Q. 魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】   作:Koh_novel

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第75話 次々と新商品

 それからの日々は、あっという間だった。

 

 

 工房にて。

 

「これ、新しいのです。お湯を沸かす道具!」

 

「また新しいの持ってきたか、お嬢さん」

 

 親方が、図面を受け取りながら苦笑した。

 

「お師匠様の家にあるやつです!」

 

「……何個あるんじゃ、あの家は」

 

「まだまだいっぱいあります!」

 

「…………」

 

 親方は遠い目をして、それから、若い職人たちに向かって吠えた。

 

「聞いたか、お前ら! まだまだあるそうだ!」

 

「「「うおおお!!」」」

 

 工房は、なぜか盛り上がった。

 

 

 ベルフォード邸の事務室にて。

 

「お嬢様。魔導ケトル、今日の分も完売です」

 

 ローザが、帳簿をめくりながら報告する。

 

「え、もう? 昨日入荷したばかりだよ?」

 

「入荷の報せと同時に、お屋敷から使いの方がいらっしゃいますので」

 

「は、はやい……」

 

「それと、シャンプーの追加のご注文が八件。ドライヤーの修理が一件。こちらは職人ギルド様に回しておきました」

 

「ありがとう……ほんとに、ありがとうローザ……」

 

 

 また、工房にて。

 

「親方、次は……これ、なんですか?」

 

 若い職人が、新しい図面を覗き込んだ。

 

「毛布だと。魔力で温まる毛布」

 

「……これ、冬に売れますね」

 

「わかっとるわい。お嬢さんの企画は、外れん」

 

 

 ヴァイスフェルト邸にて。

 

「お祖父様、これ。新商品の、温かくなる毛布です。——最近、夜遅くまでお仕事をされているので」

 

「毛布……? ふむ」

 

 ボルトランは、孫からの包みを、怪訝な顔で受け取った。

 

 ——数日後。

 

 夜更けの書斎。

 

 扉が、静かに開いた。

 

「ボルトラン様、夜も更けましたので、そろそろお休みに——」

 

 白髪の老家礼が、言葉を切った。

 

 ——主席宮廷魔法使いが、毛布にくるまって書類を読んでいた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 ボルトランが、ばっと毛布を剥いだ。

 

「……いつからいた」

 

「たった今でございます」

 

「…………見たな」

 

「……お似合いでございました」

 

「あー……触ってみろ」

 

 ボルトランは咳払いをした。それから、ちらりと老家礼を見て——毛布を、差し出した。

 

「は?」

 

「いいから触ってみろ」

 

 老家礼は、恐る恐る毛布を受け取った。両手で抱えた瞬間——目を見開いた。

 

「……これは」

 

「だろう」

 

 ボルトランが、してやったりの顔で腕を組んだ。見られた気まずさを、丸ごと巻き込むことで帳消しにするつもりらしかった。

 

「私も……一枚、いただけますでしょうか」

 

「アリサに頼んでおこう。もう一枚、手に入るか聞いてみる」

 

 主席宮廷魔法使いと、長年仕えた老家礼が、夜更けの書斎で、揃って毛布の虜になっていた。

 

 

 空き地にて。

 

 週末の教室は、続いていた。

 

「えっと、今日は……8人?」

 

「あ、あのね、ピリカちゃん。あと2人、来週から来たいって……」

 

「う、うん。いいよ……」

 

 最初は6人だった生徒が、8人になり、来週は10人になるらしい。

 

 風ができるようになった子が友達を連れてきて、その友達がまた友達を連れてくる。

 

 (……ちょっとずつ、増えてるなぁ)

 

 嬉しい。嬉しいけど——ちょっとだけ、背中がそわっとした。

 

 

 グリモワルドの家にて。

 

「わはは、お師匠様の家の珍しいものを、母様と一緒に簡易化、量産して売るだけで、すっごい稼げますねぇ。どんどんお金が増えていきます。めちゃめちゃ楽しいです!」

 

 帳簿を眺めながら、ピリカはほくほくしていた。

 

 ドライヤー。ローズシャンプー。魔導ケトル。もうすぐ毛布。さらには真空断熱コップ。商品が増えるたび、ピリカ・ピリーラの印は、王都の貴族街に広がっていく。

 

「前も言ったが、本当にこっちの才能はあったんじゃのう……」

 

 グリモワルドは、コーヒーをすすりながら、しみじみと言った。

 

 

 そして、ある日。

 

 ベルフォード邸の執務室に、ピリカは呼ばれた。

 

 机の向こうで、フレデリックが帳簿の写しを眺めていた。ピリカの事業の、この数ヶ月の数字だ。

 

「ピリカ」

 

「は、はい」

 

「これはもう——個人の商売の規模じゃないな」

 

「え?」

 

 フレデリックは、帳簿を閉じて、娘をまっすぐに見た。

 

「注文は貴族家から途切れず、商品は次々に増え、職人ギルドと石鹸工房が動き、従業員が一人。取引はすべて、お前という個人への信用で回っている。——だが、もう明らかにその器を超えはじめている」

 

「えっと、それは、つまり……?」

 

「店を持った方がいい」

 

 フレデリックは、はっきりと言った。

 

「いや——持つべきだ」

 

「み、店ぇ!?」

 




葦原さんより、高評価いただきましたっ!!!(>ω<。)
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