け入れるの早すぎ」

 

 カナメは真剣な顔で地球図を見ていた。

 

「日本近海にそんなものがあるなら、超対課が把握していないのはおかしい」

『竜宮城は時間隔離状態にあります。通常の観測では、存在する時間そのものに接続できません』

「なるほど。分からん」

 

 リオナが正直に言う。

 

 ネレイアは次の光点を示した。

 

 南米奥地。

 黄金色に輝く都市。

 

『南米深部。エルドラド。太陽炉による対外宇宙物質変換拠点』

「エルドラドも実在するんだ……」

『現在は地表座標を喪失。地下太陽炉のみ反応あり』

 

 次に、ヒマラヤ山脈の地下が白く光る。

 

『ヒマラヤ地下。シャンバラ。精神領域防衛機構。集合意識への干渉を遮断するための拠点です』

 

 ゼルヴァードが低く呟く。

 

「精神領域防衛……地球文明がそんなものを」

 

 次に、霧に包まれた島が映る。

 

『北大西洋周辺。アヴァロン。霧状位相遮断機構。選定機関の因果干渉をずらすための拠点です』

「アヴァロンって、あのアヴァロン?」

 

 リオナが言う。

 

「もう神話全部実在する流れじゃん」

 

 萌亜は楽しそうに手を上げた。

 

「ムーは?」

 

 ネレイアは頷く。

 

『太平洋深部。ムー。大陸級エネルギー中継拠点。現在、反応微弱』

「あるんだ」

「あるんだ、じゃない」

 

 リオナは頭を押さえた。

 

「もう情報量が多すぎる」

 

 ネレイアは静かに続ける。

 

『これらは、それぞれ異なる文明、勢力、神話体系によって築かれました。ですが、目的は同じです』

「地球を守ること?」

『はい。外宇宙からの観測、干渉、切除に対抗すること』

 

 リオナは地球図を見つめた。

 

 昔話。

 神話。

 伝説。

 都市伝説。

 

 ただの物語だと思っていたもの。

 

 その裏に、地球を守ろうとした人たちがいた。

 そう考えると、胸の奥が震えた。

 

「地球って、ずっと戦ってたんだね」

『はい』

 

 ネレイアの声は静かだった。

 

『記録に残らなくても。名前を失っても。誰かが抗い続けました』

 

 萌亜は黙って地球図を見ていた。

 いつもの笑みがない。

 

「萌亜?」

 

 リオナが声をかける。

 萌亜は少しだけ困ったように笑った。

 

「萌亜、地球のこと全然知らなかったんだね」

「そんなこと」

「ううん」

 

 萌亜は首を横に振る。

 

「昔は、上から見てただけだった。地球っていう星を見て、人類っていう文明を見て、危ないかどうか測ってた。でも、こういうのは見てなかった」

 

 彼女は地球図を見上げる。

 

「誰かが何かを守ろうとしてたこと。怖くても抗ってたこと。伝説になっても残そうとしてたこと」

 

 リオナは何も言わなかった。

 

 萌亜は小さく呟く。

 

「人間、やっぱおもろいね」

 

 その言葉は、いつもの軽い口癖ではなかった。

 少しだけ、敬意のようなものが混じっていた。

 

 その時。

 

 地球図の南太平洋深部が、暗く脈打った。

 

 他の光点とは違う。

 青や白ではない。

 濁った緑。

 光というより、染み。

 

 深海の闇の中で、何かが眠っているような反応。

 

 ネレイアが告げる。

 

『南太平洋深部。ルルイエ』

 

 その名前が出た瞬間。

 萌亜の顔が、露骨に歪んだ。

 

「うわ」

 

 リオナは驚いた。

 萌亜がここまで嫌そうな顔をするのは、かなり珍しい。

 

 外宇宙の侵略者を見ても、深海怪異を見ても、選定機関の観測端末を見ても、ここまで嫌な顔はしなかった。

 

 しかし今は、本気で嫌そうだった。

 

「萌亜?」

「そこ、まだ残ってるんだ」

 

 声まで嫌そうだった。

 

 ゼルヴァードが眉をひそめる。

 

