「峯野さん、質問があります」
「はい」
八意先生は神妙な面持ちで俺を見た。
「――――――――――――――ここは…………
「ここ、ですか?」
「はい」
俺は辺りを見渡した。一見してこの部屋は、立派な日本の木造建築で出来ているようで、畳は良い香りのする高そうな物が敷いてある。部屋を分ける襖には立派な絵が描かれており、反対側には光を取り入れる為であろう、障子のようなもので出来た立派な窓が付けられていた。ここは病人を寝かせるには少々贅沢すぎる。一見して、素人にはとても手が出せない、高級な家であることには予想が付いた。
「やはりあの世ですかね?」
俺が居たのはアフガニスタンの戦場だ。どこを見渡しても砂漠の土と岩しかない。それがどうして突然、こんな立派なお屋敷に居所を移されているのだろうか。やはりあの世だとしか思えない。
しかしあの世だとすると、ウサギの人間にも多少合点が行くのだろうか? 古事記に出てくるウサギだと、
いや待てよ。因幡? 確かバニーガールさんの名前にも、イナバという名前が入っていたな。
しかしこの考えは、八意先生の言葉によって中断させられる。
「いいえ、違います。貴方は死んではいません。私が治療を施して蘇生したのです」
「そんな馬鹿な」
あの状態の俺を蘇生したというのか? あれだけ多量出血を起こしていたというのに。あれはそれ相当の治療を迅速に行わなければ、間に合わなかったはずだ。
「ではここはどこだというのですかっ」
少々自身の語気の荒さを感じたが、八意先生への苛立ちを抑えきれなかった。それは自身の死を否定されたことによる。
八意先生は俺の言葉に憐みを感じたのか、目を伏せた。しかしやがて顔を上げると、確かな目で俺を見る。俺は耳を塞ぎたくなる気持ちに襲われた。
「―――――――――――――――ここは
「はっ?」
『―――――――――――――――
『―――――――――――――――汝、峯野之威。汝の生、力を解き放つ』
『―――――――――――――――人を超える者にとっては、必要不可欠な世である』
今朝見たおかしな夢の光景が、八意先生の言葉によって断片的にフラッシュバックされる。
『―――――――――――――――幻想郷を救ってもらいたい』
――――――――幻想郷とは一体何だ。救うとは一体なにからか。
『ここは幻想郷。………………神と妖怪と人間が、共に生きる世界です』
神と妖怪と人間? それは現世でも同じことだろう? 人は神を慕い、妖怪を恐れ、人と共に生きてきた。何が違うというのだ。
「外の世界とは、
八意先生は、まるで俺の疑問を読み取ったかのようにそう答えた。
「どう異なるというのですか」
「外の世界では、
八意先生はそう語った。しかしそんな話、だれが信じるというのか。
「すみませんが、信じることは出来ません」
「そうでしょうね」
八意先生は再度目を伏せた。俺は頭を抱える。