Q. 魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
開店から、数週間。
店は順調だった。順調すぎるくらいだった。
平日の昼は、学園がある。
だから店は、チーフのローザと、ローザが鍛えた売り子たちが回してくれている。ピリカは学園帰りに店に寄って、店主の顔をして、注文の書き付けに署名をして——閉店前の帳場で、ローザから一日の報告を聞く。
ローザの報告は、売れた数だけではない。「取っ手の持ち方に迷われたお客様が、三人」「シャンプーの香りを嗅いで、棚にお戻しになった方が、お一人」。——欲しいところに、欲しい報せが届く。うちのチーフは、天才だと思う。
土曜は、朝から晩まで、店に立つ。売るためというより、見るためだ。お客様がどこで足を止めて、どこで首をかしげるか。——それが、次の商品の種になる。
そして、日曜は——空き地の教室。
こちらも、順調すぎるくらいだった。
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日曜の夕方。
生徒たちを見送ったあと、ピリカは丘の草の上に、ぱたりと倒れ込んだ。
「お、終わったぁ……」
「お疲れさま。——今日は、21人だったわね」
隣に座ったアリサが、水筒のお茶を差し出してくれる。
「にじゅういちにん……最初、6人だったのに……。しかも帰りがけ、下級生の子たちに囲まれたの。あと5人、来週から来たいって……」
「26人。……そろそろ、限界ね」
「教えたいの。教えたいんだよ? でも、週末はもう一日ぜんぶ使ってて、一人ひとりを見てあげられなくなっちゃう……」
店のこと。新商品のこと。ヒアリング回り。シャンプーの増産。学園の授業。そして週末の教室——。
「時間が、ないんだよねぇ……」
ぽつりと、本音がこぼれた。
「うーーん……」
アリサが、顎に指を当てて、考え込んだ。
「教科書を、作るとか?」
「————それ、いい!!!」
ピリカは、がばっと起き上がった。
「私が直接教えられなくても、本があれば、みんな自分で読んで練習できる! わからないところだけ、教室で聞いてもらえばいい! お師匠様が前に言ってた、ドウジンシってやつだ!」
「どうじんし……?」
「好きな人たちが集まって、好きなことを書いて綴じた、うすーい本! ……らしいよ。よく知らないけど」
「呼び方はともかく、いいと思うわ。私も書くわよ」
「うん! それならさ——あの子も、誘おう!!」
「あの子??」
「ティナだよ! ほら、水の子! 私が最初に教えた——いつも教室で、みんなの取り次ぎをしてくれてる」
「ティナさんが……? でも、どうして?」
アリサが、首を傾げた。教室で毎週顔を合わせてはいるけれど、あの子は誰よりも後ろで、小さくなっている子だ。書き手を探すなら、成績上位の子でもいいはずだった。
「ティナはね、苦労してるタイプだから。きっと、いい表現で伝えられると思う!」
「……あなた、それ、煽ってはいないわよね……?」
「全然! だって私は、ティナの3倍は苦労してるし!」
「ふふっ。——それも、そうか」
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翌日の、昼休み。
ピリカは、廊下の窓際に、探していた姿を見つけた。
大きく息を吸って——
「ねぇ! ティナ!!」
「ひゃいっ!?」
YOROTAさんより☆9をいただきました!ありがとうございます(*>∇<)ノ!