「知っているのか、アンゴルモア」

「知ってるっていうか……知り合いの家みたいな?」

「家?」

「うん。外宇宙寄りの残存勢力がまだ寝てる。たぶん」

 

 リオナの顔が引きつる。

 

「寝てるって、何が?」

 

 萌亜は少し目を逸らした。

 

「起きると面倒なやつ」

「どれくらい面倒?」

「ゼルくん百人分くらい」

「なぜ我を単位にする!」

「分かりやすいかなって」

「分かりやすくない!」

 

 ネレイアは静かに続けた。

 

『ルルイエは、他の防衛拠点とは異なります』

「違うの?」

 

 リオナが聞く。

 

『はい。あそこは、地球を守るための防衛機構でありながら、同時に外宇宙汚染を最も深く受けた拠点です』

 

 地球図のルルイエが、暗く脈打つ。

 

『現在も、残存勢力の活動反応があります』

 

 カナメが武器を握り直した。

 

「敵性勢力か」

『分類困難です。地球側でもあり、外宇宙側でもある。守護者であり、汚染源でもある』

「それ、だいぶ最悪では?」

 

 リオナが言う。

 

「だいぶ最悪」

 

 萌亜が即答した。

 ゼルヴァードは、地球図の暗い光点を睨む。

 

「ルルイエ……古い外宇宙の名だ。選定機関とは別系統の深淵につながる場所と聞いたことがある」

「別系統?」

 

 リオナが聞く。

 

 萌亜は嫌そうな顔のまま答えた。

 

「選定機関って、外宇宙の中ではまだルールがある方なんだよね。上司とか命令とか処分とか、めんどいけど秩序はある」

「うん」

「でもルルイエ側は、もっと古い。もっとぐちゃぐちゃ。夢とか海とか触手とか、そういう人間が悪夢でチラ見するやつ」

「聞いてるだけで嫌」

「だから嫌なの」

 

 萌亜は腕を組んだ。

 

「ルルイエ、ノリが暗いんだもん」

「ノリ?」

「ずっと寝てるくせに、夢で話しかけてくるタイプ」

「怖すぎる」

「あと触手多い」

「最悪」

 

 カナメが真顔で言う。

 

「具体的な脅威度は?」

「ゼルくん百人分」

「だから我を単位にするな!」

 

 ゼルヴァードが叫ぶ。

 

 その時だった。

 

 星図殿の地球図に表示されていたルルイエの光点が、ぶるりと震えた。

 

 暗い緑色の光が、じわりと滲む。

 次の瞬間、星図の端に、妙にポップな文字が流れ始めた。

 

『未経験♡高収入♡誰でも歓迎♡24時間面接可♡女の子の夢を叶えるルルイエまでお越しください♡』

 

 リオナは固まった。

 

「……は?」

 

 さらに小さな文字が続く。

 

『※18歳以下はお断りしております。』

 

 沈黙。

 星図殿に、最悪な沈黙が落ちた。

 

 カナメが即座に武器を構える。

 

「何だ、これは」

 

 ゼルヴァードが顔をしかめる。

 

「外宇宙汚染情報波だ。だが……なぜ広告形式なのだ」

 

 ネレイアの表情も、わずかに困惑していた。

 

『ルルイエからの自律発信です。人類の情報環境を模倣しているようです』

「模倣の仕方、最悪じゃない?」

 

 リオナが真顔で言った。

 

 萌亜は、さっきよりさらに嫌そうな顔をした。

 

「だから嫌なんだよ、ルルイエ」

「今の何!? めちゃくちゃ怪しいんだけど!」

「ルルイエ、たまに夢とか広告とか迷惑メールっぽいやつで話しかけてくる」

「迷惑メールで外宇宙から話しかけてくるな!」

 

 星図の端で、さらに広告文が増殖する。

 

『深海寮完備♡送迎あり♡初心者歓迎♡』

『あなたの本当の姿、眠れる海で咲かせませんか?』

『今なら面接交通費、触手負担♡』

「触手負担!?」

 

 リオナが叫んだ。

 

「そこは交通費負担でしょ! なんで触手!?」

 

 カナメが冷静に言う。

 

