東方死謎狂 -巫女と男の運命-   作:Veruhu

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"第四節"

 

 

「峯野さん、質問があります」

 

「はい」

 

 

 八意先生は神妙な面持ちで俺を見た。

 

 

「――――――――――――――ここは…………一体どこだと( ・ ・ ・ ・ ・ ・)思いますか?」

 

「ここ、ですか?」

 

「はい」

 

 

 俺は辺りを見渡した。一見してこの部屋は、立派な日本の木造建築で出来ているようで、畳は良い香りのする高そうな物が敷いてある。部屋を分ける襖には立派な絵が描かれており、反対側には光を取り入れる為であろう、障子のようなもので出来た立派な窓が付けられていた。ここは病人を寝かせるには少々贅沢すぎる。一見して、素人にはとても手が出せない、高級な家であることには予想が付いた。

 

 

「やはりあの世ですかね?」

 

 

 俺が居たのはアフガニスタンの戦場だ。どこを見渡しても砂漠の土と岩しかない。それがどうして突然、こんな立派なお屋敷に居所を移されているのだろうか。やはりあの世だとしか思えない。

 

 しかしあの世だとすると、ウサギの人間にも多少合点が行くのだろうか?                         古事記に出てくるウサギだと、因幡(いなば)白兎(しろうさぎ)しか思いつかないのだが。

 

 いや待てよ。因幡? 確かバニーガールさんの名前にも、イナバという名前が入っていたな。

 

 しかしこの考えは、八意先生の言葉によって中断させられる。

 

 

「いいえ、違います。貴方は死んではいません。私が治療を施して蘇生したのです」

 

「そんな馬鹿な」

 

 

 あの状態の俺を蘇生したというのか? あれだけ多量出血を起こしていたというのに。あれはそれ相当の治療を迅速に行わなければ、間に合わなかったはずだ。

 

 

「ではここはどこだというのですかっ」

 

 

 少々自身の語気の荒さを感じたが、八意先生への苛立ちを抑えきれなかった。それは自身の死を否定されたことによる。

 

 八意先生は俺の言葉に憐みを感じたのか、目を伏せた。しかしやがて顔を上げると、確かな目で俺を見る。俺は耳を塞ぎたくなる気持ちに襲われた。

 

 

「―――――――――――――――ここは幻想郷( ・ ・ ・)。………………神と妖怪と人間が、共に生きる世界です」

 

「はっ?」

 

 

 

『―――――――――――――――幻想郷( ・ ・ ・)救ってもらいたい( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 

『―――――――――――――――汝、峯野之威。汝の生、力を解き放つ』

 

 

 

『―――――――――――――――人を超える者にとっては、必要不可欠な世である』

 

 

 

 

 今朝見たおかしな夢の光景が、八意先生の言葉によって断片的にフラッシュバックされる。

 

 

 

『―――――――――――――――幻想郷を救ってもらいたい』

 

 

 

 ――――――――幻想郷とは一体何だ。救うとは一体なにからか。

 

 

 

『ここは幻想郷。………………神と妖怪と人間が、共に生きる世界です』

 

 

 

 神と妖怪と人間? それは現世でも同じことだろう? 人は神を慕い、妖怪を恐れ、人と共に生きてきた。何が違うというのだ。

 

 

「外の世界とは、共に生きるという点( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)で異なるのです」

 

 

八意先生は、まるで俺の疑問を読み取ったかのようにそう答えた。

 

 

「どう異なるというのですか」

 

「外の世界では、()に、妖怪( ・ ・)に、化け物( ・ ・ ・ ・)に、触れることは叶いません」

 

 

 八意先生はそう語った。しかしそんな話、だれが信じるというのか。

 

 

「すみませんが、信じることは出来ません」

 

「そうでしょうね」

 

 

 八意先生は再度目を伏せた。俺は頭を抱える。

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