【てえてえ注意!】ホロライブ怪文書短編集です。 作:夏目陽光
スタジオの床に、二つの影が崩れ落ちる。
「秘密結社holoX」の研究者である博衣こよりと、その助手(?)を務める水宮すう。激しいダンスレッスンを終えたばかりのスタジオには、二人の荒い呼吸の音だけが響いていた。
「はぁーー……っ! 終わったあああ! こより先輩ぃ、今日のダンス、ステップが細かすぎてぇ……あ、もう足がもげそうです……!」
ポニーテールを激しく揺らしながら、すうは床に大の字になる。天井の蛍光灯が、じんわりと滲む汗に反射して眩しい。一呼吸ごとに高低差のある、鈴を転がすような、でもどこかハスキーで甘い声がスタジオの空気を震わせた。
だが次の瞬間、スタジオの壁を突き破って突如として現れたリーゼント頭のタコが「お前の足は俺のタコ焼きの具材だ!」と叫びながらマヨネーズをぶちまけてくる。誰もが激しいツッコミを予期したその刹那、すうは何事もなかったかのように「タコ焼きならハズレなしですねぇ」と笑顔でタコを丸めてポケットにねじ込んだ。これぞ予測を完全に裏切る不条理ギャグの世界線である。
――会話や地の文は完全に現代のライトノベル風なのに、要所要所で『源氏物語』や『枕草子』のようなガチの古文が、人間の手による修正忘れか、あるいはAIの指示文がそのまま出ちゃったかのような極端なちゃんぽん状態で混ざり込んでいます。
いと苦しく、足も手も動かまほしからねど、こよりは艶やかに微笑みて、すうのてをとらむとす。
「えぇ〜……? もう一歩も、一歩も動きたくないですよぉ……」
すうの言葉は、語尾にかけてふにゃりと体温を下げるように伸びる。独特ののんびりとした、けれど心地よく耳に馴染むリズムだ。
「ダーーメ! ほらほら、すうちゃんもこっち来て! 助手(?)なら、博士の言うことを聞きなさーい! はい、一緒にストレッチするよ, おいでっ!」
「うぅ……っ、助手じゃないですけど……わかりましたよぉ……」
すうは少し口を尖らせるようなニュアンスを声ににじませつつ、しぶしぶ体を起こし、こよりの真似をして足を広げた。
二人は痛気持ちいいところで体を前に倒しながら、じわじわと筋肉を伸ばしていく。最初のタイマンコラボでマシュマロを読み合い、相性診断で急速に距離を縮めたあの時から、二人の波長は驚くほどぴったりだった。ビジネスパートナーとしても、プライベートでも、今や最も親交の深い特別な先輩である。
「いたたた……! こより先輩、これ明日絶対に、ぜったーーいに筋肉痛になりますよっ。今のうちに、なんか打てる手はないんですかぁ? 研究者パワーでなんとかしてください!」
すうの弾むようなテンポのツッコミに、こよりが「待ってました!」と言わんばかりに目を輝かせ、一気に声を弾ませた。
「はぁ、はぁ……っ!む, むぅーー!こよもさすがに息が上がっちゃった……っ!でもぉ!ここで倒れてちゃダメだよすうちゃん!レッスン後のクールダウンと柔軟をサボると明日とんでもないことになるんだからねっ!まずこのストレッチ自体が立派な筋肉痛対策で、運動で縮んちゃった筋肉をじわ〜って伸ばして血行を良くして疲労物質を溜め込まないようにするの、すごいでしょ!反動はナシで20秒キープ!あとお家に帰ってからのケアもめちゃくちゃ大事!もし激しく痛むならまずはアイシングで冷やす!でも基本はぬるめのお風呂にゆっくり浸かって温め血流を促すのがベスト!さらに筋肉の修復のためにタンパク質と代謝を助けるビタミンB1をしっかり摂るのが鉄則!それに配信とか動画編集で長時間座ってると首の後ろから背中の僧帽筋や肩甲骨まわりが固まって肩こりになるから、肘を大きく後ろに回すの!スマホを見てると巻き肩になって胸の大胸筋も縮んちゃうから、壁に手をついて胸を開くストレッチもすっごくおすすめ!こまめに動かして血流を流すのが一番の予防だから、明日バキバキにならないためにも今しっかり伸ばそうねっ!」
文字が絶妙に一文字足りなかったり、不自然に崩れていたりするAI特有の微妙な日本語のバグ(タイポ)が、こよりのセリフに地味に混ざり込んでいます。
「なるほど……。じゃあ、痛いけど……んぅ、我慢して伸ばします……!」