「情報汚染の可能性がある。読むな」

「もう読んじゃったんですけど!」

 

 ゼルヴァードは不快そうに顔を背けた。

 

「低俗な誘引形式だ。精神的に弱い個体を夢経由で引き込むつもりだろう」

「ゼルくん、分かるの?」

「外宇宙の古い残存勢力には、願望や欲望を入口にするものが多い」

「説明されると余計キモい」

 

 萌亜は指を鳴らした。

 

 ぱちん。

 

 星図上の広告が、一瞬で消える。

 だが、最後に一文だけ残った。

 

『あなたも、深海で本当の自分になりませんか?』

 

 萌亜は無表情で、もう一度指を鳴らした。

 

 ぱちん。

 

 今度こそ広告は完全に消えた。

 

「チョベリバ」

 

 萌亜は低い声で呟いた。

 

「本当にチョベリバ」

 

 リオナも頷いた。

 

「私、今のでルルイエ行きたくなさランキング一位になった」

「でしょ?」

「うん。あれは最後でいい」

 

 ネレイアは静かに記録を更新する。

 

『ルルイエ残存勢力、現代人類の広告文化を模倣。精神誘導型スパムとして分類します』

「分類名が嫌すぎる」

 

 カナメは銃を下ろしながら言った。

 

「今後、ルルイエ関連の情報にはフィルターをかけるべきだな」

「賛成」

 

 リオナが即答した。

 ゼルヴァードも渋い顔で頷く。

 

「我も賛成だ。あのような情報波を浴び続ければ、精神が腐る」

 

 萌亜は腕を組み、地球図のルルイエを睨んだ。

 

「やっぱ最後。絶対最後」

 

 その判断に、誰も反対しなかった。

 

 ネレイアは、星図の光を切り替えた。

 各地の防衛拠点から、薄い線が伸びていく。

 

 アトランティス。

 竜宮城。

 エルドラド。

 シャンバラ。

 アヴァロン。

 ムー。

 

 そして、ルルイエ。

 

 それらの線は、地球全体を覆う網のようにつながっていた。

 

『地上定着核を完全起動するには、この防衛網のうち、最低三拠点との同期が必要です』

「三拠点?」

 

 リオナが聞く。

 

『はい。アトランティス単独では、選定機関の再調整干渉を完全には防げません。地球側の防衛網を再接続し、王の現在人格を地球全体に定着させる必要があります』

 

 ゼルヴァードが顔をしかめる。

 

「なるほど。アンゴルモアを個人ではなく、地球側の存在として固定するわけか」

『その通りです』

「理論上は可能かもしれん。だが、各拠点がまともに稼働していなければ意味がない」

『はい。そのため、現存する防衛機構の確認が必要です』

 

 リオナは地球図を見る。

 

 竜宮城。

 エルドラド。

 シャンバラ。

 アヴァロン。

 ムー。

 ルルイエ。

 

 どれも、普通に考えれば一生関わらない場所だ。

 というか、存在していること自体がおかしい。

 

「これ、全部行く流れ?」

 

 リオナが恐る恐る聞く。

 

『すべてではありません。ただし、最低三拠点の確認が必要です』

「三つか……」

 

 萌亜が小さく手を上げる。

 

「ルルイエ以外で」

 

 即答だった。

 

 カナメが眉をひそめる。

 

「そんなに嫌か」

「嫌」

「はっきり言うな」

「だって嫌だもん」

 

 萌亜は本当に嫌そうだった。

 

「ルルイエ行くくらいなら、竜宮城で乙姫ちゃんとプリ撮る方がいい」

「乙姫いる前提なの?」

「いるんじゃない?」

 

 ネレイアが答えた。

 

『竜宮城の中枢人格、または管理者が残存している可能性はあります』

「いるんだ……」

 

 リオナはもう驚くのに疲れてきた。

 

 ゼルヴァードが冷静に言う。

 

「竜宮城は時間隔離型なら、接続は難しいが有用だ。シャンバラも精神領域防衛なら、再調整対策には相性がいい。アヴァロンは因果干渉をずらせるなら、処分機構への対抗に使える」

