Q. 魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】   作:Koh_novel

76 / 76
第80話 みんなに教える時間ない

 開店から、数週間。

 

 店は順調だった。順調すぎるくらいだった。

 

 平日の昼は、学園がある。

 

 だから店は、チーフのローザと、ローザが鍛えた売り子たちが回してくれている。ピリカは学園帰りに店に寄って、店主の顔をして、注文の書き付けに署名をして——閉店前の帳場で、ローザから一日の報告を聞く。

 

 ローザの報告は、売れた数だけではない。「取っ手の持ち方に迷われたお客様が、三人」「シャンプーの香りを嗅いで、棚にお戻しになった方が、お一人」。——欲しいところに、欲しい報せが届く。うちのチーフは、天才だと思う。

 

 土曜は、朝から晩まで、店に立つ。売るためというより、見るためだ。お客様がどこで足を止めて、どこで首をかしげるか。——それが、次の商品の種になる。

 

 そして、日曜は——空き地の教室。

 

 こちらも、順調すぎるくらいだった。

 

 

 日曜の夕方。

 

 生徒たちを見送ったあと、ピリカは丘の草の上に、ぱたりと倒れ込んだ。

 

「お、終わったぁ……」

 

「お疲れさま。——今日は、21人だったわね」

 

 隣に座ったアリサが、水筒のお茶を差し出してくれる。

 

「にじゅういちにん……最初、6人だったのに……。しかも帰りがけ、下級生の子たちに囲まれたの。あと5人、来週から来たいって……」

 

「26人。……そろそろ、限界ね」

 

「教えたいの。教えたいんだよ? でも、週末はもう一日ぜんぶ使ってて、一人ひとりを見てあげられなくなっちゃう……」

 

 店のこと。新商品のこと。ヒアリング回り。シャンプーの増産。学園の授業。そして週末の教室——。

 

「時間が、ないんだよねぇ……」

 

 ぽつりと、本音がこぼれた。

 

「うーーん……」

 

 アリサが、顎に指を当てて、考え込んだ。

 

「教科書を、作るとか?」

 

「————それ、いい!!!」

 

 ピリカは、がばっと起き上がった。

 

「私が直接教えられなくても、本があれば、みんな自分で読んで練習できる! わからないところだけ、教室で聞いてもらえばいい! お師匠様が前に言ってた、ドウジンシってやつだ!」

 

「どうじんし……?」

 

「好きな人たちが集まって、好きなことを書いて綴じた、うすーい本! ……らしいよ。よく知らないけど」

 

「呼び方はともかく、いいと思うわ。私も書くわよ」

 

「うん! それならさ——あの子も、誘おう!!」

 

「あの子??」

 

「ティナだよ! ほら、水の子! 私が最初に教えた——いつも教室で、みんなの取り次ぎをしてくれてる」

 

「ティナさんが……? でも、どうして?」

 

 アリサが、首を傾げた。教室で毎週顔を合わせてはいるけれど、あの子は誰よりも後ろで、小さくなっている子だ。書き手を探すなら、成績上位の子でもいいはずだった。

 

「ティナはね、苦労してるタイプだから。きっと、いい表現で伝えられると思う!」

 

「……あなた、それ、煽ってはいないわよね……?」

 

「全然! だって私は、ティナの3倍は苦労してるし!」

 

「ふふっ。——それも、そうか」

 

 

 翌日の、昼休み。

 

 ピリカは、廊下の窓際に、探していた姿を見つけた。

 

 大きく息を吸って——

 

「ねぇ! ティナ!!」

 

「ひゃいっ!?」

 




YOROTAさんより☆9をいただきました!ありがとうございます(*>∇<)ノ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ディストピアのネット友達が優秀すぎる(作者:名無しのペロリスト)(オリジナルSF/文芸)

ディストピア世界に転生した、元オタクOLは絶望した。▼飯がクソ不味いだけでなく、前世にあったサブカルチャーが絶滅していたのだ。▼それに都市に貢献しない者を生かしておくほど、アバシリシティは甘くない。▼だからと言って過酷な労働はしたくはないので、せめて身の回りの環境を改善するために仮想空間で色々していると、何故か上級市民のお嬢様がログインしてきて──。


総合評価:4414/評価:8.59/完結:28話/更新日時:2026年06月07日(日) 00:00 小説情報

転生少女が工房を開いたら、有力者たちのたまり場になった(作者:暁刀魚)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 転生者のアリエルは才能に恵まれていたものの、出世に興味がなかった。▼ 学生時代の研究は一部の人間にやたらと評価されていたが、それをひけらかすと嫉妬されて面倒だと考えるのがアリエルだ。▼ あまり人の来ない田舎の故郷で工房を構えることに決めるのは、自然なことだった。▼ しかしどういうわけか、アリエルの工房には常に学生時代に知り合った有力者が各地から集まってくる…


総合評価:4850/評価:8.54/短編:3話/更新日時:2026年05月29日(金) 12:10 小説情報

ロマン職は異世界から帰りたい(作者:庶民ザウルス三世)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

これが絶対浪漫の力だ!▼人は夢を見る。▼そして、効率よりも自分の“好き”を信じて、浪漫を追いかける者たちがいる。▼ソロ専、人見知り。▼だけど、クリティカルが決まった時の一撃だけは誰よりも重い。▼そんな趣味全開のロマン職キャラを愛した男は、課金帰りの事故をきっかけに、ゲームで使っていた女性キャラ――ラシア・ラ・シーラとして異世界で目を覚ます。▼しかも、レベルも…


総合評価:6422/評価:8.5/連載:158話/更新日時:2026年08月01日(土) 07:07 小説情報

胡散臭いTS美少女占い師は今日も路地裏で笑う(作者:高丸)(オリジナル現代/日常)

転生したら怪異が存在する世界にいた主人公が趣味で占い師をする話▼【挿絵表示】▼


総合評価:5590/評価:8.18/連載:9話/更新日時:2026年07月01日(水) 22:07 小説情報

ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ(作者:ポップ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ドラクエ3で勇者一行の一員だった女賢者さんが、大魔王ゾーマを倒した後に遊び人になって、お酒を飲んでいたらダンまち世界に転移してきた話。


総合評価:5435/評価:8.12/連載:56話/更新日時:2026年07月27日(月) 00:17 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>