魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】   作:Koh_novel

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第47話 ゴミ箱

 

 家に帰ってきた。

 

 玄関を開けて、靴を脱いで、いつもの居間に戻る。——さっきまでドラゴンを殺していたとは思えない日常感だった。

 

 グリモワルドが、唐突に言った。

 

「そうじゃ。ついでにゴミ箱の使い方も見せておくかの」

 

「……ゴミ箱?」

 

 ピリカは首をかしげた。——なぜ今、ゴミ箱の話なのか。

 

 

 居間の端に置いてある、ピカピカの丸いゴミ箱。引っ越してきた時からそういえば少し気になっていた。やけに綺麗で、内側が鏡のように光っている。蓋つき。

 

「ほれ、ついでに家のゴミも全部入れてしまえ」

 

 ピリカは言われるままに、台所の生ゴミや、書斎の紙屑、割れた陶器の欠片なんかを集めてゴミ箱に放り込んだ。

 

 グリモワルドが蓋を閉めた。

 

「よし。外に出るぞ」

 

「え、外?」

 

 

 二人で玄関を出た。

 

 グリモワルドが空を見上げて右手を翳した。——その動作を、ピリカはつい数時間前にも見ていた。ドラゴンの前で、右手を翳した時と全く同じ動作。

 

 

 ——光の柱が、家の煙突に向かって落ちた。

 

 さっきの、あれだ。あの光だ。間違いなく——ドラゴンを灼き殺したあの光が、自分の住んでいる家の煙突に向かって照射されている。

 

「え、え、え、ええぇえええ!?」

 

 ピリカの声が裏返った。

 

「それ、ドラゴンに向かって撃ったやつですよね!?」

 

「そうじゃよ」

 

「なにやってるんですか!? 家が火事に——」

 

 言いかけて、止まった。——燃えていない。煙突から煙も出ていない。家は何事もなく建っている。

 

「——ならない……?」

 

「ならんよ。あのゴミ箱、内側が全部鏡面じゃろ。光を中に閉じ込めて、中身だけ燃やす仕組みじゃ」

 

 

 十秒ほどで、光が消えた。

 

「ほい、中に戻るぞ」

 

 

 居間に戻って、ゴミ箱の蓋を開けた。

 

 ——中は、完全に空だった。

 

 紙屑も果物の皮も、何もかも消えている。跡形もない。灰すら残っていない。鏡面の内壁にピリカ自身の顔が映っている。

 

「……これ、こんな使い方だったんですね」

 

「便利じゃろ?」

 

「なんか色々と間違っているような……」

 

 

⸻⸻⸻⸻⸻

〜〜【回想——数十年前】〜〜

⸻⸻⸻⸻⸻

 

 森の中。魔物が五、六匹、群れをなしている。

 

 グリモワルドとボルトランが、並んで立っていた。まだ二人とも若い。

 

「そういえば、ソーラーレイを改良したんじゃよ」

 

「改良? あれ以上何を改良するんだ」

 

「まぁ見ておれ」

 

 

 グリモワルドが両手を広げた。

 

 魔物たちの周囲に——鏡面の球体が出現した。ガガガッと、地面から光る壁がせり上がるように、魔物たちを完全に包み込んでいく。

 

 球体が閉じた。中の魔物たちの姿が見えなくなった。

 

 

 グリモワルドが、球体に向かってソーラーレイを照射した。

 

 光が鏡面の球体に吸い込まれていく。外には何も漏れない。音も、熱も、光も。ただ、球体の表面がうっすらと白く光っているだけだった。

 

 三十秒ほど経った。

 

「もうよかろう」

 

 グリモワルドが手を下ろして、球体を解除した。

 

 

 中には——何もなかった。

 

 骨も、肉も、鱗も、何一つ残っていない。完全に蒸発していた。地面すら無傷だった。——全てのエネルギーが鏡の中に閉じ込められていたのだ。

 

 

 ボルトランが、数歩後ずさった。

 

「な、なんだこの威力……」

 

「太陽のエネルギーが鏡の中で逃げないから、これくらいにはなるみたいじゃの」

 

「なんという……。いや待て」

 

 ボルトランの顔が、戦慄から怒りに変わった。

 

「魔物の素材まで全部焼き尽くして消えてるじゃないか!!」

 

「ふむ? ダメじゃったか?」

 

「ダメに決まっているだろう!! こんなことができるやつはおらんから考えてもなかったが、魔物の素材には色々な活用法があるんだ! 残してくれ!!」

 

「じゃあこの技は封印か……」

 

「そもそも普通のソーラーレイで十分すぎるだろう。別にこんな高威力は要らんだろ……」

 

「それはそう。ちょっと思いついて試したくなっちゃった」

 

 ボルトランが額に手を当てた。

 

 

⸻⸻⸻⸻⸻

〜〜【さらにその数年後】〜〜

⸻⸻⸻⸻⸻

 

 グリモワルドの家。一人で何かを考え込んでいる。

 

「思いついたっ!!!————ゴミを燃やせばいいんじゃ!!」

 

 がたっと立ち上がった。

 

「全部消える!! 家に設置せねば!!!」

 

 

 ——こうして、世界最強の魔法の最終系は、家の丸いゴミ箱になった。

 




【作者の裏話】
実は14話にさりげなくこの焼却炉出てきてたりします笑
一番最初らへんから、ソーラーレイをゴミ箱に転用する話は用意してました笑

↓14話↓
https://syosetu.org/novel/415370/15.html

そしてナカタカさん、金属の水瓶と羊さん、栞奈さんより高評価いただきましたっ!!(*>∇<)ノ
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