『デーモンを殺す者』の帰還 ~SAO・偽伝~   作:ネイキッド無駄八

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断章 ~召還~

 

 ―――声が、聞こえる。

 

 前も後ろも、上も下も、光も闇も、何も見えない虚無の世界。

 

 たゆたい続ける身体に感覚は無いが、声はたしかに、聞こえてくる。

 

 この魂に、流れ込んでくる。

 

 

 ――Soul of the mind key to life's Aether.――

 

 

 

 それは懐かしき響き。胸を刺すような懐古の念。

 

 

 ――Soul of the lost, withdrawn from its vessel.――

 

 

 

 何度もこの声を聞き、何度も戦いに赴いた。

 

 

 

 ――Let strength be granted, so the world might be mended. ――

 

 

 何度でも聞きたいと思った。何時までも聞き続けたいと願った。

 

 そう願い、捧げ、求め、貪り、殺し続けた。

 

 そして、空っぽになった。

 

 もう何も、残っていないはずだった。

 

 空っぽなはずのこの魂に、暖かく流れ込むこれは、いったいなんなのだろう。

 

 

 

 ――so the world might be mended. ――

 

 

 ああ、そうか。

 

 オレは、また。

 

 オレは、まだ。

 

 

 

 ――目覚めてください、デーモンを殺す方――

 

 

 

 

 「終わらせては、くれないんだな…………」

 

 

 ―――――――

 

 

 かつて、ボーレタリアと呼ばれる大国があった。

 偉大なる王、オーラントは未開の地において『楔の神殿』を発見し、そこで『ソウル』の業を見出した。

 強大なソウルの業は、ボーレタリアに繁栄をもたらしたが、その栄華も長くは続かなかった。

 老境にいたり、さらなる力への執着に囚われた老王は、楔の神殿の最奥において封じられていた『古き獣』を呼び起こしてしまう。

 それが、破滅の始まりだった。

 色の無い濃霧が国を覆い、そこから現れたデーモンが人々からソウルを奪い去り、瞬く間に大ボーレタリアはソウルを奪われた亡者たちが彷徨う亡国と成り果ててしまった。

 洩れ出した濃霧はやがて世界を覆い尽くし、緩やかな滅びに抱かれて世界は終りを迎えようとしていた。

 霧の裂け目にボーレタリアへと乗り込んでいった数多の英雄が帰らず、人々はやがて訪れるであろう終焉に絶望していた。

 

 

 ところで、偉大なる王オーラントの下には名だたる英傑たちが忠誠を誓っていた。

 

 例えば、ボーレタリアの三英雄。

 つらぬきの騎士、メタス。

 塔の騎士、アルフレッド。

 蛮族の長、ウーラン。  

 

 

 例えば、王の双剣。

 剛力無双を誇った、双剣のビヨール。

 

 そして、ただひとり霧に包まれたボーレタリアから逃れ出でて、外の世界に全てを知らせた者。

 

 

 

 その者の名は、双剣のヴァラルファクスといった―――

 

 

 

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