「ゼルくん、ちゃんと作戦会議してる」

「我は元々有能だ」

「クレープで釣られる有能」

「一言余計だ!」

 

 カナメが頷く。

 

「超対課としては、まず日本近海の竜宮城を調査対象にするべきだろう。地理的にも近い」

 

 リオナが言う。

 

「でも、時間隔離されてるんですよね?」

『はい』

「入ったら何年も経ってました、みたいな?」

『可能性はあります』

「浦島太郎じゃん!」

 

 萌亜が楽しそうに言う。

 

「リオナっち、おばあちゃんになっちゃう?」

「縁起でもないこと言うな」

「萌亜が戻すよ」

「さらっと言うけど、それできるの?」

「たぶん」

「そのたぶん怖い」

 

 ネレイアは静かに告げる。

 

『竜宮城は、アトランティスと同じ海底系統の防衛拠点です。最初の同期先としては、最も現実的です』

「じゃあ、次は竜宮城?」

 

 リオナが言う。

 

 萌亜は少し考えた。

 

「竜宮城なら、海鮮あるかな」

「観光じゃない」

「でもご飯大事じゃん」

「否定はしないけど」

 

 その時だった。

 

 星図殿全体が震えた。

 天井の結晶が一斉に赤く点滅する。

 

 地球図の外側。

 宇宙のさらに外側から、黒い線が伸びてきた。

 それは、地球図へ向かってまっすぐ近づいている。

 

 ネレイアの表情が硬くなる。

 

『選定機関の観測干渉を確認』

 

 ゼルヴァードが舌打ちした。

 

「早い。試験接続の反応を辿られたか」

 

 カナメが武器を構える。

 

「敵か」

『観測端末ではありません』

 

 ネレイアの声がわずかに揺れる。

 

『より上位の干渉です』

 

 萌亜の瞳の奥に、星のような光が灯った。

 

「来たね」

「何が?」

 

 リオナが聞く。

 

 萌亜は地球図を見つめる。

 

「たぶん、元上司の部下の部下くらい」

「遠いのか近いのか分かんない」

「でも強いよ」

 

 黒い線が、星図殿の空間に突き刺さる。

 空中に亀裂が走った。

 

 そこから、白い仮面のようなものが現れる。

 

 身体はない。

 ただ、仮面と、無数の細い腕のような光。

 それは人間の言葉ではなく、意味だけで告げた。

 

『地上定着核の起動準備を確認』

 

 リオナの頭に、重い圧がかかる。

 

「っ……!」

 

 萌亜が即座にリオナの前へ出た。

 

「リオナっちに直接話しかけないで」

『人間個体、姫咲リオナ。アンゴルモアを汚染する接続因子として認識』

 

 空気が凍る。

 

 リオナは息を呑んだ。

 萌亜の表情が消える。

 

「今、なんて言った?」

『接続因子は排除対象』

 

 白い仮面の細い腕が、リオナへ向かって伸びた。

 

 次の瞬間。

 

 カナメが撃った。

 霊的弾丸が光の腕を弾く。

 

 ゼルヴァードが金色の結界を張る。

 ネレイアが星図殿の防壁を展開する。

 

 それでも、白い腕は増殖するように伸びてくる。

 

 カナメが叫ぶ。

 

「姫咲、下がれ!」

「はい!」

 

 リオナは後ろへ下がる。

 

 萌亜は、前に出た。

 

「萌亜」

 

 リオナが呼ぶ。

 萌亜は振り返らない。

 

「大丈夫」

 

 その声は静かだった。

 

「今回は、プチッとする」

 

 白い仮面が告げる。

 

『文明選定個体アンゴルモア。情動的偏向の深刻化を確認。警告段階を引き上げる』

「ご自由に」

『人間個体を排除することで、再調整成功率は上昇』

「黙れ」

 

 萌亜の声が、低く響いた。

 

 星図殿の空気が歪む。

 青い結晶が震え、地球図が揺らぐ。

 

 ゼルヴァードが険しい顔をする。

 

「アンゴルモア、出力を抑えろ! ここで本質を開けば星図殿ごと壊れる!」

「分かってる」

 

 萌亜は右手を上げた。

 