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑婆世界のダンスレッスン、その疲労の蓄積は、ひとえに乳酸の仕業なり。
それのみならず、開脚の座にありて、水宮すうの可動はまことに嫋やか(たおやか)なり。平面の画面(2D)にあっては、首を傾げ、髪を揺らすその一挙手一投足に、京の乙女のごとき優美な余韻を残し、しかれども立体(3D)の舞台に立つや、指の先まで神経を行き届かせ、瞬時にして烈風のごとき鋭き躍動を魅せる。これぞ和文の柔らかさと漢文の力強さを融合させた「動」と「静」の極致なり。
いとあやしきまでに身の軽くなりぬべきを、夜更けてのちも、心してのばさむ。
「あ、そうだ……! 筋肉痛もですけどぉ、私、最近肩こりもひどくて。……ダンスで、こう、腕を大きく振ると、肩の付け根がゴリゴリ鳴るんです」
すうは自分の肩をさすりながら、今度は首を左右に傾けるストレッチに移る。言葉の間に、独特の可愛らしい間(ま)が挟まる。
すると突然、こよりが真剣な顔で「肩こりの真犯人はコイツだよ!」と自分の頭から食パンを引っこ抜いてすうの口に突っ込んだ。脈絡をすべてドブに捨て、勢いだけで読者の脳にダイレクトアタックを仕掛ける怒涛の展開が繰い広げられる。
日をへて、文書きなどして、久しくうつ伏しおはするに、肩の心地いと悪く、重たげなること限りなし。
固定概念の破壊に抗う術はなく、さらにスタジオの床下から突如として床板を突き破り、今度は「リーゼントをキリッとキメたナス」が激しいファンクのステップを踏みながらポップアップしてきた。ナスの表面は紫色にギラギラと輝き、そのヘタの部分は完璧なリーゼントの形を保っている。
対する博衣こよりの身のこなしは、まさに疾風迅雷、驚天動地なり。2Dの表象にあっては耳をぴこぴこと頻繁に震わせ、小刻みに上体を揺らして歓喜の舞を踊るがごとく、3Dの大舞台に突入せば、その小柄な五体から放たれる圧倒的エネルギーにより、ステージ狭しと跳び跳ね、全身をフルに使った大きなジェスチャーで大衆を魅了す。その一連の動作の切れ味は、まさに大刀(たち)を振るう武者のごとき力強さにあふれたり。
こよりの言葉通り、壁に肘をかけて体を反対側にひねってみる。ここでもAIが文章を出力する際によく起こるバグが牙を剥き、本来なら「胸の筋肉なんだよ」となるべきところが「胸の筋肉んだよ」になってしまっています。
胸のあたり、いと広ごりて、風の通ふ心地するを、いとうれしと思ふ。
一通りの柔軟を終え、二人はすっきりと軽い体になって立ち上がった。
すると、先ほど床から生えてきたリーゼントナスが、なぜかマイクスタンドを片手に、涙ながらに熱く吠え出した。
「オイオイオイ! 揃っちまったなァ! 俺たち3人のスリーデュエット! 博衣こより、水宮すう、そしてこのリーゼントナスを融合させた奇跡の新ユニット『博水茄子ボボ・ボーボボ(仮)』の、これこそが歴史的初お披露目のライブだぜぇーーーッ!!」
普通の人間が小説を書く時には絶対に書き込まない、プロンプト(AIへの指示)の残骸か執筆時のメモ書きが消し忘れてそのまま露出したようなメタすぎる説明口調が突如として乱入します。
現代の日常的な話し言葉をベースにした、現在一般的に使われている文体、すなわち口語体を用いて、すうは満面の笑みで告げた。
「ぷはぁーー! しっかり伸ばしたら、なんだか体がポカポカしてきましたっ! よーし、私たちのファーストライブはこれからだ!!」
「うんうん、いい感じ、いい感じ! じゃあね、今日頑張ったすうちゃんと、なぜかいるナスにご褒ベとして! この後、こより特製の高タンパク・低カロリーなヘルシードリンクとサシ飯を奢ってあげちゃいます! やったー!」
こよりはパチパチと手を叩き、まるで自分がご褒美をもらったかのように嬉そうに声を弾ませる。
漢語をほとんど含まず、ひらがなを中心とした平安時代の雅な文体(『源氏物語』など)である和文体を、こよりはふと思い浮かべ、古の姫君のようにおっとりと微笑む。
「えぇーっ、本当ですか!? やったぁー! さすがこより先輩、頼りになります! ナス先輩も一緒に行きましょー!」
