時は、決して止まらずに流れる。俺がこうして考えに思い詰めている間も、時は決して止まらずに流れ、やがて鈴仙が俺に食事を持ってきてくれていた。彼女は、食事の載せられた美しい盆を両手に持ち、暖かな白い湯気を立たせながら、俺の近くまで歩んできた。
「お待たせしました。峯野さん、お食事ですよ」
「すみません、ありがとうございます」
俺は、全身に走る鋭い痛みに耐えながら、その場に起き上がった。鈴仙は、暖かな食事の載せられた盆を布団の隣に置くと、盆の上に乗せられていた箸を手に取る。もう一方の手で、白くツヤのある白ごはんの入れられた、綺麗な木の器を取ると、中身を箸で拾い上げ俺に差し出してきた。
「はい、あーん」
日本食の香りだ。戦地では食べられなかった、故郷日本、食の薫り。俺は泣きそうになるのを抑えながら、鈴仙の差し出した白ご飯を口に入れた。
「ふふっ。おいしいですか?」
俺は、口に入れられた米をよく
「無茶苦茶、おいしいです…………」
「ははっ、良かった! じゃあ、もう一口どうぞー。あーん」
「あー、ん?」
俺は、口に入れられた白ご飯を咀嚼しながら、疑問を覚えた。そういえば、どうして俺は鈴仙に
「あ、あのー」
「どうしました? お口に合いませんでしたか?」
「いえ、食事はすごくおいしいんですが…………流石に一人で食べられるかなーと」
俺は苦笑いをしながら、そう言った。すると鈴仙は、むくれたような顔をして口を開く。
「私に食べさせて貰うのは、嫌ですか?」
「いやいや、そんな滅相もない!」
俺は勢いよく首を横に振った。鈴仙はそれを見て微笑む。
「じゃあ、はい! あーん」
「いや、あのーえーとー…………」
こういう時、何と言えばよいのか迷ってしまう。しかし、日本男児として、人に甘んじるのは良くないだろう。最低限腕は動くのだ。自分で食事くらい取らなくては。先ほどセクハラ発言をした人間の、言うべき言葉ではないが。
「すみません、自分で食べれますので」
「あっ」
俺はそう言うと、鈴仙の箸で差し出した白ごはんを口に入れ、そのままその箸を優しく奪い取った。そして、食事の載った盆を太ももの上に載せると、ゆっくりと自分で食事を再開した。
「結構意地っぱりなんですね、峯野さん」
「すみません…………迷惑は掛けたくありませんので」
「迷惑だなんて、別に思ってませんでしたよ?」
「まあ、自己満足な面もあるかもしれません」
俺がそう言うと、鈴仙はくすりと笑った。頭についたうさぎの耳がゆらりと揺れ、髪が小さく音を奏でる。かすかな花の香りが漂った。