 その指先に、小さな黒い点が生まれる。

 前に見た、宇宙のような点。

 

 けれど今回は、さらに深い。

 星が生まれて、壊れて、また生まれるような黒。

 

「リオナっちに手ぇ出すなら」

 

 萌亜は、白い仮面を見上げる。

 

「選定機関でも、マジ無理」

 

 指が鳴った。

 

 ぱちん。

 

 白い仮面が歪む。

 無数の腕が砕ける。

 空間の亀裂が閉じようとする。

 

 だが、完全には消えなかった。

 

 白い仮面は、半分ほど崩れながらも言葉を残す。

 

『第三観測周期、短縮』

 

 ネレイアの顔色が変わる。

 

『いけません』

『対アンゴルモア兵装、起動準備へ移行』

 

 その言葉に、リオナの背筋が凍る。

 

 対アンゴルモア兵装。

 萌亜を殺すための槍。

 

『地球防衛網、妨害対象として認識』

 

 白い仮面が最後に告げる。

 

『最初の切除対象を決定』

 

 星図殿の地球図で、日本近海の光点が赤く点滅した。

 

 竜宮城。

 

『時間隔離拠点、竜宮城を切除する』

 

 そして、白い仮面は消えた。

 

 星図殿に静寂が戻る。

 

 しかし、誰も安心しなかった。

 

 地球図の日本近海。

 竜宮城を示す光点が、赤く点滅し続けている。

 

 リオナは震える声で言った。

 

「竜宮城が……狙われた?」

 

 ネレイアが頷く。

 

『はい。選定機関は、地上定着核の同期先を潰そうとしています』

 

 カナメが即座に通信機を確認する。

 

「地上との通信は?」

『星図殿からなら、限定的に可能です』

「御門課長へ繋げ」

 

 ノイズ混じりの通信が開く。

 

『こちら御門……状況は』

 

 カナメが報告する。

 

「星図殿に到達。地球各地の外宇宙防衛機構を確認。現在、選定機関が日本近海の竜宮城を切除対象に指定しました」

 

 通信の向こうが一瞬沈黙した。

 

『……竜宮城と言ったか』

「はい」

『詳細は後で聞く。今は対応が先だ。安藤萌亜は?』

 

 萌亜は通信に顔を近づけた。

 

「御門のおじさん」

『何だ』

「次、竜宮城行く」

『……そうなると思った』

「あと、ルルイエは行きたくない」

『何の話だ』

「今度説明する。聞いたら胃痛悪化するやつ」

『もうしている』

「チョベリバ」

 

 御門は深く息を吐いた。

 

『竜宮城が実在し、かつ切除対象になったなら、超対課としても動くしかない。帰還後、即座に作戦会議を行う』

「了解」

 

 通信が切れる。

 

 リオナは地球図を見上げた。

 

 竜宮城。

 日本近海に眠る、時間隔離型防衛機構。

 

 そこが次の目的地になる。

 

 アトランティスに来たばかりなのに、もう次の異常へ向かわなければならない。

 

 本当に、世界は忙しい。

 

 ゼルヴァードは腕を組んだ。

 

「竜宮城を失えば、定着核の起動は大きく遅れる。選定機関の狙いは合理的だ」

「止められる?」

 

 リオナが聞く。

 

「時間隔離型の拠点なら、外部からの切除には一定の猶予がある。だが長くはない」

 

 カナメが言う。

 

「つまり、急ぐ必要がある」

 

 ネレイアは地上定着核を見つめた。

 

『アトランティス側の準備は進めます。王と人の娘は、次の拠点へ向かってください』

「人の娘って呼ばれるの、まだ慣れない」

 

 リオナが言う。

 

「リオナっち、神話っぽい」

「嬉しくない」

 

 萌亜は、赤く点滅する竜宮城を見ていた。

 

 その表情は真剣だった。

 

「守るよ」

 

 リオナが隣に立つ。

 

「うん」

「竜宮城も、地球も、リオナっちも」

「自分も入れて」

「え?」

「萌亜自身も守るの」

 

 萌亜は少し驚いた顔をした。

 

 それから、小さく笑う。

 