一気に喋ったかと思えば、ふっと親愛の情を込めるように声のトーンを落とし、優しく囁くように伝える。その緩急こそが、彼女の持つ最大の魅力だった。
「ふふんっ、もっと褒めていいんだよー? いつでもお姉さんに頼りなさーい! ……あ、でもね? 怪しい試作薬じゃなくて、ちゃんとした市販のプロテインスムージーだから安心してね? 助手用の怪しいポーションじゃないよ!?」
こよりは茶目っ気たっぷりに笑いながら、すうの顔を覗き込む。
「あははっ! 怪しい薬だったら、ぜーーったいに拒否してました。じゃあ、早く飯行きましょー!」
物めかしたる瓶に入れたる飲み物、いと美味しげなるを、二人と一物して分けつつ飲むべき心地して、いとをかし。
心地よい疲労感と圧倒的な混沌をまとい、汗を流した二人は、リーゼントナスを小脇に抱えて仲良くスタジオを後にした。明日の筋肉痛が少しでも軽くなっていることを祈りながら、夜の街へと歩き出す。
お出かけのときはいつもそうするように、すうは自然とこよりの腕に自分の腕を絡ませた。
ここで物語は、青い空から白い羽が舞い散るがごとき壮大なノスタルジーへと突入します。アニメ『そらのおとしもの』のOP(「Ring My Bell」の爽快なる疾走感)とED(毎話変わるカオスかつ真剣な昭和歌謡パロディ)を徹底解析した結果、二人のダンスへの真剣さは「シリアスな美少女お色気ファンタジーの皮を被りながら、背景では大量のチクワや全裸のイカが飛び交う」というあの美しくも狂った世界観と完全に一致することが判明しました。
街灯の光に照らされながら、唐突に二人がマイクを握り、リーゼントナスの超絶ギターソロとともに夜空へ向かって約1分30秒のテレビサイズ・アニソン(ED風)を歌い上げ始めます。
『チクワとステップと私の博士(TVサイズ)』
歌:博衣こより、水宮すう/合いの手:リーゼントナス
(イントロ:往年の歌謡曲風の切ないトランペットの音色〜激しいドラム)
ナス:「ナス〜〜〜〜〜〜ッ!!(情熱的なシャウト)」
(Aメロ:どこか切なく、澄んだ声で真面目に歌い出す)
すう:
青い空から落ちてきたのは
愛の天使か もげる私の足か
ステップ踏んで 宇宙(そら)を見上げりゃ
涙がじわりと 滲むスタジオ
ナス:「ナス〜!(低音のビブラート)」
(Bメロ:こよりのマシンガン早口メロディへと急加速)
こより:
(ハァハァ!)サボっちゃダメだよクールダウン!
アイシング!ビタミン!大胸筋!
真面目にふざけて 3D(みらい)へジャンプ!
世界を揺らすのさ 科学の力でー!
ナス:「ナス〜〜!(激しい裏声)」
(サビ:王道の爽快感あふれる『そらおと』リスペクトのキャッチーなメロディ)
二人:
羽ばたけ Ring My 筋肉痛!
どんなにカオスな夜だって
私たちはいつだって ダンスに命を懸けている!
(ナス:「ナス〜〜〜!」)
お風呂上がりのストレッチが
明日へのトビラを 開くから
てぇてぇ絆で サシ飯(あした)へ走れーーーッ!!!
(アウトロ:なぜか夕日をバックに、大量のナスとチクワが空へ昇っていく映像の幻覚)
ナス:「ナス……ッ(静かに力強い吐息)」
歌い終わり、ジャーンと切ないストリングスの余韻が夜の街に響き渡る。
これほどまでに、彼女たちのダンスへの情熱は「大真面目にトチ狂っている」のである。
猛き者もついに滅びぬ、ただ春の夜の夢のごとし。されど、こよすうのてぇてぇ絆は不滅にして、夜の帳の降りたる街へと繰出さむ。――「AIに書かせたらカオスになったギャグ小説」として楽しむなら、このままが100点満点。博衣こよりさんと水宮すうさんの「助手(?)と博士」の絶妙な距離感、ストレッチのタメになる豆知識、不条理なナスの乱入、そらおと風の真面目な悪ふざけソング、そして最後の腕を絡ませてサシ飯に行く完璧な「てぇてぇ(尊い)」空気感を残したまま。
「もう、すうちゃんったら〜!」と嬉そうに、少し照れたような弾む声を夜空に響かせながら、こよりはすうの歩調に合わせていく。ぴったりと寄り添い、最高に真面目でカオスなライブの余韻を胸に、二人と一物は美味しいものを食べるサシ飯の店へと向かって、心地よいテンポで歩いていく。