東方死謎狂 -巫女と男の運命-   作:Veruhu

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"第六節"

 時は、決して止まらずに流れる。俺がこうして考えに思い詰めている間も、時は決して止まらずに流れ、やがて鈴仙が俺に食事を持ってきてくれていた。彼女は、食事の載せられた美しい盆を両手に持ち、暖かな白い湯気を立たせながら、俺の近くまで歩んできた。

 

 

「お待たせしました。峯野さん、お食事ですよ」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

 

 俺は、全身に走る鋭い痛みに耐えながら、その場に起き上がった。鈴仙は、暖かな食事の載せられた盆を布団の隣に置くと、盆の上に乗せられていた箸を手に取る。もう一方の手で、白くツヤのある白ごはんの入れられた、綺麗な木の器を取ると、中身を箸で拾い上げ俺に差し出してきた。

 

 

「はい、あーん」

 

 日本食の香りだ。戦地では食べられなかった、故郷日本、食の薫り。俺は泣きそうになるのを抑えながら、鈴仙の差し出した白ご飯を口に入れた。

 

 

「ふふっ。おいしいですか?」

 

 

 俺は、口に入れられた米をよく咀嚼(そしゃく)し、飲みこむと口を開いた。

 

 

「無茶苦茶、おいしいです…………」

 

「ははっ、良かった! じゃあ、もう一口どうぞー。あーん」

 

「あー、ん?」

 

 俺は、口に入れられた白ご飯を咀嚼しながら、疑問を覚えた。そういえば、どうして俺は鈴仙に食べさせて( ・ ・ ・ ・ ・)貰っているのだろう。

 

 

「あ、あのー」

 

「どうしました? お口に合いませんでしたか?」

 

「いえ、食事はすごくおいしいんですが…………流石に一人で食べられるかなーと」

 

 

 俺は苦笑いをしながら、そう言った。すると鈴仙は、むくれたような顔をして口を開く。

 

 

「私に食べさせて貰うのは、嫌ですか?」

 

「いやいや、そんな滅相もない!」

 

 

 俺は勢いよく首を横に振った。鈴仙はそれを見て微笑む。

 

 

「じゃあ、はい! あーん」

 

「いや、あのーえーとー…………」

 

 

 こういう時、何と言えばよいのか迷ってしまう。しかし、日本男児として、人に甘んじるのは良くないだろう。最低限腕は動くのだ。自分で食事くらい取らなくては。先ほどセクハラ発言をした人間の、言うべき言葉ではないが。

 

 

「すみません、自分で食べれますので」

 

「あっ」

 

 

 俺はそう言うと、鈴仙の箸で差し出した白ごはんを口に入れ、そのままその箸を優しく奪い取った。そして、食事の載った盆を太ももの上に載せると、ゆっくりと自分で食事を再開した。

 

 

「結構意地っぱりなんですね、峯野さん」

 

「すみません…………迷惑は掛けたくありませんので」

 

「迷惑だなんて、別に思ってませんでしたよ?」

 

「まあ、自己満足な面もあるかもしれません」

 

 

 俺がそう言うと、鈴仙はくすりと笑った。頭についたうさぎの耳がゆらりと揺れ、髪が小さく音を奏でる。かすかな花の香りが漂った。

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