「そっか。萌亜も守る対象なんだ」

「当たり前でしょ」

「リオナっち、やっぱ主人公じゃん」

「だからアンタが主人公だってば」

 

 ゼルヴァードが呆れたように言う。

 

「この状況でよく言い合えるな」

 

 カナメは静かに武器を下ろした。

 

「だが、悪くない」

「カナメっち、また褒めた」

「黒瀬だ」

 

 ネレイアは、星図殿の中央で静かに頭を下げた。

 

『アトランティスは、再び未来へ記録を送ります』

 

 地球図の光が、少しだけ強くなった。

 

 アトランティス。

 竜宮城。

 エルドラド。

 シャンバラ。

 アヴァロン。

 ムー。

 ルルイエ。

 

 神話と伝説の裏に隠された、地球の防衛網。

 

 そのすべてが、今、再び動き始めようとしている。

 

 萌亜は、最後にもう一度ルルイエを見た。

 

 暗く濁った光点。

 深海の悪夢。

 眠れる残存勢力。

 

 そして、怪しすぎる精神誘導型スパム広告。

 

 彼女は心底嫌そうな顔をした。

 

「……やっぱ、あそこは最後でいいや」

「うん」

 

 リオナも頷いた。

 

「あれは最後でいい」

「リオナっち、優しい」

「その代わり、竜宮城ではちゃんと真面目にやる」

「プリは?」

「任務終わってから」

「やった」

「あるか分かんないけどね」

 

 萌亜は笑った。

 

 深海都市アトランティスの最深部。

 

 地球全体を映す星図の前で、終末の大王は次の行き先を決めた。

 

 日本近海。

 時間隔離型防衛機構、竜宮城。

 

 そこが、選定機関との次の戦場になる。

 

 地球は、思ったよりずっと広い。

 神話は、思ったよりずっと本当だった。

 

 そして萌亜は、思ったよりずっと人間くさい顔で、嫌いな場所を後回しにした。

 

「チョベリグな乙姫ちゃんだといいなー」

「乙姫さんを勝手にギャル化するな」

 

 リオナのツッコミが、星図殿に響く。

 

 外宇宙の脅威は迫っている。

 対アンゴルモア兵装も、動き始めている。

 

 それでも、彼女たちは歩き出す。

 

 人の隣を歩く恐怖の王として。

 

 そして、地球を守るギャルとして。

 




第8話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、アトランティス最深部――星図殿の回でした。

ここで、地球全体に点在する外宇宙防衛機構の存在が明かされました。

アトランティスだけでなく、竜宮城、エルドラド、シャンバラ、アヴァロン、ムー、そしてルルイエ。

神話や伝説として語られてきた場所の一部は、実は外宇宙から地球を守るための防衛拠点だった、という形です。

この設定により、今後は地球各地の神話・伝承・失われた都市を巡る展開が可能になりました。

まず次の目的地は、日本近海の竜宮城です。

この作品の竜宮城は、時間隔離型防衛機構。

外宇宙の観測から時間そのものを切り離すための拠点です。

浦島太郎伝説とも関わる場所なので、時間のズレや、乙姫に相当する管理者なども出せる予定です。

そして今回、ルルイエも表示されました。

萌亜が露骨に嫌そうな顔をした場所です。

選定機関とは別系統の、もっと古くて、もっと夢と深海に近い外宇宙。

地球を守る防衛機構でありながら、外宇宙汚染を最も深く受けた拠点。

守護者であり、汚染源でもある。

かなり厄介な場所なので、萌亜としては本気で行きたくありません。

ですが、たぶんいつか行くことになります。

たぶん。

今回はカナメも少しずつ萌亜を認め始め、ゼルヴァードも何だかんだ作戦に参加するようになってきました。

本人たちは否定しますが、仲間感が少しずつ出ています。

次回は、竜宮城編の導入です。

時間隔離された日本近海の海底宮殿。

乙姫に相当する存在。

浦島太郎伝説の裏側。

そして、選定機関による切除攻撃。

深海都市アトランティスから、次は日本神話・昔話側へ進みます。

それではまた次回。

竜宮城でもチョベリグ。
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