東方死謎狂 -巫女と男の運命-   作:Veruhu

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"第八節"

 

 とにかく俺は、そんな悩みに苦悩させられながら、やがてその一日を終えていった。

 

 

 

 

 二日後、俺はリハビリをする為、布団から出て部屋の外に出ていた。点滴は、帰って来てから再開すれば良いという。

 

 この屋敷は、永遠亭(えいえんてい)という名前らしい。なぜそんな名前にしたのかは教えてくれなかったが、きっと思う所があったのだろう。俺もこんな立派な建物は、末永く建っていて欲しいと思う。

 

 俺は、借り物の草履(ぞうり)を縁側で履くと、地面に降り立った。本当に久しぶりに履いた草履の鼻緒(はなお)が、足に食い込み独特の感触を感じさせた。

 

 永遠亭の庭には、綺麗な石と芝生が敷き詰められていた。そしてその外側には、竹藪と竹垣が屋敷全体を囲っており、またその外側には終わりの見えない広大な竹林が、此処(ここ)守っていた(・ ・ ・ ・ ・)

 

 俺はゆっくりと一歩目を踏み出した。左足で地面を蹴り出し、その足が僅かな軌跡を虚空に残して、少し前の地面を掴む。足が地面に触れ、体重を乗せたときの僅かな衝撃が、左足に広がった。もう痛みはない。だが、傷口がまた再度開くかもしれないという恐れが、全身を締め付けていた。

 

 だが臆していては、いつまで経っても歩みを進めることは出来ない。俺は、そう自分に言い聞かせ、また同じ要領で二歩目を踏み出した。

 

 大丈夫だ。俺は歩ける。体は少し(なま)っているみたいが、じき治るだろう。

 

 俺はそう考えると、ゆっくりと永遠亭の門まで歩みを進め始めた。自身の足で大地を蹴り、踏みつける感覚がたまらなく気持ちがいい。そうして歩みを進めていると、やがて跳躍(ちょうやく)したい気持ちに襲われる。だが、体内の傷口が知らずうちに開いてしまうのは嫌だ。跳躍はまだ止めておこう。

 

 やがて、永遠亭の門までたどり着くと、俺はその門を抜け外に躍りだした。

そこから見えたものは、一面が竹。右を見ても左を見ても、竹、竹、竹。本当に竹しかなかった。この事実が、俺を現実感から乖離(かいり)させ、まるで御伽噺の世界の中に入り込んでしまったかのような、不思議な浮遊感を感じさせた。

 

 この竹林(ちくりん)の事を、鈴仙は迷いの竹林(・ ・ ・ ・ ・)と呼んでいた。なんでも世間の人たちは、皆口を揃えてそう言うという。

 

 

『そう言われる程に、とても迷いやすい竹林なんですから、あまり中に入っていかないでくださいね!』

 

 

 昨日、鈴仙にくどく聞かされた言葉を思い出す。

 

 

『特に、小さい兎の話は信じちゃダメですよっ。アイツ、最近見てないから言い聞かせることも出来なくって。まあでも、本当に迷ったのであれば、アイツに出会えた方が(・ ・ ・ ・ ・ ・)良いかもしれませんが………』

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