東方死謎狂 -巫女と男の運命-   作:Veruhu

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"第七節"

 

 

「峯野さんは、日本には長く?」

 

「えぇ、長く居りませんでしたね。少なくとも3年以上は、海外に居たかと思います」

 

「――――――――…………(いくさ)、ですか?」

 

「…………まあ、そんなところです」

 

 

 鈴仙はそれを聞くと、何かを思うかのように表情を暗くした。顔を左に向け、壁のある一点に(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)視線を注いだ。

 

 

「ではあの武器も…………」

 

「はい、その為の武器です」

 

「そう、ですか」

 

 

 鈴仙は数度頷いた。彼女の視線の先にあったものは、俺の武器や武装の掛けられた壁だ。彼女は手を胸に当て、目を閉じる。俺はそんな鈴仙の様子を、食事の手を止め見守っていた。やがて鈴仙と目が合うと、彼女ははっとした顔になり口を開く。

 

 

「すみませんっ、なんでもないんです! どうぞ、お食事を続けられてください!」

 

「…………」

 

 

 彼女の話を聴くべきだろうか。初対面の人間が? 調子に乗ってはいけない。些細な事であれば、初対面の人間でも愚痴の一つや二つ聞けるだろうが、戦争に関することなど、どうせ悲惨極まりない。誰にでも、触れては欲しくないことが一つや二つある。彼女のこの面には、容易(たやす)く触れるべきではないだろう。

 

 

「悲しい顔をされないでください、鈴仙さん。でないと、あなたの可愛い顔が、崩れてしまうではないですか」

 

「えっ、はいっ…………?」

 

 

 鈴仙は驚いたように目を見開くと、数度まばたき頬を紅く染めた。俺はそんな鈴仙に、軽く笑って見せる。僅かの間、鈴仙は恥ずかしそうに視線を逸らしていたが、やがて膨れっ面になると不満そうに口を開いた。

 

 

「女を扱い慣れてますねっ、峯野さんっ」

 

「えっ、いやそんなことは」

 

「いいえ、絶対そうですよ!」

 

 

 鈴仙は目を瞑り腕を組んだ。俺は困って頭を抱える。

 

 俺は生まれてこの方、女とそこまで話したことが無いのだが。第一、スポーツばかりしていたから、女と縁を作ろうともしなかった。自衛隊に入るのも早かったから、女には余計手を出せていない。WAC(ワック)も所詮仕事仲間だ。事務的な話しかしてこなかった。よく考えてみれば、俺はモテない方なんだろう。こんな悲しい事実確認、したくなかったが。

 

 

「とにかく、早く食事を食べられてください。帰れないじゃないですか、私が」

 

「あ、あぁ……はい」

 

 

 その後、俺は鈴仙の、妙な物を見るような視線に耐えながら、急いで食事をかきこんでいった。

 

 

 

    ✿      ✿      ✿

 

 

 

 鈴仙が帰った後、俺は八意先生に退院までの予定を教えられていた。

 

 退院は三日後。それまでは経過観察と点滴、飲み薬によって治療を行うという。また退院後一週間もすれば、体の傷もほとんど分からなくなっているらしい。どんな治療を行ったんだ、あの先生は。

 

 しかし退院後、俺はどこに行けばいいのだろうか。八意先生は、ある者が迎えに来ると言っていたが、ある者とは一体誰の事なのだろうか。まさか俺の事を、奴隷として売り出すような危険な(やから)ではないだろうな。隠されている分、心配だ。

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