「峯野さんは、日本には長く?」
「えぇ、長く居りませんでしたね。少なくとも3年以上は、海外に居たかと思います」
「――――――――…………
「…………まあ、そんなところです」
鈴仙はそれを聞くと、何かを思うかのように表情を暗くした。顔を左に向け、
「ではあの武器も…………」
「はい、その為の武器です」
「そう、ですか」
鈴仙は数度頷いた。彼女の視線の先にあったものは、俺の武器や武装の掛けられた壁だ。彼女は手を胸に当て、目を閉じる。俺はそんな鈴仙の様子を、食事の手を止め見守っていた。やがて鈴仙と目が合うと、彼女ははっとした顔になり口を開く。
「すみませんっ、なんでもないんです! どうぞ、お食事を続けられてください!」
「…………」
彼女の話を聴くべきだろうか。初対面の人間が? 調子に乗ってはいけない。些細な事であれば、初対面の人間でも愚痴の一つや二つ聞けるだろうが、戦争に関することなど、どうせ悲惨極まりない。誰にでも、触れては欲しくないことが一つや二つある。彼女のこの面には、
「悲しい顔をされないでください、鈴仙さん。でないと、あなたの可愛い顔が、崩れてしまうではないですか」
「えっ、はいっ…………?」
鈴仙は驚いたように目を見開くと、数度まばたき頬を紅く染めた。俺はそんな鈴仙に、軽く笑って見せる。僅かの間、鈴仙は恥ずかしそうに視線を逸らしていたが、やがて膨れっ面になると不満そうに口を開いた。
「女を扱い慣れてますねっ、峯野さんっ」
「えっ、いやそんなことは」
「いいえ、絶対そうですよ!」
鈴仙は目を瞑り腕を組んだ。俺は困って頭を抱える。
俺は生まれてこの方、女とそこまで話したことが無いのだが。第一、スポーツばかりしていたから、女と縁を作ろうともしなかった。自衛隊に入るのも早かったから、女には余計手を出せていない。
「とにかく、早く食事を食べられてください。帰れないじゃないですか、私が」
「あ、あぁ……はい」
その後、俺は鈴仙の、妙な物を見るような視線に耐えながら、急いで食事をかきこんでいった。
✿ ✿ ✿
鈴仙が帰った後、俺は八意先生に退院までの予定を教えられていた。
退院は三日後。それまでは経過観察と点滴、飲み薬によって治療を行うという。また退院後一週間もすれば、体の傷もほとんど分からなくなっているらしい。どんな治療を行ったんだ、あの先生は。
しかし退院後、俺はどこに行けばいいのだろうか。八意先生は、ある者が迎えに来ると言っていたが、ある者とは一体誰の事なのだろうか。まさか俺の事を、奴隷として売り出すような危険な