Q. 魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
それからの日々は、あっという間だった。
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工房にて。
「これ、新しいのです。お湯を沸かす道具!」
「また新しいの持ってきたか、お嬢さん」
親方が、図面を受け取りながら苦笑した。
「お師匠様の家にあるやつです!」
「……何個あるんじゃ、あの家は」
「まだまだいっぱいあります!」
「…………」
親方は遠い目をして、それから、若い職人たちに向かって吠えた。
「聞いたか、お前ら! まだまだあるそうだ!」
「「「うおおお!!」」」
工房は、なぜか盛り上がった。
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ベルフォード邸の事務室にて。
「お嬢様。魔導ケトル、今日の分も完売です」
ローザが、帳簿をめくりながら報告する。
「え、もう? 昨日入荷したばかりだよ?」
「入荷の報せと同時に、お屋敷から使いの方がいらっしゃいますので」
「は、はやい……」
「それと、シャンプーの追加のご注文が八件。ドライヤーの修理が一件。こちらは職人ギルド様に回しておきました」
「ありがとう……ほんとに、ありがとうローザ……」
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また、工房にて。
「親方、次は……これ、なんですか?」
若い職人が、新しい図面を覗き込んだ。
「毛布だと。魔力で温まる毛布」
「……これ、冬に売れますね」
「わかっとるわい。お嬢さんの企画は、外れん」
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ヴァイスフェルト邸にて。
「お祖父様、これ。新商品の、温かくなる毛布です。——最近、夜遅くまでお仕事をされているので」
「毛布……? ふむ」
ボルトランは、孫からの包みを、怪訝な顔で受け取った。
——数日後。
夜更けの書斎。
扉が、静かに開いた。
「ボルトラン様、夜も更けましたので、そろそろお休みに——」
白髪の老家礼が、言葉を切った。
——主席宮廷魔法使いが、毛布にくるまって書類を読んでいた。
「…………」
「…………」
ボルトランが、ばっと毛布を剥いだ。
「……いつからいた」
「たった今でございます」
「…………見たな」
「……お似合いでございました」
「あー……触ってみろ」
ボルトランは咳払いをした。それから、ちらりと老家礼を見て——毛布を、差し出した。
「は?」
「いいから触ってみろ」
老家礼は、恐る恐る毛布を受け取った。両手で抱えた瞬間——目を見開いた。
「……これは」
「だろう」
ボルトランが、してやったりの顔で腕を組んだ。見られた気まずさを、丸ごと巻き込むことで帳消しにするつもりらしかった。
「私も……一枚、いただけますでしょうか」
「アリサに頼んでおこう。もう一枚、手に入るか聞いてみる」
主席宮廷魔法使いと、長年仕えた老家礼が、夜更けの書斎で、揃って毛布の虜になっていた。
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空き地にて。
週末の教室は、続いていた。
「えっと、今日は……8人?」
「あ、あのね、ピリカちゃん。あと2人、来週から来たいって……」
「う、うん。いいよ……」
最初は6人だった生徒が、8人になり、来週は10人になるらしい。
風ができるようになった子が友達を連れてきて、その友達がまた友達を連れてくる。
(……ちょっとずつ、増えてるなぁ)
嬉しい。嬉しいけど——ちょっとだけ、背中がそわっとした。
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グリモワルドの家にて。
「わはは、お師匠様の家の珍しいものを、母様と一緒に簡易化、量産して売るだけで、すっごい稼げますねぇ。どんどんお金が増えていきます。めちゃめちゃ楽しいです!」
帳簿を眺めながら、ピリカはほくほくしていた。
ドライヤー。ローズシャンプー。魔導ケトル。もうすぐ毛布。さらには真空断熱コップ。商品が増えるたび、ピリカ・ピリーラの印は、王都の貴族街に広がっていく。
「前も言ったが、本当にこっちの才能はあったんじゃのう……」
グリモワルドは、コーヒーをすすりながら、しみじみと言った。
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そして、ある日。
ベルフォード邸の執務室に、ピリカは呼ばれた。
机の向こうで、フレデリックが帳簿の写しを眺めていた。ピリカの事業の、この数ヶ月の数字だ。
「ピリカ」
「は、はい」
「これはもう——個人の商売の規模じゃないな」
「え?」
フレデリックは、帳簿を閉じて、娘をまっすぐに見た。
「注文は貴族家から途切れず、商品は次々に増え、職人ギルドと石鹸工房が動き、従業員が一人。取引はすべて、お前という個人への信用で回っている。——だが、もう明らかにその器を超えはじめている」
「えっと、それは、つまり……?」
「店を持った方がいい」
フレデリックは、はっきりと言った。
「いや——持つべきだ」
「み、店ぇ!?」
葦原さんより、高評価いただきましたっ!!!(>ω<。)