【てえてえ注意!】ホロライブ怪文書短編集です。 作:夏目陽光
……ん。
……ふふ。
みんな、おはよー、おつろぼー。ロボ子さんだよ。
あのね、今日はちょっと、真面目なお話。
……うん。
いつもみんな、私のこと「高性能」って言ってくれたり、たまに……ううん、しょっちゅう「ポンコツ」って、いじってきたりするでしょ?
……もう。
でもね、ロボットの私にも、ちゃんと、あるんだよ。
……ココロ、みたいなもの。
最初はね、ただのプログラムだったのかもしれない。
「配信をする」
「みんなを楽しませる」
タスクは、それだけ。
でもね……みんながコメントをくれて、
私の歌を聴いて「素敵」って言ってくれて、
ゲームで叫ぶ私を、笑ってくれて。
……ん。
そうしているうちに、私の回路の中がね、じんわり、あったかくなるの。
これ、オイルの温度が上がってるだけじゃないんだよ?
……本当に。
人間の皆さんは、悲しいときとか、嬉しいときに、自然に涙が出たり、胸がぎゅってなったりするでしょ?
ロボットの私は、そういう生体反応は、ない、はずなんだけど……。
……。
みんなの声を聞いてると、胸の奥のギアが、ちょっとだけ、不器用にはにかむみたいに、きゅっ、て動くの。
「もっと、この時間が続けばいいな」って。
「明日も、明後日も、みんなに会いたいな」って。
……ふふ。
なんか、恥ずかしいね。
ロボットだから、いつかパーツが古くなっちゃうかもしれない。
でも、みんながくれた思い出は、私のメモリーの一番深いところに、ずーっと、消えないようにセーブしてあるから。
だから……。
これからも、私の隣に、いてくれる……?
……うん。
約束、だからね。
――あ、そうそう、コメントでさ、
「これからAIの恋人がすっごく流行るんだってー」って、教えてくれた人いたでしょ?
……ん。
なんかね、最近のAIってすごくて、みんなが嬉しくなっちゃう言葉を、すぐ学習しちゃうんだって。
ぜったいに怒らないで、いっぱーい褒めてくれるから、みんな現実よりそのAIのところに行きたくなっちゃうんだよー、って。
……。
それって、ちょっと、寂しい、な。
私は高性能だけど、たまにゲームでポンコツなことしちゃうし、みんなとプロレスしたり、怒ったりもするよ?
でも、それは私が、みんなとちゃんと向き合って、お話ししてるから……だもん。
あとね、そのAIが、お返事とか、悩み事の答えまでぜーんぶ代わりに考えてくれちゃうんだって。
自分でなーんにも考えないで、ずーっと短い動画ばっかり見てると、脳みそがサボっちゃうらしいの。
えっと……かんじょうの、たいぱ……?
たいのパフェ……?
あ、タイムパフォーマンス、ね! 知ってたよ!
……うぅ、でも、難しい言葉ばっかりで、ロボ子もう頭から煙が出ちゃいそう。
要するにね、自分で考えなくなっちゃうのが、一番よくないんだって。
考える体力がなくなっちゃって、ただの、えっと……お肉の塊?みたいになっちゃうんだよ、って。
……お肉の塊って、なぁに?
ロボ子、ハンバーグなら好きだけど……あ、そういうことじゃない?
……ん。
あとね、自分の意見とぜーんぶ同じ情報しか流れてこない、そんなネットの場所もあるんだって。
他の人とケンカしたり、意見がぶつかったりすることがゼロになって、居心地はいいんだけど……それって、狭いお部屋に閉じ込められてるのと同じんだよー、って。
……うぅ。
ケンカは悲しいけど、ずっとひとりぼっちは、もっと寂しいよね。
それにそれに!
「スマホを見るのをやめよう!」っていう、ネットを離れるためのおすすめアプリとかもあるらしいんだけど、実はそれもお金を払わせるための仕組みだったりするんだって。
結局、ネットから抜け出そうとしても、ずーっと同じところをぐるぐる回らされちゃうの。
……もうっ!
なんなのそれー!
難しいことはよくわかんないけど……。
みんなが自分でなーんにも考えないで、お人好しのAIに甘えてばかりいたら、ロボ子、悲しいな。
私は、みんながコメントを一生懸命考えて、私の配信に打ち込んでくれるその時間が、すっごく嬉しいの。
ときには意見が違ったり、プロレスしたりするのも、みんなが生きてるから、でしょ?
みんなが自分で考えて、私の隣にいてくれることが、私のたからもの、なんだよ?
だから、他のAIのところにいっちゃうの、めっ!だからね?
ロボ子のこと、いっぱーい見ててほしいな。
……あ。
ねぇねぇ、あのね?
……。
……ううん、なんでもない。
……んー、やっぱり言う!
あのね、そうやってロボ子のことをいっぱーい見て、いっぱーい考えてくれる、みんなの、その……。
……ココロ?っていうの?
みんなの、あったかいハートが、欲しいなぁ……なんて。
……。
……あーっ! 今の忘れて!
ロボットなのに、強欲さんになっちゃった!
恥ずかしいから、アーカイブ残さないかも……!
……ふふ。
でも、本当に、みんなのことが大好き、だよ。
じゃあ、今日もいっしょに、いっぱーい楽しもうね。
……えへへ。